横浜と川崎が溶け合ったらどんな色? 〜ブルーライン延伸で「文化」は変わるか
横浜VS川崎。
横浜と川崎の長年の緊張関係に、どれだけの人が気づいているだろうか。
もっとも、意識しているのはもっぱら川崎のほうかもしれない。
そもそも、関東の人でなければ、横浜や川崎にそれほど関心がないだろうが。
南関東の海側には、東京港、川崎港、横浜港が並んでいる。かつての京浜工業地帯だ。
東京の隣が川崎、その隣が横浜。いずれも東京のベッドタウンとして認知されている。
だが、川崎と横浜は、規模でも、人気の点でも、同じではない。
横浜市は人口370万(政令指定都市1位)、川崎市は人口150万(6位)。
そして、神奈川県で住みたい都市といえば、横浜がいつも1位となる。
規模でも人気でも、川崎が横浜を抜くことはない。
川崎民は漠然と隣の横浜にコンプレックスがあり、その評価に不満がある。
川崎のほうが東京に近いのに。
横浜の人口が多いのは、単に面積が広いからだ。川崎のほうが人口密度は高いのに。
横浜は黒船が来るまではただの田舎。川崎のほうが文化・産業の歴史があるのに。
しかし、横浜のほうがイメージがいいのは否定しがたい。
川崎民としては、悔しいのだが、余計にみじめになるから、口には出さない。
私のような川崎の北部(山のほう)に住む者には、それ以外の不満がある。
横浜も、川崎も、多くの人は、「海のほう」のイメージしかない。
横浜といえば、赤レンガ倉庫、港の見える丘公園、中華街・・
川崎といえば、川崎港、工業地帯、工場夜景ツアー・・
それが、イメージの差を生んでいるように思うのである。
先日、鉄道系のYouTubeを見ていた。
町田(東京都)で、JR横浜線から小田急線の上りに乗り換えたYouTuberが、
「町田より北に川崎があるなんて」
と驚いていた。
鉄道系YouTuberでも、川崎といえば海のほう(JR川崎、京急川崎など)しかイメージがない。
川崎が南北に長いことに気づいておらず、小田急線の新百合ヶ丘や登戸が川崎である認識がないのである。
横浜の山のほう(青葉区や都筑区)と、川崎の山のほう(多摩区や麻生区)を比べると、「海のほう」ほどの差はない。
これは、これまで何度も書いてきたが、昔は同じ「武蔵国都筑郡」だったからである。
川崎市多摩区は多摩川水系だからやや別だが、川崎市麻生区、横浜市青葉区、都筑区は、鶴見川水系、つまり同じ川の流域で、地理的・文化的にも共通性が高い(例えば住民の平均寿命が長い)。
だが、そうは言っても、正直に言えば「山のほう」でも違いが生まれている。
私は麻生区(柿生)の住人だが、それを痛感するのは、自転車で麻生区早野の墓地公園(早野聖地公園)に行くときだ。田園が広がるあのあたりは、天気のいい日のピクニック先として最高だ。
その早野が川崎市の南の境界であり、そこの墓地公園を抜けると、横浜市青葉区に入る。
そうすると、確かに「世界」が変わるのである。
青葉区に入ると、すぐにあるのが、「東急ストアすすき野店」だ。
東急!
そう、「東急文化圏」に入るのである。
私は「東急」を見ると、逆上する。緊張して、ちょっと血圧も上がっている。
東急田園都市線、東急東横線。あれらの駅に降りると、そこには「東急文化圏」が広がっている。
「二子玉川」とか。
おしゃれな若い奥様たちが、ベビーカーを横に置いて、屋外のカフェでおしゃべりしている。
その横を、小綺麗な格好をした老夫婦が、これまた小綺麗にトリミングされた犬のリードを引いて散歩している。
そういうあか抜けたイメージ、それが「東急」だ。
私の住む柿生から、自転車でちょっと足を伸ばすと、「たまプラーザ」とか「青葉台」といった東急線の駅に行けるが、その雰囲気は、小田急とは明らかに違う。
早野聖地公園の横浜側にある「東急ストアすすき野店」は、東急線の駅(あざみ野)からは遠い。
それでも立派に「東急文化圏」という感じがする。
例えば、東急ストアの前に、キリスト教会がある。
教会! 小田急線の柿生のあたりは神社仏閣ばかりだ。さすが異人さんが住む横浜は違う!と思って血圧が上がるのだ。
小田急OXの前にキリスト教会はないし、あっても似合わない。似合うのは松屋か餃子の王将だ(鶴川あたりでのイメージ)。
そこで、考えて見ると、私が「横浜VS川崎」として考えていたイメージ格差は、実は「東急VS小田急」として捉え直すべきかもしれない。
実際、川崎にも東急線は通っているのだが、その沿線は何か川崎ではない空気を出している。
その典型が「武蔵小杉」だ。川崎のくせに、いや「くせに」というのもおかしいが、とにかく東急線だからイメージがいい。
「ここは川崎だけど川崎ではない」とタワマンの上から見下ろされている気がする。
そして、さらに考えると、「東急VS小田急」は、結局「渋谷VS新宿」ではないか、と思い当たった。
渋谷から横浜方面に伸びる東急線と、新宿から川崎方面に伸びる小田急線。それぞれ、起点である渋谷と新宿の文化・イメージを、沿線に延長していると考えることができる。
それで、私は深く納得する。小田急沿線に住む前から、上京してずっと私は「新宿」を拠点に生きてきて、「渋谷」にコンプレックスを抱えてきた。それが、いま「横浜」「東急」へと投影されているに違いない。
長い前置きになったが、ここからが実は本題だ。
その「渋谷」と「新宿」、「東急」と「小田急」、「横浜」と「川崎」の文化を、融合させる計画が進行している。
いわゆる「横浜市ブルーライン延伸計画」だ。
小田急線の「新百合ヶ丘」と、東急線の「あざみ野」を、地下鉄で結ぶ計画である。
下図がその予想ルートだ。

令和12年(2030年)開業予定とされたが、計画どおりに進んでいるのかは分からない。
いずれにせよ、私の関心は、その開通によって、あの「東急文化」がついに川崎北部に浸透するのか、それとも「小田急文化」が押し返すのか、その両勢力の趨勢である。
色でイメージすると、東急といえば、東横線のラインカラー「赤」が思い浮かぶ。小田急小田原線のラインカラーは「青」だ。両者が混ざり合うと、どんな色になるのだろう。
計画によれば、私がいつも自転車で行っていた早野あたりを、地下鉄は通ることになる。
開業まで生きているかは分からないが・・私は死ぬまでに東急コンプレックスを解消することができるのだろうか。
<追記>
これを書いた後に知ったのですが、政令指定都市どうしを結ぶ地下鉄は非常に珍しく、現在は一例しかない。大阪市と堺市を結ぶ大阪メトロ御堂筋線だ。ブルーラインが延伸して横浜市と川崎市を結ぶと、日本で2例目になるとのこと。
