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【雑記・演劇】鑑賞と批評(他者意見)のバランスについて(『リセット』の観劇をとおして)

 2025年3月21日(金)、信濃町の文学座アトリエで、文学座3月アトリエの会『リセット』を観劇しました。演劇の感想と多少ずれるところも出て来るかもしれませんが、記録を残します。

■作品『リセット』について

 リセットは、劇作家の山崎やまざき元晴もとはるさんの書き下ろしで、今回、西本由香さんが演出されています。
 あらすじを記載します。

彼女はその部屋を20年もの間そのまま保存し、帰らぬ息子を待っていた。
時が止まったかのようなその古家に、家の処分を迫る妹夫婦や、高齢の母を介護するヘルパーが訪れる。
ある朝、彼女がいつものように部屋に入ると、消えたはずの息子が立っていた。
あの頃とは違う、大人の姿。果たして彼は本物の息子だろうか?
胸の内で築き上げた精悍な息子の姿とは相反し、虚ろな目をして佇むその青年は、自らの居場所を求めてたった一言「ただいま」と言うのであった。

『リセット』の配布チラシより。

 私は、このチラシを初めて読んだとき、なぜ息子は帰らないのか、帰ってきた息子は本物なのか、題名の「リセット」とは何をリセットするのかなど、あまりよく分かりませんでした。
 でも、その分、先入観なく、また、舞台の進行に伴ってストーリーを追っていくことが出来ました。

■考えたこと①

 私が観劇した回は、観劇後のアフタートークがついていました。早稲田大学教授で社会学が専門の石田光規さんと、本作演出家の西本由香さん、 司会は鵜山仁さんという構成でした。

 私は、アフタートークがある回に参加することは時々あるのですが、今回は特に、作品に対して考えることが増えたり、理解が深まったりする機会、経験になったように思います。
 以下、あまりネタバレにならないように、何点か記載してみます。()内は、論点を出された主な人です。

①「リセット」とは、リセット出来なかった人たちの物語ではないか。(鵜山さん)
 
母親は、息子の帰りを20年待ち続けている訳ですが、そこから人生をリセット出来たのかどうか。自分の時間と周囲で流れる時間の違い、それは、主観・理想と客観・現実とも言い変えられるかもしれません。

②本当の自分はどこにあるのか(石田さん)
 
この論点は、正直まだ十分に理解出来ていません。美容整形で容姿が変わることや、モラトリアムを卒業して就職していくこと等々、事例として挙げられていました。
 確かに、家族や友人など、つき合っていく人の容姿や態度、意見が、コロコロ変わると大変かもしれません。しかし、あまりに一貫性を要求し過ぎると、生きるのが苦しくなるようにも思うのです。どこまで許容するのか、人づきあいの難しさであり、面白さのように思いました。

③悲劇をネタにお芝居は続いている(西本さん)
 
私は観劇することが度々ありますが、身につまされる意見でした。事件(極端な事例では、戦争や犯罪に及ぶ)をもとに、物語は構築されます。そして、その物語に、私を含め観客は心を動かされるのです。
 ①の論点に少し戻りますが、現実に戻される面もありますが、現実に立ち返って「演劇」や「物語」を捉え直す面も必要な気がしました。

 以上に挙げた点以外にも論点はあり、色々と考えさせられるアフタートークでした。

■考えたこと②

 観劇後の帰りに、入口で購入した『文学座通信』には、山崎さんや西本さんの記事も載せられていて、アフタートークに加え、読みながら考えたりしました。

 観劇して個人的な感想を持ちますが、今回、他の人の意見を聞いて考えたり、理解を深めることは大変面白いと思いました。演劇批評とは、また異なる気がします。
 そして、他の人と議論するには、論点を明確にしたり、整理する(ファシリテートする)ことも必要になります。そして、もっと言えば、みんなが議論したくなるような論点を、作品が含んでいる必要があります。今回、色々考えさせてくれる『リセット』という作品に出会えたことは、大変よい経験になったと思います。

 観劇することと、専門書を読んだり、他者の意見を聞いたりすることのバランスを、もう少し取って行きたいです。

■その他

 今回、舞台装置は、非常にシンプルで無機質な感じがしました。現代を扱った作品で、こうした設計を見かけることも時々あり、「現代」や「家族」に対する1つの捉え方が表現されているのかな、と考えたりもします。どうなのでしょうか。

追記:人生は積み重ねの面もありますが(逆に言えばリセットしにくい)、局面によっては、リセットして再スタートするのもよいかな、と考えたりしました。


■メモ

  • 日程:2025年3月11日(火)~23日(日)

  • 会場:東京都 文学座アトリエ

  • 作:山崎元晴

  • 演出:西本由香

  • 出演:赤司まり子、石井麗子、奥山美代子、沢田冬樹、木津誠之、越塚学、比嘉崇貴、夏八木映美子

 本日は以上です。最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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