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アドビさん、君のあの訴訟、どうしたんでせうね?

母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。


西条八十の有名な詩の一節です。ふとした瞬間に「あれ、どうなったんだろう?」と思い出す、記憶の片隅にあるもの。それは麦わら帽子だったり、初恋の人の連絡先だったり、そして我々クリエイターにとっては、Adobeの「あの訴訟」だったりしませんか。

そう、あれは2019年の春のこと。Adobeが突如として「Creative Cloudの古いバージョンは使っちゃダメですよ!」とユーザーに通告し、界隈がザワついたあの出来事。その背景にあると囁かれていたのが、音響技術の巨人・Dolbyとの法廷闘争でした。

あれから幾年。谷底に落ちた麦わら帽子のように、この訴訟の行方もすっかり霧の中…かと思いきや、どうやらまだ物語は続いているようなのです。

ことの始まりは、壮大なる「計算方法」の解釈違い

そもそもの始まりは2018年に遡ります。Dolbyさんが「アドビさん、うちの技術のライセンス料、払い方が契約と違うんじゃないですか?」と訴えを起こしたのがきっかけでした。

なんだか壮大な夫婦喧嘩のようにも聞こえますが、要はサブスクリプションモデルで提供されるCreative Cloudの収益に対して、Dolby技術のロイヤリティをどう計算するか、という点で両社の間に深い谷ができてしまった、というお話のようです。

クリエイターが日々お世話になっているPhotoshopやPremiere Pro。これらのソフトがDolbyの技術(例えば、動画編集における音声処理など)の恩恵を受けていることは間違いありません。その対価を巡る、巨大企業同士のプライドをかけた戦いだったのかもしれません。

ユーザーに届いた、
一通の「警告」

この静かなる戦いが我々ユーザーの元に届いたのが、冒頭の「旧バージョン使用停止勧告」でした。

「ライセンスのないソフトウェアを使い続けると、第三者から権利侵害で訴えられる可能性がありますよ」

なんとも物騒な文面に、多くのユーザーが「え、どういうこと?」「昨日まで普通に使ってたのに!?」と戸惑ったものです。この「第三者」というのが、何を隠そうDolbyさんのことだったわけですね。

谷底へ落としたのは麦わら帽子だけでなく、我々の安心感でもあったようです。

で、結局あの訴訟、どうなったんでせうか?

さて、ここからが本題です。あの訴訟、一体どうなったのでしょう。

実は、2023年時点の情報でも、まだ両者は法廷で向き合っていると報じられていました。Dolby側が陪審による裁判を求めている、なんて話も聞こえてきます。まるで長編大河ドラマ。最終回はまだ先のようです。

企業間の訴訟というのは、私たちが思うよりずっと時間がかかるもの。和解するにしても、判決が出るにしても、お互いの主張が巨大で複雑なだけに、そう簡単にはいきません。

もしかしたら、今もどこかの会議室で、難しい顔をした大人たちが膨大な資料を前に議論を続けているのかもしれません。僕たちの知らないところで。

結論:僕たちの麦わら帽子は、もう帰ってこない

はっきりしているのは、谷底に落ちた麦わら帽子、つまり「旧バージョンのCreative Cloud」が公式に使える形で私たちの元に戻ってくる可能性は、極めて低いということです。

Adobeが新しいバージョンへのアップデートを推奨し続けるのは、この訴訟のリスクを回避するためでもあるのでしょう。ユーザーとしては、少し寂しい気もしますが、おとなしく最新版を使い続けるのが最も安全で、賢明な選択と言えそうです。

アドビさん、君のあの訴訟がどうなったのか、我々には知る由もありません。でも、君が新しい帽子(最新のアプリ)を次々と提供してくれる限り、我々はクリエイティブという名の道を、これからも歩き続けようと思います。

ただ、時々は思い出してしまうかもしれませんね。
あの夏、谷底へ落とした、使い慣れた「あのバージョン」のことを。

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