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ミスプレイを誘発するゲーム処理は悪である

はじめまして、もしくは再度いらしてくださりありがとうございます。

カクマルゲームズのカクとマルと申します。

普段は二人でボードゲームを作っていますが、今回はボードゲームデザインの考え方について僕らなりのノウハウをお話できたらと思います。

前回の記事はこちらとなっておりますので、タイトルを見てご興味がありましたら是非ご覧いただければ幸いです。


1.破綻しない完璧なルール、で本当にそれって実行できる?

誰かがルールを間違えたり、処理を飛ばしたり、カードの効果を誤って使ってしまうことがあります。

その場合のプレイヤーの反応にはどのようなものがあるでしょうか?


多くの場合、まずプレイヤーが「あ、ごめん」と謝るところから始まるでしょう。

そして、その行動をなかったことにするか、ペナルティを受けるか、少し巻き戻してゲームを続けるか、もう手遅れなのでそのままゲームを進めるか……というのがよくある流れなのではないでしょうか?

ミスプレイを素直に謝ることは、ボードゲームにおいて非常に重要なプレイスキルです。


自らの過ちを認め、少しでも正常な状態に近づけようと現状を修正するよう努力し、進行を妨げずにゲームを維持しようと努める。

これは、プレイヤーとしては模範的な行動です。

 

しかし、ボードゲームをデザインする側の視点では、「ミスプレイをプレイヤーが上手くまとめてくれて一安心」で終わらせるのは危険です。

特にテストプレイ中に同じようなミスが起きたなら、それは単なるプレイヤーの不注意ではなく、ゲームデザイン側がミスプレイを誘発している可能性があります。

 

もちろんプレイヤーが人間である限り必ずミスプレイは発生するものですし、それを全てゼロにすることは永遠にゲームを世に出す機会を失っている事と同じなのも確かです。

ですが、人間がどのようにゲームを認識し、どのように誤解するのかの基本を理解しゲームをデザインをすることで、ぐっとミスプレイを減らす事はできます。

 

この人がミスを犯す原因の基本原理を、デザインの用語でヒューマンエラーと呼びます。

 

ヒューマンエラーの中には、説明書にどんなに細かく正確に処理を書き、例外を予測し書き連ねたとしても解決できず、あらかじめ仕組みを知っていなければ解決しにくいものがあります。

 

この記事では、ボードゲームにおけるミスプレイを、ヒューマンエラーの考え方を使って整理し、デザイン(人間中心設計)がどのように対処すべきかを紹介します。

 

2. 結論:ミスプレイを誘発する処理は悪である

ボードゲームにおいて、プレイヤーが頻繁にミスをする処理は、基本的に悪い処理です。

もちろん、すべてのミスを完全に防ぐことはできません。

しかし、何度も同じミスが起きるなら、それはプレイヤーの集中力や理解力だけの問題ではありません。

その処理が、

  • 置き場所を間違えやすい

  • 手順を忘れやすい

  • 宣言や確認を飛ばしたくなる

  • 似たような処理が多い

  • 用語や効果が紛らわしい

という構造になっている可能性があります。

つまり、ミスプレイは「プレイヤーが悪い」で片付けるのではなく、なぜそのミスが起きる構造になっているのかをデザイナーが考えるべき問題です。

3. ミスプレイはプレイヤーだけの責任ではない

ボードゲーム中のミスプレイには、さまざまな形があります。

例えば、引くべき山札を間違える。

処理するべきフェイズを飛ばす。

カードの状態を更新し忘れる。

本来対象にできないカードを対象にしてしまう。

あるいは、途中でルール違反に気づき、ゲーム進行が止まってしまう。

プレイヤー目線では、こうしたミスは「自分が間違えた」と感じやすいものです。

しかし、デザイナー目線では違います。

もしテストプレイ中に同じようなミスが何度も起きるなら、それはゲームの構造がプレイヤーにミスをさせている可能性があります。

特に、初見プレイヤーだけでなく、複数回遊んだプレイヤーでも同じミスをする場合、その処理はかなり危険です。

その処理は、プレイヤーの注意力に依存しすぎています。

4. ヒューマンエラーの分類で原因を見分ける

ミスプレイを整理するときには、ヒューマンエラーの考え方が役に立ちます。

ヒューマンエラーは、もともと工事現場、医療、航空、プログラミングなど、人間が作業する現場で起きるミスを分析するための考え方です。

ボードゲームでも、プレイヤーは常に情報を確認し、判断し、手順を実行しています。

そのため、ヒューマンエラーの分類はそのまま応用できます。

ここでは、ミスプレイを次の3種類に分けて考えます。

ヒューマンエラーの3つの分類

スリップ:目的は正しいが、行為を間違える

スリップとは、やろうとしている目的は正しいのに、実際の行動を間違えてしまうエラーです。

日常的な例でいえば、車を運転していて、ブレーキを踏むつもりでアクセルを踏んでしまうようなものです。

本人は正しい目的を持っています。

しかし、実際の操作が違ってしまう。

ボードゲームでは、次のようなミスがスリップにあたります。

  • 自分の山札から引くつもりが、共通山札から引いてしまう

  • Aのカードにダメージを与えるつもりが、Bのカードにダメージを与えてしまう

  • 置く場所を間違える

  • 使用済みカードと未使用カードを取り違える

このタイプのミスは、盤面やコンポーネントの配置が紛らわしいと発生します。

例えば、山札が複数あり、それぞれの役割が似ている場合。

カード置き場が近すぎる場合。

似たような名前のリソースや状態が複数ある場合。

こうした構造は、プレイヤーに「わかっているのに間違える」状況を作ります。

選択肢が多すぎると理解していても動作を間違えやすい


スリップへの対策

スリップが起きる場合、まず見直すべきは配置と表現です。

山札が複数あって間違えるなら、山札を一つにまとめられないか考える。

置き場所を間違えるなら、置き場を離す、形を変える、色を変える。

似た概念が複数あるなら、用語や効果を整理する。

また、カードテキストや説明書も確認するべきです。

似たような単語がないか。

複雑な言葉を使っていないか。

別の概念を同じような表現で説明していないか。

スリップは、プレイヤーの理解不足ではなく、見た目や言葉の設計が行動を誤らせている場合があります。


ラプス:やるべきことを忘れる

ラプスとは、短期的な記憶違いや物忘れによるエラーです。

やるべきことはわかっている。

けれど、うっかり忘れてしまう。

ボードゲームでは、次のようなミスがラプスにあたります。

  • ドローを忘れる

  • 手番開始時の処理を忘れる

  • カードの状態を更新し忘れる

  • 効果の終了タイミングを忘れる

  • 一時的な修正値を戻し忘れる

このタイプのミスは、手順が多いゲームで起きやすくなります。

特に、一人のプレイヤーが連続して多くの処理を行う場合は危険です。

相手のアクションを挟まずに、ドロー、回復、更新、配置、効果処理、状態変更などを続けると、どこかが抜けやすくなります。

プレイヤーの記憶力に依存する処理が多いほど、ラプスは増えます。

集中して次の手を考えている時ほど、手順のうっかり飛ばしは発生しやすいものです

ラプスへの対策

ラプスが起きる場合、手順を短くすることが重要です。

まず、そもそもその処理が必要かを疑います。

必要であっても、毎ターン行う必要があるのか。

自動化できないか。

別の処理にまとめられないか。

また、相互確認できる流れにすることも有効です。

例えば、「手番開始時に必ず全員が確認する」「状態更新はカードを物理的に回転させる」「処理が終わったらトークンを移動させる」など、記憶だけに頼らない仕組みにする。

ラプスへの対策は、プレイヤーに「忘れないでください」と言うことではありません。

忘れても自然に気づける構造にすることです。

ミステイク:誤った判断を正しいと思って行う

ミステイクとは、プレイヤーが誤った行動を正しいと思って行うエラーです。

これは「ズルをする」という意味ではありません。

むしろ、ボードゲームでは非常によく起きます。

例えば、カードゲームで複数のフェイズがあるとします。

  • アンタップフェイズ

  • アップキープ

  • ドローフェイズ

  • メインフェイズ1

  • 戦闘フェイズ

  • メインフェイズ2

  • 終了フェイズ

このような構造では、慣れているプレイヤーほど、一部の宣言や確認を省略することがあります。

「どうせ何もないから飛ばしていいだろう」

「いつもの流れだからまとめて処理していいだろう」

「メインフェイズ1とメインフェイズ2は似ているから細かく分けなくていいだろう」

こうして、本来必要な確認や宣言が省略され、あとから問題が発生します。

このタイプのミスは、プレイヤーが意図的に間違えようとしているわけではありません。

その処理が、プレイヤーにとって「省略してもよさそう」に見えているのです。

ゲームに慣れていれば慣れている程、周りが止める間もなく正しいと思った行動をやりがち

ミステイクへの対策

ミステイクが頻発する場合、その処理はプレイヤーにとって邪魔だと思われている可能性があります。

この場合、必要なのは注意喚起ではなく、処理の存在理由を見直すことです。

そのフェイズは本当に必要か。

その宣言は本当に必要か。

似た処理をまとめられないか。

プレイヤーが飛ばしたくなるほど意味の薄い確認になっていないか。

もし、処理を残す明確な理由がないなら、削除した方がよいです。

ミステイクは、プレイヤーがゲームを軽視しているから起きるのではありません。

多くの場合、ゲーム側がプレイヤーにとって納得しにくい手順を要求しているから起きます。

5. ミスの種類ごとに対策は変わる

ミスプレイを減らすためには、すべてのミスを同じように扱ってはいけません。

「ちゃんと確認してください」

「説明書に太字で書きます」

「カードに注意書きを追加します」

これだけでは解決しない場合があります。

なぜなら、スリップ、ラプス、ミステイクでは原因が違うからです。

スリップなら、配置と表現を直す

スリップは、目的は正しいのに操作を間違えるミスです。

そのため、対策は盤面、カード、用語、アイコン、置き場所の整理になります。

山札を間違えるなら、山札の数や場所を見直す。

対象を間違えるなら、対象の表示や効果文を見直す。

置き場所を間違えるなら、プレイエリアの構造を見直す。

スリップは、プレイヤーの手元で起きるミスです。

だからこそ、物理的な配置と視覚情報の改善が効果的です。

ラプスなら、手順と記憶負荷を減らす

ラプスは、やるべきことを忘れるミスです。

そのため、対策は手順の簡略化です。

毎ターン発生する処理を減らす。

処理順を短くする。

状態管理をカードやトークンの位置で表現する。

忘れやすい処理は、他の処理と統合する。

ラプスは、プレイヤーの記憶に負荷をかけすぎると起きます。

だからこそ、「覚えておいてください」ではなく、覚えなくても進行できる設計を目指すべきです。

ミステイクなら、処理の必要性を疑う

ミステイクは、プレイヤーが誤った判断を正しいと思って行うミスです。

この場合、処理そのものがプレイヤーにとって納得しにくい可能性があります。

何度も飛ばされるフェイズ。

誰も宣言したがらない確認。

意味が薄いのに毎回必要な手順。

似たような処理が何度も出てくる構造。

これらは、プレイヤーに「省略していいもの」と判断されやすくなります。

ミステイクが起きたら、その処理を強調する前に、まず削除や統合を検討するべきです。

6. テストプレイで見るべきこと

テストプレイでは、勝敗やバランスだけでなく、ミスプレイの発生にも注意するべきです。

見るべきポイントは、次の3つです。

1. なぜエラーが発生したのか

まず、そのミスがどの種類なのかを見ます。

目的は正しかったが、操作を間違えたのか。

やるべきことを忘れたのか。

誤った判断を正しいと思って行ったのか。

ここを分けないと、対策を間違えます。

2. なぜその原因を削除していないのか

次に、そのミスの原因をゲームに残している理由を考えます。

山札が複数ある理由は何か。

そのフェイズを分けている理由は何か。

その処理を毎ターン要求する理由は何か。

その状態管理をプレイヤーに覚えさせる理由は何か。

理由が明確なら、残す価値があります。

しかし、理由が弱いなら、削るべきです。

3. 理由がないなら設計で対処する

ミスが起きたときに、プレイヤーに注意を促すだけでは不十分です。

「次から気をつけてください」は、デザイン上の解決ではありません。

本当に考えるべきなのは、次の問いです。

なぜ、そのミスが起きる構造になっているのか。

なぜ、その処理を残す必要があるのか。

その処理を削除、統合、簡略化できないか。

ミスプレイを誘発する処理は、ゲーム体験を止めます。

プレイヤーに罪悪感を与えます。

テンポを悪くします。

場合によっては、ゲーム全体の印象を悪くします。

だからこそ、デザイナーはミスプレイを「プレイヤーの失敗」ではなく、改善すべきデザイン上のサインとして扱うべきです。

7. まとめ

ボードゲームにおけるミスプレイは、単なる不注意ではありません。

特にテストプレイで繰り返し発生するミスは、ゲーム側がそのミスを誘発している可能性があります。

ミスプレイは、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

  • スリップ:目的は正しいが、行為を間違える

  • ラプス:やるべきことを忘れる

  • ミステイク:誤った判断を正しいと思って行う

そして、それぞれ対策が違います。

スリップには、配置と表現の改善。

ラプスには、手順と記憶負荷の削減。

ミステイクには、処理の削除や統合。

ボードゲームは、プレイヤーがルールを守ることで成立する遊びです。

だからこそ、ルールを守りやすい構造を作ることが、デザイナーの責任です。

ミスプレイを誘発する処理は悪である。

これは、プレイヤーを甘やかすという話ではありません。

プレイヤーが自然に正しく遊べるように、ゲームの構造を整えるという話です。

 

さいごに

ここまで「ミスプレイを誘発する処理は悪である」に関しての、長い記事をお読みいただきありがとうございました。

 

ゲームを作る上で、「デザイナー以外のプレイヤーがそのゲームをどう理解しているか」はなかなか正しく認識しづらいポイントで、テストプレイの時にようやく見つかることも多い問題です。

ですが、テストプレイは人の都合もあり、そう何度もできるものではないので、効率的にどうフィードバックを受けるか……これは僕ら二人で非常に苦心した部分で、今回はそのノウハウをとりまとめた記事になります。

 

読みにくい部分、疑問点もあるでしょうが、ご感想と一緒に指摘や質問を頂ければ幸いです。

最後になりますが、僕らの記事が皆様の作るボードゲームをほんの少しでも面白くする助けになれることを切に願います。

また、これを読んでボードゲームを作ろう!と思ってくれたならそれもまた望外の喜びです。

それでは、みなさんボードゲーム作りましょう!

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