ベイブレードX、本当に大丈夫か
タカラトミーが誇る一大コンテンツ、ベイブレード。2025年の現在では第4世代であるベイブレードXが展開中だ。1999年の誕生から、休止やシリーズ一新を繰り返しながらも、長く続いているホビーだ。
これを書く私も爆転世代に熱狂し、大人になってから(第3世代のベイブレードバースト後半ぐらいに)帰ってきたベイブレードの1ファン。最前線は今を生きる子供たちに譲るとしても、後方で腕を組みながらまだまだ追いかけるつもりではあるが、こんな記事を書くぐらいには不満や疑問、課題を感じている。ここからの文章は文句ばかり…ではあるが、いったい何故そう思っているのかについて、書き記してみる。読んでて気分の良いものでもないので、こいつの言ってることおかしいなあ…とか、なんて意地の悪いやつなんだ…とか思うのも自由だが、妙な閉塞感や違和感について全く心当たりがないというのなら、これ以上ない幸せ者だと私は思う。
ベイブレードで起きてしまった犯罪と、その背景
https://www.yomiuri.co.jp/national/20251127-OYT1T50164/
早速だが、とても重たい話題を持ってくる。直近で報道された、悲しい事件についてだ。
ベイブレードを購入すると、価格に応じたベイポイントをQRコード経由で入手できる。そしてベイポイントを消費して、運が良ければ一般販売されていないレアなベイブレードが手に入る「レアベイゲットバトル」という要素がある。レアベイは、性能も良く大会で使用されることも多い。アニメでも重要キャラクターが所持しており、欲しいと思える理由はたくさんある。ただし入手にはハードルが高く、それなりの回数と運が無いと手に入らないのが実情だ。希少性に目をつけられ、転売もされてしまっている。
購入していないベイブレード商品からベイポイントを不正に読み取り自分のものにしたというのがこの事件の概要である。ベイポイントの使い道は、レアベイゲットバトルしかない。つまりレアベイ欲しさに起きた犯罪である。
誰が悪いのか
そんなもん犯人が150000%悪い。タカラトミーのせいではない。が、それはあくまで起きてしまった犯罪の責任の所在についてだけだ。
レアベイによって起きる対戦環境の不均衡は、タカラトミー自身が作り上げたものだ。そしてそれは、これまでの展開とブランディングが原因だ。
「ギアスポーツ」の標榜と工夫
ベイブレードシリーズにおいて、第4世代のベイブレードXで特徴的なのは「ギアスポーツ」を標榜しているという点だ。これまでは、カテゴライズするとすればバトルホビーという名前で分類されていた。eスポーツなどスポーツの定義が拡大・変化する中で、それに乗じて子供向けのおもちゃというイメージからの転換を図っているのがベイブレードXだ。
単なる名前の借用や、"それっぽい"ブランドムービーに限らず、様々な施策でもって人口の拡大を目指している。実際、爆転時代のかつてのファンたちが戻ってくるほかにも、一定の効果はあったらしい。
プロダクトにもその考えが反映されているように見える。
これまでのベイブレードは、シリーズ内で世代が進むにつれ、強さのインフレが際立っていた。同じシリーズ内でも最初期のベイと末期のベイでは性能差が大きい。そこまで極端な比較をしなくとも、基本的には新しい方が強くなっているので、古いベイブレードはどんどん使われなくなる。(もちろん、例外もある。真円の形状で衝突ダメージを減らすカスタマイズは世代が古くても大会使用率が高かった等)
また、バネで飛び跳ねたり・電動ギミックが仕込まれたり、その他ユニークな動きをするパーツもそれなりに発売されていた。
第4世代であるベイブレードXは、そのような遊びのあるパーツは極力減ったように見える(完全に無いとは言わない)。また「ライン」という分類により、後発品は単にこれまでより強いコマを出すのではなく、特徴によるカテゴリでうまく住み分け・使い分けがされるように配慮されており、そうすることでインフレが起こりにくいように環境統制を図っているように見える。
ギアスポーツというプレイヤー層拡大のためのブランディング、工夫されたプロダクト、な~んだ良いことだらけじゃん、なんてことはないわけで…
展開の矛盾と、発生した問題
それで、変わった?→変わってない
さて、そんな超カッコいいイケてるギアスポーツ、まあ結局は子供の遊びのまんまである。コロコロコミックと熱いタッグを組むほかには大きな伴走パートナーが増えたわけでもなく、あちらこちらに手を伸ばしてみるが続かず、イベント限定品販売でも子供を優先することがあり、大会でもレギュラーという名前で小学生の年齢に限定した大会が開かれている。層を広げたという割には、目線は未だに小学生に向けたままなのである。
まあ、いい。実はそんなところはどうでもいい。小学生限定大会なんてむしろじゃんじゃんやったほうがいい。隠す必要もない・建前も必要ない・純然たるメインターゲットなんだ。問題はそこじゃない。
入手不確定性があるベイブレードが多数
ベイブレードXでもう一つ大きく変わったものがある。価格帯だ。
物価高が進み、ホビーも価格上昇の波が激しい。かつてのシリーズではスターターが1000円未満で買えたのに、Xではブースターですら1000円を超える。まあそれも仕方がない。20年以上経過しているのだ。なにもかもが高くなっているのだ。そこまでは我慢しようじゃないか。
ただしランダムブースター、お前は別である。
入っているベイブレードが数種類の中からランダムなのがランダムブースター、名前の通りであり第1世代シリーズから続いてきた販売形態の一つだ。しかし、1個700円程度と1400円程度じゃ大分話が変わってくる。この記事を書いている時期の最新Vol.8は1600円だ。
わかるよ、コマ1つにしても設計コストも製造コストも今と昔で大分違うことは。そうじゃなくて、結果的に「ランダム性を含んだ、結果に一喜一憂するのも楽しみの一つの商品」としては値段が逸脱しすぎて成立しなくなってないか、ということを言いたいんだ。高価格になればなるほど、中身が不定ですなんて商品に対する不満が大きくなるのは当然だと思ってほしい。価格を抑えられないなら、売り方を変えるべきだ。コストカットよりも重要なことだ。ところが、現実にはランダムブースターセレクトという新しいタイプのランダムブースターすら登場させている。怠慢どころか味を占めてすらいる。もう、遊びじゃない。まあ、文句を言いながらもこれからも私は買うんだろうが…小学生はついていけてるのだろうか。
中身がランダム、もっとえげつないのがある。DMMくじだ。1回770円。倍額出せば一般販売ベイブレードを1つ買える額だ。最高位のA賞に一般販売されていないベイブレード、続いてのB賞にランチャー、ラストチャンス賞にA賞ベイブレードの特別版(メタルコート)がある。C賞~F賞はクリアボトル・ハンドタオル・キーホルダー・クリアファイルとなりベイブレードそのものとは無関係のグッズになる。くじなのだから結果に差があるのは当たり前ではあるが、これを「ハズレ無し」と呼ぶのは大きな欺瞞だ。
目当てが出るまでくじを引く人、あるくじ全部買う人、その内訳にいたであろう転売ヤー、だいたい思った通りの結果になった。ここまでの大体の登場人物は大人だ。では子供はというと…なけなしのお小遣いをくじに使う小学生もたくさんいただろうが、結果的に笑顔になれたのは少数だろう。もう、遊びじゃない。ま、くじ販売自体はベイブレードバーストでもあったのだが…「スポーツ」という言葉が悪さをしているというのを後で触れることにする。
レアベイゲットバトルの話に繋いでいく。ベイブレードを買うたびについてくるベイポイントで、これまたランダム性のあるくじ引きに挑戦できる。当たればレアなベイブレードが手に入ってうれしい。この仕組み自体は第3世代であるベイブレードバーストでも存在していた。体感としての当選確率も大体一緒だ。そしてベイブレードXでのレアベイは大会使用率も高い。理由は簡単、強いからである。
先ほどは「目線は未だに小学生に向けたまま」と言ったが、逆に大人ではないとベイブレードXのパーツを満足に収集出来ない状況下にある。希少品の入手確率を上げたり、ランダム性を乗り越えたりする最も簡単な手段はお金だからだ。圧倒的な可処分所得によって制圧する以外の現実的な方法は今のところ思いつかない。もう、遊びじゃない。
ベイブレードXの要素を整理すると①メインターゲットは子供②カスタマイズによる戦略をフルに検討するには多種のパーツが必要③「この商品を1つ買えば確実に手に入る」わけではないパーツがそれなりに多い④そのうえでパーツは消耗品であり壊れたら買いなおしになる、これらに矛盾がある。スポーツかこれ?
タカラトミーは玩具会社であり、営利企業だ。利益を追求するのが当たり前だ。だからたくさん集めたくなるように仕向けるのも〝営利企業としては〟間違っていない。そのような動機を持たせるために、商品の魅力を上げるのも仕事だ。しかし、ベイブレードXにおいてはユーザーが商品を選ぶ→買うの単純なステップでは完結せず、いちいちランダムな運要素を持たせ、試行回数を増やさせる余計なステップが差し込まれている。それによってユーザーは単なる対戦の勝敗とは無関係な要素で精神を消耗させられている。また、それが「当たったら嬉しい」で済むような話ではなく、「勝つために必要」という強迫的なものに変わりつつある。友人と手軽に遊ぶだけなら最低限のものを買い揃えれば済み、入手に運要素の絡むベイは諦めても良いのだが、ギアスポーツの標榜と、プロダクトのコンセプトがレアベイの価値や立ち位置にまで強い悪影響を与えてしまっている。「憧れ」が呪いとして機能しているのだ。
「スポーツ」という先鋭化と、先細り
ここまでの文句の核心は「金がかかる」なのだろうか。いや、違う。それはこれから述べる問題の原因の一つでしかない。本題としての問題は、遊びの少ないプロダクト・スポーツ・プレイヤー層(ここではブレーダーではなくあえてプレイヤーと呼ぶ)の拡大、ベイブレードXを構成するこれらが勝敗の重みを強くしすぎてしまったことにある。プレイヤーは勝てるベイブレードにより執着し、強いパーツをより求めるようになった。元々バトルホビーだから強さが奨励されるのはいつだって当然、本当にそう?ブランディングによって空気感は十分変わったぜ。よりストイックに、より緊張感のある方に、より息苦しくね。ただの遊びなんだけどな。
ベイブレードXを遊ぶために必要な最低限の投資を第一段階、満足に楽しむだけの選択肢を揃えた状況が第二段階と定義すると、既に第一と第二でハードルの高さにだいぶ開きが出ている。また、ロット差異による微修正や個体差までこだわったり、あらかじめ予備をストックしておく状態までに到達するような人たちもいる。「スポーツ」という再定義が勝敗の執着度合いを助長させており、そのような要素まで着目することを後押ししてしまっている。もっとも、タカラトミーもロット差異や個体差まで突き詰めろとは一言も言っておらず、個人のこだわりに過ぎない。そして、こだわること自体は罪ではない。しかし「いる」という事実自体が敷居の高さを感じる一因にはなる(流石にだいぶ少数には絞られてくるが…)。

結果的に、ベイブレードXの展開方針は、これまでのベイブレードシリーズにあった多様性を失わせてしまった。プレイヤー層の拡大によって流入した大人が、大人の本気でゆとりのない勝負ごとにしてしまった。そんな状況だ。一番最初に取り上げた事件についても、悪い方向に感化されてしまった人間の一人だろう。もう一度言うが例の事件において責任があるのは犯人だけだということは添えておく。ベイブレードはただの遊びでしかない。
ここまで、「あの頃のベイブレード」だけが好きな懐古厨の戯言だろうと一笑に付せばそれで終わるかもしれない。ただし先に書いた通り、メインターゲットはいつだって子供なのである。これらがそのまま今の子供に降りかかっているのである。笑いは止まっただろうか。これは果たして子供を盾にしただけの稚拙な批判だろうか?メインターゲットは子供、それ以上でも以下でもないのに?
悲観ばかりでもないよ
ここまで書いてみて、ものすごい読後感の悪い文章になってしまっていたので一応フォローしておきたい。ベイブレードはこれまでもこれからも楽しい遊びだし、これまで通りにゆるく・健全に熱く楽しんでいる大人だってたくさんいる。ベイブレードXはXダッシュという革命的なギミックを取り入れたことで、戦略性・見栄えの良さ・爽快感が上がっているし、それ以上の可能性はまだまだあると思っている。私は世の子供たちが遊んでいる姿をほとんど肉眼で見ることは無いし、直接関わろうという思いもないが、楽しんでいる様子を見るとほほえましく見守る気持ちを持っている。
まあ…それはそうと…なんかこう…売り方や売り出し方はもうちょっとなんとかならんかねえ…。
