【妻の観察日記】偏差値31の東京六大学。〜我が妻の、華麗なるアンバランス〜
『話を聞かない男、地図が読めない女』
もう20年以上も昔のことになるが、『話を聞かない男、地図が読めない女』という本がベストセラーになった。男女の考え方や行動パターンの違いを脳の構造から科学的に分析して解説した本だそうだが、私は読んでいないので“そういう内容らしい”としか言えない。
だが、これだけはハッキリと言える。我が妻は、まごうことなき「地図が読めない女」の最高峰🗻である、ということだ。
生まれた沖縄や、はるか北の大地・北海道の位置はなんとなく分かるらしい。だが、そこから先がいけない。四国と中国地方がごっちゃになり、「北陸ってどこ?」「九州って何県あるの?」「山梨県ってどこに浮いてるの?」というレベルなのだ。日本地図をジグソーパズル🧩にしたら、おそらく一生完成しないタイプである。
ところが、こんな妻の経歴を紐解くと、何やらおかしなことになってくる。
彼女の学歴ロードは波瀾万丈だ。小学校の途中から不登校になり、中学校はなんとか卒業。高校は2年の途中で中退してしまった。つまり放っておけば最終学歴は「中卒」である。
だが彼女は「高認(高等学校卒業程度認定試験)」をサラリとパスし、大学受験資格を手に入れた。しかしそこですぐに受験はせず、1年間アルバイト生活を送るという、のんびり屋の私でも一目置くような独自のステップを踏んでいる。
ある時、ふと彼女は気づいたらしい。「このままじゃ、私の最終学歴は中卒のままだ💦」
慌てて大学受験模試なるものを受けてみた。その結果が、凄まじい。
英語は3点。数学もボロボロ。叩き出した偏差値は、驚愕の「31」である。偏差値31といえば、もはや学力というよりは、ちょっとした「お天気」の気温みたいな数字だ。
普通ならここで「やっぱり無理か」とコタツに潜り込むところだが、我が妻は違った。ここから「一念発起」という、人生のブースターを点火🚀させたのである。
そこからの1年間、彼女は猛烈に勉強した。
始発のバスで那覇の山の上から麓まで降りていく。目指すはマクドナルドである。朝の7時から夜の7時まで、なんとドリンクたったの1杯で粘り続けたという。
12時間である。お店にとっては、なんともいい迷惑、営業妨害スレスレの客だ。幸いにしてそこまで激混みする店舗でもなく、沖縄特有の「なんくるないさぁ〜」の精神で温かく(あるいは呆れ顔で)見守ってくれていたらしい。マックのクルーの皆さんには、私からも足を向けて寝られない。
そうしてマックを我が城とした彼女は、なんと1年後、あの『東京六大学』の一つに合格するというミラクルを起こし、最後はちゃんと卒業までしてのけたのである。
実はこの大学時代が、彼女の摂食障害が一番ひどかった時期でもあった。
食べることが怖くて、最後には体重が28キロにまで落ち込み、強制的に緊急入院させられるという、まさに命がけの満身創痍状態。
そんな極限状態の中でも、彼女の辞書に「諦める」の文字はなかった。病院でもベッドの上でも勉強を続け、半年遅れの9月、直接学長から卒業証書を手渡されるという、なんだか映画の主人公のような特別待遇(?)で見事に卒業したのである。
現在の彼女は、TOEICで800点以上を叩き出す。
アラカンの私など足元にも及ばないほど英語が得意なのだ。
地図は読めないが、英語はスラスラ。
六大学は出たが、小学校をドロップアウトしたので「分数の計算」や「確率の問題」「速さの計算(はじき=速さ(は)、時間(じ)、距離(き)、というやつだ)」になると、途端に頭の上にハテナマーク❓が100個ほど浮かぶ。賢いんだか、おバカなんだか、さっぱり分からない。
人間というのは、実に不思議な構造をしている。四国と中国地方の位置は分からなくても、英語の長文はスラスラ読めるのだ。脳の配線が一体どうなっているのか、一度覗いてみたいものである。
これだから、妻の観察はやめられないのである。
