地上9cmからの視線 『マリグナント 狂暴な悪夢』(ジェームズ・ワン)
予想通り前回から2週間以上が経ってしまいました。この間私事やら仕事やらが重なって多忙だったわけなのですけど、めんどくさいと思わなかったかといえばチョットだけ思いました。これぐらいの歳になると隔週は意外と短いです。なんだか死が近づいてる感じです。
さて、今回は映画です。映画というと、なんとなく不定期的に観たくなるジャンル、というものがわたしにはありまして、それはホラーだったりします。普段は大概「ドラマ」とかいう乱暴なジャンル分けをされているモノを中心に観るのですけれど、そこにスリラーやミステリーなどをまぶすのがわたしのレンタルDVDの借り方です。
しかし、このジャンル分け、どこのどいつがやってるんでしょう。なんだよ「ドラマ」って? ヘルツォークのアギーレもキアロスタミの友だちのうちはどこ? もアンゲロプロスの永遠と一日も、あろうことか三谷幸喜の有頂天ホテルなんかも同じ「ドラマ」というジャンルでひとくくりです。前の三人はともかく、ちょっと三谷幸喜は外してくれないかな。この人、映画じゃなくて二時間ドラマ撮る人なんで、一緒にされると迷惑な感じです。誰にとって迷惑なのかといえばわたしにとって迷惑なんですが、なにげに前の三人にとっても迷惑なんじゃないでしょうか(ふたりはもう死んでるけど)。とりわけヘルツォークなんかはブチ切れそうな気がします。また今回もいろんな人から怒られそうなことばかり書いてます。
前回借りたDVDの中にホラーがなかったこともあり、今回適当に借りてみた中で一発目に見たホラーがこれでした。『マリグナント 狂暴な悪夢』。なんとなく、どこかで目にした記憶がある程度の理由で借りてみたので、ほぼ事前情報ナシです。監督すら確認していませんでした。比較的新しいのと、あの『エクソシスト』っぽい、という認識しかありませんでした。
先に書きました通り、このところメチャクチャ忙しくて疲弊しきってるところで観るホラー映画です。期待もなければ退屈しない程度で全然かまわない、というひどく低いハードルのもと視聴しました。
開始五分でイヤな感じがしました。あまりにもチープ。過去の精神病院での記録ビデオテープの演出からして陳腐。まるで80年代の粗製濫造期に撮られた誰の記憶にも残らないB級映画のニオイがプンプンしてきます。そしてその後の退屈な展開、最初に襲ってきたのは幽霊でもモンスターでも快楽殺人犯でもなく、暴力的な睡魔でした。
ヤバい、眠い、でもせっかく金出して借りたんだし観なきゃ損だろ、というド底辺の貧乏根性で必死に起きて観続けていたら、いつの間にかアクション映画になりホラーもへったくれもなくなり、この辺りで「ああ、ハズレを引いたな」と悟りました。
監督のジェームズ・ワン、調べてみたら『SAW』とか撮ってた人らしいです。その昔、評判を聞いて『SAW』を観たとき、全然面白くなかったのをいまだに覚えています。当時、オチがどうこう言われていましたけれど、あんなの初っ端から気づくだろ、としか思えず、出来損ないの『羊たちの沈黙』を突き付けられた気分でした。
ハズレを引いたけれどここで止めるのも癪だし、最後まで観るか、と思ったのが運の尽き。キモになるガブリエルの正体なんて、何十年も前に日本のマンガでやられたネタを持ってきているような始末で、その中には前回ちょっと触れた『魁‼ 男塾』の敵キャラ山艶まんまのギミックもあったりする。怒りよりも疲労が増したままエンドロールに突入し、しかもイヤらしいことに続編を臭わせるような締め方までしています。
多分、ジェームズ・ワンはマンガを偏向して嗜好していたタイプのように思えます。映画監督になったのは間違いだったんじゃないのかな。アメコミとかバンドデシネとか、そっちでやってたらもっとよかった気がします。本質的にこの人は映画じゃない、マンガの人に思えます。三谷幸喜が映画でなくドラマの人のように。
時に人は駄作を引いてしまいます。それはもう仕方ありません。とりわけ好きなジャンルになればなるほど、下手を打つ機会は増えます。事前情報をある程度拾える時代になってからも、冒険をしては失敗を繰り返す愚か者が後を絶ちません。わたしだって小説では何度も痛い目にあってますし、映画でも結構ひどい目にあってます。でもそんな失敗を繰り返しながらも、これはという作品に巡りあえると、無上の喜びを覚えたりもするのが本当に厄介なところです。なぜ厄介なのか? それは大概、売れない傑作を撮った監督が廃業しているからです。
