12本のどうしても外れる矢の見つけ方
アルミアローの時代にシャフトは、120本が1パックになってEASTONから送られてきました。そしてパック同士混ざっても、全く問題はありませんでした。理由は、アルミシャフトはカーボンシャフトでいう、プルトルージョン製法のような「引き抜き加工」で作られていました。この製法は非常に精度の高いパイプが大量に作れる方法で、出来上がったアルミシャフトには寸法や重さのバラツキはほとんどなく、表面処理の必要もありません。
ところが今のカーボンアローは、アルミアローと違って、ほとんどのカーボンシャフトは「12本=1パック」で販売されています。その理由は、カーボンシャフトを作る時の「シートローリング製法」では、出来上がったシャフトの精度や重さバラツキが出るためです。そのためカーボンシャフトは、ブランドやグレードによって、同じ範囲の重さや曲がりのシャフトが集められ、ダース単位で販売されています。原則としては、異なるパックのシャフトを混ぜて使うことは感心できないというわけです。的中精度に影響を及ぼすからです。
ただし、数値的にバラツキはでますが、アーチャーの技術によっては、それが的面のバラツキになって現れるとは限りません。にもかかわらず、アーチャーは誤差の少ない「高価な」パックが得点に結びつくと、信じ込み、ショップもそれを勧めます。しかし、実際にはアーチャーの技術によっては、これらの数値は誤差の範囲となり、支払った金額と点数が正比例しない場合がほとんどなのです。

現在、ほとんどのカーボンシャフトは、「スパイン」「重さ」と「グレードによって、12本入りパックに分けられメーカーからショップに届きます。そのためアーチャーは、基本的には高価ではあっても、シャフトは混ぜることなく、この12本を購入して使用することが良いでしょう。しかしその前に、どのようにして12本が選ばれたかは、知っておいて損はありません。
【スパイン】 アーチャーが使う弓の強さと矢の長さを基準に選ばれる、「矢の硬さ」のことです。測定方法は昔からAMO(ATA)で決められていて、どのメーカーのシャフトも同じ基準で測定されています。しかし選ぶスパインは、アーチャーの体格だけでなく、アーチャーの技術的問題が加味されるため、「スパインチャート表」はあくまで目安にしかすぎません。

知っておかなければならないのは、このスパインは机上で測定された「静的スパイン」だということです。実際のシューティングや空気中の飛翔を測定したものではありません。どのメーカーも、シャフトの中央を押さえて、そのたわみ量をシャフトに記載しているだけです。
そのため同じたわみ量でも、シャフトの性質によっても異なります。復元力を想像してもわかりますが、オールカーボンはシャープですが、アルミ/カーボンは重く鈍く復元します。そのため、アルミ/カーボンでの470がオールカーボンだと500で同じように飛ぶ、ということはよくあります。太さやカーボン量が異なれば、たわみ量だけでなくたわみ方が変わり、シャフトが持つ性能や性質が異なるということです。
スパインの選択は、あくまでアーチャーのシューティングによって決定するもので、数値は比較の目安でしかありません。
【重さ】 「Grains-Par-Inch」と呼ばれるように、シャフトの「1インチの重さ」のことで、樽型シャフトは29インチシャフトを29等分した平均値で表しています。この重さにはポイントやハネの重さは含まれず、実際のシューティングでは、総重量や重心位置も加味して決める必要があります。

重さは、最上位グレードで「+/- 0.5」グレインなどとなっていますが、これは同じブランドのシャフトがすべてこの範囲に収まるということではなく、それぞれのパックが「1グレインの範囲」に収まっているということです。
そのためパック同士ではこれ以上の誤差が発生し、スパイン内で重さは大きく異なります。

アルミシャフトでスパインを作るには、「肉厚」と「外径」で調整します。内径も変化します。ところがカーボンシャフトの、内径はマンドレル(芯)で決まるため変わりません。となれば、スパインが硬くなれば、「外径」は太くなっていくはずです。ところが上の表を見ると、不思議なことが分かります。スパインが硬くなっても、「外径」も「重さ」も徐々に増えないばかりか、逆に細く、軽くなったり、太くなっているのに軽かったり、太さが同じで重さやスパインが異なったりしているのです。
理由は、カーボンシャフトは繊維や樹脂の量を変えることで、硬さを変えているのに加えて、最後の調整として表面を削っているからです。そのため、スパインの硬い矢が必ず太いとは限らないのです。
ところで、重さで使う「グレイン」(grain)という単位はアメリカから来ていますが、「1grain=64.7984ミリグラム」と我々にはなじみがありません。元々は穀物の種から来ていて、「米粒1個が1グレイン」と考えればいいでしょう。
そこであなたは米粒1個の重さの違いを、的面で出せるでしょうか。下位ブランドであっても「+/- 1.0」グレインくらいの幅です。これが12本集めて1パックに入っているのです。高価なシャフトが当たるかどうかは、ショップではなく、米粒と相談してはどうでしょうか。
【グレード】 シャフトの「格付け」を表し、「曲がり」精度(バラツキ)によってグレード分けされます。しかし実際には、「曲がり」に「重さ」のバラツキも加味されるのが一般的です。
曲がり精度は、逆に言えばシャフトの「真っ直ぐさ」を表すもので、シャフトの長さから2インチ引いたシャフトを回転させ、その振れ度合いをインチで表します。しかし実際の測定方法は、メーカーによって異なるのが現実のようです。

カーボンシャフトで最も真直度が高い数値は、アルミシャフトの上位モデルと同じ「+/- 0.001 」インチです。しかし、カーボンシャフトでランク分けが必要な理由は、同じ材料で同じように作っても、曲がりや重さにアルミシャフト以上のバラツキが出るためです。
そこでメーカーは規格外の製品を減らし、「歩留まり」を良くするために、いくつかのグレードに分けて、不良在庫を減らそうとします。
その方法はメーカーによって異なりますが、例えば「V1」(+/- 0.001)、「V3」(+/- 0.003)、「V6」(+/- 0.006)というように、中身はまったく同じで、出来上がったシャフトの曲がり具合によって、グレードと価格を変える方法があります。

各ブランドごとで3種類のグレードが設定されています。
分かりやすく、良心的な方法ばかりではありません。注意して見れば、いくつかのメーカー、いくつかのモデルでは、中身が同じであるにもかかわらず、バラツキの異なるシャフトをまったく異なるモデルとして販売しているものもあります。また、両サイドを削り込んでいたシャフトを、削らずストレートシャフトの別モデルとして販売することで、歩留まりを上げる方法もあります。
ところで、シャフトの真直度(真っ直ぐさ)を見る一番良い方法は、アルミアローの頃にやっていた、手のひらにポイントを刺して手の上で矢を回してやることと、同じように異なるシャフトの上をシャフトを転がしてやることです。慣れればこれだけで、シャフトの真っ直ぐさと傷みがないかを簡単に知ることができます。
しかし矢はミサイルのようには真っ直ぐに飛ばず、空中を蛇行して飛びます。そんなシャフトの「0.002インチ」の差を、あなたは感じることができますか。
これら3つの方法で、矢は12本ずつに分けられます。そして個々のアーチャーは、値段とシャフトの精度を天秤にかけながら、12本のシャフトを購入します。しかし値段で点数を買うことはできません。少しでも当てたい、少しでもうまくなりたいと思っても、あなたの矢に「+/- 0.001 インチ」曲がり幅が大きく、「+/- 0.5グレイン」重い矢が混ざっていたとして、それが実際の的中で気づくでしょうか? それに気が付くのは70mで6射すべてがゴールドに入る、330点を超えるアーチャーです。しかし、矢のグレードを上げても、270点が300点になることはありません。
ところが実は、あなたの的中精度や点数を確実に上げてくれる、4つ目の方法があります。12本1パックの中には、どうしても外れる矢というのがあります。それは「原因不明」で外れる矢です。
シャフトは手の上で転がして完璧に真っ直ぐで、重さも秤で計ってバラツキなく、ハネもノックも真っ直ぐに付いている。にもかかわらず、毎回同じ方向に外れる、という矢があります。これは机上の測定では見つけられない、特別の矢です。

昔、カーボンアローが登場した頃に言われた、「バスタブテスト」と呼ぶ、アナログな測定方法がありました。シャフトの両端をチューインガムで塞ぎ、水を張った風呂の中にシャフトを静かに浮かべます。そして、軸を中心に回転させてやります。止まった時に上に来た位置に印を付けます。これを何度か繰り返し、毎回印が上に来るシャフトはおかしいというわけです。
スパイン測定も同じですが、両端を支えて真ん中に重さを掛けて、たわんだ量がスパインです。ではこの時、真直度を計る時のようにシャフトを回転させても、同じ数値が得られるでしょうか。
このことがバスタブテストの意味することです。机上の測定は「静的スパイン」であり、実際のシューティングに求められるのは「動的スパイン」です。
「原因不明」の外れる矢を見つけるのは、机上や風呂場ではなく、レンジでの実射が、もっとも手っ取り早く、確実な方法です。ただし、あるレベル以上の技術が必要です。例えば70mで、すべてゴールドに入るのに、毎回その矢が同じ方向の8点に行くのが分かる程度の技術です。

アルミコアが曲がらないように注意してください。
しかし初心者でも、「原因不明」で外れる矢を見つける方法があります。
3つ目までは初心者にとっては、、矢のせいではなく、矢のせいにする外れる原因でした。しかし4つ目の外れる矢は、確実に矢のせいで外れます。
その矢を見つけるには、毎回矢取りから帰る時に、「矢を点検」することです。曲がっていないか、羽根もノックも真っ直ぐに付いているかは当然です。そして、もうひとつ。矢の両端を持ち5センチ程度、数回曲げてやります。そして曲げた状態でシャフトを転がしてください。この時、矢が傷んでいれば音がするか、矢は一気に割けます。
カーボンは非常に硬く、復元力があるため、的面での接触などでクラック(割れ)ができても、目視でそれを発見するのは難しいでしょう。そんな表面のクラックとは別に、アルミコアのシャフトは、少し状況が違います。表面には出ない、アルミとカーボンの間に剥離が起こったり、薄いアルミコアがへこむことがあります。これを外観から見つけるのは不可能なため、シャフトを曲げて、音で発見するしかありません。
毎回この点検を習慣付けることは、突然の0点をなくすだけでなく、あなたがトップアーチャーになった時に、必ず役に立つはずです。
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貧しいアーチャーです。点数はお金で買えませんが、もしこの記事があなたのアーチェリーに幸運をもたらすと思われたら、チップをお送りください。
きっとあなたのアーチェリー人生は、素敵なものとなるでしょう。
