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なんでクリッカーは、そこ?

アルバムを見ていたら、こんな写真が出てきました。
1975年インターラーケン世界選手権。世界新記録で圧勝する、18歳のダレル・ペイスの練習風景です。この時から彼の時代が始まるのですが、この1枚を見て、何を思いますか。

68インチ45ポンド、X7-1914 ヘビーポイント 28インチ。

昔、今では当たり前の「クリッカープレート」は付いていなかった、というか使わなかったのです。なかったわけではなく、それは初心者の弓に使う道具でした。確かに今のハンドルはウインドウ幅が狭いために、クリッカープレートは不可欠のように使われています。
では、これはどうでしょう。1967年アメルスフォールト世界選手権チャンピオン、それも「ノークリッカー」最後の世界チャンピオン、レイ・ロジャースです。

見てほしいのは、ウインドウの広さではありません。昔、世界を目指すアーチャーは、「可能な限り短い矢」を意識的に使っていたのです。

不要なレストより先の部分を切り落とすことで、「断面投影面積」を極力小さくしているのです。

矢が飛翔するときの運動量(p)は、矢の重さ(m)×矢のスピード(v)で決定付けられます。言い方を変えれば、同じ重さなら、速い方がぶつかったときの衝撃は大きく、同じ速さなら、重い方が衝撃は大きくなるというわけです。そして、両者を掛け合わせた運動量が大きいほど、矢は風に流されることなく、雨の影響も受けずに的に到達します。

しかし、個々のアーチャーが使えるポンド数には限界があるため、発射のエネルギーは限られます。その中で運動量を増やすには、重い矢を使い m を増やすか、軽い矢を使い v を上げるしかありません。しかしどちらもスパインが合わず、重い矢は失速し、軽い矢は風に流される結果になります。
そこで現実的な方法は、軽い矢より重い矢を使うことです。しかしここで問題になるのは、矢が太くなることでの断面投影面積の増大です。風を受ける面積が増えることです。
だからこそ、アーチャーは、切り落としても問題のない、レストより先の部分を極力短くし、面積を省略することで、矢の運動量を向上させ、風からの影響を最小限にとどめたのです。

しかしここまでは、「アルミアロー」時代のお話です。
なぜ「カーボンアロー」はアルミアローを駆逐して、より高得点の時代へと突入したのか。それは、カーボンがアルミ以上に「軽く」かつ「硬い」素材だったからです。アルミアローでは不可能だった矢の硬さを保ちながら、矢の重さ(m)を極端に軽くすることで、矢のスピード(v)を極端に速くしたのです。逆転の発想を可能にしました。

だから1インチ程度断面投影面積が増えても、「カーボンアロー」時代では問題はありません。ところが、カーボンアローは、細い矢が速く、低く飛ぶから風の影響を受けないと思っているアーチャーが多くいます。しかし、正確には「風に打ち勝つ力」が圧倒的に強くなったのです。

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亀井 孝のアーチェリーノート 貧しいアーチャーです。点数はお金で買えませんが、もしこの記事があなたのアーチェリーに幸運をもたらすと思われたら、チップをお送りください。 きっとあなたのアーチェリー人生は、素敵なものとなるでしょう。