ノックはしてね!
「ポリカ」はご存じでしょうか? カーボンやケブラーは知っていても、ポリカは、なじみが薄いかもしれません。ガレージの屋根や機動隊の盾、象が踏んでも潰れない筆箱、そしてヤマハのリムの差し込み部分に付いていた黒い樹脂の板で分かるでしょうか?
ポリカーボネート(英: polycarbonate)は、熱可塑性プラスチックの一種。化合物名字訳基準に則った呼称はポリカルボナート。ポリカ、PCと省略されることもある。また、アクリル樹脂などと共に有機ガラスとも呼ばれる。ドイツのバイエル社が開発した。
利点
透明性・耐衝撃性・耐熱性・難燃性・寸法安定性などにおいて、高い物性を示す。耐衝撃性は一般的なガラスの250倍以上といわれる。
エンジニアリングプラスチックの中でも平均して高い物性を示す樹脂であり、かつ透明性をもつために光学用途にも使用でき、その物性に比べて安価であり、航空機・自動車など輸送機器、電気・電子光学・医療機器、防弾ガラスの材料などに広く用いられている。機械的強度も優れているので力のかかるプラスチックねじで最も多く使われている材料である。
言われてみれば、最近はそこらじゅうで使われているのですが、アーチェリーの世界で一番使っているのは、というと。
ドイツの「Beiter社」です。特にノックが高精度、高品質で有名ですが、Beiterのほぼすべての製品の樹脂には、この「ポリカーボネート」が使われています。

決して安くはないかもしれませんが、それは「素材」だけでなく、それを成形する「金型」も重要で高価だからです。
Beiter のホームページを見れば分かりますが、Beiterはもともと医療製品をはじめとした樹脂製のパーツを作る会社として、1968年にスタートしています。それが1986年ころから、アーチェリーの世界に進出してきました。
個人的にBeiterを知るようになったのは、この年にオーストリアで行われた世界フィールドの練習会場でワーナー・バイターおじさん(後で社長と知りました)が、ノックとそれ用のストリングに付けるノッキングポイントなるパーツを配り歩いていたからです。袋いっぱいもらって帰った記憶があります。多分バイターのアーチェリー用品の中でも一番最初の製品は「ノック」だと思います。

ポリカは、防弾ガラスや歯車、ネジなどにも使われる素材です。プラスチックの中では最高の耐衝撃性を持ち機械的強度に優れ、高温低温にも強く、変形しにくく炎天下でも十分対応し、加工時の寸法の安定性も抜群です。
もちろんその特長を生かすには、精度の高い精密金型が必要になります。そこでBeiterにしかない「インアウトノック」や「ピンアウトノック」といった、独自の形状の複雑さを見れば分かるように、単純な割り型では作れないことは一目瞭然です。

そんな精密金型に加えての、ポリカーボネートです。では、他社のインノックやアウトノックは何でできているか、です。もちろんポリカを使っているところも多いのでしょうが、某国の廉価な製品では、アクリルなどの一般的な樹脂が使われているものもあります。
そこで聞いてみました。世の中には「ポリカーボネート樹脂技術研究会」なる公式の機関があるのです。
「>プラスチック材の種類の判別は、ナチュラル品(着色、他材料のブレンド、可塑剤等の何ら添加も強化もされれていない)であれば、赤外線スペクトル等を使用すれば比較的簡単に判別できます。
しかし、用途、硬さ、燃焼の様子等見ただけ、触ったりする簡単な方法で見分けることはできません。」
との丁寧な回答をいただきました。素人がノックを見ただけで、素材を判別することは不可能なようです。
そこでついでに、もうひとつ聞いてみました。ポリカは「透明性」に優れるという特徴も持ち合わせているのですが、バイターを含め「不透明」な色のノックがあります。そしてみなさんも経験的に感じていると思いますが、透明より不透明の素材の方が柔らかく感じていませんか。そこで、素材の着色やそれに伴う変化を聞いてみました。
「>ポリカーボネートのナチュラル品は、無色透明なプラスチックです。
よって、染料による透明な着色や顔料による不透明な着色が自由にできます。また、ガラス繊維による強化やABS等、他のプラスチックとブレンドしたプラスチックアロイ等も作られています。
もちろん着色、強化やアロイも加工技術が必要です。強度や耐久性等の物性や性能は、着色材の種類や量、ブレンドする材料の種類と量、それに技術により異なります。」 とのことで、バイターの言うとおり不透明な色のポリカーボネートもあるわけですが、物性は少し異なるのかもしれません。

Beiterノックの値段の高い理由が分かったところで、いくら精度の高いノックでも、真っ直ぐに取り付けられていないと性能は発揮できません。今のアーチャーは差し込めば、すべて真っ直ぐと思っているようですが、矢取りの時には点検することを忘れないでください。
最後に、ノックの使用条件からすれば問題ない範囲かとは思いますが、ポリカーボネートには、こんな欠点もあります。
欠点
・薬品耐久性はあまりよいとは言えない。特にアルカリ剤、溶剤では劣化する。接着剤などの使用ができない。
・エステル結合を持つため、高温高湿度の環境下では加水分解する。
・紫外線で劣化する。例えば自動車の前照灯は年月とともに紫外線の影響でポリカーボネートレンズの透過率が落ち照度が低下して保安基準を満たさなくなることがある。放置すれば車検不合格となり自動車が使用できなくなる。
・引張強度を超える力をかけると、白化して透明度が著しく低下する。
・表面の硬度は高くなく、鉛筆の硬度でHB程度。硬いブラシによる清掃などで容易に傷が付くが、この弱点を解決した加工をほどこした製品もある。
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貧しいアーチャーです。点数はお金で買えませんが、もしこの記事があなたのアーチェリーに幸運をもたらすと思われたら、チップをお送りください。
きっとあなたのアーチェリー人生は、素敵なものとなるでしょう。
