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選手にとって最高の栄誉

2023年12月4日、父ダグ・イーストン(左)の後を継ぎ、EASTON社2代目オーナーを務めたジム・イーストン(右)が亡くなりました。1989年から2005年まで FITA/WA(世界アーチェリー連盟)の会長を務め、1994年に国際オリンピック委員会の委員となり、2002年から2006年まで副会長を務め、2015年に名誉委員となり、「マッチプレー方式」の競技導入や連盟初の専門部署の設立など、アーチェリーの大幅な近代化を長年にわたり牽引しました。
そんなジム・イーストンを「businessman」や「philanthropist」と呼ぶことはあっても、ダグ・イーストンに対してと同じように敬愛の念を込めて「archer」や「 legend」と呼ぶことはありません。

Earl Hoyt Jr.、Fred Bear、Bob Lee、Pete Shepley、Wilson Brothers、彼らはすべて偉大なアーチャーです。しかし、ジム・イーストンは違います。だからこそ、彼はビジネスでは成功しても、大きな過ちを犯したのです。
彼は「世界選手権」(World Championships)と「オリンピック」(Olympic Games)を同じ土俵に上げてしまったのです。これらの2つのタイトルを同じ方式、同じルールで競わせました。もし彼がアーチャーであり、選手であったなら、世界選手権とオリンピックの違いを知っていたはずです。

世界の舞台に立つ選手にしかわからないでしょうが、「世界選手権」は1931年から行われている、優勝者は唯一「世界チャンピオン」と呼ばれ、最高の栄誉が与えられる大会です。それに対し、「オリンピック」は1972年に52年ぶりに復活したゲームであり、ゴールドメダリストとは、オリンピックの優勝者のことです。ちなみに、「ワールドカップ」は2006年から賞金付きで始まったオンライン放送を前提としたゲームで、優勝者が受け取るのは腕時計です。

1963年 第1回 世界選手権
は、ポーランドの一部で現在はウクライナのリヴィウで行われました。
そしてこの時、FITA(世界アーチェリー連盟)も設立されたのです。

サッカー、テニス、柔道、陸上、多くの競技が世界選手権とオリンピックでは、年齢や人数、時間などで違いを設けています。わかりやすく言えば、オリンピックはどんどん時間が短縮され、すべての選手にチャンスが与えられ誰が勝つかわからない、観ていてドキドキワクワクハラハラするゲームなの
に対し、世界選手権は真の世界一を決める大会です。オリンピックより世界選手権の方が格が上です。
部外者として競技を観る、楽しむのであれば「オリンピック」は最高の娯楽です。だからこそ、今のアーチェリー競技も他の競技にならって今風のルールへと変遷を遂げてきました。たった9射、3射1分半。観ておもしろい、絵になる、音になる、誰が勝つかわからない。そして金になる競技形態です。しかし、競技を行う当事者として、そのことがイコール最高のステイタスであるかといえば、そうではありません。オリンピックが、観る側のルールであれば、世界選手権はする側のルールであるべきです。


表が黒、裏が白のコインがあるとして、コイン投げをします。すると、表が出る確率は1/2、裏が出る確率も1/2です。
このコインを1枚投げ、表か裏かを記録する実験を1000回くり返したそうです。

最初の10回は、裏・表・裏・裏・裏・表・裏・裏・表・裏となり、表の割合は3/10、裏の割合は7/10となり、本来の確率(1/2)からかなりずれました。
では、最初の100回の結果はどうか。表が45回、裏が55回となり、確率1/2に近くなったことがわかります。そして1000回の結果は、表が508回、裏が492回で、割合を百分率であらわせば、表が50.8%、裏が49.2%と、本来の確率(50%)へとさらに近づいています。
このように、ある偶然のできごとをくり返した場合、その結果は本来の確率に近づいていき、これを「大数(たいすう)の法則」といい、確率論の基本的な法則だそうです。コインを無限回数投げれば、表と裏の確率はちょうど50%ずつになります。

また、この実験では、表か裏のどちらかが意外なほどに連続して出ることもあったようです。例えば43回目から50回目までは、裏が連続して8回出ました。744回から752回目にいたっては、表が9回連続出ました。
このとき、ある人は「9回もつづけて表が出たのだから、次は表は出にくいだろう」と考えるかもしれないし、別の人は「次も表が出やすいだろう」と考えるかもしれません。しかし、これらの考えはいずれも誤りで、表と裏の確率が1/2ずつのコインであれば、過去の結果に関係なく、いつでも1/2の確率で表(あるいは裏)が出る。コインやサイコロでは、過去の結果は未来に影響しないのです。
このように確率というものは、短絡的にみる(コインを投げる回数が少ない)と、本来の確率からかけはなれた結果が出て「あれる」ことがしばしばあようです。しかし長期的にみる(コインを投げる回数が多い)と、本来の確率に近い「落ち着いた」結果が出るため、確率論の恩恵を受けるには長期的な視点が必要ということになります。

2009年8月号

どう思いますか? アーチェリー競技がサイコロやコイン投げと同じとはいいません。ましてや、アーチェリー競技は「当たった」と「外れた」の1/2の確率でもなければ、みんな10点を狙って10点に当てようとしているのですから、「まぐれ」や「確率」で単純に論ぜられないことは知っています。 

しかし、1987年から始まった、それまでのシングルFITAやダブルFITAラウンドに代わって登場した「グランドFITA」「ニューオリンピック」ラウンド、そして現在にいたる「マッチ形式」の流れは、「あれる」ことを競技に持ち込んだことは事実です。「288射」と「9射」なら、9射が「あれる」のは当然です。ましてや3射1分30秒では、引き戻しはできません。
的中精度と技術を競う意味において「真の世界一」を決めるルールは、限りなく無限回数に近づくべきであり、それが「4日間288本」の「世界選手権」だったはずです。そして選手が一番欲しいのは「世界チャンピオン」という「世界一」の称号です。

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亀井 孝のアーチェリーノート 貧しいアーチャーです。点数はお金で買えませんが、もしこの記事があなたのアーチェリーに幸運をもたらすと思われたら、チップをお送りください。 きっとあなたのアーチェリー人生は、素敵なものとなるでしょう。

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