見出し画像

ちょっとアモな話

我々の競技は「70m」「18m」といった距離で行われ、的のサイズは「122cm」「40cm」です。
それに対して、使う弓の長さは「66inch」や「70inch」。矢の長さも「inch」、ポイントは「grain」、ハネの長さも「inch」です。
おかしいと思ったことはありませんか?

アーチェリーは、イングランド発祥の貴族のスポーツです。ロビンフッドは貴族ではありませんが、ノッティンガムのシャーウッドの森に暮らしていました。そんなイギリスでは「メートル法」が使われています。
それに対して、メートル法は使わず、唯一「ヤード・ポンド法」を採用しているといってもよい国が「アメリカ」です。
 「アーチェリー」は競技としては、イギリス。そしてヨーロッパを中心に発展したのですが、それと並行して道具はアメリカを中心に製造、開発が行われてきました。
 
「AMO」というのを、聞いたことがありますか。最近はあまり見なくなりましたが、ワンピースボウや昔の弓には、68”-37#AMOというように書かれていました。

「AMO」は、Archery Manufacturers Organization の頭文字を取ったもので、アメリカのアーチェリー用品メーカーは、必ず入っていると思っても間違いのない、「アーチェリー生産者組合」のような組織です。AMOの前身に1947年に設立された「AMADA」がありますが、1965年にAMOになり、2002年には現在の「ATA」へと改組されています。

何をするところかというと、アーチャーに関係する一番大事な仕事が「AMO Standards」と呼ばれる統一規格の策定です。とはいっても、普通の人がJIS やISO といったネジ規格を知らなくても、オーブントースターの掃除ができるのと同じように、それを知らなくてもアーチェリーは楽しめます。
最初に決められたのがストリングの長さだったようですが、オーブントースターの掃除を頼まれるオジサンアーチャーに関係するのは、実質ポンド数やスパインの測り方、 F-X曲線の読み方くらいでしょうか。スタビライザーのネジ寸法やエクステンションベースのネジ穴間隔は知らなくても掃除はできそうです。

そんな中でAMO が現場のアーチャーに最も貢献したスタンダードは、間違いなくリムに書かれている「表示ポンド」でしょう。このスタンダードは、1960年代からあり、最初は「弓を引き、ハンドルの的側の端からノックとストリング接触部分までの長さが28インチ」になった時のポンド数を弓に表示するようになっていました。
しかし、ハンドルが木製から金属に変わり、さまざまな形状のハンドルが登場するに至っては、この規格ではスタンダードであり得ないことは明らかです。そこで近年、スタンダードはピボットポイントから26インチ引いた位置へと変更され、その後26 1/4インチになっています。
このように「スタンダード」は、多くのメーカーが参加することで、規格が統一され、お蔭でアーチャーは互換性という名の元に、不自由のないアーチェリー生活が送れるというわけです。
そして、2003年から「AMO」はメーカーだけではなく、販売ディーラーなども包括する「ATA」(Archery Trade Association)という、より大きな組織へと改組され、活動の内容も規格の統一だけでなく、アーチェリーの普及やレベルアップ活動など広範囲なものになっています。

ところで、今のアーチャーが「表示ポンド」以上に恩恵を受ける統一規格があります。それが「International Limb Fitting」と呼ばれる、読んで字のごとくの、頭文字をとって「ILF」と呼ばれる、リムの互換性にかかわる規格です。

皆さんの使っているハンドルとリムは、たぶん他人のどのハンドルとリムに組み合わせても、そのまま使用できるはずです。それは同じメーカー同士だけでなく、異なるメーカーのハンドルやリムとであっても、組み立てられます。そんな便利で、こんなに広く使われている互換性ですが、「ILF」は「ATA/AMO」のスタンダードには含まれていないのです。これは接合部分の長さが異なる「Formula」と呼ばれる接合方式も同じです。
その理由は、これらが元々Hoytの特許であり、Hoytはそれをオープンにし、誰もが使えるようにしてきたという背景があるからです。

そのため、異なるメーカーのハンドルとリムが組み合わされることが可能になることで、表示ポンドの基準位置となるスタンダードも示せないことになっています。また、同一メーカーのハンドルとリムを組み合わせた場合であっても、メーカーが指示しない限り、表示ポンドがどの位置で与えられたものかは分かりません。

昔、YAMAHA もAMO に参加していましたが、海外への輸出仕様はインチのISO規格ネジを使っていましたが、国内モデルはJIS規格のミリのネジを使っていました。今の5/16-24インチネジが、国内では「M8ピッチ1」です。
このように、すべてが統一されていたわけではありません。ましてや、現在でもアメリカ以外の中小のメーカーであれば、ATAに入っていないブランドは多くあります。
縁の下の力持ち的存在で、アーチェリーの基礎部分を支えるAMO/ATA ですが、基礎部分ゆえに、アーチャーにはわからないことが多くあるのです。

いいなと思ったら応援しよう!

亀井 孝のアーチェリーノート 貧しいアーチャーです。点数はお金で買えませんが、もしこの記事があなたのアーチェリーに幸運をもたらすと思われたら、チップをお送りください。 きっとあなたのアーチェリー人生は、素敵なものとなるでしょう。