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ちょっと「こうさ」の話

「公差」を知っていますか? 中国から飛んでくる砂ではありません。中国から運ばれてくる、安いハンドルのことです。
ハンドルに穴を開けるにしても、棒を作るにしても、材質や形状は問わず、物を加工する時、必ず図面に記載される重要な数値があります。しかしその完成品を見るユーザーにとっては、ほとんど知らされない情報でもあります。

例えば、ILF規格のハンドルのリムボルトはどうでしょう。直径約9.5mmですが、このステンレスの棒を、完璧に9.5mmに削り出すのは結構難しい作業です。
機械の精度の問題もあれば、それを扱う人間の熟練度の問題もあります。そして出来あがった物全部をOKとするのか、その中から良い物を選び出すのかの問題もあります。いくらコストを掛けてもいいのであれば、できるでしょうが、値段とのバランスも重要な問題です。

そのため、メーカーが異なるハンドルとリムを組み立てる時に、リムボルトに入るU溝が、きつかったり、逆にゴソゴソの場合があります。
品質の誤差は別にして、仮に公差「±0.25mm」のリムボルトだとします。そして出来あがったボルト幅が「-0.25mm」で、リムの溝幅が「+0.25mm」であったなら、リムの根元に「0.5mm」もの隙間ができることになります。逆の誤差であれば、リムは入りません。
このように、どのメーカーも製作段階では、図面には「±0.5mm」や「-0.3mm+0.5mm」といった、この範囲までなら許されるという指定がされます。これが「公差」です。
しかし、ILF規格自体、特許がオープンになった結果であり、リムボルトやU溝の寸法を、ATA(AMO)では、細かく規定していないようです。そのため、各メーカーは「互換性」の名の下、勝手にその寸法を測り、それらしいモノを作っているにすぎません。公差のとり方が、メーカーによってまちまちなのです。
そして、9.5mmのステンレス棒と指示しても、ぴったり9.5mmの棒ができあがることは稀で、もし公差を「±0」で指定するなら、製造業者は無理と答えるか、とんでもない価格になることを覚悟しなければなりません。
厳密な規格がない以上、どのメーカーも他社との組み合わせにおいて、そこまでの保障はしていないのが現実です。文句を言えば、同じメーカーのハンドルとリムを使うように言われるか、「相性」の問題と片づけられるでしょう。

ところが、これがハンドルとリムではなく、シャフトとノックやノックピンの場合は、少し事情が違います。シャフト側の寸法が、ほぼ正確に決まってくるからです。オールカーボンシャフトの内径やアルミコアシャフトの内径はスパインによっては異なりますが、同じスパインのシャフトなら同じ内径になります。
このような場合は、ポイントやノックピンを完璧な公差「±0」で作るのかというと、違います。それではコストが高くなり過ぎます。この場合は、公差「±0.25mm」ではなく、「-0.50mm」のように、キチキチで入らないポイントやノックピンが混ざるのではなく、ゴソゴソでもすべてシャフトに入るポイントやノックピンを作るのです。

公差(こうさ、tolerance)とは、機械工学に代表される工学において許容される差のこと。基準値と許容される範囲の最大値および最小値の差を許容差、最大値と最小値の差を公差と呼ぶ。

寸法や特性や条件は、装置やプロセスの機能に大きく影響することなく一定の実用的範囲内で変化する可能性がある。性能を損なわずに固有の変動性と不完全さに対する妥当な余裕を許すべく、公差が指定される。
公差は、標準値への係数やパーセンテージ、標準値からの最大偏差、許容される値の明示的範囲などで指定され、標準規格書などに記される。あるいは、標準値の数値的正確さで暗に示される場合もある(有効数字)。公差は対称的に 40±0.1 などとされることもあるが、非対称に 40+0.2/−0.1 などとされることもある。
機能を正しく保つには、可能な範囲で最大の公差を指定することが望ましい。「狭い」あるいは「きつい」公差では達成が難しく、コストがかかる場合がある。逆に「大きい」あるいは「ゆるい」公差差では、装置などの運用に問題を生じる可能性がある。  

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そこで、EASTON社のACE用「ノックピン」を測定してみました。といっても、個人で計ったのではなく、新潟県燕市のポイントやパーツを作ってもらう金属加工の専門家にお願いしました。
その前に、例えばこのような小さな金属部品を作るのに、公差とは少し意味合いが違いますが、どれくらいの「誤差」があると思いますか? バラツキなんかない、と思っていますか。

◇測定機器 ミツトヨMDC‐25J
◇測定状態 常温
◇ロットナンバー 「75950」「70182」1パック12個

そこで、まずはノック側とシャフト側の、ノック、シャフトに差し込む円柱部分の直径のデータです。
EASTONがこの製品の図面上の寸法(基準値)をどこに設定し、公差(許容差)をどう設定しているのかは不明です。しかし結果として、この製品の公差(=最大値(青字)-最小値(赤字))は「75950」で、シャフト側「0.017mm」ノック側「0.020mmミリ」、「70182」ではシャフト側「0.018mm」ノック側「0.013mm」です。

この数値がEASTONの狙い通りのものか、加工図面に対して、この寸法値が範囲内か範囲外かは分かりませんが、作る側の専門家の意見は、「寸法公差として考えた場合、この数値は決して悪くない数値です。NC機械の初動寸法値と安定寸法値の差は±0.02くらいはありますから。うちのポイントは±0.01として製作しています。」というものでした。
ということで、通常これらの製品には「コンマゼロ2」(0.020mm)程度のバラツキが存在するのは普通です。ただし、相手がある場合(はめあい公差)やより以上の精度を求められる部分についてはこの限りでは、もちろんありません。例えば「±0.005mm」で製品を作ることもできますが、作る側にすると削るというより砥石で研ぐレベルの精度管理であり、当然コストは跳ね上がります。それが妥当な要求かは、また別の話です。

最後に「重さ」を見てください。パッケージには1個「8Grains」と書かれていますが、今回、「グレイン」の精密秤がなかったので、小数点以下を切り捨てた数値になっていますが、お分かりのように寸法誤差と重さの誤差は一致するとは限っていません。Grainは穀物からきた単位で、1グレインは麦1粒ほどで「0.06479891グラム」です。1円玉=1グラム=約15グレインです。PinNockは2グレイン。Gnockは7グレイン、ArizonaShield2.0で1枚3.9グレイン程度です。
そこに1グレインの公差(誤差)を認めるか、認めないかはアーチャーの判断です。完璧を求めることも必要です。しかし、1グレインや2グレインは製品の公差だけでなく、接着剤の量だけでも変わる範囲です。

10グレインでも、的面で許容できる射ち方のアーチャーはいっぱいいます。射ち方にも「こうさ」があることをお忘れなく。あなたの許容値はどれくらいですか。

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亀井 孝のアーチェリーノート 貧しいアーチャーです。点数はお金で買えませんが、もしこの記事があなたのアーチェリーに幸運をもたらすと思われたら、チップをお送りください。 きっとあなたのアーチェリー人生は、素敵なものとなるでしょう。