「インドア競技」必勝の方程式
昔、インドアの試合に参加する時は、多少の違いがあるにせよ、弓は通常使っている68インチを70インチのロングボウに替え、その時の状態にもよりますが、シーズン中より2~3ポンド弱いリムを使用しました。ストリングも太目のものを使い、ストリングハイトも高くする。スタビライザーのセッティングも長めのロッドに替え、サイトもロングエクステンションを使ったりします。そして、矢は必ずアルミアローを使い、ハネは2回りほど大きいビッグベイン、それも必ず鳥羽根を使います。これらはすべてインドア用のチューニングです。

インドア競技での絶対的な特徴が2つあります。ひとつは「風が吹かない、雨が降らない」という外的条件の変化の無さ、安定です。そしてもうひとつは、「距離が短い」。18mしかないという、矢の飛翔時間の短さです。この2つの特徴はアウトドアに比べてアーチャーに与える心理的プレッシャーを圧倒的に軽減するばかりか、そのチューニングにおいて決定的な違いを生み出します。
風が吹かない、距離が短いとなると弓は無風の中で、たった18mだけ矢を飛ばせば充分なのです。矢のスピードや弾道の高さはここではまったく無視することができます。この時、弓と矢に求められる、もっとも重要かつ不可欠な要素は「安定」であり、それは18mの中で満たされれば良いのです。この時の「安定」は、
①発射された矢の飛翔過程における安定と、
②その矢が発射時の過程において受けた、弓と矢の安定
に大きく分けられます。
①については、ここでもいくつかの議論があるものの、一般的に矢の安定は「矢の運動量=m(矢の質量)×v(スピード)」の数式で表わされます。具体的には、カーボンアローが出現するまでは、アーチャーはmを大きくすることで安定を求め、高めてきました。アルミアローの外径や肉厚を大きくし、より重い矢を使うことで安定した飛翔と的中性を得ようとしたのです。しかし、この場合アーチャーの引けるドローウエイトに限界があるため、mの増加にも限りがあり、vを犠牲にすることでもありました。このことを無視して極端に重い矢を使えば、長距離で矢を飛ばすこと自体に無理が生じてしまいます。
ところが、ここで登場したのがカーボアローです。この矢がアーチェリー史上にもっとも変革を及ぼした理由は、それまでのアルミアローとはまったく逆のコンセプトを持ち、それを実現できる素材だったからです。カーボンアローは、mではなくvを大幅に増大させることで、mの減少をもカバーしてしまったのです。それほどカーボンはアルミに比べ、強靭で反発力を持ち、そして軽い素材でした。
そのため、カーボンアローはアルミに比べ、極端に細くなりました。このことが開発段階では予想もしなかった、「断面荷重の増大」という、オマケをもたらしたのです。断面荷重とは投影断面積あたりの矢の質量のことで、カーボンアローは面積当たりの重さが重くなります。
これらの条件によってカーボンアローは、空気抵抗に打ち勝つ力が強く、風や雨の外的影響も受け難くなり、軽く・速く・細い と3拍子そろったものとなったのです。これが、とりあえずはアウトドアにおいて、カーボンアローがアルミアローを駆逐した理由です。ただし、細いことは的面においては有利とは決して言えません。

しかし、インドアにおいては、たった18mで無風なら、前述のアウトドアのような風や空気の抵抗に打ち勝つ「弾道の安定」より、矢の飛行姿勢の制御に関する「空力の安定」と矢の振動現象に起因する「パラドックスの安定」を重視した方が絶対有利になります。
具体的方法としては、やはり「太く・重く・復元力の大きい矢」の使用です。この条件をすべて満たすには、現在のカーボンアローでは不可能であり、アルミアローの使用がもっとも適した選択といえるでしょう。
アルミの太く、重いシャフトに、重めのポイントを取り付け、少しトップヘビーにする。そして鳥羽根のような、柔らかく修正力のある材質のハネを使います。鳥羽根なら、レストにヒットすることがあってもトラブルを矢に伝え難いため、背が高い大きい羽根が使えます。そして、空気抵抗の大きいハネに、ピッチをきつくするなどして、矢の回転数も増すようにします。こうすれば、矢の蛇行を最短、最小に食い止め、安定した飛翔を確保してやることができます。
ただし、インドア競技において、カーボンアローのメリットを考えるなら、唯一アーチャーズパラドックスの復元性の速さがあるかもしれません。シャフトだけを見れば、蛇行運動が早く消えるのです。しかし、通常のカーボンアローのような細いシャフトでは、的面でのオンラインのタッチが圧倒的に減少します。アルミアローなら確実にオンラインにタッチし内側に入ってくるのが、カーボンアローではラインに触りません。インドア競技では、たった1点が大きく順位を変えます。

②の発射時の安定はどうでしょう。インドア競技は矢数も含め、アーチャーは不必要に重く強い弓を使い、身体に余分な負担をかける必要はなく、余裕を持った安定したシューティングを目指すべきです。そして18m以上飛ばす必要がなければ、ボウレングスも長い物が使えます。これはエイミング時の薬指や人差し指の負担を軽くし、安定したエイミングとシューティングを可能にするばかりか、弓本体もバタツキが減り安定します。
そしてストリングを太く、ストリングハイトを高くすることは、リリース時のストリングの復元性の安定とノックが速くストリングから離れることでの、アーチャーのミスの矢への伝達を減らします。また、無風によることでロングエクステンションの使用とスタビライザーの多様化が可能になり、より正確精密かつスムーズなエイミングとシューティングが実現します。
ただし近年、トップアーチャーにおいて一時期よりロングエクステンションの使用が減ったのは、マッチ形式の導入によるプレッシャーや緊張の高まりが増大し、これに対してのアーチャーの技能が未熟であることに起因しています。
このようにインドア競技がアウトドアのそれとは、まったく異なることは理解できると思います。道具においてインドアで当たるからといって、アウトドアでも当たるとは限らないし、アウトドアで当たるからインドアでも当たるとは限りません。
では最後にインドアの試合に、平気でアウトドアのカーボンアローを射つアーチャーに聞きます。あなたは60射の試合の中で、ジャッジを呼ぶ、呼ばないは別にして、シャフトがオンラインかどうかの判断に迷ったり、顔を近づけて確認した矢が何本ありましたか? その時、あなたの直径4mmのカーボンシャフトが5mm、半径で2.5mm太かったとしたら、何本の矢がオンラインでタッチしていたと想像できますか?

Darrell Pace
LongBow/BigAlumiShaft/BigSpin/LongExtension
この答えは、高得点をマークすればするほどに増えるはずです。30射で280点くらいを射つ試合においては、確実に2本や3本はあるはずです。280点を記録する試合で、5点スコアが上がっていれば565点。順位が変わっていたのではありませんか。600点なら、パーフェクトを逃したでしょう。
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貧しいアーチャーです。点数はお金で買えませんが、もしこの記事があなたのアーチェリーに幸運をもたらすと思われたら、チップをお送りください。
きっとあなたのアーチェリー人生は、素敵なものとなるでしょう。
