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【格物致知#06】 DC扇風機はなぜ静かで省エネなのか?

AC扇風機、DC扇風機

夏になると家電量販店にはたくさんの扇風機が並びます。
その中で最近よく見かけるのが

「DCモーター搭載」、「省エネ」、「超微風」

という言葉です。
価格を見ると、従来型のAC扇風機より少し高価です。
では、なぜDC扇風機は省エネなのでしょうか。
単純に「DCだから省エネ」という説明を見かけますが、
それだけでは本質を説明できません。
実はその背景には、現代社会を支えるパワー半導体の進歩があります。
今回は身近な扇風機から、その奥にある技術を探ってみます。




①AC扇風機はどうやって回っているのか

工場の大型モーターでは三相交流を使います。
三相交流では3本の電流が120度ずつ位相をずらして流れるため、
自然に回転磁界が発生します。
この回転磁界がモーターを回しています。

三相交流は位相のズレた電流が回転磁界を作ります。

しかし家庭のコンセントは単相100Vです。
単相交流は一本の波しかありません。
そのままでは三相交流のような綺麗な回転磁界を作れません。
そこで扇風機ではコンデンサを利用します。


AC扇風機の模式図

コンデンサによって電流のタイミングをずらし、
擬似的な2相交流を作り出します。
これによって回転磁界を発生させ、モーターを回しています。
非常に賢い仕組みですが、
同期速度が電源周波数で固定されるため
回転数制御はあまり得意ではありません。


②昔の扇風機はなぜ3段階しかなかったのか

昔の扇風機を思い出してください。
風量は 「強・中・弱」 程度しかありませんでした。
これは誘導モーターの回転数を細かく変えることが難しかったためです。
巻線を切り替えたり、コンデンサを切り替えたりして制御していました。

そのため
・超微風が作れない
・制御範囲が狭い
という特徴がありました。


③DC扇風機の正体

ここで登場するのがブラシレスDCモーターです。
しかし実は、
DC扇風機」はそのまま「直流」で回っているわけではありません。
内部ではこんなことが起きています。


DC扇風機の模式図

つまり、
 交流 ⇒ 直流 ⇒ 三相交流
と変換しているのです。

電子回路が
  A相 ⇒ B相 ⇒ C相
と順番に電流を流し、回転磁界を作ります。
永久磁石がそれを追いかけて回転する仕組みです。

名前はDC扇風機ですが、
内部では高性能な三相モーター制御を行っています。


④ブラシ付きDCモーター

昔のおもちゃに使われていたDCモーター、
分解したことのある人も多いと思います。
そこには ブラシ、整流子 がありました。
回転に合わせて機械的に電流を切り替えていたのです。

DCモーター模式図

しかし
・摩耗する
・火花が出る
・効率が悪い
という問題がありました。

そこで現代では、ブラシの代わりに電子回路を使います。


⑤パワー半導体が革命を起こした

ここで主役となるのがMOSFETです。

MOSFETは
「超高速スイッチ」
と考えると分かりやすいでしょう。
1秒間に数万回から数十万回もON・OFFできます。
だから電子回路で自由自在に交流を作れるのです。


⑥なぜ省エネなのか

ここで重要なことがあります。
ブラシレスDCモーターもコイルに電流を流す以上、
発熱そのものは避けられません。

しかし、
回転子が永久磁石であり、電流が流れないため、ほぼ発熱しません
回転子は冷却しにくいため、
回転子で発熱しないことは大きな利点です。

さらに、
周波数制御により必要な回転数だけを作り出せるため、
無駄な電力消費も減ります。
これがDC扇風機が省エネな理由です。


⑦超微風が作れる理由

インバータ回路は、
モーターに与える三相交流の周波数を自由に変えられます。

例えば
・1200rpm
・800rpm
・300rpm
・100rpm
といった細かな制御が可能です。

そのため、
昔の扇風機では難しかった「そよ風」のような運転ができます。

そして必要以上に回さないため、消費電力も下がります。


⑧扇風機からその先へ

実はここまでの話は扇風機だけの話ではありません。

同じ技術が
・エアコン
・ドローン
・電気自動車
・産業用ロボット
・太陽光発電
・蓄電池
・HVDC(高圧直流送電)
にも使われています。

共通しているのは、
パワー半導体によって電気を自在に変換している
ことです。


おわりに

DC扇風機が省エネなのは、単に「DCだから」ではありません。
パワー半導体とブラシレスDCモーターによって、
交流100Vから最適な三相交流を作り出し、
必要な回転数だけを効率よく実現しているからです。

店頭で見かける「DCモーター搭載」の文字。
その裏には、EVや高圧直流送電にもつながる
現代の電力制御技術が隠れています。
身近な扇風機を観察すると、
そこから社会を支える技術の本質が見えてくるのです。

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