日本に拳銃が認可されたら…弱者に渡された審判
日本において、殺人、暴力、性犯罪、いじめ、虐待、パワハラといった犯罪がなくなることはなかった。
国が国民を守りきれないことが調査で明らかになり、政府はある極秘の実験を開始した。
映画館のような場所に集められたのは、いわゆる「社会的弱者」とされる20名。
そこで提示されたルールは異様なものだった。
・ 各自に拳銃を貸与する。
・ 期間は3週間。
・ 期間内であれば、1人まで殺害しても罪には問われない。
・ このルールを口外してはならない。
この実験の結果次第で、日本は「自分の身は自分で守る」ことを前提とした拳銃認可へと踏み切るという。
1. 由香子
拳銃を渡された由香子の震えは止まらなかった。
「私が人を殺す? 罪にならないって言われても……」
意味がわからない。ドッキリか、テレビの企画だろうか。
映画館を見渡すと、確かにカメラがある。
実験中なら記録はするだろうが、本物だとは信じられない。
「使わずに3週間過ごして、そのまま返そう。絶対に騙されない。危ないことには関わらないのが一番だ」
自分に言い聞かせた。
そもそも「弱者」という括りが癪(しゃく)だった。
「私の何を知っているの? 適当に選んだだけでしょ。
私はいつも運が悪いだけ。
親だってそう。親ガチャなんて言葉は、私のためにあるようなものだわ」
学校に行っても居場所がないし、数少ない友達とも心の何処かで、同じにしないでと思って接していた。
小学校で金魚が死んだときも、掃除をしていた自分だけが責められた。
「由香子が餌あげてないからだーー」と言われたけど、みんなは餌をあげすぎていた。
生まれてすぐに両親は離婚し、母一人に育てられたが、教育も食事も満足なものではなかった。
高校を中退し、今はバイトと彼氏の家を行き来する毎日。
確かに道は外したかもしれないが、それでも自分が「弱者」だと決めつけられるのは納得がいかなかった。
家に帰ると、酔った母親が絡んできた。
「今月ピンチなの、お金入れて」
「また?」
「学校辞めた分際で何言ってるんだよ」
母親の言葉に抗えず、由香子は財布の現金をすべて渡した。
「助かるわ」
「……うん」
またバイトを増やさなきゃいけない。
酔っ払いが相手の居酒屋の仕事は、大嫌いだった。
「酔ってれば何でも許されると思ってる奴、全員消えればいいのに」
大した時給でもないのに、客は叫び、笑い、理不尽な要求を突きつけてくる。
「レモンサワーまだかよ!」
「今すぐ持っていきます」
「あーーもういいわ」
「えっ!はい」
「はぁ?注文したのに遅いから、もういいって、断ってるの」
「…はい」
「まだ言わないとわからない??」
店長が慌てて謝罪し、無料でレモンサワーを提供した。
自分だけが悪いように扱われる。
理不尽で、納得がいかない。
由香子は逃げるように彼氏の隆二の家へ向かった。
だが、隆二は不在だった。
「家にあがって待ってなさい」
隆二の父親に言われ、部屋に入ったものの、背中にねっとりとした視線を感じて胸騒ぎがした。
隆二にLINEを送るが、既読がつかない。
ようやく返ってきたメッセージは
『俺、栃木で仕事だから今日中に帰れないぞ。どうした?』
というものだった。
「やばい」
家を飛び出そうとした瞬間、玄関の鍵が閉まる音がした。
隆二の父親が、荒い鼻息を漏らしながら近づいてくる。
由香子はカバンの中の拳銃を握った。
(撃つの? マジで? でも、このクソ野郎……)
隆二のたった一人の父親だという思いがよぎる。
だが、恐怖が勝った。
(拳銃見せればいいか。見せて脅すだけなら、、)
由香子は銃を構えた。
「えっ、本物か?お前みたいなヤツが本物のチャカなんて持ってるわけねぇだろ」
「本物だよ。近づいたら撃つぞ」
鋭い目つきに怯んだ隙に、由香子はなんとか外へ逃げ出した。
隆二になんて言おう。
言えないよ…こんなこと。
翌日、隆二から『親父から全部聞いた。本当にすまねぇ、許してくれ』と連絡が来た。
『会いたい』と送ったら、『家に来てほしい』と言われた。
由香子は彼の家へ向かった。
解決したのだと、ホッとしていた。
だが、チャイムを鳴らして扉を開けたのは、またしても父親だった。
なんで居るの?
お父さん居るのに家に呼んだの?
「さっきのLINE、俺が送ったんだよ」
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