オリジナル短編小説『偽りの仮面を被った歪な夫婦』
高橋一郎。
私はごくごく普通のサラリーマン。
そろそろマンションのローンが終わる。
特に趣味もなく、休みの日は仕事の疲れをとってゴロゴロしているだけだ。
嫁は、文子。
文子も正社員で働いている。
嫁も、趣味がなさそうだ。
ママ友とも縁が終わったのか家に居ることが多い。
2人の共通の好きな事は、珈琲を豆からひいて、飲むことだ。
50代の私たちだが、家にいる時はスマホを良く触ってる。
おっ!いいね♡5000突破ー!!
そう、SNSで『大学マスク』として私は人気者だ!
Xはフォロワー5893人。
インスタは4892人。
Tiktokは3014人。
タイガーマスクから、もじったつもりが、大学マスクって名前で大学生だと思われ、若者の代弁者にみたいになっている。
自分らの世代を否定して、フォロワーを獲得している。
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私は文子。
子育ても終わり、大切に育てた娘は、グレて家出したまま帰ってこず、結婚して子育てしている。
たまに帰ってきた時に孫と遊ぶのは楽しい!
私の楽しみは復讐だ。
『あの解き(とき)から独り』という名で、SNSをしている。
娘が産まれた時に、オムツ交換をしなかった旦那の悪口や、「そうめんでいいから、さっさと作れよ」といった、一つ一つの言葉を蘇らせ、SNSで共感を呼んでいる。
「今、手が離せないからオムツ替えて」と頼んでも、「汚いからやってよ、お前の方が上手いし、俺だと泣くから」と、投げ出したあの日。
義理の母の「なんだ、男の子じゃないのね」の一言。
全てを蘇らせる。
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ある夜のこと。
文子は珈琲を飲みながら、携帯をいじっていた。
『あの解きから独り』のアカウントで
「またパパがオムツ替えてくれない。
その後きれいにしたら、ミルクなんだから、ティファールでお湯沸かすだけとかなら簡単なのに、それすら出来ないの?
泣いている娘を抱っこしながら、お湯を沸かして、肌の温度にするのがとれほど大変か、本当に何もわかってない。
横でスマホ触ってる。それでも父親か」
とポストする。
一郎は『大学マスク』として
「今日は女の子と飲んでたら、隣のオヤジが『カオスって言ってるヤツ、カオスー』と爆笑してた。
えっ!何が面白いの?」
とポスト。
コメント欄には「老害!老害!」の文字。
文子が一郎に話しかけた。
「来週、ゆりが遊び来るから空けておいてー」
一郎「……おう」
文子「サトシも来るからね!」
一郎「……」
一郎はスマホに夢中だった。
話半分なのはいつものこと。
文子はお風呂へ行った。
一郎は『よしよし、今日もいいぞーー!今日はTiktokで、時短のむね肉の焼き方を撮るか!よーし!』と、はずんだ気持ちでいた。
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一郎は今日も、スマホをポチポチしていた。
「牛角行ったら、大きい声でさー「今はSNSの名前も知らない人の話なんて、将来的には何にもならないから、本名のFacebookにしろ」って言ってて
「私2025年、Facebook始めました」と、ハゲたメガネさんが言ってたよ。
お前もう未来ないだろ?
そして、今さら!?Facebook!?逆に作ってなかったの?
おっさんが牛角にいるって時点で、もうアカンのよ。
牛角+おっさん+Facebook+2025年=OUTなんよ」
と、ポスト。
ピコンピコンと鳴るスマホを見て、ニタニタが止まらない。
ルンルンで珈琲の豆をひく。
文子はベッドの上で、暗い顔でスマホをポチポチ。
「帝王切開の傷を見て「痛そう。えーー俺もう女として見れないかも」とか言いやがって。
誰の為の傷だよ?人間性疑うよ?」
とポスト。
『うちの旦那でも、そこまでは言わないよー』
『それは最低過ぎる』
『ソイツ浮気する、証拠撮っておきなー』
と、コメント欄が荒れた。
文子もニタニタしていた。
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娘のゆりが孫のタケシを連れてうちにきた。
ゆり「ただいまー」
タケシはもじもじしている。
ゆり「お邪魔します。でしょ?」
タケシ「おじゃまします」
文子「はい!よくいらっしゃいました」
ゆり「あれ、お父さんは?」
文子「奥にいるわよ」
一郎「おかえり!おっタケシ君、大きくなったんじゃないか!?」
タケシ「おじいちゃん、電車の写真見せてー」
文子とゆりは近況をお喋りしていた。
ゆり「最近どう?」
文子「まぁまぁね」
ゆり「休みの日とか何してるの?」
文子「何もしてないわよ」
ゆり「せっかくの夫婦時間なのに?」
文子「最近、お父さんはスマホばっかよ」
ゆり「へぇーお父さん、スマホで何してるんだろうね」
文子「ねー?」
ゆり「えっ、まさか不倫?」
文子「そんな度胸ないわよ」
ゆり「うちの元旦那なんて、育児ドピークの時に女作って、出ていったけどねー」
文子「まぁ男の人はね、子供が出来ても変わらないからね」
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文子は孫のタケシとお勉強していた。
一郎「ゆり、最近どうだ?」
ゆり「タケシも小学生になったし、仕事増やせてなんとかねー」
一郎「養育費きっちり貰ってるのか?」
ゆり「ちょっと、タケシいる時にやめてよ」
一郎「すまんすまん」
ゆり「お父さんってSNSやってる?」
一郎「まぁ見る専門だが、インストールはしてるぞ」
ゆり「私さ、最近この人好きでさー」
ゆりが出したのは、Xの大学マスクだった。
一郎「えっ!」
ゆり「この老害のネタが絶妙なとこ、ついてて面白いんだよねー」
一郎「おっそうなのか」
一郎は、にやついた。
ゆり「でも、お父さん達からしたら、老害って言葉、嫌だよねー」
一郎「私は部下を飲みに誘ったり、休みの日何してんだ?とか聞かないぞ」
ゆり「へぇーーしっかりした会社だねー」
一郎「意識の問題さ、なんでもアップデートしないとな」
ゆり「なんか意外過ぎるわ」
一郎「そうか?」
ゆり「でね、大学マスクさんさ、Xだと面白いの!
でもインスタ見るとね、センスないんだよね?だからオタクだと思ってて」
一郎「ん?何故だ?」
ゆり「えっ行く場所もだし、構図とか?」
一郎「インスタだけ見てわかるもんなのか」
ゆり「うん!インスタの為に、わざわざ女子会して、高いデザート食べに行くくらいだからー!
『私たちリア充です』ってさ!
『結婚してても女捨ててません』とかね」
一郎「色々難しいんだな」
その会話を、文子は孫と遊びながら聞いていた。
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文子はスマホを見ながら、声が漏れるくらい笑っていた。
ニタニタしながらコメントを打った。
『あの解きから独り』で
「もう悪い文化、うちら世代で変えていって、もっと生きやすい世界にしたいですね」
と『大学マスク』の投稿にコメントをした。
すると、大学マスクさんから返事が!!
「ホント、そうっすよね!1つ聞いてもいいですか?なんであの解きから独りさんって、あの解きなんですか??」
「この謎が全て解き明かされたら、きっと私はもう独りじゃなくなるなーと思って、願望でつけちゃった(ノ≧ڡ≦)☆」
「謎か!?気になりますね🤔💭」
「あっ謎って言うと大袈裟で💦元旦那に、ひどいこと…たくさんされて、🐯🐴的なー」
「ポスト読みました!ひどいパパさんですね!許せませんね!」
「でしょ🥺」
「あれ、この2人の絵文字、GGとBBみたい𐤔𐤔𐤔」とコメントが書かれていた。
2人は慌てて、スマホをポケットに入れた。
文子「あなた珈琲入れてくれる?」
一郎「いいよ!」
そして2人で談笑しながら、珈琲を飲んだ。
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『大学マスク』にDMが届いた。
『あの解きから独り』からだ。
「もし良かったら、DMで話、聞いてくれませんか?」
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