ひきこもりを脱出し就職して結婚した兄(完全版)
「兄は、他の人とは少し違うな」
子供心に、僕はそう感じていた。
おもちゃを絶対に貸してくれない。
見たいテレビは、何があっても最後まで見届ける。
寝る時の布団や、ぬいぐるみを置く位置まで完璧に決まっていないと気が済まない。
そんな兄にとって、集団生活はあまりに過酷な場所だったのかもしれない。
幼稚園では先生や友達と馴染めずに転園し、小学校に入ってからも、親が何度も学校に呼び出されては慌てていたのを覚えている。
校長室に閉じ込められたり、4階の教室から友達の教科書を投げてしまったり。
あるいは、友達にそそのかされて火災報知器を鳴らしたり、真冬にスプリンクラーのボタンを押してしまったり……。
学校での兄は、いわゆる「問題児」と言われていた。
5、6年生の頃からは、友達関係もどんどん上手くいかなくなっていったように記憶している。
■荒れる兄と、僕の限界
何かが上手くいかなくなると、兄は部屋でCDを爆音でかけ、叫び、暴れた。
壁にはいくつもの穴が空いた。
その恐怖とストレスから、僕はいつしか「吃音」になっていった。
小学6年生だった僕は、ある日、母に本気で頼み込んだ。
「一人暮らしをさせてほしい。この家を出ていきたい」
もちろん、そんな願いは叶わなかったけど。
けれど、僕は兄と生活することに限界を感じていた。
「また機嫌が悪くなる」
「あの恐怖の時間が来る」
応援していた横浜マリノスが負ければ、その後2時間は荒れ狂う。
そんな毎日に、僕の心はすり減っていった。
■鋭すぎる知性と、突然の不登校
一方で、兄は驚くほど勉強ができた。
漫画『金田一少年の事件簿』を買って
金田一くんが「謎はすべて解けた!」と言うシーンになると、兄はその先を読めないようにページをぐるぐる巻きに固定してしまう。
そこから二人で、犯人とその動機を推理し合う。
お互いの予想が出揃ってから、固定を外して答え合わせをすると、兄はほぼ犯人を当てていた。
勉強をしていなくても、理屈を理解する力が飛び抜けていたのだろう。
中1の夏から一度も学校へ行かず、全く勉強していなかったにもかかわらず、のちに、たった2週間の徹夜の猛勉強だけで大検(高卒認定試験)に合格してしまったほど。
兄にとっての数学は「暗記」ではなく「論理」だった。
証明問題も理屈を分かってやっていた。
■「理由はない」という答え
小学校4年生頃から休みがちになり、中学1年の夏休み明けからは、一度も学校へ行かなくなった兄。
大人になってから、僕は兄に尋ねたことがあった。
「なんで、ひきこもりになったの?」
ここから先は
¥ 500
物書きを仕事にしたくて頑張ってきました!1度諦めた夢です。しかしnoteと出逢えて表現場所が出来て嬉しいんです!有料記事を無くしていきたいのでチップの応援お願い致します🙇♂️
