HAMLET 2 #082 愛されなかった支配者
■グリフォンの陥没した先、敵基地の深奥部分
●複数のミュータントの肉体が葬られた、研究施設の最奥部分
●まるで1つの巨大な脳が鎮座しているような、暗い閉鎖空間。
●そこに、シータを中心としたミュータントの意識が渦巻いている
●勝ち誇るシータの意識に、割って入るフランシスとプランBの女たちの意識。
●肉体を持たない思念が、その人物となって空間に浮かび、脳のシナプスとして光る
●1つの巨大な脳の中で会話する、シータたち、フランシスたち。
ありがとう、ジム・ビリントン。ありがとう、合成人間の女。
これからは、二人に代わって、ボクらが新世界に出ていく。
これから生き残った人類を率いるのが、楽しみでならないよ。
ボクも、ボクの仲間達の意識も、記憶と共に転写された。
ボクらは、人間として再び世界に出る。そして、生き残った世界を率いる。
……そんなことは、させない……あなたの好きには、させない……
……そうよ……まだ勝負は、ついてない……まだ……まだよ……
●フランシスとプランBの女たちに向け、嘲り笑う敵の支配者
あははは。そんな意識だけの君たちが、どうやって盾突くと言うんだい?
出来ることがあるというなら、やってごらんよ。
人間は、ボクらに支配される存在なんだ。
この期に及んで、できることがあるというなら、やってごらんよ。
うふふっ……ふふふふふっ……あははははっ……
うふふっ……ふふふふふっ……あははははっ……
……あなたに世界は、渡さない……あなたの思い通りには、ならない……
●シータが、フランシスの意識を見つける
ああ、君はフランシスだね?HAMLETに居た、女の研究者の。
HAMLETの人達には、感謝しているんだよ。
ありがとう。ルナ・ティアーズを見つけてくれて。
ほんと、ルナ・ティアーズは、良いバカ発見器だったよ。
努力を惜しみ、棚ぼたを望み、神秘という名のもとに、逃げ込んで出てこない。
誰かに人生を変えて欲しい。でも、自分では何もできない。
そんな、無力で、バカで、矮小な人間を、簡単にあぶり出してくれた。
『ルナ・ティアーズを身に着けるだけで、必ず幸せになれる』
そんな謳い文句を信じ、統計学的にタダの偶然でしかない出来事を、望んで受け入れた。
放射線でDNAを変化させ、「自分はバカです」とマーキングしてくれた。
おかげで、信じやすく騙されやすい、弱い生き物を選別することができた。
彼らを束ね、動かすのは、とてもとても簡単だったよ。
最期には、ゾンビになって人間性を失った。彼ららしい最期じゃないか。
彼らは、無力で、バカで、矮小な人間のくせに、自分は特別だと思いたがった。
ボクらが、ちょっと人生に細工をしてやるだけで、彼らは喜んで尻尾を振った。
意外だったのは、科学者や技術者や、アスリートの中にも、バカが多かったということさ。
本来なら、独力で、実力で、知性で理性で勝ちあがっていく彼らのほうが、ゲンを担ぎ、得体のしれない運に縛られ、ルーティーンから外れるのを恐れる。
一見強そうに見える、賢そうに見える人間の方が、本当は弱い。
それを知れて、本当に良かった。
一見強そうに見える、賢そうに見える人間は、実は、目に見えないものに左右されやすい。
そして、本当にバカな人間は、カネで動く。カネでなびく。
この世界に、真にボクらより賢い者は、誰も居なかった。
みんな、すぐ堕落した。
結局、君たち人間は、AIと実在の人間と、ボクらの作ったイメージとの区別も付かない。
支配者や支配階級というものを、漠然と想像し、無意識に受け入れてしまっている。
そして、自分の安逸を求めて、自分を安く売り渡し、支配される側に、自ら墜ちるのさ。
世の中は、公平でも公正でもない。ただの弱肉強食さ。
それから目を背け、誰かに守られた場所で、幸せに暮らしたい。
それが人間の本心なんでしょう?
だからボクらは、楽園を作ってあげたんだよ。
感謝して貰いたいね。
飼われたいと思っている者を、ちゃんと飼ってあげたんだから。
今までは、ね。
●独白を続けるシータに、メデューサ&マリアが反発する
冗談ではない!自分は、楽園など望んでいない!
そうよ!アタシはただ、自分が邪魔されずに生きられる場所が欲しかっただけさ!
おやおや、合成人間さん。君は、まだ意識があるんだね。
早くボクたちに屈してしまいなよ。
デルタやイオタは、そのカラダに収まるんだ。
負けるもんか!負けてたまるか!
……こんな奴らに、体を取られて、たまるもんか!
だから、無駄な反発は止めなよ。
ボクらの意識のほうが、君たちの、ちっぽけな経験より大きいんだ。
それに、君たち合成人間なんか、現実世界で、どう生きると言うんだい??
クッ……
●シータの指摘に、声を詰まらせるメデューサ&マリア
●そんなシータに同情する、プランBの女たち
……可哀そうに……この子は、虚勢を張っている……
……そうね……この子は、可愛そう……仲間を失うのを、恐れている……
……可哀そう……可哀そう……この子は、親を知らない……
……可哀そう……可哀そう……この子は、親に愛されたことが、ない……
……可哀そう……可哀そう……この子には、叱ってくれる親も、いない……
……可哀そう……可哀そう……この子は、母親の愛を、知らない……
●シータが、プランBの女たちを拒む
黙れ!……ボクらを憐れむな!同情するな!そんなふうに見るな!
お前たちに、何が出来るっていうんだ!?
……ボクらを止められるとでもいうのか!?
……止められない……かもしれない……
……でも……それでもいい……どうせ、私たちも、死んでしまう……
……だから……最後に教えてあげよう……愛されるということを……
嫌だ!……ボクらは、愛なんて求めていない!
支配するだけだ!従わせるだけだ!
●しかし、シータ以外の者が、プランBの女たちに興味を示す
シータ、ボクは、この声の響きが好きだよ……この声に、包まれていたいよ。
そうだよ、シータ。この声の主は、ボクを恐れてない。ボクを差別しない。
なんだか、すごく落ち着くんだ。ずっと包まれていたいんだ。
……そう……それでいいのよ……こうされると、温かく感じるでしょう……
……あなた……本当は寂しかったんでしょう……誰にも理解されなくて……
……普通の人間に生まれたかったのね……人間として、愛されたかったのね……
うん。。なんでボクらは、人間の姿をしていないんだろうと思った。
なんでボクらは、人間の形で生きられないんだろうと思った。
みんな、最期は脳だけで生きてきた。そうしないと、生きていけなかった。
……そう……可哀そうに……可哀そうに……
……でも、いいのよ……もう、頑張らなくてもいいのよ……
……一緒に死のう……ずっと、私たちが、一緒に居てあげる……
●プランBの女たちの意識に、対抗心をむき出しにするシータ
イオタ、デルタ、エータ!!そんな女たちの言うことを信じるな!
ボクたちで、もう一度世界を率いると約束したじゃないか!
もういい!……そんな女が居なくなれば、みんなも、ボクに従うだろう?!
-場面転換。
■シータのビーム攻撃が、上空の輸送機を貫く
●許同志とフランシスの乗った輸送機が、攻撃を受けて墜落する
●プランBの女たちと共に、地上で爆発・四散する輸送機
-フェードアウト
#082 愛されなかった支配者愛されなかった支配者、了。


※本作品について(再掲)
本作は、1993年にPC-98版ゲームソフトとして販売された『HAMLET』および移植版の『SPACE GRIFFON VF-9』の続編となるストーリーで、西暦2149年を舞台としたSF作品です。登場人物や組織などは、実在するものとは、一切関係がありません。前作は、wikiやプレイ動画等でご確認ください。
なお、筆者は当該タイトルの原作と脚本を担当した張本人ではありますが、現在は、いち個人で執筆しており、HAMLET2の権利は筆者に帰属します。
しかしながら筆者は、この作品の二次創作・三次創作を制限するものではありません。どなたか奇特な方がキャラ絵を描いてくれると嬉しいです。
