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若さの秘訣: 実はみんな森高千里になれるかもしれない。

毎度の如くXを眺めていたら、若さの秘訣を9つ挙げているスレッドが流れてきて、つい最後まで読んでしまった。ヘスス・オソリオという方がスペイン語で書いたものをGrokが訳したやつで、だいたいこんな並びだった。

  • 重い筋トレをやれ。

  • 断食をしろ。

  • 砂糖と精製された植物油をやめろ。

  • 朝日を浴びろ。

  • 冷たいシャワーとサウナに入れ。

  • ただの水ではなく電解質を摂れ。

  • 深く眠れ。

  • コラーゲンと抗酸化物質を大量に摂れ。

  • 慢性的なストレスは一切許すな。

どれも数百のいいねがついていて、まあそりゃそうだよなという内容ではある。だが、読み終わってから引っかかるものがあった。

前にも書いたが俺は今、減量中で1日1食にしている。カロリーも抑えているし、朝は4時に起きてトレーニングをする生活を続けている。

正直なところ体の調子はめちゃくちゃいい。タニタの体組成計なので信憑性には議論が残るものの、体内年齢の数字も下がってきていて、これは自分で計っている数字なので、実感とも一致している。

だからこの9項目のうちいくつかは、俺自身が実際にやっていることでもある。

引っかかったのは、寿命との結びつきが一番強く出ている項目が、このリストに一つも入っていなかったからだった。

一番強く効いていたのは、心臓と肺の性能だった

その項目はVO2max(ブイオーツーマックス)という。日本語だと最大酸素摂取量と訳される。最近ランをする人が増えてきたこともあって、この言葉は少しずつ市民権を得つつある。

名前は難しそうだが、中身はそんなに難しくない。

VO2maxとは、人間が全力で運動しているとき、体は1分間にどれだけの酸素を取り込んで使えるのか。その上限のことだ。

体重1キロあたり1分間に何ミリリットル、という単位で表す。

なぜこの数字が寿命と結びつくのかというと、酸素が体の隅々に届くまでに、けっこうな数の工程を通るから。

  1. 肺が空気から酸素を取り出す。

  2. 心臓がそれをポンプで押し出す。

  3. 血管がそれを運ぶ。

  4. 筋肉の中にあるミトコンドリアという小さな装置が、届いた酸素を使ってエネルギーを作る。

この工程のどこか一つでもサビついていると、VO2maxの数字は下がる。

つまり、この一つの数字に、肺と心臓と血管と筋肉の状態がまとめて出てくる。血液検査の項目を一つ見るのとは、拾える情報の量がぜんぜん違うのだと思う。

VO2maxの研究

クリーブランドクリニックというアメリカの病院の研究チームが、2018年に『JAMAネットワーク・オープン』という医学誌に発表した研究がある。

ランニングマシンで運動負荷試験を受けた12万2千人を10年以上追いかけたもので、VO2maxは調べた中で生存を最もよく言い当てる指標だった。

一番低いグループは、一番高いグループに比べて死亡リスクがおよそ5倍。しかも面白いことに、「ここから先はVO2maxを上げても意味がない」という頭打ちが見つからなかった。VO2maxを上げれば上げるだけ死亡リスクが下がり続けたということらしい。

2022年に『アメリカ心臓病学会誌(JACC)』に載った研究では、アメリカの退役軍人75万人分のデータを使っている。

こちらでは、体力が1METs(メッツ)上がるごとに死亡リスクが13〜15%下がっていた。

METsというのは運動強度の単位で、1上がるというのはVO2maxで言うと3.5ml/kg/分ぶんの上昇にあたる。

年齢も体格も性別も持病の有無も関係なく、この関係が成り立っていたという。

デンマークには「コペンハーゲン男性研究」という46年追いかけたものもあって、こちらは2018年に同じくJACCに出ている。

VO2maxが1単位上がるごとに寿命が45日延びていた、という計算になったらしい。

もっと古典的なところだと、運動科学者のスティーブン・ブレアらが1万3千人以上を対象に行った研究がある。

心肺持久力の低さは、喫煙や高血圧や高コレステロールよりも強く死亡を言い当てる、と最初に示したもののひとつだ。

要するに、タバコを吸っていることより、体力がないことのほうが危ないということになる。

個人的に一番意外だったのはここで、太っていてもVO2maxが高い人のほうが、痩せていてVO2maxが低い人より死亡リスクが低いことが多いらしい。

あと高齢になってから、自分で自分の身の回りのことをやって暮らせるかどうかも、この数字がよく当てているという。

VO2maxの計測方法

じゃあ自分の数字はどうやって知るのか。

ちゃんと測るならマスクをつけて呼気を分析する検査になるのだが、今はアップルウォッチやガーミンが心拍と走るペースから推定値を出してくれる。

精度は本物の検査ほどではないにせよ、上がっているか下がっているか、今はどのレンジかをざっくり見るには十分だと思う。

VO2maxをどうやって上げるか。

ここが調べていて一番面白かった。

ノルウェーのヤン・ヘルゲルードらが2007年に『メディシン・アンド・サイエンス・イン・スポーツ・アンド・エクササイズ』誌に出した研究で、4つのやり方を比べている。

  1. ゆっくり長く走る

  2. ちょっと速めのペースで走り続ける

  3. 15秒ダッシュと15秒休憩を繰り返す

  4. 4分間きつめに走って休むのを4本繰り返す。

この4つだ。

結果は、4分×4本が一番VO2maxを上げた。

7.3%の向上で、ゆっくり長く走るグループとは明らかな差がついた。

しかも、そのとき体の中で何が変わっていたかというと、血液の量もヘモグロビンも変わっていなくて、心臓が1回の拍動で送り出す血液の量が10%ほど増えていた。

心臓そのものが強くなって、1回で押し出せる量が増えたということになる。

この4分×4本は「ノルウェー式4×4」と呼ばれていて、もともとは心臓病の患者さんのリハビリとして始まったものらしい。

心臓が弱っている人を、あえて限界近くまで追い込むことで心筋を鍛えるという発想で、今では世界中のリハビリの定番になっている。

安静時の心拍数と血圧が下がることも確認されているという。

やり方としては、4分間かなりきつい強度で走って、3分ゆるく流して、これを4セット。最大心拍数の90〜95%あたりを狙う。息が上がって会話ができない、でも4分は持ちこたえられる、というくらいの強度になる。

ただ、これは相当きついので、週に1〜2回が上限とされている。

残りの日は、鼻呼吸ができて隣の人と喋れるくらいのゆっくりしたペースで長めに走る。

この楽なほうも、筋肉の中の毛細血管を増やして酸素を使う効率を上げるので、無駄ではないらしい。

きつい日と楽な日をはっきり分けて、中途半端な「そこそこきつい」を減らすのが要点なのだと思う。

筋トレの話も、中身を見ると少し違った

スレッドの1番目は筋トレで、週3〜4回重いものを持ち上げろと書いてあった。

方向としては正しいのだが、調べてみると中身の話がだいぶ抜けていた。

なぜ筋肉が減ると寿命に響くのか

加齢で筋肉が減っていくことをサルコペニアという。

厚生労働省のe-ヘルスネットによると、骨格筋の量が落ち始めるのは25〜30歳頃からで、そこから生涯かけてずっと進行していく。

東京都健康長寿医療センター研究所のデータだと、ピークの20代から比べて10年で男性はだいたい2キロ、女性は1キロずつ減っていく。

何もしなければ、40代の時点ですでに4キロ近く失っている計算になる。(恐ろしい)

しかも減り方に偏りがあって、抗重力筋と呼ばれる、重力に逆らって体を支えている筋肉から先に落ちる。太ももの前、尻、ふくらはぎ、背中あたりだ。

だから最初に出てくる症状が、椅子から立ち上がるのが億劫になる、歩くのが遅くなる、といったものになる。

抗重量筋と死亡率の結びつき

2015年に『ランセット』誌に載ったPURE研究というものがあって、17カ国の14万人を対象にしている。

握力が5キロ下がるごとに死亡リスクが16%、心臓や血管の病気で死ぬリスクが17%上がっていた。

しかもこの研究では、握力は上の血圧(収縮期血圧)よりも死亡をよく言い当てていた。

健康診断で血圧は必ず測るのに、握力は測らない。そのわりに握力のほうが情報量が多いというのは、けっこうな話だと思う。

じゃあ何をどうやればいいのか。ここが一番の誤解ポイントだと思うのだが、「重ければ重いほどいい」というわけでもないらしい。

ブラッド・シェーンフェルドらが2017年に『ジャーナル・オブ・ストレングス・アンド・コンディショニング・リサーチ』誌にまとめた分析によると、限界まで追い込んでやる限り、軽い重量でも重い重量でも、筋肉が大きくなる度合いはほとんど変わらなかった。

ここで言う軽いというのは1RMの60%以下という意味で、1RMというのは「1回だけギリギリ持ち上げられる重さ」のこと。

つまり、15回とか20回できてしまう軽さでも、そこから限界までやり切れば、8回で潰れる重さと同じくらい筋肉は育つということになる。

ただし、最大筋力そのものを伸ばしたいなら重いほうが有利で、そこははっきり差が出る。

だから重量選びは目的次第で、太くしたいのか、単純に強くなりたいのかで変わってくる。

つまり肝心なのは重さそのものではなく、あと1〜2回で潰れるところまで追い込んだかどうかのほうだった。

ジムで重い重量を扱っているのに変わらない人と、家で自重だけやって明らかに変わる人がいるのは、たぶんここの差なのだと思う。

期間の話

高齢者向けのリハビリの資料だと、1RMの80%程度の高い負荷を週2〜3日というのが理想とされているが、十分な効果が出るには6ヶ月以上かかると書いてあった。

3ヶ月で見切りをつけてやめてしまうケースが多い気がするけれど、そもそも期間が足りていないのかもしれない。

種目としては、抗重力筋から落ちていくという話からすると、スクワットのように太ももと尻をまとめて使う動きが効率がよさそうだった。

腕を一本ずつ細かく鍛えるより先に、まず立ち上がる力を守るということになる。

どこまで根拠をわかってるのかはともかく、世の中で「困ったらとりあえずスクワットをやれ」というのは科学的裏付けがあるようだ。

量については、14万7千人を30年追いかけた研究が2026年に報告されていて、週90〜120分あたりが一番よく、そこを超えると追加の得がなくなっていた。

数字としては全死因13%減、心臓と血管の病気で19%減、脳や神経の病気で27%減。この神経の27%というのはあまり語られていない気がする。週に45分から1時間を2回でいい、ということになる。

サウナの効能

2015年に『JAMA内科学』誌に載った、フィンランドの「クオピオ虚血性心疾患リスク因子研究」というものがある。

ヤリ・ラウカネンらが中年男性2300人ほどを20年追いかけたもので、週1回入る人に比べて、週4〜7回入る人は突然死のリスクが3分の1近くまで下がっていた。

心臓と血管の病気で死ぬリスクも半分。しかも1回あたり19分以上入っていたほうが効果が強かったという。温度は79度以上の、水をかける本式のサウナでの話になる。

水シャワーの効能

2024年に『ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・スポーツ・サイエンス』誌に出たメタ分析によると、筋トレの後に冷水を浴びると、筋肉が大きくなるのも、筋力が伸びるのも鈍る。

しかもそのとき、熱ショックタンパク質という体を修復する物質の増加まで抑えられていた。

スレッドはサウナの効果としてまさにこの熱ショックタンパク質を挙げていたので、冷水と熱を同列に並べるのは、たぶん無理がある。

地味すぎて、リストに入れてもらえないこと

人の繋がりと寿命

ここからが、調べていて一番意外だったところになる。

ジュリアン・ホルトランスタッドらが2010年に『PLoS Medicine』誌に発表した分析がある。

148本の研究、のべ30万人分のデータをまとめたもので、人とのつながりが強い人は、生き延びる確率が50%高かった。

この影響の大きさは1日15本の喫煙に相当すると表現されていて、運動不足より有害、肥満の2倍有害、とまで書かれている。

同じチームの2015年の分析では、孤独を感じている人は早く死ぬリスクが26%上がり、一人暮らしだと32%上がっていた。

日本発のデータもある。東北大学が続けている大崎コホート研究は、宮城県の4万4千人を7年追いかけたもので、2008年に『サイコソマティック・メディシン』誌に出ている。「生きがいがある」と答えた人は死亡リスクがはっきり低く、しかも年齢も喫煙も飲酒も運動の習慣も全部差し引いて計算し直した後で、その差が残っていた。

つまり「生きがいがある人はたまたま健康的な生活をしていただけ」では説明がつかない、ということになる。

FIREした後に狂っていく人が多いことの裏付けになるかもしれない。

視力、聴力と寿命

2024年に『ランセット』の認知症委員会が出した報告がある。

認知症のリスクのうち、生活を変えることでどうにかできる要因を14個挙げていて、それを全部取り除けたら将来の認知症の45%は防げるという推計だった。

その14個の中に、耳が聞こえにくくなること(難聴)と、放っておかれた視力の低下が入っている。

補聴器と眼鏡が、若さの秘訣として語られることはまずない。

そう考えると、こういうリストは効果の大きさの順ではなく、やった感じがする順に並んでいるのだと思う。冷たいシャワーを浴びるのは、やった感じがする。

骨のスープを煮るのも、話として面白い。細胞、ミトコンドリア、テロメアといった言葉が並んでいると、なんだか自分の努力だけで寿命を握れそうな気がしてくる。

一方で、友達と飯を食うのは健康法という感じがしない。

耳鼻科に行って聴力を測るのは、もっとそんな感じがしない。

誰かに必要とされているかどうかに至っては、努力でどうにかする話ですらない。

戸籍と寿命

長寿の里として有名なブルーゾーンについては、オーストラリア国立大学のソール・ニューマンさんがデータを検証して、統計に致命的な欠陥があると指摘し、2024年のイグ・ノーベル賞を受賞している。

長寿だと思われていたものの一部は、戸籍がいい加減だったせいだったり、亡くなった人の年金を家族が受け取り続けていたせいだったりしたかもしれない、という話らしい。実は、沖縄も名指しで挙がっている。

9項目のうち何個かは俺も実際にやっているし、それはそのまま続ける。

ただ、リストに載らなかったほうを並べ直してみると、握力を測ることも、耳鼻科に行くことも、誰と飯を食うかも、全部「やった感じがしない」という一点で共通していた。

効くかどうかと、やった気になれるかどうかは、どうも別の軸で動いているらしい。

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