10日後に初著を8万円分売らなきゃいけない新人作家が全力でデビュー作「救われてんじゃねえよ」をPRする
こんにちは。東京文フリに向けて初著約8万円分(50冊)を仕入れ、10日後に売る新人作家です。
上村裕香(かみむら・ゆたか)といいます。24歳学生です。大学3年生の春に新潮社の「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞して、3年かけて初著をこしらえ、先月『救われてんじゃねえよ』(新潮社/1,540円税込)を出版しました! わ〜〜〜🎉
「女による女のためのR-18文学賞」は、R-18とありますが官能表現を含む作品に限定した応募は2010年までで、現在は様々なジャンルの小説を募集しています。窪美澄さん、町田そのこさん、宮島未奈さんらを輩出したいま大注目の公募型小説新人賞です。上村は第21回大賞を受賞させていただきました〜。プロフィールはこんな感じ。

写真・土佐麻理子 インタビュー、文・三浦天紗子
anan 2443号(2025年4月16日発売)より
と、ひとりで説明していてもダレちゃうので、「㍉村くん(作家としての上村のことを1ミリも知らない、まだ『救われてんじゃねえよ』を読んだことがない友人)」にインタビューしてもらいました!
㍉村:え、上村さんの小説が、フツーに本屋に売ってるんですか?!
上村:売ってます。こちらです。

㍉村:すげえ! 本の内容って……聞いていいんですか……!?
上村:いっぱい聞いてください! 現代の若者はタイパを重視して買うか迷ってる本のラストシーンをチャットGPTに聞くらしいですからね。
㍉村:本当ですか!?
上村:うそです。でも、少し中身は知っておきたい、って人も多いんじゃないかな。このタイトルと装丁で本屋に並んでるのを見たら、ミリ村くんはどう思いますか?
㍉村:……やさぐれた女の子の話かなって思います。なんか暗い話っぽい。あと、ノンフィクションかな?と思う。たしかに、どんな雰囲気の話なのか知ってから買いたいかも。
上村:そうだよね〜! そんな読者のために、㍉村くんに今日は読者候補代表としていろいろ気になることを聞いてほしいな! ネタバレも最小限にするね。
どんな話なんすか?
㍉村:これは小説なんすよね? 賞を取った小説が載ってるんすか?
上村:そうですね。表題作の「救われてんじゃねえよ」がR-18文学賞を受賞した短編で、主人公が同じ続編の「泣いてんじゃねえよ」と「縋ってんじゃねえよ」っていう短編が入っている、連作短編集です。
㍉村:お得じゃないですか〜! どんな話なんすか?
上村:表題作の「救われてんじゃねえよ」は、八畳一間のアパートで難病の母を介護しながら高校に通っている沙智っていう女の子が主人公の話だよ。学校でクラスメイトに嫌味を言われたり、担任に「頼っていいんだよ」って言葉をかけられたり、お父さんが障害年金を浪費して苛立ったりする。でも、そんな彼女の悲惨っぽい生活の中にも、常に「笑い」っていう光があって。壮絶な介護で限界になったとき、沙智がふっと救われる瞬間っていうのは、小島よしおなんじゃない?っていう話! ちなみに、こちらで一篇丸々試し読みできます。
㍉村:なんと、友人特典で特別に……!?
上村:㍉村くんじゃなくても読めるよ〜。ぜひ読んでみてね〜。
続編もあるって、お得っすね!
㍉村:その「救われてんじゃねえよ」の続きが2篇も入ってるってことっすか、でもこの本、結構薄めじゃないすか?
上村:一篇が50枚〜70枚くらいの短編だから、サクッと読めて、かつ濃縮された3篇をお届けって感じかな。「泣いてんじゃねえよ」は、大学3年生の沙智がテレビの制作会社にインターンに行って、叔父の恭介くんっていう、沙智の境遇を聞いて「えっ、元ヤングケアラーなん? ええネタ持ってるやん!」って言うような不謹慎な大人と出会う話。インターンや就活で、自分が「元ヤングケアラー」と名乗ったり、他者から名指されたり……。就活で東京に戻らなきゃいけない日に母が倒れたって電話がかかってきて、どうするさっちゃん!って話。
㍉村:ヤングケアラー、おれでも聞いたことあるっすね。家族を介護してる子どものことっすよね?
上村:そうですね。介護だけじゃなく、広い意味での「ケア」を含む概念だけど、基本的にはそういう定義だと思います。親元を離れた沙智が「元ヤングケアラー」っていうレッテルとどう向き合うか、の話ですね。
㍉村:なるほど……。さらに続編があるんすか?
上村:あります! 最後の短編「縋ってんじゃねえよ」は、社会人1年目の沙智がテレビの制作会社に就職をして、ドキュメンタリーの編集に携わる中で、貧乏大家族の男の子に過去の自分を重ねて、両親との思い出を振り返っていく話。それはある意味では、『介護前夜』の物語なんですよね。『毒親』みたいな簡単な言葉で括られてしまいそうな沙智の両親の、そうでない側面を思い出して、沙智が自分と同じような苦しさを抱える境遇の、いまを生きる子どもに「どんな言葉をかけてあげられるんだろう」って考える。
㍉村:さっちゃん、成長してる……!
上村:そう、これは沙智の成長3部作なんです。

実は話数が進み、沙智が成長するにつれて、イラストの沙智の顔つきも変化しているんです。
ぶっちゃけ、実体験なんすか?
㍉村:えーと、ぶっちゃけ、実体験なんすか? なんで書こうと思ったんすか?
上村:㍉村くんなら聞いてくれると思ったよ。率直でよろしい。表題作の「救われてんじゃねえよ」で、沙智がお母さんを立ち上がらせようとして二人で倒れ込んだときに、沙智のBL本がリモコンに当たってテレビがパッとついて、小島よしおの「でもそんなの関係ねえ!」が流れて母と爆笑するシーンがあるんだけど、それは実体験を元にして書いてます。わたしが母を介護していたときに同じようなことがあって、そのときの笑いってなんだったんだろう?というのが出発点。小島よしおは流れなかったけどね。
㍉村:それは、エッセイじゃダメだったんすか? ノンフィクションとか。
上村:わたしにとっては「小説が一番おもろく伝えられるツール」だっていうのが大前提。その上で、やっぱり小説じゃなきゃダメだったんですよね。介護していたときの話を友だちに話すと、だいたい「どう反応したらいいのかわかんない」って反応をされるんだけど、フツーに笑ってほしいじゃん。で、どうすれば伝わるか、を最大化したのが「救われてんじゃねえよ」だったわけです。
小島よしおと対談したんすか!?
㍉村:さっき気になったんすけど、なんで小島よしおなんすか?
上村:わたしの体験を沙智という人間を介して追体験してもらって、読者にも笑いを届かせるとき、一番大喜利として正解だったのが「そんなの関係ねえ!」だったんです。小島さんはファルス的な人なので。
㍉村:ファルスってなんすか?
上村:笑劇、道化芝居とも訳される喜劇の一形態で、コメディよりも突飛でナンセンス寄りなことが多いかな。わたしがすごく好きな定義は、坂口安吾が『日本文化私観』で述べてる「ファルスとは、人間の全てを、全的に、一つ残さず肯定しようとするものである/凡そ人間の現実に関する限りは、空想であれ、夢であれ、死であれ、怒りであれ、矛盾であれ、トンチンカンであれ、ムニャムニャであれ、何から何まで肯定しようとするものである」って定義。
㍉村:わかんないっす……。小島よしおが……? ムニャムニャで……?
上村:ごめん、喜劇論になるとつい熱くなっちゃって。小島さんは「①ピン芸人、②裸芸、③ナンセンスさと意味をどちらも内包しているワード」っていう3要素を兼ね備えている人だから、適任だと思ったんだ。このあたりは小島さんとの対談で話したから、よかったら読んでね。AERAさんの記事、ウェブで全文公開されてます。
㍉村:ええっ!? 上村さん、小島よしおと対談したんすか!? なんで!?
上村:小説に登場する人だから……? 新潮社の大人ががんばってくれました。
㍉村:じゃあ、おれが小説書くときは、みちょぱのこと書きます!
上村:ギャルが好きなんだね〜。
書店でどんな人に手に取ってほしいんすか?
㍉村:これ、帯にコメントが載ってますよね。有名な人なんすか?
上村:わ! ㍉村くんじゃないと許されない発言だよそれ! めちゃくちゃすごい方々です。窪美澄さんはわたしも大ファンの作家さん。R-18文学賞出身の大先輩でデビュー作『ふがいない僕は空を見た』はもう……もう……全人類読んで……。わたしがR-18文学賞を受賞させていただいた直後に、窪さんが『夜に星を放つ』で直木賞を受賞されて、対談イベントもさせていただきました。ありがたかった〜。勝手に人生の指針にさせてもらってます。
上村:東村アキコさんは漫画家さんで、今月『かくかくしかじか』の映画が公開されますね〜楽しみ! 『東京タラレバ娘』とか、㍉村くんでも知ってるんじゃない?
㍉村:あ、知ってます! ぼく、柚木麻子さんの『私にふさわしいホテル』も知ってますよ。映画で観ました。
上村:ああ〜映画で観ました、っていうのは小説家さんによってはいい感じに捉えない人もいるんだけど……知ってくれてるならよかった。『BUTTER』が全世界で累計70万部突破したことが最近ニュースになってましたね。すごい先生方のコメントに身が引き締まる思いですよ……。
窪美澄さん「最も殺傷力の高い文章を書かれる方だった。「救ってんじゃねえよ」と書き手にいい、「救われてんじゃね えよ」と読み手に絶叫しているのである。 どうしようもなく書かざるを得ない衝動を持った方なのだと思う。」
東村アキコさん「主人公・沙智の父親がカメラを二回目に買ってきた場面では本当に打ちのめされてしまったものの、だからこそ読み返してしまう。ですので、選考会でこの作品を受賞作に、となった時も、私が受けたショック、パワーというのが、賞にふさわしい、受賞するべき作品なのだと思いました。」
柚月麻子さん「我々の想像力の限界をナイフでメッタ刺しにするような切迫感。簡単には救われない、その代わりに簡単な絶望もない。 メディアで知る悲劇は当事者にとってはただの日常であることを、強く認識させてくれました。母親を支える時に人という字の形にさえなれない描写は圧巻です。」
上村:あと、R-18文学賞の先輩で『成瀬は天下を取りにいく』の宮島未奈さんがご感想をツイートしてくださっていて、それもうれしかったな。新作発表するたびに的確な感想をくださってマジでありがたい……帯に書き足せないかな……。
上村裕香さんのデビュー作『救われてんじゃねえよ』読みました。ヤングケアラーが主なテーマではあるんだけど、それをヤングケアラーと言った途端に失われるものがたくさんある、そんな小説です pic.twitter.com/w8BwrQRHgd
— 宮島未奈 (@muumemo) April 18, 2025
㍉村:書き足せないんすか?
上村:いっぱい売れて何刷もしたらワンチャン……?
㍉村:帯ってパッと目を惹くし、結構重要っすよね。上村さんは書店でどんな人に手に取ってほしいんすか?
上村:うーん、新聞の取材ではよく「生きづらさを抱えている人に届いてほしい」って見出しになるような言葉を言うかな。それは間違ってないけどあんまり伝わらない語彙を選んじゃったなあって反省してるんだよね。わたしの言葉でしっかり言うなら、しんどいときや「全世界の人間死んでしまえ」と思ってるときに、隣に「全世界の人間死んでしまえ」と思ってる人がいたら、その人のことちょっと友だちだと思えるし、ちょっと友だちだと思える人がいることで救われる、みたいな意味合いで、沙智と友だちになってくれる人がいたら、それはうれしい。なので、沙智と境遇が同じじゃなくても気持ちとして同じようなしんどさを抱えている人が、沙智と友だちになってくれたらいいなと思ってるんです。
㍉村:おれも友だちになれますか?
上村:㍉村くん、いいやつだからすぐなれるよ〜。
10日後に8万円分売らなきゃいけないってなんすか!?
㍉村:ってか、10日後に8万円分売らなきゃいけないってなんすか!?
上村:10日後に文学フリマっていうイベントが開催されて、そこで販売する予定なんだよ。漫画でいう「コミケ」みたいな、同人誌即売会。去年から出店してて、友だちと同人誌出してるんだ。今回も同人誌と「救われてんじゃねえよ」どっちも出すよ! 出版社から著書を仕入れて、直接読者の方に販売することができるって聞いて、初めてやってみるんだけど、50冊仕入れたので7万7000円分なんだよね……。売り切れなかったら赤字だよ〜。
㍉村:大変じゃないすか! それ、サインとかもらえるんすか!
上村:全冊サイン本にする予定だよ。
㍉村:すっげ〜! お得じゃないすか! おれ、買いにいきますよ!
上村:ありがとう〜。じゃあ、文フリ東京40の詳細を貼っておくね。
文学フリマ東京40
開催:2025年5月11日(日)
時間:12:00〜17:00(最終入場16:55)予定
入場料:1,000円
会場:東京ビッグサイト 南1-4ホール(会場アクセス)
サークル:上村裕香(南3-4ホール/あ-82)
上村裕香、新胡桃、笹原微々、日比野コレコ×カワサキキキの5名の作家で制作する小説同人誌「sensei」や、それぞれの作家の既刊を販売するサークルです。当日は上村裕香、新胡桃の既刊を販売します(ふたりとも売り子するよ〜)。
ウェブカタログ:https://c.bunfree.net/c/tokyo40/4F/あ/82
㍉村:え、これ買い逃したらもう買えないんすか……?
上村:いやいや! 全国の書店に売ってるから! ずっと売ってるから! ㍉村くん、書店に行って一番にどこを見る?
㍉村:え……漫画コーナーっすけど……。なんすか、おれだって、ビジネス書とかも読みますし!
上村:えらいね〜。小説は「文芸書」って書かれたコーナーにあります。ありがたいことに、平積みにしてくださってる書店さんが多いからチェックしてみて。平積みっていうのは、こういう感じ。

㍉村:おお、これならおれも見逃さないっす!
上村:棚差しって言って、棚に差してあって背表紙だけ見えている場合もあるから、「か行」を探してみてね。あとは、立ち寄った書店さんになくても取り寄せができるから、書店員さんに「救われてんじゃねえよありますか」ってまず聞いてほしい。ネットで買えばいいじゃんって思うかもしれないけど、町の書店さんで買ってもらえると、書店員さんが「この本、読みたい人がいるんだ」って覚えてくれたり、何冊か入荷してくれたりするから、わたしみたいな新人作家にとってはありがたいのです。お願いします。
㍉村:取り寄せって知らなかったっす!
上村:とはいえ、書店さんでもネット書店でも電子書籍でも、読んでくださるだけでありがたいので……次の出版に繋がるので……何卒……。
㍉村:上村さん、突然手組んで虚空を見つめて……だれにお願いしてんすか?
上村:㍉村くんみたいな、作家としての上村のことを1ミリくらいは知ってくれた、まだ『救われてんじゃねえよ』を読んだことがない読者に。
特設サイトも公開中〜! 書店員の方々からいただいたご感想もお読みいただけます🌷

