なぜバーチャルディズニーランドをやらないのか。現実という多様な収益構造について
はじめに
先日、サンリオVフェスに参加しました。
サンリオVフェスは、バーチャルサンリオ内で行われるVTuberやアーティストのライブイベントが見られるフェスです。私の推しである、ななしいんくの因幡はねるちゃんもライブをしていたため、観覧するためにフェスのチケットを買いました。
チケットにはバーチャルピューロランドの入場券も含まれており、フェスの開催期間中はバーチャルピューロランド内を探索できました。グリーティングやパレード、アトラクションも体験できます。
VRならではの視覚表現はとても迫力がありました。現実ではありえない演出が目の前で起こり、サンリオのキャラクターや世界観が自然と好きになっていく感覚がありました。
その時に、ひとつ気になったことがあります。
サンリオはバーチャルピューロランドをつくりました。
では、ディズニーはなぜバーチャルディズニーランドをつくらないのでしょうか。
ブランド価値を守るために
一番先に思いつく理由は、ブランド価値を守るためです。
メタバース空間内にディズニーランドを再現してしまうと、それは現実のディズニーランドの代替品になりかねません。
もし、シンデレラ城があるだけ、アバターで歩けるだけ、アトラクションの数が少ない、という内容だったら、多くの人はがっかりするでしょう。
かといって、本当にディズニーランドのアトラクションをすべて体験できるメタバース空間をつくれば、今度は現実世界のディズニーランドに行く意味が薄れてしまうかもしれません。
つまり、バーチャルディズニーランドは、完成度が低ければブランドを傷つける。
完成度が高すぎれば、現実のパークの価値を食ってしまう。
この両方のリスクを持っているのです。
ディズニーランドが提供しているのはアトラクションだけではない
そもそも、ディズニーランドが提供しているものはアトラクションだけではありません。
ディズニーランドに行くには移動が必要です。空港、バス、電車。遠方から来る人なら、ホテルに泊まることもあります。ランド内で遊べば、食事をとり、飲み物を買い、お土産も買うでしょう。
さらに、チケットの予約、どのアトラクションを回るか、どこで食事をするか、どのホテルに泊まるか。そうした計画を立てる時間も含めて、ディズニーランド体験になっています。
つまり、ディズニーランドは単なる遊園地ではありません。
人が現実の場所に移動し、時間を使い、食事をし、宿泊し、グッズを買い、思い出を持ち帰る。
その一連の流れ全体が、巨大な消費構造になっているのです。
バーチャルディズニーランドをつくるということは、この現実空間に根ざした消費構造の一部を、デジタル空間に移すことになります。
しかし、そこで同じ規模の収益を作れるかはわかりません。
サンリオとディズニーでは、バーチャル化しやすい部分が違う
ここで、サンリオとディズニーの違いが見えてきます。
サンリオの強みは、キャラクターとの距離の近さです。
キティ、シナモロール、クロミ、ポムポムプリンといったキャラクターに会う。写真を撮る。かわいい空間に入る。ライブを見る。
これはVR空間と相性がいい。
自分もアバターになり、かわいい空間に入り、キャラクターや他の参加者と同じ場所にいる感覚を味わえるからです。サンリオVフェスも、Virtual Sanrio Purolandを会場にしたバーチャル音楽フェスとして展開されています。
一方、ディズニーランドの中心には、現実のパーク体験があります。
大きな城を見る。広い園内を歩く。アトラクションに乗る。パレードを見る。キャストに案内される。食事をする。ホテルに泊まる。
この「現実の場所に行った」という体験そのものが、ディズニーランドの価値になっています。
だから、ディズニーランドをそのままバーチャル化すると、どうしても現実のパークと比較されてしまうのです。
権利構造の複雑さ
もうひとつ大きいのが、ブランド管理の複雑さです。
ディズニーはミッキーだけでなく、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズ、アバターなど、非常に多くのIPを抱えています。
これらをひとつのVR空間に集めること自体は、理屈の上では可能かもしれません。
しかし、どの作品をどのように見せるのか。どの国のパークと結びつけるのか。東京ディズニーリゾートのように、現地の運営会社が関わる施設をどう扱うのか。
考えるべきことは非常に多いです。
バーチャル空間は自由に見えて、実際には「ブランドの見え方」をかなり厳密に管理しなければいけません。
少しでも安っぽく見えれば、ディズニーというブランド全体に傷がつく。
そのため、ディズニーは「とりあえずVRChatにディズニーランドを作る」というような動きは取りにくいのだと思います。
ディズニーIP自体のメタバース化はありうるか
では、ディズニーがバーチャル空間に進出しないのかというと、そうではありません。
むしろ、ディズニーは別の方向で動いています。
2024年、ディズニーはEpic Gamesに15億ドルを投資し、Fortniteとつながる新しいゲーム・エンタメ空間を作ると発表しました。そこでは、ディズニー、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズ、アバターなどを扱う構想が示されています。
つまり、ディズニーは「バーチャルディズニーランド」を作るのではなく、Fortniteのような巨大ゲーム空間の中に、自社IPを展開しようとしているのです。
これはかなり重要です。
ディズニーランドをVRで再現するのではなく、マーベル、スター・ウォーズ、ピクサーなどの世界を、ゲーム空間の中で体験できるようにする。
この方向なら、現実のディズニーランドの代替品にはなりにくい。
むしろ、作品世界を広げるための新しい入口になります。
おわりに
サンリオは、バーチャルピューロランドをつくりました。
しかし、それは現実のピューロランドを奪うものというより、サンリオキャラクターの世界をバーチャル空間に広げるものです。
一方、ディズニーランドは、現実の場所に行くこと自体が大きな価値になっています。移動し、食事をし、アトラクションに乗り、ホテルに泊まり、思い出を持ち帰る。その一連の体験全体が、ディズニーランドという商品です。
だからこそ、ディズニーはバーチャルディズニーランドを簡単には作らない。
ただし、ディズニーがバーチャル空間に興味がないわけではありません。
今後は、ディズニーランドの仮想版ではなく、Fortniteのようなゲーム空間を通じて、マーベル、スター・ウォーズ、ピクサーなどの世界を体験する形が広がっていくのではないでしょうか。
ディズニーは、バーチャルディズニーランドを作らない。
しかし、ディズニーIPのメタバース化は、すでに始まっているのかもしれません。
私自身、サンリオVフェスを体験して、VRは「動画を見るもの」ではなく「空間の中に入るもの」なのだと感じました。
もし、こうしたバーチャルイベントを一度体験してみたい方は、VR機器を用意しておくと楽しみ方がかなり広がります。
VRを体験してみたい方はこちら
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