コーヒー自販機を疑う
高速道路のサービスエリアで、一息つくとき、コーヒーを買う人は多い。
高速道路をまっすぐ走る、というのは思いのほか退屈なので、眠気覚ましにコーヒーを飲んだりガムを噛むんでやりすごす。
冬場にバイクで高速道路を乗って1時間も走ると、心身ともに冷え切ってしまう。
ハンドルを握る手は寒さを通り越して痛みすら感じる。
本当の限界を超える前に、SAに逃げ込んで、一息つく。
温かいコーヒーの紙コップ越しに伝わる熱気が、冷え切った手を温めてくれる。
関東近辺のSAでは自販機売り場には2種類のコーヒーが置いてある事が多い。
猫のコーヒーと、ルンバのコーヒー自販機だ。
猫のコーヒーは自販機や紙カップに猫のイラストが描いてあるかわいらしいコーヒーだ。
一方ルンバのコーヒー自販機は、コーヒーが出てくるときにルンバが流れる。
1961年にベネズエラの「コーヒールンバ/Moliendo Café」という曲を西田佐知子がカバーして大ヒット、その後もいろんな人がカバーしたりで、コーヒー=ルンバ、という定説が世の中にはあるらしい。
由来はさておき、お金を入れてボタンを押すと、軽快なルンバの音楽とともにコーヒーが出てくる。
豆からひくタイプのわりと本格的なコーヒー自販機だ。
自販機についているモニターに実際にコーヒーを抽出する映像が流れる。
リアルタイムの映像で、本当に豆からひいて抽出していますよ、本格派ですよ、という演出なんだろう。
実際お金を入れてコーヒーが出てくるまで、少々待ち時間があるのは確かなので、なにか映像が流れていると手持ち無沙汰にならない。ただ、いかんせん自販機内部の映像で、リアルタイムの映像である必要は無い――というかこれ録画でも変わらないよな? などと出てくるコーヒーを待ちながらボンヤリ思ったりもしていた。
出てきたコーヒーは普通に美味しいし、味や抽出過程を疑っている、と言うわけではないんだけど。なぜか映像のリアルタイム性だけはちょっとだけ疑っていた。
それからしばらくして――あいかわらず冷え切った身体を抱えて、SAに逃げ込んだときにコーヒー自販機の前に行って驚いた。ルンバのコーヒーの映像モニターに紙が貼ってあって、映像部分だけ表示出来ないようになっている。
コーヒーは普通に買えるようなので、全体の故障とかではないらしい。
映像だけ見えない。
――なにか不正があったのだろうか?
いや、映像があってもなくても、コーヒーの味には変わらないんだから、単純にカメラの故障なのかもしれないけれど。やっぱり録画だったのかな、とか、誰かに不正を指摘されたのかな、とかすごく気になってしまった。
実際お金を入れてコーヒーを買ってみたけれど、問題無くコーヒーは出てきた。
温かいコーヒーのありがたさは変わらなかったけど、
でも、なんとなくモヤモヤするコーヒーだった。
