「誰に・何を」がブレる悲劇。AIで「教科書通りの失敗」を量産していませんか?――STPという羅針盤に、指揮官の「魂」を吹き込む方法
【連載】実務で使える生成AI活用術【第3回】
・この連載のマガジンは【こちら】
本連載は、非常に多くのビューとスキをいただいています。連載初日が祭日だったので、心配していましたが、杞憂に終わりました。皆さんの『実戦への渇望』を肌で感じています。その期待に応えるべく、今日は戦略の『核心』へ踏み込みます。
■1. 戦略(STP)は企画の心臓部である
窓を閉め切った会議室。ホワイトボードには、どこかで見たような「高品質・低価格」というポジショニングマップが描かれている。消えかけたマーカーのツンとする匂いと、行き詰まった参加者たちの溜息。
「結局、うちのターゲットって誰なんだっけ?」
この問いに誰も答えられない時、戦略(STP)は死んでいる。
前回のコラムで環境分析(3C)の重要性を説いたが、分析はあくまで「土壌」に過ぎない。その土壌にどんな種をまき、どう育てるか。それを決めるのが、マーケティングの心臓部であるSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)だ。
今、多くのビジネスパーソンがこの「心臓」の鼓動を、AIという名の人工知能に委ねようとしている。だが、無防備にプロンプトを打ち込んだ瞬間、あなたは「最大公約数の退屈」という名の罠に、自ら足を踏み入れることになる。
・セグメンテーション:市場を意味のある切り口で細分化する。
・ターゲティング:その中から自社が狙うべき対象を定める。
・ポジショニング:ターゲットの脳内に自社の独自の立ち位置を築く。
ここでの判断を一つでも見誤れば、その後にどれほど高名なクリエイターがデザインした企画書であっても、どれほど多額の広告予算を投下したプロモーションであっても、すべては「誰にも刺さらない」無駄骨に終わる。戦略がブレている企画は、羅針盤のないまま嵐の海へ漕ぎ出すようなものだ。
現代のビジネスパーソンにとって、この極めて重要な意思決定をAIがどう支援し、あるいはどう「誤導」するのか。そこには、教科書を読んだだけでは決して到達できない、プロの実務家だけが知る深い淵がある。
■2. セグメンテーションの罠:デモグラフィック属性の限界
世の中にあふれるマーケティングの入門書を開けば、必ずと言っていいほど「セグメンテーションの例」として、年齢や性別、居住地といった属性(デモグラフィック属性)が挙げられている。
「20代・都内在住・独身男性」
「40代・働くママ・子育て中」
しかし、断言しよう。実務において、このような属性だけで市場を切り分ける手法は、今や「失敗の代名詞」である。
考えてもみてほしい。同じ「30代女性」であっても、キャリアの成功に情熱を燃やす人もいれば、週末のキャンプに人生の悦びを見出す人もいる。価値観、生活シーン、あるいは今この瞬間に抱えている切実な悩みは、千差万別なのだ。にもかかわらず、属性という外見上のタグだけで市場を区分けしようとするから、AIに指示を出した際にも「どこかで見たような、最大公約数の退屈なターゲット像」しか返ってこないのだ。
真のアプローチは、顧客がその商品を手に取る「文脈」や「未充足の悩み」に焦点を当てることにある。
「性別や年齢で切るのをやめ、〇〇という状況で××という不便を感じている(つまり、ニーズを持っている)人、という切り口でセグメンテーションしてくれ」
この一言を添えるだけで、AIから出力される回答の解像度は劇的に変わる。世の中の「間違った常識」を捨て、AIにどのような「切り口(ロジック)」を与えるか。そこに指揮官としての腕の差が如実に現れるのだ。
■3. ポジショニングの盲点:二軸のラベルを「願望」で決めていないか?
ターゲットを絞り込み(ターゲティング)、次に待ち受けるのが「ポジショニング」だ。ここで定番となるのが、二本の線を交差させたポジショニングマップである。
多くの企画書で見かけるポジショニングマップには、共通の「欠陥」がある。それは、二軸のラベル(評価軸)を「高品質 × 低価格」といった、自社にとって都合の良い、あるいはあまりにも抽象的な言葉で設定してしまうことだ。これは戦略ではなく、単なる「願望」の投影に過ぎない。
ポジショニングの鉄則は、「顧客視点」で軸を決めることである。だが、具体的にどうすれば真の顧客視点に立てるのか? 多くのマーケティング本は、この最も肝心な「二軸の決め方」を明記していない。
私の構築したプロンプトには、このブラックボックス化された「二軸設定のロジック」が組み込まれている。
顧客が購入決定時に「本当に比較している要素」をAIに抽出させる。
その軸が、自社の強みと矛盾なく接続されているかを検証する。
この「キモ」を知らなければ、AIにどれほど美しい図解を作成させても、競合他社と似たり寄ったりの、競争力のないマップが描かれるだけだ。
■4. まとめ:AIを「作業者」から「戦略家」へ
ターゲティングにおける魅力度の判定や優先順位付けといったロジカルな判断はAIが得意とする分野だ。しかし、その前段階にある「どの切り口で市場を見るか(セグメンテーション)」や、最後に「どのような価値で勝負するか(ポジショニング)」には、依然としてプロの洞察と人間的なインサイトが不可欠である。
IPAの『DX動向調査2025』によれば、データ主導のマーケティングが加速する中で、AIというツールを自社のビジネス変革スキルと統合できる人材こそが、次代のリーダーとして求められている。AIに作業をさせるのではなく、AIと対話し、戦略を練り上げる。そのプロセスこそが、一人の生産性を組織規模に拡張する生存戦略なのだ。
PwCの『生成AIに関する実態調査2025』が示す通り、AIの成果格差は「人間側のフレームワーク力」に収束しつつある。
3月9日のセミナーでお渡しするプロンプト集は、後日2,980円で販売予定の「思考のテンプレート」だ。ここには、私が30年のコンサルティング現場で血を流しながら学んだ、STPの「歪み」を正すための命令系統が詰まっている。
だが、勘違いしないでほしい。プロンプトをコピペすれば魔法のように企画が完成するわけではない。
AIが吐き出した膨大な選択肢の中から、どれが「本物」かを見極めるのは、最後はあなた自身の審美眼だ。セミナーでは、単なる使い方のレクチャーではなく、AIという鏡を使って、あなた自身の「戦略眼」を磨き上げる演習を行う。自分のビジネスの『勝ち軸』を見つけ出す方法を、その場でつかみ取っていただきたい。
教科書をなぞるだけの「優等生の失敗」から、そろそろ卒業しよう。
【根拠情報(エビデンス)】
・PwC:生成AIに関する実態調査2025
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2025/assets/pdf/generative-ai-survey2025.pdf
・独立行政法人 情報処理推進機構(IPA):DX動向調査2025
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/tbl5kb0000001mn2-att/dx-trend-2025.pdf
■編集後記:セミナーへのご案内
AIに「答え」を求めているうちは、あなたはAIに代替されるのを待つだけの「部下」です。
AIに「問い」を投げ、その回答を自らの意志で取捨選択する。その時、あなたは初めて「指揮官」として、AIという巨大な知性を乗りこなすことができる。
3月9日、その「乗りこなし方」の勘所を、すべて手渡します。
ところで、今あなたが手掛けているその企画の「ターゲット」は、今夜、何に怯えて眠りにつくのでしょうか?

▼ セミナーの詳細確認・お申し込みはこちらから
当日は、私が実務で磨き上げた『完全版プロンプト集』を配布します。これはセミナー後、単体でも2,980円で有料販売する予定のものですが、受講者の皆様にはその『使いこなしの極意』と共に、受講料のみで無料でお渡しします。
【マーケティングコラム第139回】
#生成AI #マーケティング #STP #セグメンテーション #ポジショニング #ビジネス #マーケティングコラム #金森マーケティング事務所
■実務で使える生成AI活用術:指揮官のプロンプト思考のマガジンはこちら
■マーケティングコラムのマガジンはこちら
■生成AIの戦略的活用:組織変革から人間だけの聖域までのマガジンはこちら
自己紹介
noteお仕事依頼・お問い合わせフオーム
いいなと思ったら応援しよう!
ありがとうございます!
これからも頑張ります。