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Ringoがやってきたヤァ!ヤァ!ヤァ!(1)

 私がここで使っている名前、Ringoは愛犬の名前である。Ringoというとこちらの人からは、リンゴ・スター?ビートルズのファンなの?と聞かれる。というわけでタイトル。Ringoがやってきたヤァ!ヤァ!ヤァ! 。

 このタイトルは、ビートルズ主演映画の邦題タイトルパロ。「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」ちなみに原題はA Hard Day's Night。いつの時代も映画の邦題って謎のセンスが光っている。

 とまぁ、そんなタイトルだが、Ringoはビートルズのドラマー、リンゴ・スターのリンゴではなく、日本語の林檎からきている。夫であるアルゴが名付けた名前。だが、アルゴはアレルギーのため林檎を食べることができない。「りんごみたいにかわいいってこと♡」などと言っていたが、彼が林檎をかわいいとか言っていた記憶は全くない。

 犬を飼うというのは大きな責任が付きまとう。家を購入する前に、おうちを買ったら犬を飼おうね、などとぼんやりとは話してはいたけれどなんせ生き物なので、ほいっと買って、ほいっと飼い始めるなんてことはできない……はずだった。

「あのさ、あのさ(←ここだけなぜかハキハキした日本語) I bought a dog, will bring him to home later on today」

 9月のある日。仕事中にいきなり電話が来てアルゴはそう言った。犬買ったから、あとで家に連れて帰るね。

「は?!犬?……え、は?ちょっとまって。犬買ったの?どこで?っていうかなんで?」

 オフィスにいたが私は思わず大声で叫んだ。ちなみに、私がこのようにオフィスにいても、アルゴの唐突な思い付きや行動に電話で大声を上げるのはすっかりお馴染みになっており、私は同僚たちにごめん、と言って廊下へと出る。もちろん、同僚たちはすでにアルゴがまた何かしでかしたことを察知しているのでニヤニヤと笑っている。ちなみにこの唐突な思い付きで過去に彼はスペインを徒歩で歩いている(詳しくはこちら

"I went to a mall, am  falling love with this dog, and he is  falling  love with me too!!! so he must came to home with me" いやさ、モールに行ったらさ、この子に恋したの。この子も俺に恋したから、家に連れてかえらなくちゃいけないんだよ。

 いけない?とは?……must というのは強い言葉なのだ。いやいやいやいや。犬なんてそんなほいほい気軽に買うものではないし、うちには何の準備もできていないし、てかなんで平日の真昼間にモールにいるのか。というか、私だって犬を選ぶ権利というか、こう、いろいろ考えたいしとまくし立てた私に、「いや、だって家買ったら犬ほしいねって言ってたじゃん?だから」などと平然として答える。

 そう、家を買ったの。買ったばっかりだからね!3月に!全財産、使っちゃったからね!君のしつこい要請により馬鹿みたいにでっかいテレビも買ったし、カウチだって5月に買ったばっかりなの。今のうちにはお金、ないの!!!全然!お金、どうしたのよ?ペットショップの犬なんてクッソ高いやろが!と、私は再度、大声を上げたのだけど「心配ないよ〜。全額支払ったョ〜。あ、餌とかベッドとかさ、いろいろ買わなくちゃいけないからまたね」と電話は一方的に切られた。私は脱力してデスクへと戻った。

 ……なんなんだ、この男……流石に慣れたとは言え、それでもあんまりだ。アルゴは欲しいと思ったものはすぐ買う。そして宵越しのお金は決して持たない。その日は、彼のその2つの悪癖が同時発動したのだ。

 というわけで5年前、アルゴが唐突に連れてきたヨークシャーテリアの子犬、リンゴはうちの子になった。なるほど、これは恋に落ちちゃうね……リンゴとの初対面で私はそう思った(このようにアルゴの唐突な思い付きを受け入れてしまうのでアルゴは好き放題するのよ、とおばたちにはよく叱られる)

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  子供の頃、私もアルゴも犬を飼っていたけど親がほとんど面倒をみていた。なので、リンゴが来たばかりの頃は犬を飼う知識はほとんど皆無。しかもリンゴは体の弱い子だった。うちに来て3日ほど経つとぐったりとしてものすごい咳をするようになった。ペットストアに紹介された獣医に連れていったら、「この子は育たないよ。今のうちにクレームつけて別の子にするといい」と言われ、私たちは激怒した。たった数日だったけれど、私たちはリンゴにすでに愛情を抱いていたし、何としても助けたかった。いきものなのだ。いのちなのだ。そんな鍋を買ってやっぱ気が変わったから返品するわ、なんて簡単なものではない。大憤慨して、別の獣医に連れて行った。獣医なのにそんな風に簡単に言い切れるその人の意味が分からなかった。そして別の獣医さんに教えられたこと。

「多分ね、ペットストアとその獣医、そしてブリーダーはグルなのよ。よくあるんだけど、パピーミルから連れてきた子犬たちは元気がなかったり、成長がよくなかったりするの。そこに大量のステロイド剤を投与されるの。そうしたらお店にいる間は元気なの。この子も多分そう。でもステロイドの効果って2週間くらいだから、切れてくると元気がなくなったり、具合が悪くなる子がいるのよ。そのせいで亡くなる子犬もいるし、お店にクレームをつけるとなんだかんだと理由をつけて別の犬を売りつけたりするの。この子はステロイドが切れた状態になっただけだと思う。適切なケアをすれば元気になると思うから頑張って」

 と、そんな風に言われ私は初めてパピーミル、犬でお金を稼ぐために劣悪な環境で犬を繁殖する場所。それを受けいれる悪徳ペット業者などの存在を知った。世の中にはそんなひどい人たちもいるのかと大憤慨した私とアルゴだけど、犬を飼うようになって、改めてペットストアに行くと数えきれないほどの餌やおやつ、ケアグッズ。犬がいないときはまったく気にもしていなかったけど、なるほど、ペット産業というのは大きな市場なのだなとわかる。後になって、このペットストアは悪徳業者だと摘発され、営業停止になっていた。

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 それから私たちは必死にリンゴを看病し、3か月ほどしてようやく元気になった。その頃にはリンゴもすっかり慣れて家の中でピコピコと尻尾を振りながら私やアルゴの後をついてくるようになった。その姿と健気さに私達はメロメロになった。そして今もメロメロだ。リンゴと暮らすようになって、犬の飼い方の本や動画、ネットでいろんな情報を集めた。

 リンゴと暮らし始める前、私たちは長いことフェレットを飼っていた。そのフェレットが15年ほど生きて、亡くなった時にもう生き物は無理……と思っていたけれど。リンゴが来た頃、アルゴは精神的にとても不安定で、上がったり、下がったりしていた。元々、幼い頃からメンタルヘルスに問題のある人なのだ。双極性障害と診断されており、彼の場合はRapid Cycle、特に早いスピードで躁と鬱の状態といったり来たりしていた。過剰なアルコール摂取やドラッグまで使っていた時期があったので、リンゴがいてくれて本当に良かったと思う。あの時期、そして今もだけど、子供のいない私たちにとって、リンゴはとても大きな存在でもあった。もしもリンゴがいなければ、アルゴは精神的にもっと追い詰められていたと思うし、私もそんなアルゴを見放して別れていたと思う。りんごは、セラピードッグではないけど、彼がいてくれることで私達は結婚生活を維持できたと思う。だから、リンゴは私達を支えてくれた大きな存在なのだ。リンゴを通して会話ができた。リンゴを通して一緒に散歩をした。

 ただいてくれるだけで、生活が変わる。ただいてくれるだけで、やさしい気持ちになれる。アルゴが後先考えずにつれてきたリンゴだったけれど、今はもう彼抜きの生活なんて考えられない。

 そして、幼い頃、大量投与されたステロイド剤のせいで今のリンゴには歯に問題がある。普通の犬より歯が弱く、脆い。もともとヨークシャーテリアは歯に問題が多い犬なのだけどそれに輪をかけて色んなケアがいる。許すまじ……悪徳ブリーダー、パピーミル。

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(その2に続く)

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