32歳、気づけばそこに白髪アリ。
この1年で猛烈に増えたものがある。白髪である。
31歳だった昨年は「うお。1、2本あるな〜」くらいだった。予定がある日の朝、夫を鏡の前に呼び出し「これとこれを抜いてくれ」と頼めば済む話だった。

それが32歳のいまでは、てっぺんに白髪。めくれば白髪。めくればめくるほど白髪アリ…という具合だ。
20代の頃、銀行窓口として働いていたときの髪型は必ずハーフアップだった。ああ、あの日々はなんて輝かしかったのだろう。今ハーフアップなんかしたら、白髪たちがここにもいるよ〜ん!と主張が止まらない。
まさか30代前半でこうも、白髪が増えるとは。ショックだ。かなりショックだ。鏡を見ては騒ぐわたしに向かって、4つ上の夫が「俺も30過ぎてから増えた気がするわ〜」と言った。そうか。これが、30代ってやつなのか。
いや、でも受け入れられない。これは本当に老いなのか?何か原因があるんじゃないか?3年間、育児を頑張ったからなんじゃないか?スマホで検索魔になるわたし。ネットが言う大きな原因のひとつ、【加齢】というパワーワードをフル無視してさらなる原因を探った。
白髪の原因には紫外線ダメージもあるらしい。きっとこれだ。これに違いない。思い当たりすぎる。
息子と買い物に行けば、「こうえん、いくぅうううう!!!」と要求され、わたしの頭皮は何かに守られることなく、公園でがんがんに紫外線を浴びまくった。それも10分とか20分とかでは終わらない。
どうして息子の帽子は持っているのに、自分の帽子は持って来なかったのだろうと、学ばない自分を悔やみ続けたのである。
それから、ストレスも原因のひとつらしい。これまた思い当たりすぎる。息子が2歳になった頃から幼稚園に入園するまでが大変すぎて毎日怒り狂っていた。自律神経が乱れて仕方なかっただろう。
32歳になってから、わたしの悩みは育児と白髪という感じで、出会った人の頭をチェックする癖がついてしまった。
年齢が近そうなママ友のてっぺんを見ては「あれ、白髪ないぞ?」と不安になり、2つ上の姉が「最近、白髪出てきたんだよね〜」と言えば、おお!仲間発見!と嬉しくなったり。でも、2歳差って大きいよな?32歳では白髪なかったってことか?と悲しくなったり。可愛い友人の後頭部からちょろりと1本見えたとき、こんなに可愛い子でも白髪があるのか!と嬉しくなったりした。
とはいえ、他人の頭と比べても仕方ない。まずはプロに助けを求めようと思い、美容師さんに白髪の悩みを打ちあけることにした。
「白髪増えてきたんですよね〜」
「え?どこですか?」
「え?ないですか?最近抜いたからな〜」
「…抜くの、やばいですよ!!!」
やばいらしい。やばい。めっちゃ抜いてた。抜いたらいけないとは知っていたけれど、そんなにやばいとは。その美容師さんが言うには、抜くとその毛根が傷つき、毛が生えなくなるらしい。つまり白髪どころか将来的なハゲにつながると言う。
抜いちゃいけないなら、じゃあどうすればいいんだと聞くと、血行不良も白髪の原因らしく、頭皮マッサージやヘッドスパがいいよと教えてくれた。それから、根元から切るのがいいらしい。

マッサージ中の顔にいつも悩む。
美容師さんからのアドバイスを聞いて、25歳の頃に出会った美容師さんを思い出した。
当時、行った美容院でお世話になったのは40代のベテラン美容師さん。わたしの髪質について詳しく教えてくれる人だった。
「かなまるさんの髪の毛はね〜30歳が近づくにつれて細くなっていくよ。アホ毛が増えるから、いまのうちからケアするといいよ!」とか「ヘッドスパがおすすめだね」とか。
まだ若かったわたしは「ほえ〜」と、アドバイスを右から左へ流した。美容院代は安ければ安いほどよい。カット・カラー・トリートメントだけでもかなりの出費だ。ヘッドスパに使うお金はもったいないと思っていたのだ。それに当時、髪の悩みは、くせ毛嫌だな〜くらいで30代の悩みなんてわからなかった。
結局、その美容師さんに世話になったのは数回のみ。使えるクーポンを使い切って、違う美容院へと浮気したのだ。若い頃は価格重視で行ったことのない美容院を開拓し、新規クーポンを使いまくっていた。
32歳の今、ああ〜あの美容師さんの言うことを聞いときゃよかったなと思うのである。そのままお世話になっていたら…。あの頃から髪を労り、頭をほぐす習慣がついていたら…。とタラレバが止まらない。結局、人生なんてそのときにならないと、わからないことだらけなのである。

あれから半年ほど経ち、息子が幼稚園に通うようになった。勢いで生きていた日々が落ち着き、やっと自分の時間が持てるようになった。今こそ、失いかけていた美意識を取り戻し、白髪と向き合うときだ。
そんなわけで25歳の頃、髪質について教えてくれた美容院に出戻り、ヘッドスパを受けてきた。
それはそれは最高に気持ちよかった。薄暗い空間は寝てもいいですよ〜と言ってくれているような安心感。痛すぎも優しすぎもしない、いい感じの力でほぐされる頭と首。体がじんわ〜りとあたたまる感じがたまらなかった。
子育てが始まった頃からヘッドスパしたらよかった。ガミガミと怒り、睡眠不足で、日中は公園。子どもの栄養は多少気にするのに、自分はスタンディング卵かけご飯。せめて、美容院の時間だけは自分を労ってもよかったのかもなあ。ヘッドスパを終えて、そんなことを思った。当時はひとりになれるだけで、美容院に行けるだけで、カット・カラーできるだけで十分、幸せだったのだけど。
美容師さんが言うには、ヘッドスパで白髪がなくなるわけではないらしい。そりゃ、そうか。でも、白髪を遅らせる効果はあるようだ。
そのほかにも、シャンプーを変えるといいよとか茶髪+ハイライトだと目立ちにくいよとか、白髪対策とこれからの髪の労わり方を教えてくれた。美容師さんは当時と変わらず、とても親切でこの美容師さんについて行く!と誓ったのだった。
これらの仕入れた白髪情報を伝えたい人がいた。同い年のいとこである。同じ小中学校に通い、中学のテニス部ではペアを組み、中学・高校時代は同じ塾に通った。社会人になってからは同じ会社に就職。青春時代もいまも、いつもそばにいてくれる子だ。
そんな大切な、いとこも同じような悩みにぶち当たっているかもしれない。この仕入れた白髪情報を伝えようとした日。
「ねえ、白髪生えてる?」と聞けば、「生えてるー!めっちゃ抜いてるよ!」と言う。おお、これは伝えがいのある反応だ。「抜くとハゲるらしいよ!」。自信を持ってそう伝えると、「知ってる知ってる!でもさ、わたし毛量多いから、まあいいんだわ!」と言うではないか。
確かに、彼女のてっぺんは、ものすごい量のしっかりとした髪の毛で埋め尽くされている。「そんなん、かまわんわw!わたしは抜くよ!」とケロッと言う彼女がかっこよくて羨ましいと思った。
そう伝えると彼女は、「かなまるちゃんの細い髪の毛が羨ましい」と言った。頭皮が見え見えで1本抜くと大ダメージを喰らいそうな、この髪質が羨ましいとは。
たかが白髪。されど白髪。受け取り方は人それぞれだ。そして、人生とは、どこまでもないものねだりなのだ。
潔すぎるいとこを見て、白髪ってそこまで気にしなくていいのか?と思った。けれど、やっぱり今日も今日とて、すれ違う人の白髪チェックをやめられずにいる。

