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ryokan1123
クリームソーダ
それは、真っ赤なさくらんぼが、のっていた。
ビー玉みたいな、緑色のソーダ。
大きい雪玉みたいな、白いアイスクリーム。
幼き日の思い出。
祖母と飲んだクリームソーダが、今でも、ふと、目の前に蘇る。
田舎の駅ビル、片隅にあった喫茶店。
澄み渡るような初夏のある日。
百貨店での買い物帰りに、祖母が連れて行ってくれた。
しわだらけの手を、柔らかくつないで。
店前のケースには、色褪せた食品サンプル。
少し古びた店内には、どこか懐かしい空気と音楽。
よくあるメニューは、子どもながらに、数字が多かった。
そこで生まれて初めて、クリームソーダを飲んだ。
味は、そよ風みたいで、
でも、どこか、ふつうだった。
さくらんぼは、甘酸っぱかった気がする。
それから、あの喫茶店に行くことはなく、
気づけば、手のしわが、少しずつ増えていった。
ある日、通りかかったときには、
喫茶店はもう、跡形もなかった。
祖母も、いつの間にか、空高くへ昇っていってしまった。
まるで、すべてが、泡だったみたいに。
今はただ、
あの夏のクリームソーダが、溶けずに残っている。
甘酸っぱい種とともに。
