ヴィンテージ・ブラウス
子育てにはカネがかかる。
少しでも出費を減らそうと、スーパーで1円でも安い「おつとめ品」を選んだのに、意図して置かれたとしか思えない出口付近のガチャガチャで数百円使わされることもある。バカげている。
切り詰められるところは極力使わずにいたいのだが、幼稚園の制服がまさにそれ。一式新品で揃えたらいくらかかんのよ。最近はフリマサイトで手に入るものもあるし助かる。
今から20年ほど前、そんなサイトなんて無い時代。実母はあらゆる手を尽くし東奔西走、我々子ども達の進学先の指定衣類のお下がりを調達してきた。対象は制服から通学カバン、指定体操服にまで至る。どんなコネクションを駆使したのか、今となっては感動もの。ただ、デザインが旧バージョンだったり体操服の生地が薄過ぎてスケスケだったりしたのには、子どもなりに思うところがあった。でも貰い物の指定通学カバンが、中1の分際でクッタクタに潰れていたのには得意顔だった。
自分が親になり、この「お下がり文化」の有り難みをひしひしと感じる。
たまたま知り合った幼稚園のお姉ちゃん達が卒園の際、制服をほとんど一式譲り受けたのは万歳ものだった。
頂いた衣類の量は膨大で、ブラウスなど夏冬用合わせて10枚近くある。どれも非常に状態が良い。もともと幼稚園の方針で、制服は登下校時しか着ないため(他の時間はほとんど「遊び着」を着用)、綺麗に保存出来ているようだ。
頂いたブラウスに記名しようと、布地の裏面に設けられた記入欄を見て、手が止まる。
「さとうしょうた」、斜線で消し横に「たなかこうへい」、斜線で消し横に「すずきゆうき」、この下の名前だけ斜線で消し横に「まい」の文字が。(すべて氏名は完全仮名)
…うちの子、つまり、5人目…?
これを譲ってくれたのは、最新記名の「すずきまい」ちゃんである。まさかまさか、先代計4名の園児が、このブラウスに袖を通してきたとは。想像を超えてきた。名前多すぎ、上書き上書き上書き上書き!
なんと歴史ある、ヴィンテージ・ブラウスではないか。初代のしょうたくん(仮)は、今おいくつよ。
それぞれ書体の違う、ひらがなの名前を見つめる。
ブラウスには、袖を縫い上げたり、ボタンを付け替えたり、ワッペンを縫い付けたりした跡が残る。幼児が着やすいように工夫してきたのだ。そんなお母さんたちの思いがつまっているヴィンテージ・ブラウス。想像するだけで胸がいっぱいになる。きっとたくさんの子育ての記憶を持っている。子ども達の成長を見守り続け、巡り巡って我が家にやってきた1枚。大切に着させよう。
このブラウスが、レガシー(?)として、今なお現役で受け継がれていることを先輩母の皆さまに伝えたい。よく分からないけれど、有難う、と何故か言いたい。脈々と続く歴史に名を連ねる1人となれたこと、大袈裟にも光栄に思う。
そしてもちろん次女にも着させるつもり、待ち受ける6人目。記録は更新されてゆく。
ヴィンテージ・ブラウスよ、どうか我が子達を宜しく頼みます。
そして誉れある7人目、ご希望の方はどうぞご一報を。
