エッセイ|生後3ヶ月の昼下がりと、400円の洗車機
■ 終わらない日々と、背中スイッチ
生後3ヶ月の子供とずっと家にいると、今日が何曜日なのかほんとにわからなくなる。
毎日、ミルクを作って、おむつを替えて、抱っこして寝かせる。ひたすらそれの繰り返し。ずっと細切れにしか寝ていないから、頭は常にぼーっとしている。
今日の午後。家でどうしても泣き止まなくて、とりあえずチャイルドシートに乗せて車を出した。
あてもなく近所をぐるぐる走っていると、後ろからスースーと寝息が聞こえてきた。やっと寝た。
ここで家に帰ってチャイルドシートから降ろすと、背中スイッチが入ってどうせまた起きて泣く。もう少し寝かせておきたくて、そのまま近くのガソリンスタンドに入った。
■ 泡だらけの窓と、何もしない時間
車は別に汚れていない。先週ちょっと雨に降られたくらいだ。
でも、機械のパネルで一番安い400円の洗車ボタンを押した。
「ギアをパーキングに入れてください」
機械の声のあと、でっかいブラシがバチバチと音を立ててフロントガラスを叩き始める。
車の中はすごい轟音だけど、後ろの子供はピクリともしない。
家の中じゃ、ちょっと皿洗いの音を立てただけで起きるのに、ほんとよくわからない。
カーシャンプーの泡で窓が真っ白になって、外が完全に見えなくなる。
この数分間だけは、何もしなくていい。
次のミルクの時間も、晩ごはんの準備も、泣き声に焦ることもない。ただ運転席に座って、目の前の泡が流れていくのを見ているだけ。
それが今の自分には、ただありがたかった。
■ 青いタオルと、必要な無駄遣い
強風で水滴が飛んでいって、洗車が終わった。
拭き上げスペースに車を停めて、音を立てないようにそっとドアを開ける。スタンドの隅にある、使い古してガサガサになった青い貸出タオルを2枚手に取った。
別に車をピカピカにしたいわけじゃない。
ただ、子供が起きないうちに急いでボディの水滴を拭いていく。タオルを絞って、また拭く。
無心で手を動かしていると、寝不足で重かった頭がちょっとだけマシになった気がした。育児と違って、拭いたらちゃんと水滴が消えてくれるから、それだけでなんかホッとする。
ざっと拭き終わってタオルをカゴに返し、運転席に戻る。
後ろを振り返ると、子供はまだ口を半開きにして寝ていた。
汚れてもない車に400円使うなんてただの無駄遣いに思えるけど、今日をなんとかやり過ごすためには、自分にはどうしても必要な時間だったんだと思う。
さて、そろそろ帰ろう。
ウインカーを出して、またいつもの家に向かって車を走らせた。
かなめ
