Netflix映画🎥「This is I」
周囲の偏見に苦しみながらも、"聖子ちゃんのようなアイドルになりたい"と熱望する少年、ケンジ。あるショーパブに居場所を見つけたケンジは、先駆的な医師との出会いを経て、アイとして輝き始める。
Netflix映画『This is I』を鑑賞。
2007年に“エアあやや”で一世を風靡したはるな愛さんの半生をモチーフに、夢を追い続けたひとりの少年と、人生を変えた医師との出会いを描いた作品。一言で言って、とても良かった。
🌸特別な2人🌸
アイと和田先生の関係は、言葉ではとても言い尽くせないほど特別なものだったんだなと観ていて強く感じた。互いの存在が互いの救いとなり、生かし合っていた─そんな二人の深い結びつきが、静かに、けれど確かに心に響いてくる。LGBTという言葉も、《性同一性障害》という概念もほとんど知られていなかった時代に、強い信念を持ってアンダーグラウンドにいた人々を光の下へ導いた和田先生の姿とアイの歩みは、単なる医師と患者という関係を超えて「自分らしく生きる」ことの強さと、それを支え続ける人の深い愛を伝えてくれている。
🌸やさしい行進🌸
観ていて強く心に残っているのは、ケンジが初めて女性の格好で心斎橋を歩くシーンだ。赤いドレスでアーケードを進むアイの姿がただただ美しいと思った。“エア”ミュージカルに加わる人たちは、年齢も装いもさまざまで、子どももいれば、中年の人も、女子高生もいる。同じ人はひとりとしていなくて、ただ、それぞれのままで楽しそうに踊っている。その光景は、「自分の人生を生きる」と決めたアイを、そっと祝福しているようにも見えた。
アイのまっすぐな輝きと、彼女を包み込む人々のやさしさも、静かに胸に残っている。周囲の人たちが「アイちゃん」と呼ぶ声はどれも柔らかく、あたたかい。とりわけ後半のアイとお母さんの場面では、胸の奥が満たされていくのを感じた。
昭和から平成へと続くアイドルソングのミュージカルシーンに、自然と心が弾む。画面の向こうの出来事なのに、物語の中で生きる人々の息づかいが、すぐそばにあるようだった。
観終えたあともしばらく、その光景が目に焼き付いていて、静かな余韻が残っている。
🌸宝石のような輝きと、それに寄り添う人の温かさ🌸
キャストの皆さん達も本当に素晴らしかった。望月さんのキュートでまっすぐな魅力、そして斎藤工さんの静かに寄り添うような佇まいがあったからこそ、この関係性の尊さがより鮮明に伝わってきたのだと思う。斎藤工さんがインタビューで望月さんのことを「宝石のよう」と表現されていたけれど、その言葉に心から共感した。
🌸やさしく、温かい光の残る場所🌸
「ありのままの自分で生きる」ってみんな結構簡単に口にするけど、結構難しいことだと思う。最近は「多様性」という言葉がよく使われるようになったけれど、世の中の常識や固定観念に縛られて差別や偏見に傷ついている人はきっと少なくはない。
自分を愛することも、意外に簡単ではない。今の自分と、昨日の自分。1カ月前の自分、もっと前の自分。すべて同じ自分のはずなんだけど、少しずつ違っている。考え方も、大切にしたいものも、その時々で変わってきた。だからこそ、「これが自分だ」と言えるような〝軸〟になるものを、焦らずこれからの人生で見つけていきたいと、この作品を観て思えた。
人に寄り添い、静かに支え続けること──。控えめにも映るその在り方にこそ本当の美しさがあるのだと、この作品はそっと教えてくれている。観終えたあと、心の奥にやさしい光が残る。そんな余韻をまとった、温かい作品だった。
📚原作『性同一障害を救った医師の物語』📚
「This is I」を観た人にはぜひ、この原作本も読んでみてほしい。「This is I」で斎藤工さんが演じた和田耕治先生の壮絶な生涯について書かれている。性転換(性別適合)手術が社会的に異端視されていた時期に、「たとえ罰せられても医師として覚悟の上」という強い信念で、数多くの人々を救ったその姿は、ひとりの医師の物語を超えて、人が「自分らしく生きる」ことについて改めて考えさせられる。

