見出し画像

🌙 好きを仕事にして、続けた20年と手放した日のこと

PCインストラクターとして歩いた日々

PCインストラクターとして歩いた20年間。
それは、思っていたよりずっと複雑で、
苦しくて、でもあたたかくて、
人生の中心に光るような日々でした。


はじまりは、“好き”だけだった。

研修が始まった頃の私は、
ただ 「教える仕事に挑戦したい」 という気持ちだけで動いていました。

テキストの教え方を覚えて、
授業の練習をして、
毎日振り返りを書いて——
気づけば眠るのはいつも深夜3時。

若さと勢い。
そして「好きだからがんばれる」
という気持ちだけで
走っていたように思います。

だけど、ある日静かに気づきました。

「好きだけじゃ続けられないんだ。」

好きなことを仕事にするというのは、
誰より努力することであり、
誰より悩むことでもある。
その現実を知ったのは、この頃でした。

でも、同期の仲間たちが支えでした。
一番年下だった私を家族みたいに可愛がってくれたこと。
あの頃があったから、今の私があります。


“教える仕事”の裏にある現実。

教室デビューをしてからは、さらに忙しい日々。
パソコンを教えるだけではなく、
学校経理、生徒管理、営業活動……
なんでもこなす毎日でした。

営業が苦手だった私は、
数字の成績が全国でランキングされるたびに
胸がギュッと苦しくなりました。

「生徒さんが増えた」と喜んだのも束の間、
同僚の先生から意地悪をされるようになったこともあります。
きっと、私のクラスに移る生徒さんが増えたのが
面白くなかったのかもしれません。

仕事は好きなのに、苦しさが増えていく日々。

「どうしてこんなに苦しいんだろう。」

何度もそう思いました。
でも、企業で働くというのは、
“好きなこと”だけでは成り立たないんですよね。

過酷な環境の中、
同僚が一人、また一人と辞めていく姿も
たくさん見てきました。


私が見つけた “芯” ——寄り添うということ。

そんな中でも、
私が絶対に手放さなかったものがあります。

それは、
「生徒さんの“できた!”を一番近くで支えること」

説明するとき、私はいつもしゃがんで目線を合わせました。
同じ高さで話す方が、不安がすっとやわらぐ気がしたからです。

私は転勤族の家庭で育ったので、
人の表情を読むのが得意です。
嫌われないように無意識に努力してしまうのも、
その経験から来ているのかもしれません。

だからこそ、
恥ずかしくて手を挙げられない人の気持ちがよく分かります。

「どうですか?」
「大丈夫ですか?」

そう声をかけると、
少しずつ表情が柔らかくなって、
心を開いてくれる瞬間があります。
その変化を見るのが、私のやりがいでした。

生徒さんとの時間だけが、
当時の私にとって大きな支えだったのです。


そして20年。私は “家族” を選んだ。

何百人もの生徒さんを教えて、
Windows 3.1 から Windows10 まで
走り続けた20年。
それでも私が「やめる」と決めたのは、
コロナが流行したときでした。

対面が当たり前の仕事。
生徒さんが一人でも来れば教室を開けなければいけない。
それが“インストラクターの責任”だと思ってきました。

でも、周りの景色は大きく変わりました。

家族全員が在宅勤務か休校。
子どもたちは家にいて、
旦那さんも家で仕事をしていて——
その中で、私だけが毎日外に出て働いている。

家を出るたびに、
胸の奥から小さな声が聞こえました。

「家族全員が家にいるのに、なぜ私だけ?」
「家族を危険にさらしてまで教室を開けるべきなの?」
「受験生の子どもにもし何かあったら……」

その “もしも” が、毎日少しずつ大きくなっていきました。


自分の「好き」や「やりがい」のために、
家族に負担をかけているのではないか。

そう考え始めると、
20年間積み重ねてきたものが
急にぐらぐらと揺らぎました。

「もしかして、私はずっと間違っていたんじゃないか。」

あれほど好きだった仕事なのに、
そう思ってしまう自分が苦しくて、情けなくて、怖かった。

でも同時に、こうも思ったんです。

「家族の時間を大事にできない働き方を続けていたら、きっと私は後悔する」

その瞬間、
心の中で静かにひとつの答えが固まりました。

——インストラクターを、やめよう。

“辞める勇気”ではなく、
“家族を守るための選択”。

そう思えた時、
ようやく20年間背負ってきたものを、
そっと降ろすことができた気がしました。


その後、在宅ワークもできるIT企業に転職し、
ちょうど学校に
1人1台端末が配られるタイミングで、
私は ICT支援員 という新しい道へ。

そこには、
売上も、数字のストレスもありませんでした。

ただ、

「困っている先生のそばで支えるだけ」

それだけで価値になる世界。

20年間大切にしてきた
“相手に寄り添う”という想い が、
新しい形でまた静かに光り始めました。

かななん


▶こちらもよかったらどうぞ。


いいなと思ったら応援しよう!