《ぼっちの刻印》〜闇人形(シャドウドール)は微笑まない〜
第一話:隔離された世界にて
ここは、《封印都市・チホウ》。
正式名称は「株式会社ミカゲ工業」(仮)。
社員数20名、うち19名が地元の高卒。
地方カースト最上位の地元民たちが牛耳る、閉ざされた世界。
そこに、“異物”はいた。
コードネーム《ぼっち》。
アラフィフ子持ちバツイチ、
入社5年目正社員にして月収19万。
配属先は庶務二課。
…そして、この会社に唯一、地元の【人間関係】や【しきたり】に従順ではない者。
ぼっちの背中には刻印がある。
そして手の甲に浮かびあがる紋章。
これは“同調”の拒絶。
誰とも波長を合わせないと決めた者だけに現れる、孤独の紋章(ルーン)。
孤独な彼女はいつも、駐車場の隅で地域猫としゃべっている。
「また、ひとりか?」
声がした。
ある朝、駐車場にいた地域猫が、言葉を発した。
猫の姿をしたそれは、古の契約によって生まれた“心なき戦闘人形”だった。
「うるさいな。あんたしか話し相手いないじゃん」
「今日もお局(エンプレス)にやられたのか?」
「“私語が多い”“ミスが多い”だってさ。私、ひと言もしゃべってないのに」
ぼっちはため息をつく。
この会社では、「無視」は最も洗練された攻撃手段。
空気のように扱われることは、時として暴力よりも心を削る。
だが彼女はもう慣れた。
ぼっちは、ぼっちだから強い。
誰かに期待しないから、裏切られもしない。
ただ、心の奥には小さな願いがあった。
この《封印都市》から出たい。
自由に、思うままに、魔法(才能)を使える世界へ。
そのために、今日も頭の中で作戦を練る。
note、X、ココナラ、クラウドワークス、オンライン日本語教師。
あらゆる可能性を試してみたが、まだ突破口は見つからない。
「なあ、ぼっち。外に出る覚悟はあるのか?」
「え?」
「この世界のルールを破るってことは、敵に回すことにもなる」
「……敵ならもうとっくにいるよ」
ぼっちは笑う。
その笑みは、かつて外資系航空会社グランドスタッフだった頃の柔らかいものではない。
生き抜くための仮面――戦士の微笑。
彼女の背中で、ぼっちの刻印が静かに輝き出す。
目に、微かに灯った紅の光。
魔力感知。何かが動いている。
彼女と地域猫の戦いは、今日も始まる。
地方の中小企業という名の迷宮(ラビリンス)で——。
(つづく)
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