第131回「夏の風は緑色に透き通る」
一面に広がる、風の吹く田んぼ道を歩くと、
DNAに刻まれているのだろうか、
なぜか懐かしいと感じてしまう。
まだ涼しい青い風が吹いている、5月の初旬。
水を張ったばかりの田んぼは、
反射して、青空を写し出す。
前をみても後ろをみても、
右をみても左をみても、
遠くの山のふもとまで遮ることがなく広がる、
一面の田園風景。
きっと100年前も、1000年前も、
同じように風が吹いていたのかなと、
水を張った田んぼを眺めながら、
ついそんなことを考えてしまう。
緑色の苗が、水面から少しだけ顔を出している。
ちびっ子苗だ。
まるで、やっとプールに足がついて、
かろうじて顔を出している子どものような、
そんな小さな苗たちが、
綺麗に等間隔で並んでいる。
そんなちびっ子苗たちは、
すぐに大きく育つ、
夏になると一面に広がる綺麗な草原になるんだ。
高くスラっと伸びた綺麗な緑色の稲たちは、
高い山のほうから吹いてくる風に、
波打つように、緑色が揺れ動く。
そうするとあたりは、
ザザァという葉の擦れる音しか聞こえなくなる。
緑色の風だ。
強い風が吹くと周りの音は聞こえなくなり、
ざわめく自然の音に囲まれる。
広がる自然の中で、
一瞬だけひとりぼっちになれる。
暑いのは嫌いなはずなのに、
どうしてだろう。
この"夏の緑色の風"が身体を透き通るように吹くときは、
とっても涼しくて、気持ちがいいと感じてしまう。
思わず目を閉じて、手を広げ、
吹く風を受け止めてしまう。
でも、夏の風は気まぐれだ。
ピタッと風が止んで、
次第に蝉の声が響いてくる。
風が通り抜けてしまったら、
やっぱりジリジリと夏の陽がさしてきて、
田んぼには、日陰がなく、逃げ場がない。
陽は高く、狭く小さい自分の影。
頭はまんまる、麦わら帽子の形の影。
もしこの世界に天気の神様がいたのなら、
もっと風を吹かせてよ!
って空に向かってクレームを入れているだろう。
緑色の稲は一体いつから色が変わってゆくのか、
それをはっきり覚えている年はなかったと思う。
9月にもなれば、
緑色に広がる景色はだんだんと黄色くなり、
あたりに吹く風は、
黄金色の風となって吹く。
低く落ちていく夕陽に照らされて、
稲はオレンジ色になる。
その季節になる頃にはきっと、
夏を終えてたくさんの思い出が増えていることだろうな。
と、想いを巡らせる。
この夏はどんな楽しいことがあるかなぁ。
ってことを、
まだ涼しい青い風が吹く5月初旬に考える。
桜の季節や、ひと夏の思い出は、
あと何回って数えることが多いけれど。
私は、
緑色に広がる一面の田んぼの景色が、
この先あと何回見れるかなって、
そんなことを考えてしまう。
昔からずっと変わらない景色。
次から次へ継ぐ、緑色に広がる景色。
娘が生まれてから、4度目の田植え。
今年もまた綺麗な緑色の風を見たいから、
子どもたちにもその風を感じてほしいから。
この景色を守っていきたいなぁ。
って。
片田舎の田んぼを眺めながらぼーっと考えていました。
。。
えーっと、最後に。
んんっ。
お米、最高っ!🍚
第131回目の投稿でした。
