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「孤高の天才未満」について考えて、発見したこと

 真っ白な画面に向かうとき、わたしはひとりきりである――なんて書いてみて、あまりにもありきたりの出だしに恥ずかしくなった。続ける気力をごっそりと奪われる。ごっそりと奪われるなんて言葉も、またありきたりだし。
 こうやって延々と駄目出しが続くのは、わたしがいま何も書くことがないだ。書くべき中身があれば、言葉なんてありきたりでも何でもいいと思うんだよ。中身がないのだからせめて、意匠をこらしていかないと、読む人に申し訳が立たないと思うからこそ、いたたまれない。だが、続けよう。いまわたしはコンクールに応募中なのだ。
 一時間で作品を書き上げる古賀コン。今回のお題は「孤高の天才未満」だ。言葉自体がキャラ立ちしすぎて、全然小説に折り込めない。物語も思いつかない。参加したいのに困ったと悩んでいたら、もう締切まで残り一時間半を切っていた。
 他の人の作品もチラ見して、みんな面白い作品を書いているなと感心する。やっぱりわたしはダメだなあと思って落ち込んでいたら、あれ、天才未満ってわたしのことじゃね? と気づいたわけで、自分を主役のエッセイにすれば簡単じゃないかと思い付き、ただそれだけで見切り発車したのがこのざまでして、だから、今のところ、書くべきことなど何もない。
 とりあえず、天才未満はクリアした気がする。問題はもうひとつ。孤高とは何か。
 ちょっとスマホで調べてみたら、「俗世間から離れて自分の志を守ること、またはそのさまを意味する言葉」とある(AIが答えてくれた)。あららら、これ、今のわたしに必要なことじゃないか。ずっと願っていることじゃないか。
 俗世間(=X)から離れて、自分の志(=小説を書く)を守ること。
 孤高。キョンシーのおでこに貼るお札のように、その言葉が荒ぶるわたしの魂をぴたりと鎮めた。ああ、わたし、孤高になればいいんだ。わたしに必要な言葉はこれだったんだ。本当にお札を作って常備しておこうかな。いつまでもだらだらとXを見てたら、スマホの画面に貼ってやるのだ。

 レッツ!孤高!

 というか、今、わたし、孤高してる。孤高!してるじゃん!最高!
 これこそが主催者の思惑なのではないか。
 一時間という時間に丸腰で放り込まれ指と目と頭を動かしていれば、俗世界から切り離される。孤高をしている。そして、誰かの評価を欲しい、選ばれたいと思って、コンテストに参加しているわけだから、わたしは天才に焦がれる天才未満であろう。
 他にも同じような人がいるんじゃないか?
 ほらほら、ほらほら、孤高の天才未満が次々と生成されていく。ぞろぞろとあふれ出て、世界の孤高率が高まっていく。
 ありがとう。古賀さん。孤高の時間をありがとう。
 孤高の間、現実のわたしは脳内で膨れ上がった理想のわたしと対峙する。大したことない文章しか吐き出さない現実のわたしを、理想のわたしが眺めて心底がっかりしている。だが、がっかりなんて余裕こいていられるのはほんの一瞬で、理想のわたしは現実のわたしに侵食される。がりがりと頭から食べられる。理想のわたしは現実のわたしにどんどん飲みこまれ強制的に同化されていく。
 書かなければ知らなかったのに。孤高にならなければ、ずっと理想のわたしはすくすく育っていけたのに。かわいそうに、ね。
 だけど、すくすくと育った理想のわたしは、やがて、誰にも通じない言葉を吐くようになるだろう。そうなってしまうと、わたしはきっと孤高ではなくなるだろう。孤独だ。孤高は志を守るために自らひとりになることで、孤独は誰からも相手にされないことだから、それらはあまりにも異なっている。天才に憧れたまま孤高から逃げていると、孤独になる。孤独は嫌だな。これが今日の発見だ。
 そろそろ終わりの時間が近づいたようだ。
 俗世間から離れて自分の志を守ること、すなわち、孤高をやりきったすべての戦士たちに拍手を!(パチパチ!)。

〈了〉


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