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What's Going On : Marvin Gaye

私がアフロ・アメリカンの音楽を聴くきっかけになったのがスティービー・ワンダーです。

スティービー・ワンダーをきっかけに、モータウン・レコードのミュージシャン、例えばシュープリームスやジャクソン5などを聴き始めた記憶があります。その流れでマーヴィン・ゲイも聴くようになりました。

初めて認識したのが、佐野元春の3枚目のオリジナル・アルバム「サムディ」(1982年)の収録曲、「ダウンタウン・ボーイ」の歌詞「♪~マーヴィン・ゲイの悲しげなソウルにリズム合わせてゆけば~♫」という歌詞からです。確かにマーヴィン・ゲイってちょっと悲しそうな歌い方をするんですよね。決して楽しげな音楽ではないです……あくまで私の印象です。

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■マーヴィン・ゲイ
ワシントンD.C.生まれのマーヴィン・ゲイはキリスト教プロテスタントの一派「ペンテコステ派」の説教師の父親の元に生まれました。父親は厳格で、しつけの範疇を超えた精神虐待をする人で、マーヴィン・ゲイは生涯トラウマになっていたそうです。ちょっと悲しい感じがするのも、生まれた環境の影響があるのかもしれませんね。でも、その一方で教会の聖歌隊に入り、歌をはじめ、ピアノやドラムなどの楽器を習得し、音楽の基礎を身につけました。

その後モータウンレコードの社長のベリー・ゴーディに見出され、アルバム「What’s Going On」(1971年)、「Let’s Get It On」(1973年)、「I Want You」(1976年)など数々のヒットを飛ばし、名実ともにモータウンレコードの看板ミュージシャンになります。

1984年、自宅で両親の喧嘩の仲裁をした際に父親口論になり、激昂した父親がマーヴィン・ゲイに向けて拳銃を発砲し、悲しい最期を迎えます。そのころマーヴィン・ゲイをあまり認識していませんでしたが、友達が「ソウルの有名なミュージシャンが父親に殺された」というようなことを話していたのをうっすらと覚えています。

■What’s Going On
アルバム「What’s Going On」はベトナム戦争から帰ってきた弟から戦場の悲惨さを聞き、書き上げた反戦歌でタイトル曲の「What’s Going On」をはじめ、貧困、警察の横暴、ドラック問題、環境問題など当時アメリカが抱えていた社会問題に切り込んだコンセプト・アルバムになっています。曲と曲の間の空白がなくシームレスになっているのも、マーヴィン・ゲイが何かを意識した様子が伺えます。

▼Mercy Mercy Me (The Ecology) - Marvin Gaye: What's Going On (album)

一曲目のタイトル曲「What’s Going On」を直訳すると「どうなっているんだ」とか「何が起こっているんだ」のようになります。まさにタイトル通り、社会における悲しみや不正義が語られる詞になっています。戦争や暴力ではなく、愛や理解こそが憎しみを乗り越える道だというメッセージ・ソングです。デモや抗議の対立に対しても、暴力ではなく、対話を通してお互いを理解するべきだと呼びかけています。

また、外見や考えで他人を判断するのは間違いだと訴え、互いの違いを受け入れる大切さを歌っています。今、社会で何が起こっているのか、私たちはどう変えていけるのかという問いかけと、平和と愛を求める強い願いが繰り返されている歌です。まさに、ジョン・レノンの「イマジン」とともに、全世界の人に、今聴いてほしい歌だと私は思っています。

訳詞を見たほうがよりリアルに感じることができます。
ちなみに、原曲は同じモータウンのヴォーカル・グループ、フォー・トップスのメンバーであるレナルド・“オビー”・ベンソンが反戦活動家に対して警察が行った暴行(血の木曜日事件)を目撃したことで作った曲です。しかし、政治的な内容だったためグループは歌うことを拒否、さらに社長のテリー・ゴディもリリースを拒否したそうです。

ベンソンは曲をマーヴィン・ゲイに託し、新しいメロディと歌詞を追加して、リリースにまで至ったそうです。リリースに関しては、またもテリー・ゴディと揉めたとのことを聞いていますが、今思えばリリースして正解だったと私は思っています。

以下、AI訳詞を記載します。

What's Going On <AI訳>

母よ 人々の涙があふれている
兄弟よ 多くの命が絶たれている
いまこそ道を見つけなければならない
愛をここに 今日この場所に運ぶために

父よ 争いを大きくする必要はない
戦いが答えではないのだ
憎しみを超えることができるのは 愛ただひとつ

人々は道に立ち 叫んでいる
だが 残酷さで私を罰しないでほしい
語り合おう そうすればわかるはずだ

「いったい何が起きているのか」その問いが胸に響く

母よ 彼らは私たちが間違っていると決めつける
ただ髪が長いというだけで 裁こうとする
だが 本当に裁ける者など どこにいるのだろう

いま必要なのは理解を見つけ出すこと
互いを認め合うことなのだ

憎しみではなく 理解を
暴力ではなく 対話を
「何が起きているのか」
その答えを探しながら、歩み続ける

私はどうしても歌詞の中の「You see, war is not the answer(わかるだろう、戦争は答えではない)」この言葉に心打たれてしょうがないのです。爆笑問題の太田光は何かの番組で「暴力を前に、たとえどうあっても我々(人間)は言葉を諦めてはならない」と発言したことがありました。

私も同感です。日本は戦後一度も暴力的な争いをしたことがありませんが、世界各地で今だに戦争が繰り広げられています。しかし、私も太田光の考えと一緒で、暴力(戦争やテロ)に訴えることは、言葉を得た人間が人間を放棄していると同じだと思っています。マーヴィン・ゲイもそのことを訴えたかったのではないでしょうか。

しかし、マーヴィン・ゲイが「What's Going On」を作ってから半世紀以上経ちますが、人間は何も変わっていないですね。音楽をはじめ芸術は政治家に対して無力なんですかねぇ。

ウクライナとロシアの問題、ハマスとイスラエル、さらに輪をかけてイランとアメリカ・イスラエルの問題まで起こり、世界中を大混乱に巻き込んでいます……。私は今だからこそこの歌を噛みしめてしいます。

▼What's Going On - Marvin Gaye: What's Going On (album)

■Marvin Gaye - What's Going On (Official Video 2019)
2019年、創立60周年を迎えたモータウンレコードがアニバーサリー企画の一環として、ワシントンD.C.で開催された連邦黒人幹部会での「”What’s Going On”から”Let’s Get Going”へ:芸術を通じた社会活動への貢献」を議題に掲げたパネル・ディスカッションのあとにサバナ・リーフ監督による「What's Going On」のミュージック・ビデオを公開しました。

サバナ・リーフ監督は下水道汚染問題、学校での銃乱射事件、ヘルスケア、警察による残虐行為など、現代における社会問題を投影させてミュージック・ビデオを作成しています。以下、ビデオ制作で語ったことを引用します。ちなみにサバナ・リーフとはイギリス系アメリカ人の映画監督・ビデオアーティストです。

この曲は歴史に刻まれる重大な瞬間について歌ったもので、そこに込められたメッセージが時代を超越し、普遍的であるというのは素晴らしいことです。そこには人の感情があり、人々の繋がりがあり、それが一丸となっているんです。このミュージック・ビデオが1971年当時にマーヴィン・ゲイが問いかけていたことを人々に呼び覚ますきっかけになれば嬉しいです。

サバナ・リーフ

こちらのミュージック・ビデオも素晴らしいのでぜひ。

▼Marvin Gaye - What's Going On (Official Video 2019)


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