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「#黒いキャラメリーさんを見た」 A feher liliomnak is lehet fekete az arnyeka

実演不可能と言われた、俳優泣かせの会話劇。 漫才のテンポと心理劇の深さが同居する異色作。 笑えるのに、気づけば背筋が冷える“静かなホラー”。 挑戦できる俳優が現れず、長く封印されてきた作品。

その封印が、いま静かに解かれます。 「黒いキャラメリーさんを見た」—— たった一言の報告が、登場人物たちの心の奥に潜む“影”を揺らし、 会話の隙間から、じわりと何かが滲み出していく。

誰もが笑いながら、いつの間にか自分の“影”と向き合わされる。 そんな、奇妙で優しい怪談です。

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感動エンジン
A fehér liliomnak is lehet fekete az árnyéka
「#黒いキャラメリーさんを見た」
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人物関係図
mitsuki:漫才コンビ『月と風』のツッコミ担当(キレイ系お姉さんギャル)
Fu-ka:漫才コンビ『月と風』のボケ担当(カワイイ系ぶりっ子ギャル)
黒いキャラメリーさん(都市伝説的に劇場に取り憑いた霊とされる)=演:坂道キャラメル
インタビュアー:芸能記者。『月と風』に密着取材中。
白井太:お笑い養成所の教官。元々は芸人。現在は構成作家も。
殺される客:漫才を見に来ていた観客。
黒子:漫才の題目に合わせて、演目めくりをめくっていく。
ユリ:漫才コンビ、『ユリシーズ』のボケ担当。
シズカ:
漫才コンビ、『ユリシーズ』のツッコミ担当。
公演時のご注意:
この公演は、劇場前、客席を含め、すべての空間をステージとして考えることを最優先とする。
キャストは、どの時間、どの場所に存在しても、ステージ同様、役のキャラクターとして、そこに存在し、お客様と対峙すること。
それにより『イマーシブシアター』よりも"イマーシブな空間"を醸成することを目的としている。
実際に演じられるネタは、事前にSNS上に公開されていることが肝となる。それによりリアルな生活空間においても、この物語が(観劇した人、関係した人)の実生活の一片に加われば嬉しい。
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◎開演前の劇場の風景
【劇場前】
駆け出しの漫才コンビ、月と風(つきとかぜ)の2人、ツッコミのmitsukiとボケのFu-kaが往来する人々にチラシを撒きつつ、チケットを売っている。
二人 「どうですかー!これから漫才やりまーす!(など)」
【客席の中】
女とも男ともつかない出立(ボーイジョー ジ風の出立)で劇場の名物→黒いキャラメリーさんが席についているお客さんたちに声を掛けている。
キャラメリーさん 「そこは私の席じゃありません?ほら、(チケットを見せる)」
チケットを見せる、席番号 : A-11
お客さん 「@@@(反応)」
開演まで全席のお客さんに対して次々に声を掛け続ける。
やがて徐に上手最前列の一番端の席に座った。(指定の専用席)
いつの間にか、劇場の前でチケットを売っていた月と風の2人も楽屋に戻り、出番を待っている。
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◎ 開 演
徐々に照明が暗くなり、暗転。
真っ暗の中、BGMが上がっていき、アタックの強いオープニング出囃子。
明転し、舞台中央にセンターマイク。
黒子のめくり『どっちもカワイイ⁉』の演目題字。
両袖から二人。漫才コンビが出てくる。月と風。
mitsuki 「はい、どうもこんにちわー、いやー頑張っていかなアカンなぁ˜言うてるんですけれど」
Fu-ka 「おぅ!」
mitsuki 「ご覧いただいております通り、女の子二人でやってます。私の方がmitsukiと申しまして…」
Fu-ka 「私がFu-kaですぅ」
mitsuki 「mitsukiとFu-kaで、『月と風』と言うコンビでやってます。今回、初めての単独ライブ公演になりました。初めて見てくださる方も是非ね、名前だけでも覚えて帰ってください。大しておもしろいことができるほど腕もないんですが、精
いっぱいやっていきたいと思っております。最後まで楽しんでいただけましたら何よりでございます…」
Fu-ka 「はい˜…ホンマにまだまだ…全然や」
mitsuki 「そうですよ、我々、まだまだ知られてませんからね˜」
Fu-ka 「出にくいねぇ˜」
mitsuki 「出にくい?」
Fu-ka 「せやろ、出にくい」
mitsuki 「なんで?」
Fu-ka 「大体、女の子二人で漫才やってたら…大体ね、どっち
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がブサイクで、もーてー
…誰かもーてーとか…カレシほしー!て言うてたら、すぐに知られて…すぐに出れててん」
mitsuki 「エラいこと言うなぁ˜」
Fu-ka 「…でもそれだけで出れててん…その点、ワタシらは…」
二人 「どっちもカワイイ(のポーズ)」
Fu-ka 「いや˜出にくなった、出にくなった、大体さ、どっちかだけでも身体がめっちゃ大きいとかさ、なんかパッと見ただけでも特徴あるもんやん?それやのにワタシらは…」
二人 「どっちもカワイイ(のポーズ)」
Fu-ka 「出にくいわぁ˜、売れる要素ないわー」
二人 「どっちもカワイイ(のポーズ)」
mitsuki 「…もんなぁ˜」
Fu-ka 「えー、ちょっと待って…見て見て、嬉しい。このお客さんの反応ぅ。皆、納得してくれてるぅ。すっごいウレシイ˜。本気では言ってなかったからぁ˜本当にカワイイですかぁあ˜、うん、うんうん、ありがと…あーサンキューほら、外国の方も・・・ホンマ?ホンマに?」
二人 「どっちもカワイイ(のポーズ)」
mitsuki 「ありがたいねぇ˜」
Fu-ka 「でも、できることなら、もっと多くの方にワタシらの漫才見てもらいたいんやん、どうしたらいい?」
mitsuki 「確かに昨今はルッキズムにうるさくなって来ましたから…パッと見た目で笑いを取るのは難しなってきましたし…」
Fu-ka 「でもなぁ、ワタシ思うねん…」
mitsuki 「何が?」
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Fu-ka 「女の子ステージ引っぱり上げて、どっちがブスやデブや言うていじり倒すん見て…」
mitsuki 「うん」
Fu-ka 「ホンマに面白かったですか?」
mitsuki 「え?」
Fu-ka 「ホンマに面白かったですか?」
mitsuki 「え?」
Fu-ka 「ホンマは前から誰も面白いと思ってなかったんとちゃうかなぁ˜って…皆、やりたかったんかなぁ˜…売れるためにやってただけで、ひとつも面白ないねん、だから無くなったんよ、別に最初から面白くなかってん、そんなん………」
間。
mitsuki 「しょっぱなからこの空気………ほんなら考えよぅ、何が面白いんやろ?」
Fu-ka 「うーん…せやなぁ˜………あ!例えば、どっちかがアホやったら?なんか質問されてもめっちゃアホやねん、それ面白いんちゃう?」
mitsuki 「えぇかも!ほないっぺんやってみる?…」
Fu-ka 「うん、簡単や、どっちかアホやったらえぇねんから…」
mitsuki 「クイズ出すから、それ答えて」
Fu-ka 「うん!」
mitsuki 「問題!この単独ライブのタイトル、『A feher liliomnak is lehet fekete az arnyeka(ア フェヘール リリオムナク イシュ レヘト フェケテ アーニェーカ)』は、ハンガリーの諺ですが…」
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Fu-ka 「"白いユリにも黒い影ができる"と言う意味!」
mitsuki 「正解!早い…」
Fu-ka 「そう、これね、ハンガリーの諺なんですよ、白いユリにも黒い影ができる…元々白いユリの花ことばは純粋とか、無垢とか、そういうイノセントな意味なんですけれども、そんな白いユリですら、必要以上に光を浴びてしまうと黒い影ができるよね、って言う…そういう意味なんだそうです。あ、今そりゃそうや、て思いました?そうですよね、諺って、そりゃそうやって言うようなことが多いんですけれど、そりゃそうやの中にね、普段見逃していたような、意外な真実があるっ言いますかね、日本の諺でもありますやん?『犬が西向きゃ尾は東』当たり前ですね、これはどこの国でも同じなんやなぁ…って言う…今日、我々もね、大したことは言えませんよ、でもそりゃそうやの中にね、そりゃそうや…みたいな当たり前のことの中にね、意外な………どうしたん?」
mitsuki 「ボケて…ボケてよ…」
Fu-ka 「え?」
mitsuki 「ほら、どっちかがアホやないと…」
Fu-ka 「あらやだぁ˜てっきりアホな問題が来るんかと思ってたから…」
mitsuki 「あ、そうやった?」
Fu-ka 「ごめんごめん、つい本気で答えてしまって…えぇ問題やったし…」
mitsuki 「いいよいいよ、でも、せっかくイイ設定思いついたのに…これじゃなぁ……」
Fu-ka 「残念…どっちもカシコイなんて…」
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mitsuki 「その上…」
二人 「どっちもカワイイ(のポーズ)」
Fu-ka 「困るー出にくい˜…こんなん全然売れる要素ない…」
mitsuki 「アホ設定は無理かなぁ˜…」
Fu-ka 「そうね、どうしても滲み出てしまう賢さ、あるのよ˜あーあー…」
mitsuki 「あ、ほんだらこれどう?どっちががめちゃくちゃ性格悪いとか…」
Fu-ka 「あ、えぇかも?」
mitsuki 「ほな、いっぺんやってみる?」
Fu-ka 「うん!」
mitsuki 「そうね、お店でごはん食べててさ、注文したのと全然違うメニューが届いた時、性格悪い人って店員さんにめっちゃ怒るやん!」
Fu-ka 「ふんふん、アレふと見てビックリする時ある」
mitsuki 「そう、重箱の隅つつく!みたいな…注文したのと全然違うメニューが届いた時に店員さんをネチネチと怒る性格のわっるいお客
さん、あんなんしよ」
Fu-ka 「Ok、わかった!」
mitsuki 「お待たせしました。アーティチョークのカトリーヌ風です。」
Fu-ka 「え」
mitsuki 「なにか?」
Fu-ka 「ワタシが頼んだのと全然違う…」
mitsuki 「え」
Fu-ka 「ワタシが頼んだの、イカと大根の煮物です」
mitsuki 「すみません!失礼いたしました!」
Fu-ka 「あの…」
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mitsuki 「(okカモンカモンの手招き)」
Fu-ka 「あの…イイです。これも食べたことないので、いただきます。折角作っていただいたし…」
mitsuki 「あ!…いえ、そんな訳には…」
Fu-ka 「そうですよね、ではワタシが注文したことにしてください」
mitsuki 「そんな……」
Fu-ka 「いえ、ワタシが注文してた、これ…いただきます、うわぁ˜美味しそう!」
間。
mitsuki 「ボケてよ…」
Fu-ka 「え?」
mitsuki 「アカンやん」
Fu-ka 「でも、折角作っていただいたし…アーティチョークのカトリーヌ風…」
mitsuki 「いやボケてよ、どっちかが性格悪い人やんねんから…」
Fu-ka 「あ…せやた、ごめん、普段通りやったんやってしまった…」
mitsuki 「せっかくイイの思いついたのに…どっちも性格イイなんて…」
Fu-ka 「困ったなぁ…」
mitsuki 「大体さ、最初からちょっとアヤシイな、と思っててん」
Fu-ka 「なんで?」
mitsuki 「イカと大根の煮物頼んでる時点で、めっちゃ性格えぇって、そんなん」
Fu-ka 「そう?」
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mitsuki 「そうよ、肉ガーン行かへん謙虚さ」
Fu-ka 「そう?」
mitsuki 「アーティチョークのカトリーヌ風とイカと大根の煮物の落差受け入れてるって…相当えぇヤツよ」
Fu-ka 「そうね、どうしても滲み出てしまう性格の良さ、あるのよ˜あーあー…」
mitsuki 「その上…」
二人 「どっちもカワイイ(のポーズ)」
mitsuki 「あれ?ちょっと待って…どんな店?アーティチョークのカトリーヌ風とイカと大根の煮物がメニューにあるって…」
Fu-ka 「アーティチョークは、ビタミンやミネラルが豊富、食物繊維もたっぷり含まれていて、腸内環境の改善に役立ち、"美肌効果"も期待できます。また、イカ大根も
ビタミンやミネラル、食物繊維などの多くの栄養素が含まれていて、腸内環境の改善に役立ち、"美肌効果"も期待できます……」
mitsuki「うっかり滲み出てるから、賢さが…」
Fu-ka 「あごめーん」
Fu-ka 「そういう系のお店ね、意識高い、えちょっと待って…どっちも美肌効果が期待できるってことは…これからもずっと」
二人 「どっちもカワイイ(のポーズ)」
mitsuki「そういうことになってまうな…」
Fu-ka 「えーこれじゃ全然、面白くならなーい」
二人 「どっちもカワイイ(のポーズ)」
mitsuki 「んで、賢くて性格もいいって…これもう救いようないやん…」
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Fu-ka 「えー救いようないほど…」
二人 「どっちもカワイイ(のポーズ)」
Fu-ka 「…これじゃ全然売れへんやーん、どうしよ、これじゃ漫才で成功できへん、どうしよ?どうしよ?……うーーーん!誰かもーてー!」
mitsuki 「結局、それかいな、んでお互いそれほどでもないからな、って、もーいーよ」
二人 「どうも、ありがとうございました」
漫才が終了し、暗転。
上手にピンスポ。
イスに座るFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
(※以降、この転換はすべてシームレスに行われる)
Fu-ka 「…めずらしい…これ密着ですかぁ˜…もう、しゃないぁなぁ˜」
男 「………」
Fu-ka 「いや、こうやって一人ひとり訊かれるって言うのもナカナカなくて…大体いつも二人一緒に…とかが多いですから…いえそんなにナイです…こんなインタビューとかって…それも一人ずつってナイですよぅ…なんか売れてるみたいですよねぇ˜、いえ全然なんですけど」
男 「………」
Fu-ka 「え?初め?…コンビ組んだきっかけですか?」
男 「………」
Fu-ka 「自分が漫才をやれるなんて思ってもなかったんですけれど、mitsukiと知り合って…mitsukiと…学生時代の
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アルバイトです」
男 「………」
暗転。
すぐさま入れ替わって下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の同じ男の背中。
mitsuki 「えぇ、普段も…役割はあんまり変わらないんです、Fu-kaはボケて、私がツッコんで……はい、漫才やってる時と同じです…でも、実際は、どっちか言うとFu-kaの方がしっかりしてるんです。視野が広いと言うか…遠い先のことまで考えてると言うか…私の方がその場のノリで動くタイプと言うか…」
男 「………」
mitsuki 「えぇ、基本ネタは相方、Fu-kaが考えてきて…私はそれに合わせる感じですね」
男 「………」
暗転。
すぐさま入れ替わって上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「よくそんな合わせ方してくるな、ってこの子って」
男 「………」
暗転。
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すぐさま入れ替わって下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「そりゃ難しいですよ、あの子、Fu-kaって時々、何考えて言ってるのか?全然判らない時ありますもん!」
男 「………」
暗転。
すぐさま入れ替わって上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「よく一緒にやってくれてるなって…うふふ」
男 「………」
暗転。
すぐさま入れ替わって下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「そりゃ、最終的には何とかしてくれるって思ってるからですけど、合間はずっと私が何とかせなって…ええ、最初からずっとそんな感じで…あ最初?コンビ組んだ理由?あ、ちょっとしたノリでした。同じカフェでバイトしてたんですけど˜、その日はたまたま、バイト先の皆で呑もうみたいなことになって…呑み会があったんです…」
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男 「………」
mitsuki 「バイトの先輩たちのノリみたいな感じで、なんかあるじゃないですか、その場のノリ…今考えたらそんなに面白くもないんですけど、ひとりが"あサラダ取って"みたいなこと言って、何を聞き間違えたのか、つまようじ渡したりして…"そうそうこのサラダが…"言いながらつまようじバクバク食べるって言う…"口ん中、血だらけなるわー"…みたいな……あ、ノリツッコミ、そうそう…やっぱりそこまで面白くもないですね。私もその場のノリで、何しとんねん!とかテキトーにツッコんでたんやと思います、それでなんとなく盛り上がって…大しておもんないけど、まぁノリやし…若いから…みたいな感じではしゃいでたんですけど、はしゃぎながらも、あれって?………一人だけ…目ぇ死んでる子がいる…めっちゃ盛り上がってるのに、完全に目ぇ死んでて…」
上手にピンスポ。
Fu-ka 「(

)」
mitsuki 「それでこの子、目ぇ死んでるなぁ˜と思って、見てたら、目が合ってしまって…」
男 「………」
mitsuki 「なんとなくお互い判ったんでしょうね、盛り上がってるけど、本当は大して楽しくないって思ってる感じが…」
男 「………(去っていく)」
mitsuki 「って…それがFu-kaでした。そしたら突然、何を思っ
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たのか
Fu-ka、急に私の方へ来て、手を取って立ち上がらせたんです」
実際に上手にいるFu-ka
下手のmitsukiの手を取る
黒子のめくり『どうしてもTully's』の演目題字。
Fu-ka 「ショートコント」
mitsuki 「え?」
Fu-ka 「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」
mitsuki 「あ、え?あの、その……」
Fu-ka 「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」
mitsuki 「あぁ…あー…えーっと…」
Fu-ka 「本日は、スマトラの豆で、コーヒー作ってます。おススメですよー」
mitsuki 「あ、じゃぁ、その本日のコーヒーで…」
Fu-ka 「あ、すみません、本日のコーヒーって言うのは、Tully'sさんの商品名です。スターバックスではドリップコーヒーと呼んでますので、ドリップコーヒーで頼みなおしてくださいますと…」
mitsuki 「あ、すみませ…」
Fu-ka 「あ、いえ、どうしてもどうしても"
本日のコーヒー"が飲みたいって言うことでしたら、振り返って入口を出て、右に曲がって300mほど、ダッシュしますと歩いて2分でTully'sさんがありますから、そちらへどうぞ」
mitsuki 「あ、いえ、ドリップコーヒーで」
Fu-ka 「かしこまりました、サイズはお決まりですか?」
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mitsuki 「あ、トールで」
Fu-ka 「かしこまりました、Short、Tall、Grandeと言うサイズの名称は、スターバックスでもTully'sでも使ってます。どうしてもTully'sのコーヒーが飲みたいって言うんなら、振り返って入口を出て、右に曲がって300mほ






しますと歩いて2分でTully'sさんがありますから、そちらへどうぞ」
mitsuki 「いえ、こちらで」
Fu-ka 「かしこまりました、Short、Tall、Grandeと言うサイズの名称は、スターバックスでもTully'sでも使ってます。その上のVentiと言うサイズだけはスターバックスにしかありません、どうしてもこちらで飲みたいと言うことであれば、Ventiはいかがですか?」
mitsuki 「いえ、いいです、そんなには…」
Fu-ka 「そうですか…」
mitsuki 「なにが?」
Fu-ka 「Tully'sさんにも以前はGrandeよりも大きいサイズで、Enorme(エノルメ)と言うサイズが以前はあったんですが、今はもう販売してないんです…」
mitsuki 「それが?」
Fu-ka 「Ventiが要らないと言うことは、スターバックスのコーヒーじゃなくても良いって意味ですよね?」
mitsuki 「え」
Fu-ka 「どうしてもTully'sのコーヒーが飲みたいって言うんなら、振り返って入口を出て、右に曲がって300mほど、ダッシュしますと歩いて2分でTully'sさんがありますから、そちらへどうぞ」
mitsuki 「いや、ここの、スタバのコーヒーでイイから」
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Fu-ka 「かしこまりました。【アメリカ限定】にはなるんですが、Ventiより大きいTrenta(トレンタ)と言うサイズもあるんですが…」
mitsuki 「アメリカ限定なんでしょ?トールでイイから、ホットで!」
Fu-ka 「そうですか、Trenta(トレンタ)が要らないと言うことは、スターバックスのコーヒーじゃなくても良いって意味ですよね?どうしてもTully'sのコーヒーが飲みたいって言うんなら、振り返って入口を出て、右に曲がって300mほど、ダッシュしますと歩いて2分でTully'sさんがありますから、そちらへどうぞ」
mitsuki 「い、え、ホントに…こちらの、スターバックスさんのドリップコーヒー、トールサイズ、ホットで…」
Fu-ka 「そうですかぁ、あそういうことですね」
mitsuki 「え?」
Fu-ka 「早く言ってくださいよぅ、そこまでこだわられるってことは、お客様、当店のタンブラーをお持ち込みで?マイボトルの?お持ち込みのタンブラーですとグランデサイズは入りませんもんね。お持ち込みの場合、資源節約にご協力いただいたお礼に22円分、お値引きされます」
mitsuki 「あ、いえ、ないですけど、持ち込みはないです…」
Fu-ka 「え、持ち込みじゃないのに?VentiでもTrenta(トレンタ)でもない…と言うことは、スターバックスのコーヒーじゃなくても良いって意味ですよね?どうしてもTully'sのコーヒーが飲みたいって言うんなら…」
mitsuki 「知ってる知ってる、振り返って入口を出て、右に曲がって300mほど、ダッシュしますと歩いて2分で
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Tully
'sさんがありますから、そちらへどうぞ、じゃないの!
Fu-ka 「お客様…そこまでお詳しいってやっぱりTully'sさんのコーヒーを飲みたいと…」
mitsuki 「いいの、ここのでいいの、ここで!」
Fu-ka 「いいですかぁ˜?…良かったです、もしかしたら、Tully'sさんの方が良いんじゃないか?って心配しましたよぅ˜、あでも、本当に本当にどうしてもTully'sのコーヒーが飲みたいって言うんなら…」
mitsuki 「振り返って入口を出て、右に曲がって300mほど、ダッシュしますと歩いて2分でTully'sさんがありますから、そちらへどうぞ、でしょ!行かない!ここで!んで、歩いて2分のとこ、ずっとダッシュさすなぁ˜、ツッコんでなかったけど!」
Fu-ka 「はい、ドリップコーヒー、トールサイズ、ホットで…あら?お客様すみません…」
mitsuki 「え?」
Fu-ka 「今、本日のスマトラ豆のコーヒーがちょうど切れちゃいました…これから沸
かしますので、もう5分程度、お待ちいただけますと…」
mitsuki 「えぇ˜、やっとオーダーできたのに…」
Fu-ka 「すみません˜…どうしても待てないって言う場合は…」
二人 「振り返って入口を出て、右に曲がって300mほど、ダッシュしますと歩いて2分でTully'sさんがありますから、そちらへどうぞ。」
mitsuki 「いや、どうしてもTully's…こんなスタバの店員絶対いーへんやん!って、もーいーよ」
二人 「どうもありがとうございましたー!」
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暗転。
すぐさま入れ替わって上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「えぇワタシもその時その時、思いつきで話してますから、よう合わせんなって…」
男 「………」
暗転。
下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「はい、即興だったんですけれど」
男 「………」
mitsuki 「ええ、そんな風に始まりました。それが最初にFu-kaとやったお笑いで…」
男 「………」
mitsuki 「いいえぇ˜ちょうど、こんな空気で…はい、ドン滑りでした」
男 「………」
mitsuki 「周りにいたバイト仲間も何コイツら?って感じで…そりゃそうですよね、急にショートコントって…」
暗転。
すぐさま入れ替わって上手にピンスポ。
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座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「でも、それがなんかすっごく気持ちよくって…」
男 「………」
Fu-ka 「なんて言うんだろ?ピタって感じが…判ります?」
男 「………」
暗転。
すぐさま入れ替わって下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「やったったーって感じが…今考えると私はFu-kaのボケに合わせるだけで良かったんですけれど…」
男 「………」
mitsuki 「あとで聞いたら、あの子、Fu-kaは、色んな人とそんなことしょっちゅーやってたみたいです。なんで?って…困らせるため?…いや、なんていうのかなぁ˜面白いことって、そういうことじゃないって言いたかったのか…」
男 「………」
mitsuki 「いえ、大体はちゃんと終わらなくて…最後までそのノリに追いていったのは私くらいだったみたいです…」
暗転。
すぐさま入れ替わって上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
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向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「…この子は変わってるなぁ˜って思いました」
男 「………」
Fu-ka 「全然引かないんです、ずっと追いてきてくれて…」
暗転。
すぐさま入れ替わって下手にピンスポ。
座っているmitsuki
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「私がは変わってる?そんなことないでしょ?あの子の方が全然おかしい」
男 「………」
暗転。
すぐさま入れ替わって上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「ちょうど、良いところで…って、もーいーよ!って…それでワタシ、ほっとしたんだと思います。一人じゃない、もう一人じゃないって…毎日、二人で遊ぶようになって…バイトの時間も合わせたり、その後二人でご飯食べたりして…」
男 「………」
Fu-ka 「まぁ"しゃーないぁ"って感じだったんかもしれません、mitsukiからしてみたら…」
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男 「………」
暗転。
すぐさま入れ替わって下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「きっと私の方から持ちかけたんだと思います。一度、ちゃんとやってみない?って…お笑い…」
暗転。
すぐさま入れ替わって上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「そこまで真剣にやるつもりじゃなくて…でも嬉しくて…、どちらかと言うとmitsukiと話してるのが面白かったので…ずっとこんな感じでいられるなって…コンビを組みました。そんなもんですよう。」
男 「………」
暗転。
すぐさま入れ替わって下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「ちょうど学生の、お笑いやってる人たち…そんな人たち向けの大会があったんです。『Yonaoshi(ヨナオ
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シ)』って言う学生のお笑いやってる人だけが出場できるコンテストなんですけれど…学生版M1みたいな…どうせならこれに出てみるのが良いんじゃないってなって…」
男 「………」
mitsuki 「えぇ、その時にコンビ名も決めなきゃって…美月と風香だったんで、『月と風』。割とすぐに決まりました。『もうすぐシンメトリー』って候補もあったんですけど、芸名はアルファベットでってなって…漢字じゃなかったら、シンメトリーって判らないから…」
暗転。
すぐさま入れ替わって上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「コンビ名も決まって、はじめて真剣にネタを考えて…コンテストで、初めてちゃんと漫才したのが、このネタだったんです」
暗転。
出囃子。
黒子のめくり『もう半分?まだ半分?』の演目題字。
舞台中央にセンターマイク。
mitsuki「はい、どうもこんにちわー、『月と風』と言うコンビ名で漫才やっとります。私がmitsuki、そして」
Fu-ka 「Fu-kaです、よろしくお願いします。」
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mitsuki「…いやぁ˜頑張っていかなアカン言うてますけれど…」
Fu-ka 「あのね、頑張っていかなアカンなぁ˜なんて言うても、何に向かって頑張るのか?ってあるやん?」
mitsuki「ほう?何に向かって?」
Fu-ka 「そうそう」
mitsuki「どういう?」
Fu-ka 「よーある話やけど、コップの中に水が半分入ってる。これをまだ半分ある、と思うか?もう半分しかない、と思うか?どっちに思うかによって、次の行動が変わってくる…って…」
mitsuki「あーよー言いますね、ある方に目を向けるか?ない方に目を向けるかやな…」
Fu-ka「まだあるよぅ˜って、できるだけ前向きに考えて行く方が、良い結果に繋がりやすい、って、こういうことやねんて…」
mitsuki「なるほどな、前向きに考えれると、良い結果につながりやすい」
Fu-ka 「だからな、あんたはいつも頑張っていかな、頑張っていかな…言うてるけど、その頑張りはどこにたどり着きますか?良い結果につながるような前向きな前向きな考え方をして言うてる?」
Mitsuki「えぇこと言う、ほな、アンタは当然、コップに半分の水が入ってたら………」
Fu-ka 「ワタシ?当たり前やん、"誰ぇー?こんなとこに水飲んでコップ洗わんと放ったらかしにしている人、誰ぇー?ほんで、飲む分だけ水入れてくれへん?半分もったいないし…どうすんのコレ!どうすんの!"………って思う」
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mitsuki「超越したな」
Fu-ka 「そう?」
mitsuki「まだ半分もあると考えるポジティブ思考ですか?それとも、もう半分しかないと考えるネガティブ思考ですか?って話じゃなく?」
Fu-ka 「さらに前向きに考えるとそうなる…まず水もったいなくないもん!」
mitsuki「そうか、それが一番前向きなんね。んな、これは?"急いで…急いで…もう間に合わへんで…飛行機の時間、早く空港へ…タクシータクシー、オッケー乗れた。ブーブー…ブーブー…すみません、運転手さん、急いでます、今どの辺りですか?え、ここ?あーこの辺りは高砂ですから、成田までは半分くらい来ましたわー"さぁ、どう?まだ半分しか来てないと思いますか?もう
半分も来てると思いますか?」
Fu-ka 「それはどっちもかなぁ˜」
mitsuki「え?どっちも?」
Fu-ka 「そう、"なんでもっと早く家出えへんかったんよー、だから昨日の内にパッキングお渡せておきやぁ˜って言うたやん!なんで持っていく靴下の色で、2時間も迷ってんのよ、靴下なんてもんは迷ったら、どっちも持っていったらえぇねん!"…な、どっちも」
mitsuki「超越したな……」
Fu-ka 「そう?」
mitsuki「…3日後の靴下の色は、どんだけ考えても絶対想像つかんもん!」
Fu-ka 「せやねん、今、いくら考えても判らへんねん」
mitsuki「行ってから、やっぱりあっちの靴下にしたら良かった、
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って2択やのに絶対にアレ、絶対失敗するもんなぁ˜」
Fu-ka 「せやねん、だからどっちも」
mitsuki「そっかー、それが一番ポジティブかもしれん…ほな、これは?"あら…ご近所さん、お出かけ?あ、今お帰りですか?朝の早よから?お魚釣り?あらスゴい大量ですねー、さすがです。え、一つくださるんですか?いや、嬉しいわ、こんな新鮮なお魚…ありがとうございます…えぇ…はい、三枚に下して…半分は新鮮ので、お刺身で、あとの半身は………"はい!もう半分しかないと思いますか?まだ半分もあると思いますか?煮魚でも焼き魚でも…」
Fu-ka 「はい、いただいたお魚の、その命に感謝して…お魚の種類によって、一番おいしいやろな、と思うような調理をし…いただきます」
mitsuki「超越したな、半身とかではなく…一番ポジティブな人!お命に感謝する視点な」
Fu-ka 「せやねん」
mitsuki「そっかーほな、これは?"わっはっは…よくぞここまで来た勇者よ、待っておったぞ、お前のような勇者を…もしワシの見方になれば地球の半分をお前にやろう…"はい!もう半分しか…と思いますか?半分も…と思いますか?」
Fu-ka 「地球って誰のものでもなくね?皆のものじゃね?もらうとかあげるとかがおこがましくね?」
mitsuki「…超越したな…地球の半分とかでななく…ポジティブ謙虚やん!」
Fu-ka 「せやねん」
mitsuki「確かにもう半分しか…とか、まだ半分も…って次元の
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話ちゃうわなぁ˜…」
Fu-ka 「大体、地球を守ろうって考え方がおこがましくて、地球に守られているから皆、生きれてるんやで…って、そんな意識の方が大事じゃね?そこからスタートすることの方が…」
mitsuki「ポジティブ・アースコンシャス…」
Fu-ka 「ふふ、うふふ」
mitsuki「あ!ほな、これは?"ま、ま、満月…ダメだ、オレは実は半分人間、半分狼なんだ、満月を見るとオレは…オレは…人間の理性を失い、狼の部分が出てきてしまう…"はい!もう半分しか…と思いますか?半分も…と思いますか?」
Fu-ka 「珍しなぁ˜オオカミって絶滅危惧種やのに…」
mitsuki「そっかー、よう出てきはったなぁ˜…」
Fu-ka 「お前も地球に守られて生き抜いてきたんやなぁ˜そうかそうか…やっぱ地球に守られているから皆、生きてるんやで…良かったなぁ˜…だからこそ、皆で大事にせなアカンなぁ˜」
mitsuki「超越したな…」
Fu-ka 「当たり前のことを当たり前に…そう思ってるから」
mitsuki「いやでも規模デカすぎない?地球全体の話になってるし…」
Fu-ka 「大事な話やで…なぁ˜みんなで真剣にじっくり話し合ってイカンと……」
mitsuki「真剣にじっくりって…そりゃそうやけど…この話いつまですんの?…」
Fu-ka 「え、この話?まだ半分ですけど…」
mitsuki「そこはまだ半分なんかーい、って、もーいーよ!」
28
二人 「ども、ありがとうございました」
暗転。
上手最前列の一番端、キャラメリーさんにスポット。
スタンディングオベーションをしながら、にたにた、拍手している(笑い声、拍手の音はない)
暗転。
上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「ちょっと変わったことしてたので、変にウケたって言うか……えぇ、それで…今まであんまり哲学的なことを入れ込むようなネタをやってる人を見なかったから…気に入ってくれる人もいたんかなぁ˜」
男 「………」
Fu-ka 「えぇ、でも、ちょっと肩の力入ってたんかなぁ…今思
うと、見てる人には判りづらいんちゃうかなぁ˜って…」
暗転。
すぐさま入れ替わって下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「確かに…いかにも学生漫才出身です、って感じのネタだったかもしれないです、ちょっとお勉強もできます…みたいな?アバンギャルドな…」
29
暗転。
すぐさま入れ替わって上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「他の人がやってない感じにはしたかったんです。うまく行ってないのは…実力不足です、初めて真剣に作ったんで…正直腕がないだけで…仕方ないんですけどぉ˜そりゃしゃないぁ、って…なんか笑い切れない感じがしましたぁ……」
暗転。
すぐさま入れ替わって下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「Fu-kaが出してくるネタ、自分たちがやってることの方向性としては間違ってないと思ってたんですけれど…もっと判りやすくって言
うか…まず楽しんでもらえることが先だなって……」
暗転。
すぐさま入れ替わって上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「…大変でもなんでもなく楽しんでやってたと思います。
30
コンテストは…そうです、最初から2本はネタが必要だったし…もっと面白いネタ、もっと面白いネタ…ってなりました……」
暗転。
出囃子。
黒子のめくり『聞こえて来たのは、女の人の声ですか?男の人の声ですか?』の演目題字。
舞台中央にセンターマイク。
mitsuki 「はい、どうもこんにちわー、『月と風』と言うコンビ名で漫才やっとります。私がmitsuki、そして」
Fu-ka 「Fu-kaです、よろしくお願いします。…いやぁ˜ちょっと前になりますけど…これはちょっとすごいなぁ˜と思うCM、見ましてね」
mitsuki 「CM?」
Fu-ka 「そう、CM、
コマーシャル」
mitsuki 「ほう」
Fu-ka 「音がなくて、漫画のコマみたいなシーンだけ出てくるの」
mitsuki 「ほう、音がなくて、漫画のコマみたいなシーンだけ出てくる?」
Fu-ka 「そう、例えば、オギャアオギャアって赤ちゃんが泣いてる絵があって…」
mitsuki「はいはい」
Fu-ka 「"はいはーい、今行くね、よしよし…"って漫画のセリフだけ出てくる、吹き出しで」
mitsuki 「吹き出しだけね」
31
Fu-ka 「別のシーンでは、超高級なレストランの絵が出てきて…」
mitsuki 「はいはい」
Fu-ka 「"支払いはクレジットカードで…"ってまた吹き出しだけ出てくるねん」
mitsuki 「へぇ˜」
Fu-ka 「それで急に、アナウンス流れんねん」
mitsuki 「ほう」
Fu-ka 「聞こえてきたのは、男性の声ですか?女性の声ですか?」
二人 「A-C-公共広告機構です」
mitsuki 「あれな、確かにえぇCM、えぇCM」
Fu-ka 「そうそう、よく考えると、別に男の人でも女の人でもどっちでもえぇはずやのに、オギャアオギャアって赤ちゃんが泣いてる時、"はいはーい、今行くね、よしよし…"って勝手にお母さんの想像してたし、超高級なレストランで"支払いはクレジットカードで…"、言ってるのは勝手に男の人のイメージ持ってたし…」
mitsuki 「たしかに…そういうのあるよね、普段は、差別はいや、ダイバーシティやぁ、ステレオタイプはアカンわぁ˜、言うてても以外と思い込みで偏見とか勝手なイメージ持ってたりするんやなって…アカンアカンって」
Fu-ka 「うん、気をつけよう思て、他にもいっぱい同じようなシチュエーションあるんちゃうかなぁ˜と思って」
mitsuki 「ふんふん」
Fu-ka 「今日は、ソレ考えて来たから…気をつけよう思て」
mitsuki 「あ、男の人の声でも女の人の声でもどっちでもええず
32
やのに、勝手に自分でコレは男やなぁ˜とかこれは女やなぁ˜とか思い込んでしまうようなシーンね、それを考えてきてくれた?」
Fu-ka 「そうそう………聞こえてくるのは、男性の声ですか?女性の声ですか?って」
mitsuki 「えぇやん、ほな、いっぺんやってみよう」
Fu-ka 「Ok…"トルゥルゥルゥ…トルゥルゥルゥ…ピッ、あ、お母さん?オレ、オレ…いや、ちょっと会社でミスしてもうて、お金貸してほしいねんやん、すぐ返すから…あいや、オレは行かれへんから、友だちのヤスってヤツを行かせるから、そうヤス…ソイツに渡してほしくって…うん、金、800万…あ、ある?うん、うん、ありがとう、ほな3時に、3丁目の公園ね、ヤス行かせるわー………"聞こえてきたのは、男性の声ですか?女性の声ですか?」
mitsuki 「いや、それは男やん!男やなかったら成立せぇへんやん」
Fu-ka 「そう?」
mitsuki 「ほんでアンタ、エライ慣
れてんなぁ˜」
Fu-ka 「学生時代、色んなアルバイトしてきたから…やっぱ若いうちの苦労は買ってでもせぇって言うやん?」
mitsuki 「それ、イイことする時に言うヤツやから…イイこと限定。オレオレ詐欺、うまくなる苦労とか要
らんねん」
Fu-ka 「あそう?」
mitsuki 「他にないの?もっとまともなやつ」
Fu-ka 「まともなやつ…」
mitsuki 「………」
Fu-ka 「まともなやつな…はい」
33
mitsuki 「どぞ」
Fu-ka 「"男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。それの年のしはすの二十日あまり一日の、戌の時に門出す………"聞こえてきたのは、男性の声ですか?女性の声ですか?」
mitsuki 「うーん、紀貫之…土佐日記…急にハイブロウ…」
Fu-ka 「ん?」
mitsuki 「これは、当時、重要な事柄や記録は男の人しか書かない習慣がありまして、漢文で書くんです…漢字ですね、逆にひらがなは女の人しか使わないって文化でした、と。紀貫之って言う人は男性だったんですけれど、女性しか使ってなかったひらがなを使って、記録を残しておこう、と言うことで、女性のフリをしながら、男性しかやってなかった日々の記録…日記ですね、日記を書いてみた。だから、"男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり"、これは男がやっている日記と言うものを女である私もやってみようと思う、と言う意味なんですね、これが日本初の日記文学で……って、めっちゃ説明いるねん!」
Fu-ka 「…聞こえてきたのは、男性の声ですか?女性の声ですか?」
mitsuki 「あのね、2つ目のボケとしては、難し過ぎるんよ…あんた、一回は絶対にこんな空気にするな、そんなハイエジュケーションなヤツは求めてません。」
Fu-ka 「あらそう?」
mitsuki 「あらそう?やないねん」
Fu-ka 「まともなヤツって言うから…」
mitsuki 「まともやけども…お客さんも"へぇ˜"ってなってるや
34
ん、もっと判りやすいヤツやって…」
Fu-ka 「もっと判りやすいヤツ?じゃぁ、これはどう?」
mitsuki 「ふんふん」
Fu-ka 「"…いくぞバイキンマン!アンパーンチ!………"聞こえて来たのは…男の人の声ですか?女の人の声ですか?」
mitsuki 「それはアカンやつ…みなまで言うたらアカンやつ˜」
Fu-ka 「アンパンマンの声優を担当してるのは、女優の戸田恵子さんやで…」
mitsuki 「うーん待ってよ、バイキンマーン by ドキンちゃん…じゃないのよ」
Fu-ka 「あ、大丈夫、ドキンちゃんの声は冨永み˜なさんです、もうすぐ60歳…」
mitsuki 「子どもの夢、壊すから…アニメはホンマのこと言うたらアカンやつ…」
Fu-ka 「アカンか」
mitsuki 「アカンアカン、大体、アンパン"マン"言うてるから…みなまで言うたらアカンやつ」
Fu-ka 「難しいなぁ˜…じゃぁコレは?」
mitsuki 「ほいほい」
Fu-ka 「ギョギョ!ありがとうギョざいますぅ˜………聞こえて来たのは…男の人の声ですか?女の人の声ですか?」
mitsuki 「それも微妙なやつ…さかな"クン"って言うてはるけど…」
Fu-ka 「えぇと思てんけどなぁ…」
mitsuki 「もっとシンプルなヤツ、お願い」
Fu-ka 「…じゃぁコレは?"…あ男かな?女かな?、あ男かな?女かな?………"聞こえて来たのは…男の人の声
35
ですか?女の人の声ですか?」
mitsuki 「めっちゃ設定壊すやん」
Fu-ka 「え、えぇ」
mitsuki 「どうすんの?あ˜しらきさん、ネタできへんようになるやん」
Fu-ka 「いや、皆さん、判ってますよねぇ˜女芸人って」
mitsuki 「みなまで言うたらアカンやつ…」
Fu-ka 「芋食て屁ぇこいて前進も…とどっちか迷ったんやけど…」
mitsuki 「そんなんえぇねん」
Fu-ka 「ホンマに?芋食て屁ぇこいて前進も…芋食て屁ぇこいて前進も…」
mitsuki 「島田珠代さんのヤツ…それはただおもろいだけ…」
Fu-ka 「あそう?」
mitsuki 「そう、簡単なヤツお願い」
Fu-ka 「もっと簡単なヤツ?ほな、コレは?"…ニャー、ニャー………"聞こえて来たのは…男の人の声ですか?女の人の声ですか?」
mitsuki 「どっちでもー…メスでもオスでも良いし…ボケ粗いなぁ˜」
Fu-ka 「ほな、コレは?"@×◎▽*◎▽*!@×◎▽*!………"聞こえて来たのは…男の人の声ですか?女の人の声ですか?」
mitsuki 「何語?ボケがシュール」
Fu-ka 「ほな、コレは?" ♪朝昼晩と頑張るー 私たちのエスケープ 思い立ったが吉日 今すぐに連れって行って………"聞こえて来たのは…男の人の声ですか?女の人の声ですか?」
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mitsuki 「またややこしい人んとこ行ったな、宇多田ヒカルさん、ノンバイナリーで公表してはるけど…またハイブロウ過ぎへん?」
Fu-ka 「えぇねんええねん、ここに来てくれるお客さんは、そんくらいのこと判ってくれはる、見てみぃ、賢い人ばっかりやで。だから大丈夫やねん」
mitsuki 「もう自由やなぁ˜」
Fu-ka 「自由や」
mitsuki 「んで宇多田ヒカルさんて有名な曲、いっぱいあんねんよりによってなんでデュエット曲」
Fu-ka 「ワタシがこの曲好きやから…」
mitsuki 「自由やなぁ˜」
Fu-ka 「自由や」
mitsuki 「まぁそもそも、男とか女とかどっちでもえぇと言う話やったしな˜宇多田ヒカルさんの曲聴いてたら、ホンマにどっちでもえぇってなるわ…」
Fu-ka 「せやろ、女も男も関係なく」
mitsuki 「人として愛せ…神やな」
Fu-ka 「マジ神。そもそも女とか男とか関係なく、この人間が好き、この人間は嫌いでええやんってなるから…」
mitsuki 「神様はあんまりこの人間は嫌い、とか言わへんけどな…でも男の人の声でも…女の人の声でも…どっちでもえぇかぁ˜…」
Fu-ka 「あ、でも、これはマジで男か女かハッキリしてるヤツあんで?」
mitsuki 「え?どんなんどんなん?」
Fu-ka 「これ… ♪いいえ、私はサソリ座の女˜………聞こえて来たのは…男の人の声ですか?女の人の声ですか?」
37
mitsuki 「それハッキリさせる?それもハッキリさせんでえぇヤツちゃうん?…中世的なイメージでやったはるから…」
Fu-ka 「うぅん、男の人やで」
mitsuki 「え?言うてえぇの?」
Fu-ka 「これはサソリ座の女の曲を使って漫才してる時のモグライダーの芝さんのモノマネやから」
mitsuki 「そんなん判るかい!、って、もーいーよ!」
二人 「どうもありがとうございました」
暗転。
上手最前列の一番端、キャラメリーさんにスポット。
スタンディングオベーションをしながら、にたにた、
拍手している(笑い声、拍手の音はない)
下手に
ピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「だいぶ良くなってきたんちゃうかって?芸人仲間の評判も良くなって…で…ちょっとずつちょっとずつですが、ウケるようになって…」
男 「………」
すぐさま上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「はい、もうダダ滑るだけじゃなくなりました。はい、
38
ずっと追っかけてくれるような…推しファン。月と風の推しファンも現れて…」
深く何度も頷き、満足そうなキャラメリーさん。
暗転。
すぐさま下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「はい、それでコンテストの予選もうまく勝ち残れたんで、もしかしたら優勝できるかも!って…優勝したらプロになろうかって言ってて…」
男 「………」
暗転。
すぐさま上手に
ピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「結果は…結果は3位でした…優勝できなくて…実力不足しゃーないぁ…優勝したのは男女の漫才コンビでした…その人たちはアッと言う間に売れていきました…」
男 「………」
Fu-ka 「…ちゃんと面白かったな…」
暗転。
39
すぐさま下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「それで一度しっかりと勉強しよう、ってなりました。養成所に行って、お笑いの勉強」
男 「………」
mitsuki 「でもそれからが………」
男 「………」
mitsuki 「大変でした。あんまり思い出したくないと言うか……」
男 「………」
mitsuki 「合わなかったんです、私たち…」
男 「………」
mitsuki 「お笑い養成所の教官と笑いの方向性が…悉くかみ合わなくって…」
男 「………」
mitsuki 「今ならもっと理解あるような教官もいるかもしれませんけれど………昔
は、私たちが養成所に通ってる時代は、そういうの全然わかってもらえなくて…」
男 「………」
暗転。
下手後ろよりお笑い養成所の教官、白井太が出てくる。
白井教官「はい、次のコンビ」
mitsuki 「はい」
白井教官「はい、ども…えぇっと『月と風』さんね」
Fu-ka 「はい!」
40
白井教官「ここの教官で、普段は構成作家してます、白井です」
Fu-ka 「白井さん、構成作家…」
白井教官「テレビとかラジオの」
Fu-ka 「すごぉ…」
白井教官「はい、じゃぁネタ、お願いします」
mitsuki 「あはい、では…」
二人、手を叩きながらネタへ
mitsuki 「どうもこんにちわー、『月と風』と言うコンビ名で漫才やっとります。私がmitsuki、そして」
Fu-ka 「Fu-kaです、よろしくお願いします」
mitsuki 「いやぁ˜最近…」
白井教官「
あ、ちょっと止めて」
mitsuki 「なにか?」
白井教官「キミたち普通だねぇ、超普通」
mitsuki 「へ?」
白井教官「見た目だよ、見た目」
Fu-ka 「………」
白井教官「特徴がない、と言うか…どっちかでもブサイクなら…」
Fu-ka 「………」
白井教官「せめてどっちかでもデブ…」
Fu-ka 「………」
白井教官「どっちか太る?」
Fu-ka 「あの……それ、面白いですか?」
白井教官「え?」
Fu-ka 「それ、面白いですか?ブスいじりとかデブいじりって…そういうの?」
41
白井教官「そういうの?」
Fu-ka 「そうです、ブサイクやのに結婚を夢見る女の子をあざ笑う設定とか…」
白井教官「面白いよ」
Fu-ka 「そうですかね?」
mitsuki 「ちょっとFu-ka…」
Fu-ka 「まず皆が皆、結婚に夢見てるって前提がおかしくないでしょうか?」
白井教官「…あのねぇ˜、そういうのはお約束なのよ、お約束」
Fu-ka 「はぁ?」
白井教官「本当に結婚に夢見てるとかはどうでもいいワケ」
Fu-ka 「はぁ?」
白井教官「でも、絶対笑えるお笑いのパターン。これをやっておくとお笑いですよ、って、お決まりのパターン。これまでに先人達が作ってきたお約束ってヤツなの」
Fu-ka 「………」
白井教官「一つ言っておくけど、面白いからTV出れると思ってる?」
Fu-ka 「………」
白井教官「ちゃんと考えてないでしょ?どうすればTV出られる
か」
Fu-ka 「別に…」
白井教官「あのね、TVに出ようと思ったら、判りやすさなの。判りやすいキャラクター。パッと見た瞬間、こうすれば絶対にひと笑い取ってくれるっていう判りやすさ。判る?」
Fu-ka 「それがブスとかデブとかなんですか?」
白井教官「そうだよ、ツカミだよツカミ。判りやすいでしょう?
42
片方がブスだったら、カレシほしーって、それでもう笑いになるじゃん、そういうのが良いんだよ」
Fu-ka 「そういうのが良い………」
白井教官「そう!」
Fu-ka 「………そういうのじゃなくても良いです」
白井教官「え?」
Fu-ka 「そーゆーの、今の女の子は笑わないと思う…」
白井教官「だから?」
Fu-ka 「だから?」
白井教官「あのね、今は、僕が面白く感じるかどうかの意見を言ってるの、今の女の子のウケなんてどうでもいい」
Fu-ka 「どうして?」
白井教官「だってTVは、女の子が作ってるんじゃないから…」
Fu-ka 「………」
白井教官「プロデューサーもそう、ディレクターもそう、キャスティングも…なんだかんだ言っても圧倒的に男の人が多いのよ、スポンサーの担当者だってそうさ」
Fu-ka 「だから?」
白井教官「だから今まで通りやっていくこと!私たちの新しいお笑いは、おじさんには判んない˜って?そうだよ、判んない。でも、おじさんがTVを作ってる、おじさんが社会を動かしてるの。おじさんにウケないと…若い女の子たちだけにウケたって、おじさん達が理解できなかったら、TVなんて出られないよ」
Fu-ka 「だったらTVなんて…」
mitsuki 「ちょっとちょっとFu-ka」
白井教官「売れたいんでしょう?売れたいのにTV出ないでどうすんの?」
43
二人 「………」
白井教官「あ、あーぁー」
mitsuki 「なにか?」
白井教官「キミたち、あの、学生お笑い出身か…それでそれで…」
Fu-ka 「それがなにか?」
白井教官「いや、いるんだよ、大して面白くもないのにナマイキな子って」
mitsuki 「すみませ…」
白井教官「学生お笑いコンテスト…キミたちに勝って優勝したコンビいただろ、男女の…なんだっけ?コンビ名忘れたけど…この前、その子たちのライブ見に行ったら、女の子の方が立ちションしてたよ、女の子が立ちション、一緒に行ったプロデューサーのお偉いさんたちも大笑いしてたよ」
二人 「………」 白井教官「好きなことは売れてからやれば良いんだよ、まず売れないと…売れたかったら、まずはそういう人たちに印象を残さないと」
mitsuki 「あの、別に私たちは…」
白井教官「あー判った判った、ブスとかデブが嫌なんだったら、オマタ触ってポーン!とか…うぷぷぷ」
Fu-ka 「笑ろてる…」
白井教官「うん、いい!」
Fu-ka 「…なんなんツ…」
mitsuki 「Fu-ka」
Fu-ka 「いや、アカンよ」
mitsuki 「うん…でも、なんでそういうこと…良いんですか?」
白井教官「ん?そういう?」
44
mitsuki 「つまり、その…下品な?ことが…」
白井教官「判んないかなぁ˜ギャップだよ、ギャップ。意外なことするなぁ˜って、その方が目立つじゃん、印象に残るよ」
Fu-ka 「………」
mitsuki 「印象に残れば良いんですよね?別に下品なことじゃなくても…」
白井教官「あれ?ヤなの?めちゃくちゃ良い案なのに…」
Fu-ka 「………」
mitsuki 「あ、でも意外性のあることで印象に残るんなら、なんでも良いってことじゃないかと…」
白井教官「例えば?」
mitsuki 「そんな…すぐには思いつかないですけど…」
白井教官「
でしょう?ボクだって必死に考えて言ってあげてるんだからね、ボクですら思いつかないのに、そんなに簡単に良いアイディアなんて…」
Fu-ka 「…怪談とか」
白井教官「え?」
Fu-ka 「怪談です、怖い話?意外じゃないです?」
mitsuki 「あ、いいかも!」
白井教官「ふーむ…弱いなぁ˜」
mitsuki 「弱い?」
白井教官「怖い話って尺食うでしょ?」
mitsuki 「尺食う?」
白井教官「時間が掛かっちゃうってこと。スグに怖くなるなんてことないし…ツカミとして弱いってこと、皆さん、忙しいからね、一瞬で覚えてもらわないと…すぐ怖くなるようなツカミなんてあるかい?」
45
mitsuki 「うーん、一瞬で怖くなることかぁ…」
Fu-ka 「教官が…白井さんが怖いものってなんですか?」
白井教官「あー僕は怪談話にあるような、お化けとか霊とか全然信じてないから…そういうのはどうってことない…」
mitsuki 「それは白井さんが怖がりじゃないだけで…?」
白井教官「そんなことはない、怖いものだってある…」
Fu-ka 「例えば?」
白井教官「そりゃ例えば…反社とか銃とか…うん、その方がずっと怖いよ。この前、特番でアメリカに行った時、たまたま目の前で取り押さえられている人を見たよ、手を後ろに回されてて、警官がその背中に拳銃を充ててた。めちゃくちゃ怖かった。その方がよっぽど怖い」
Fu-ka 「それは…」
白井教官「笑いにはならないでしょ?現実的に怖いのはそんなもの、だから今さら怪談なんてしたってねぇ˜…」
mitsuki 「ツカミに
はなりませんか…」
白井教官「うん、オマタ触ってポーンで良いの」
Fu-ka 「………」
間。
白井教官「あーそうだ!」
二人 「?」
白井教官「判った判った、とっておきの方法を教えてあげよう、キミたちにピッタリの」
二人 「え?」
白井教官「登場の時に、客席に向かってキャンディーを投げなさい。」
46
Fu-ka 「え?」
白井教官「見た目のツカミがないんだから、飛び道具ってヤツよ。昔いたんだよ、出囃子がなって出てきたと思ったら、客席に向かって、飴を投げる芸人が…もう解散しちゃったけどね、そうやって皆、覚えてもらう努力をしたもんさ」
mitsuki 「でも…」
白井教官「どうせ、だっちゅーのもヌーブラヤッホーもやんないだろ?その分じゃ…」
mitsuki 「なんの話ですか?」
白井教官「うん、キミたちにちょうど良いツカミだ」
二人 「………」
白井教官「はい、ツカミはオッケー、これも知らないか…」
Fu-ka 「いや、あの…」
白井教官「はい、今日はここまで。まずはこのツカミを完成させてから…それから先は、明日以降に」
白井教官、去っていく。
mitsuki 「なに、アレ…」
Fu-ka 「見ないで判断されちゃうんだね」
mitsuki 「うん…」
Fu-ka 「どうする?」
mitsuki 「どうする?」
Fu-ka 「………キャンディー…買いに行く?」
mitsuki 「なんか…ヤだね…元々自分たちで考えたんならやっても良いけど…」
Fu-ka 「気が合うー」
47
mitsuki 「やりぃ!…あでも…」
Fu-ka 「ん?」
Mitsuki 「どうしよっ…明日のネタ見せ…この分だと…」
Fu-ka 「あそだ!」
mitsuki 「え?ナニナニ?」
Fu-ka 「ええからええから」
mitsuki 「教えてよぅ˜」
Fu-ka 「行こー」
mitsuki 「あ待ってって…」
二人も去っていく。
暗転。
下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「辞めてもよかった…」
男 「………」
mitsuki 「無理しなくても…最初から売れたいとか有名になりたいって始めた訳じゃなかったから…Fu-kaがいっつも言ってるみたいにそもそも二人で話してるのが楽しかっただけで…、私たちが面白いって思うことを他にも面白いって思ってくれる人がいるんかな?ってくらいの……大したことができる訳じゃないけど…私たちが面白いって思ってるもんを面白がってくれる人いたら良いな…くらいだったんですから……」
48
教官が出てくる。
出囃子がなる。
月と風の二人。登壇しながら、客席に向かってキャン
ディー包みを投げていく。(本当に客席に向かって投げ
る)
mitsuki「はい、どうもこんにちわー、『月と風』と言うコンビ名で漫才やっとります。私がmitsuki、そして」
Fu-ka 「Fu-kaです、(ポケットを弄って)あ、まだあった(客席に投げる)はい、よろしくお願いします˜」
白井教官「おぉ、昨日の、いいじゃん、言った通りできてるじゃん(舞台上にも落ちている一つを拾って)あれ?何コレ?」
mitsuki「はい、キャンディーやと、もし当たった時に痛いかもしれんと思いまして…」
白井教官「いいじゃん、いいじゃん、良い配慮良い配慮。それで?」
Fu-ka 「マジックマッシュルームです」
間。
Fu-ka 「マジックマッシュルームです」
白井教官「聞こえてるよ、なんだよソレ」
Fu-ka 「ほら、ギャップです、ギャップ…印象に残るでしょ?」
白井教官「残るけど…そんなのオンエア乗せられないじゃん!」
Fu-ka 「柔らかいから当たっても痛くないし…安心」
白井教官「TV、出る気あるの!?」
Fu-ka 「はい!ギリ合法のヤツですから…頑張りやす」
49
白井教官「ギリじゃダメなの!」
Fu-ka 「面白くないですか?」
白井教官「面白いとか面白くないとかじゃないっって、こんな法律スレスレの…(キャンディ包みの中を見ながら)あ!」
mitsuki 「はい…干しシイタケです」
白井教官「干しシイタケ…」
Fu-ka 「全然、法律も大丈夫なヤツっす」
白井教官「………」
Fu-ka 「頑張りやす」
白井教官「………」
Fu-ka 「…面白くなかったですか?」
白井教官「判りやすいツカミでって言ったでしょう!ちっとも判りやすくない!」
Fu-ka 「ええ出汁でますやん」
白井教官「エエダシ?」
Fu-ka 「あ戻し汁のことで、乾物は…」
白井教官「バカにしてんのかー!」
暗転。
下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「これが…その…キッカケで…」
男 「………」
mitsuki 「ちょっと面白いかなって思ったんですけど、結構オオゴトになっちゃって…」
50
男 「………」
暗転。
すぐさま上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「お笑い養成所の教官だから、面白いことやったらウケると思ってて…」
男 「………」
Fu-ka 「はい、私たちを見ていた白井教官は、元々は芸人やってたみたいですけれど、白井太って名前なんで、白い犬って芸名だったみたいです。」
男 「………」
Fu-ka 「ご存じないですか?ご本人は芸人時代に白い犬は尾も白い…面白いってツカミで…」
男 「………」
暗転。
すぐさま下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「ご想像の通り鳴かず飛ばずだったそうで……」
男 「………」
mitsuki 「芸人は自由にやっても絶対に売れない!って頑なに信じてた、って聞きました」
男 「………」
51
mitsuki 「ご自身は芸人としてはあまりにも売れなかったんで、流れで構成作家になったみたいなんです。私たち知らなかったんですけど、そういう人って意外と、芸人時代の先輩とか、放送局のプロデューサーやディレクターにも話を通せたりするみたいで…」
白井教官出てくる。
白井教官「あ、月と風ですか?最近若い子に人気ある?いやいや、ちょっとシュールなことやってるだけで…すぐ下火になると思いますよ」
別の方向を向いて
白井教官「はぁ、いや、あの子ら使いづらいですわぁ˜。ノリ悪いですし…」
白井教官去る。
暗転。
すぐさま下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「嫌がらせでしょう…そんなことくらいのことで…と思われるかもしれません。けれど、そんな程度のことでも十分なんだって…」
男 「………」
mitsuki「いえ、TVなんて、そもそもそんなに出てませんでしたから…それほど…でもラジオも、新人が出してもらえるような劇場にすら出られなくなりました…」
52
男 「………」
暗転。
白井教官出てくる。
白井教官「え月と風?いや、こっち子たち?どうです?一度、使ってくださいよ、ユリシーズってコンビなんですけど…」
別の方向を向いて
白井教官「はい、ユリとシズカでユリシーズって…いや、人柄が良いですよ…バラエティー向きで」
白井教官去る。
暗転。
すぐさま下手にピンスポ。
mitsuki「…いっつもどこでも…塵も積もれば…ウワサがウワサを呼んで…そんな風にして、私たち、干されていったんです…」
暗転。
すぐさま上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「……干しシイタケだけに…って芸人仲間の皆は励ましてくれたりしたんですけれど……」
男 「………」
Fu-ka 「ショックでした…」
53
男 「………」
Fu-ka 「あ、いえ、意外かもしれませんが、"出演られない"と言うのがそれほどショックじゃありませんでした。しゃないぁ、と…あいや強がってるワケでもないんです。元々そんなに簡単には認められないだろうな、と思ってましたので…むしろそれまでうまく行きすぎてると言う危惧もありました…」
暗転。
すぐさま下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「でもその後、すぐに私たちと入れ替わるように…似たような…はい、女の子二人で、見た目も風貌も似たような漫才師がデビューしたんです…一気に人気も…TVもよく出るようになって…」
男 「………」
mitsuki 「ユリとシズカでユリシーズですって…投げてました、キャンディー………その子たち…出囃子とともに客席に向かってキャンディー投げてるんです…」
男 「………」
mitsuki 「やっぱり売れるってこういうことなんかなぁ˜って思いました…」
男 「………」
暗転。
すぐさま上手にピンスポ。
54
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「ワタシたちのことを面白くないって人が居てもそれはそれでしゃーないぁって思ってて…」
男 「………」
Fu-ka 「正面切って言われたら、すみません、私たちはこれが面白いって思ってやってますが…力不足かもしれません…って思う、思いますし…」
男 「………」
Fu-ka 「合う合わないはあると思うので、しっかりと見て判断してもらえたら…」
男 「………」
Fu-ka 「でも合うとか合わないとかは関係なかったんだなぁ˜」
男 「………」
Fu-ka 「面白かったら良い、漫才師は面白ければ…ワタシたちは、そういう競い合い、そういうコンテストに出場てると思ってたんです。でもワタシたちが出場てたコンテストは、そうじゃなかったんだなぁ˜って…それは参った、それはさすがに…」
暗転。
すぐさま下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki「それで結構ブレちゃったと思います。もっと他の人たちと違うことしなきゃって違うことしなきゃって…」
55
暗転。
すぐさま上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「ちょっとあの頃はヤケクソになってましたね、ナカナカ漫才やれる機会もなくて…」
暗転。
すぐさま下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki「はい、自分たちと似たような漫才コンビがTVでどんどん活躍していく中、私たちは劇場にも出られないので、個人でやってらっしゃる居酒屋さんとかBarとか…そういうところで漫才を…」
男 「………」
暗転。
すぐさま上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「えぇ、そんな中ですから漫才を見に来てる人たちばっかりじゃないです、余計に誰も見てない…」
男 「………」
56
Fu-ka 「でもそれはそれでねぇ˜…でもまぁ"しゃーないぁ"って感じで…そうなると楽しいんですよ、どうやって漫才で振り向かせてやろうかな?とか……でもね…」
男 「………」
暗転。
すぐさま下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki「私たちは私たちで、そんな風に地道にって言うか…やりたいようにやっていくんだと思ってました、目立たなくても…」
男 「………」
暗転。
すぐさま上手に
ピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「でも、あんなことがあっちゃって…ワタシが…ワタシがやらんかったからかなぁ˜…って…ね…」
男 「………」
Fu-ka 「えぇ責任も感じますし…楽しいだけではダメなんかぁ˜って」
男 「………」
暗転。
57
すぐさま下手にピンスポ。
座っているmitsuki。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki「突然でした…」
男 「………」
mitsuki「亡くなっちゃったんです、ご存じないですか?自殺しちゃったんです…」
男 「………」
mitsuki「ユリとシズカでユリシーズってキャンディを投げてたユリシーズのシズカ」
男 「………」
mitsuki「…私と同じツッコミの子でした…遺書があったそうです"面白くもないことを無理やりやらされて…これ以上、耐えられない…"と言うようなことが書いてあったそうで…」
男 「………」
暗転。
すぐさま上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「それは…それはさすがに"しゃーないぁ"ってワケにいかんやろ!?」
男 「………」
出囃子。
58
明転し、舞台中央にセンターマイク。
漫才コンビが出てくる。月と風。
黒子のめくり『黒いキャラメリーさん』の演目題字。
mitsuki 「はい、どうも『月と風』です。私がmitsuki、そして」
Fu-ka 「Fu-kaです、よろしくお願いします」
mitsuki 「いやぁ˜頑張っていかなあかんなって思ってますけれども…」
Fu-ka 「いやぁーしょうもない」
mitsuki 「しょうもない?」
Fu-ka 「しょーもな過ぎて、しょーもな死にするな」
mitsuki「しょーもな死にて何よ?」
Fu-ka 「しょーもない過ぎて死にそう」
mitsuki「それはなんとなく想像つきますけど」
Fu-ka 「あんまりしょーもないから、こないだ怖い話、聞きに行きまして…」
mitsuki 「動機がよく判
らない…」
Fu-ka 「なんでぇ?」
mitsuki 「そないにしょーもないんやったら、面白い話でも聞きに行ったらえぇんちゃう?」
Fu-ka 「いや、世の中にもう、おもろいことなんてないんちゃうか?と思て……」
間。
mitsuki 「いや怖い怖い…」
Fu-ka 「そう、それで怖い話」
mitsuki 「怖いのは、アンタのその発想な…」
59
Fu-ka 「よくあるじゃないですか?ワタシ、テレフォンオペレーターのアルバイトやってるんです…」
mitsuki 「ホンマに色んなアルバイトやってるなぁ˜…テレフォンオペレーター?」
Fu-ka 「そう、漫才だけでは食べて行かれへんから…美声を生かして…104」
mitsuki 「104て?」
Fu-ka 「104って言うのは、昔は電話帳って言うのがあって、申し込んだ人は、電話番号と住所が登録されてるねん、それで調べるとその人の住所やら電話番号が判るって本があってんけど…」
mitsuki 「本?」
Fu-ka 「そう、『ジャンプ』くらいの厚さの…」
mitsuki 「本がジャンプ?」
Fu-ka 「あ、『りぼん』くらいの厚さって言ったら判る?」
mitsuki 「本がリボン?」
Fu-ka 「まぁええわ、そういう3cmくらいの厚さの本で、でも今はその本、電話帳で調べる人もほとんど居ぃひんから、104に電話すると教えてくれる、そういうサービス」
mitsuki 「それって…」
Fu-ka 「そう便利なサービス…」
mitsuki 「個人情報だだ漏れやん…」
Fu-ka 「せやねん、だから教えるのは訊かれた時には教
えていいですよーって、自分で申し込んだ人だけ…」
mitsuki 「あ、教えていいですよ˜って自分で申し込んでると、訊いた人にお知らせしてくれるんやね…」
Fu-ka 「そうそう、だから大抵は、お店とか施設とか…そうい
60
うところの電話番号と住所が登録されてる」
mitsuki 「あ、なるほど…んでアンタは、そこで教えてあげるテレフォンオペレーターのアルバイトしてる?」
Fu-ka 「そう、トゥルルル、トゥルルル、はい104です」
mitsuki 「あ、あの…ペットショップ亀有店のお電話番号が知りたいんですが…」
Fu-ka 「かしこまりました。ペットショップ亀有店のお電話番号、登録を確認いたします、少々お待ちください」
mitsuki 「あ、はーい」
Fu-ka 「お待たせいたしました。ペットショップ亀有店のお電話番号をお伝えいたします…発信音の後に自動音声が流れますので、メモのご準備をお願いいたします…ピー…03―…と、まぁ、こんな感じよ」
mitsuki 「あ、なるほどなるほど…便利や…それが?」
Fu-ka 「それがさ、こないだもアルバイトしてたら…問合せて来て……」
mitsuki 「ほう?」
Fu-ka 「トゥルルル、トゥルルル、はい104です」
mitsuki 「………」
Fu-ka 「杉並区の鈴木風香さんの電話番号と住所を教えてください……」
mitsuki 「………え?」
Fu-ka 「杉並区の鈴木風香さんの電話番号と住所を教えてください……」
mitsuki 「……杉並区の鈴木風香さん…ってアンタの?」
Fu-ka 「せやねん、全然知らん、聞き覚えのない声の主から…」
mitsuki 「うわぁ!」
Fu-ka 「怖くてさ」
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mitsuki 「怖いな…でもさ、その電話かけてきてる人って、アンタがテレフォン・オペレーターのアルバイトしてるって?」
Fu-ka 「いや、知らんやろ、今、初めて言うたもん」
mitsuki 「…ほな、知らんと単純にアンタの電話番号と住所を調べようと思って電話したら…たまたまアンタ本人が出たってこと?」
Fu-ka 「そうや」
mitsuki 「…んでどうしたん…」
Fu-ka 「どうしたもこうしたも…めちゃくちゃ怖いやん、急に聞き覚えのない、知らん人が自分の電話番号と住所調べてるって…」
mitsuki 「…むちゃくちゃ怖い…」
Fu-ka 「だからこんな感じ…トゥルルル、トゥルルル、はい、104です」
mitsuki 「………」
Fu-ka 「杉並区の鈴木風香さんの電話番号と住所を教えてください……」
mitsuki 「………」
Fu-ka 「かしこまりました。杉並区の鈴木風香さんの電話番号と住所ですね、登録があるか確認いたします、少々お待ちください、ガチャ(保留音)……」
mitsuki 「………」
Fu-ka 「ふぅ˜˜……」
mitsuki 「………そりゃ溜息も出る」
Fu-ka 「せやろ、この一瞬で、めちゃくちゃ考えたもん…」
mitsuki 「………うん」
Fu-ka 「ワタシの登録ありませんように…って…」
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mitsuki 「………いや、それは覚えてて、自分が申し込まないと登録ナイんでしょ」
Fu-ka 「うん。でも、もし登録してたら伝えなアカンやん…責務として…私情を挟む訳にはいかない」
mitsuki 「…アルバイトやんな?……」
Fu-ka 「せやで」
mitsuki 「…そんな身を切る仕事?」
Fu-ka 「やるんやったら、いい加減な仕事したらアカン」
mitsuki 「………せやけど…」
Fu-ka 「だからワタシ、自分の登録ありませんように…って祈りながら検索したわ…そしたら」
mitsuki 「そしたら?」
Fu-ka 「………なかった、なかってんワタシの登録」
mitsuki 「………そりゃ申し込んでなかったらナイわな」
Fu-ka 「ナイス!過去のワタシ!って思ったわぁ˜…」
mitsuki 「結局なんやったん?」
Fu-ka 「それがさ、その3日前にワタシ、財布落としてまして…ありがたいことに見つかったみたいで、駅の落とし物センター、そこからの問合せやったみたいで…届けてくれようとしてたみたい」
mitsuki 「あ、なんやそういう…めちゃくちゃえぇ人やん」
Fu-ka 「せやねん」
Mitsuki 「せやけどそれ判ってなかってんから怖いよなぁ˜全然知らん人が自分のことを調べてるって…」
Fu-ka 「せやろ˜」
mitsuki「んで?」
Fu-ka 「んでって?」
mitsuki「なんでそんな怖い話すんの?」
63
Fu-ka 「ツカミですやん、ツカミ」
mitsuki「ツカミ?」
Fu-ka 「はいな、」
mitsuki「ツカミってちょっとした小話で軽く笑っていただいて…それから」
Fu-ka 「ほらもう大爆笑ですやん…」
間。
mitsuki「どこが?」
Fu-ka 「お客さんのハートと集中力を一気にツカんだので、これから漫才していきますけれど…」
mitsuki「ツカめてるかいな」
Fu-ka 「でも皆さんもないですか?」
mitsuki 「………なにが?…」
Fu-ka 「そういう、いつの間にか、知らないウチに、知らない世界に自分がまきこまれてる…みたいな経験よ…」
mitsuki 「………知らない間に知らない世界に巻き込まれてる…」
Fu-ka 「そ、こないだもさ…都市伝説って言うの…」
mitsuki 「え…もうやめてよ、怖い話ばっかり…」
Fu-ka 「これは大丈夫。」
mitsuki 「ホンマに大丈夫?」
Fu-ka 「うん、最後には大丈夫って皆さん、思うはず」
mitsuki 「ほな、えぇけど…」
Fu-ka 「うん…これは劇場に出てた時に、同じ漫才師仲間から訊いた話ですけれど…」
mitsuki 「ほう、同じ漫才師仲間に訊いた都市伝説?…」
Fu-ka 「そう、だからまた聞きではあるんやけど…劇場に問合
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せがあったみたいで
…」
mitsuki 「劇場に問合せ?」
Fu-ka 「そう、あの…ワタシの弟が、そちらに漫才を見に行ったまま、帰ってこないんですが…って」
mitsuki 「漫才見たまま、帰らない?」
Fu-ka 「そうやねんて…そんな問合せ」
mitsuki 「帰りにどっか寄らはったんちゃう?」
Fu-ka 「そういう可能性もあるけど…」
mitsuki 「あるけど?」
Fu-ka 「もう5日も帰ってきはらへんて」
mitsuki 「え?」
Fu-ka 「心配やん」
mitsuki 「そりゃ心配や」
Fu-ka 「けど劇場では判らへんかってんて、原因」
mitsuki 「うん、そりゃそうやなぁ˜、お客さん一人ひとりがどんな風にお家まで帰らはるかまでは劇場では判らんからなぁ˜…」
Fu-ka 「そう思って劇場の人も…あんまり出来ることないなって…」
mitsuki 「うん、」
Fu-ka 「せやけど、しばらくしてまた同
じような問合せが」
mitsuki 「え?」
Fu-ka 「ワタシ、そちらに彼氏と一緒に漫才を見に行ったんです…けど…」
mitsuki 「けど…?」
Fu-ka 「彼氏、漫才と漫才の間にトイレに行ったんです…そこから…2度と戻ってくることはありませんでした…やて…」
65
mitsuki 「え?」
Fu-ka 「また戻ってこない人が…それでも、劇場の人も…言われへんけど、そりゃあんさん、振られただけかもしれせんでぇ˜って、言われへんけど思ってて…あんまり出来ることないな…って」
mitsuki 「うん…まぁその可能性もあるか…」
Fu-ka 「そしたらまた…」
mitsuki 「え、また?」
Fu-ka 「うん…別の人から問合せが…」
mitsuki 「えー」
Fu-ka 「気づいた時にはもうわんさか…数えたら結局、この3ヶ月の間に同じような問合せが28件もあって…」
mitsuki 「え、3ヶ月で28件!」
Fu-ka 「遂には行方不明になった人のご家族から捜索願も出たって」
mitsuki 「捜索願…って、それもう都市伝説ちゃうやん!」
Fu-ka 「せやねん、さすがに、こりゃおかしいってなって、なんかある、って…いよいよ捜査よ…」
mitsuki 「うん…」
Fu-ka 「せやけど調べてもそんな大
したこと判らへん、なんでいぃひんようになったんやぁ˜ってことだけ…」
mitsuki 「原因不明の行方不明…」
Fu-ka 「それも皆、漫才と漫才の合間に…そんなちょっとした時間に急におらんようになってそのまま戻って来おへん」
mitsuki「漫才と漫才の合間なんて1分、2分やん、それでもう判らへんの?」
Fu-ka 「そう、なんせ手掛かりと言うようなことが見つからな
66
い…だから捜査してる方も、"何か変わったことありませんでしたか?お気づきのことがあれば教えてください"って
…呼びかけて…」
mitsuki 「うん…」
Fu-ka 「でも、特に変わったことはなかった…って」
mitsuki 「うん…」
Fu-ka 「それでも、"なんでもいいんです、少しでも覚えてることがあったら"…って…」
mitsuki 「うん…」
Fu-ka 「"少しでも…そう言えば…強いて言うなら…ちょっと変なお客さんを見かけましたけど…"って」
mitsuki 「変なお客さん?」
Fu-ka 「うん、同じ漫才の会に、その劇場に変なお客さんを見かけましたけど…って…言う人たちが」
mitsuki 「うん、」
Fu-ka 「行方が分からなくなった方のご家族とか恋人とか皆さん、どうやら同じ人を目撃してるみたいで…」
mitsuki 「同じ人?」
Fu-ka 「そうやねん、皆さん、そう言えば、変なお客さんが居たなぁ˜って口を揃えて…」
mitsuki 「うん」
Fu-ka 「目撃情報で共通してる特徴なんやけど…」
mitsuki 「うん…」
Fu-ka 「その皆が見かけた変なお客さんと言うのは、まず身体がすごく大きい」
mitsuki 「うん、身体が大きい」
Fu-ka 「んで上から下まで真っ黒の服装」
mitsuki 「ふんふん、身体が大きいって上から下まで真っ黒な服
67
装で、顔を見ただけでは女か男かよう判らん、もう結構目立つね…」
Fu-ka 「んで近づくと…」
mitsuki 「おぅ、身体が大きいって上から下まで真っ黒な服装で、顔を見ただけでは女か男かよう判らん、その変なお客さんに近づくと…」
Fu-ka 「…ごっつえぇ匂いするみたい」
mitsuki 「その身体が大きいって上から下まで真っ黒な服装で、顔を見ただけでは女か男かよう判らん、その変なお客さんに近づくとえぇ匂いする変なお客さん…何の匂いなん?」
Fu-ka 「知らんよ、ワタシかて訊いた話やから…」
mitsuki 「おぉう」
Fu-ka 「キャラメルの匂いかなんかと違う?」
mitsuki 「キャラメル?なんで?キャラメル?」
Fu-ka 「黒いキャラメリーさん」
mitsuki 「黒いキャラメリーさん?」
Fu-ka 「そ、黒いキャラメリーさんって呼ばれてるから、その人…」
mitsuki 「その…身体が大きいって上
から下まで真っ黒な服装で、顔を見ただけでは女か男かよう判
らん、その変なお客さんに近づくとえぇ匂いする、おそらくキャラメルの匂いがするだろうと言うことから、黒いキャラメリーさんと呼ばれてる?」
Fu-ka 「せやねん」
mitsuki 「…確かにアヤシイ感じはするなぁ˜…」
Fu-ka 「そう!行方不明になった人のご家族やら恋人やら同伴してた人、皆さん覚えてはったから…」
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mitsuki「でもさ、確かにアヤシイ感じはするけど、それだけでさ…」
Fu-ka 「それだけちゃうねん」
mitsuki 「それだけちゃう?」
Fu-ka 「その変なお客さんを皆さんが覚えてたのは、声かけられたから…やねんて」
mitsuki 「声をかけられた?」
Fu-ka 「せやねん、皆さん、自分から近づいたんと違うねん、向こうから声をかけられた」
mitsuki 「なんて?」
Fu-ka 「ほら開演前に皆さん、お席に座らはるやんか」
mitsuki 「うん、」
Fu-ka 「その時に全員…」
mitsuki 「全員?」
Fu-ka 「訊かれてるねん…」
mitsuki 「訊かれてる?」
Fu-ka 「それ、席間違えてませんか?それ私の席じゃないですか?ってチケット見
せながら…」
mitsuki 「………」
Fu-ka 「訊かれたら最後…それが黒いキャラメリーさんに連れ去られる合図やねんて…」
mitsuki 「連れ去られる合図…」
Fu-ka 「そう、その合図があったら、その後、どんなに漫才見て楽しんでても、漫才と漫才の間に…ふっと消えるように…」
mitsuki 「………」
Fu-ka 「んで、もう戻って来られへん」
mitsuki 「なんで?」
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Fu-ka 「なんで?」
mitsuki 「な…その…身体が大きいって上から下まで真っ黒な服装で、女か男かよう判らん、その変なお客さんに近づくとえぇ匂いする、おそらくキャラメルの匂いがするだろうと言うことから、黒いキャラメリーさんと呼ばれてるその変なお客さんを皆さん目撃してるのを覚えてるのは、声をかけられたからで、開演前に皆さん、お席に座らはる時にそれ、席間違えてませんか?それ私の席じゃないですか?ってチケット見せながら…訊かれたら行方不明に…なんでぇ?」
Fu-ka 「そんなん知らんよ、ワタシもまた聞きやねんから…」
mitsuki 「知らんて…んで、アンタ、ラクやなぁ?」
Fu-ka 「何が?」
mitsuki 「何がて…自覚ないんやったらえぇけど…」
Fu-ka 「まぁそういう話よ…それが黒いキャラメリーさんと言う劇場に取り憑いた幽霊なんと違うか?と…そんな都市伝説」
mitsuki 「え、幽霊なん?」
Fu-ka 「そりゃ判らんよ、けどそんな何人も何人も劇場に来ては居なくなるお客さんがおるなんて…幽霊かなんかの仕業ちゃうか?って…」
mitsuki 「怖いなぁ˜…」
Fu-ka 「でも捜査してる人らは幽霊ではアカンやん?」
mitsuki 「そりゃそうや」
Fu-ka 「新しい手掛かりが見つかって」
mitsuki 「おおぉ」
Fu-ka 「その合図な、黒いキャラメリーさんが席を訊いてる時って、チケット見せながら…って言うてたやん」
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mitsuki 「開演前に皆さん、お席に座らはる時にそれ、席間違えてませんか?それ私の席じゃないですか?ってチケット見せながら…訊かれたって」
Fu-ka 「その時のチケットの席の番号が…」
mitsuki 「うん」
Fu-ka 「いっつもA-11」
mitsuki 「……A-11?それが?何?」
Fu-ka 「ちょうどあの辺…」
mitsuki 「……指さしな、それが何よ?」
Fu-ka 「あんなA-11ってあんまりお客さんに売らへんねんて」
mitsuki 「……なんで?」
Fu-ka 「一番前の席やねんけど、端やから見えづらい」
mitsuki「あ、はいはい、見切れるとか言うもんね…」
Fu-ka 「だから、本来、積極的にお客さんには売らへんのよ」
mitsuki「積極的にお客さんには売らへん?」
Fu-ka 「そう、どうしても満員やったらしゃーないぁけど、見えづらいからお客さんにも積極的に売らへんし、招待する人にも渡しづらい、そういう席」
mitsuki「そうなんや」
Fu-ka 「そ、けどさ、一番前やから空いてたらカッコ悪い…」
mitsuki「うん、確かに空いてたら目立つし…」
Fu-ka 「だから関係者がよく座ってるねんて、スタッフでその日、たまたま手が空いてる人とか…」
mitsuki「なるほどね」
Fu-ka 「でも毎回、その席番号のチケットを見せながら訊いてくるねん、黒いキャラメリーさんは…」
mitsuki「毎回A-11の…」
Fu-ka 「そう…そんな席を毎回、毎回、わざわざ買ってて、自
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分の席の位置なんて絶対に判ってるはずやろって
…」
mitsuki「そうやん、聞く必要ないやん、覚えてるやろ!」
Fu-ka 「な、新しい手掛かり」
mitsuki「何が判ったん?」
Fu-ka 「黒いキャラメリーさんってな、めっちゃ方向音痴なんかもしれん」
間。
mitsuki「それだけ?捜査進んで判ったの、それだけ?」
Fu-ka 「そう」
mitsuki「身体が大きいって上から下まで真っ黒な服装で、顔を見ただけでは女か男かよう判らん、その変なお客さんに近づくとえぇ匂いする、おそらくキャラメルの匂いがするだろうと言うことから、黒いキャラメリーさんと呼ばれてる、その変なお客さんを皆さん目撃してるのを覚えてるのは、声をかけられたからで、開演前に皆さん、お席に座らはる時にそれ、席間違えてませんか?それ私の席じゃないですか?ってチケット見せながら…その席はいっつもA-11の席番号で、決まってるのに毎回訊いて来るから、めっちゃ方向音痴かもしれない…それだけ?」
Fu-ka 「そう」
mitsuki「いや、それでも大抵は関係者が座ってる席のチケットって…なんでそんな席に…」
Fu-ka 「なんでなんかは判らん…判っているのは、行方不明になった人たちが全員、そうやって、その黒いキャラメリーさんに声をかけられてたってことだけ…」
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mitsuki「やっぱりめちゃくちゃアヤシイやん」
Fu-ka 「せやからワタシらも久しぶりにこうして単独ライブで、劇場で漫才やらせてもらえて…そんな変な、黒いキャラメリーさんみたいなお客さんが出んように気ぃつけえやって、漫才仲間の皆が…」
mitsuki「判るけど……気ぃつけるって言うたかて…そんなんなぁ˜」
Fu-ka 「でも、大丈夫」
mitsuki「え大丈夫?…」
Fu-ka 「うん、大丈夫やねん」
mitsuki「良かった、確かにアンタ、最初に"皆さん、大丈夫やって最後には思うはず"って言うてた」
Fu-ka 「せやろ、大丈夫」
mitsuki「なんで大丈夫なん?」
Fu-ka 「だって今日は皆さん、どなたもそんなこと訊かれてませんもん、そうですよねぇ˜?」
間。
間。
間。
mitsuki「え、え、なんか…こんな感じ?…」
Fu-ka 「そうかなぁ˜」
mitsuki「この感じ…なに、その…身体が大きいって上から下まで真っ黒な服装で、顔を見ただけでは女か男かよう判らん、その変なお客さんに近づくとえぇ匂いする、おそらくキャラメルの匂いがするだろうと言うことから、黒いキャラメリーさんと呼ばれてる、その変なお客さ
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んを皆さん目撃してるのを覚えてるのは、声をかけられたからで、開演前に皆さん、お席に座らはる時にそれ、席間違えてませんか?それ私の席じゃないですか?ってチケット見せながら
…その席はいっつもA-11の席で、毎回決まってるのに聞いてくるから、めっちゃ方向音痴かもしれん、でもそれを訊かれたら行方不明になるっていうのに…今日は皆さん、どなたもそんなこと訊かれてませんから大丈夫ですー…ってコレ何の話よ!」
Fu-ka 「知らんてワタシもまた聞きやから…」
mitsuki「また聞きやったらなんでも許されると思うなよ」
Fu-ka 「あれぇ?ちょっと待って!」
mitsuki「なにぃ、まだ?」
Fu-ka 「(




しながら)ほら…なんか…ね、香しい…ほろ苦いような甘いような…この匂い…この匂いは!」
mitsuki「え、え…」
Fu-ka 「そうきっと…コーヒーの匂い!」
mitsuki「そこはキャラメルの匂いとちゃうんかーい!確かにそれやったら大丈夫って、もーいーよ!」
二人 「ども、ありがとうございましたー!」
暗転。
上手最前列の一番端、キャラメリーさんにスポット。
あいかわらずスタンディングオベーションをしながら、
にたにた、
暗転。
上手最前列の一番端、キャラメリーさんにスポット。
74
スタンディングオベーションをしながら、にたにた、
拍手している(笑い声、拍手の音はない)
長い
長い
スタンディングオベーション
やがて、徐に歩き始め、一人の観客を探し出す…
捕まえて舞台に上げるキャラメリーさん
おびえる客
キャラメリーさん、にたにたと笑いながら、銃を構える
客 「え、あオレ、えいや、なんで…」
リボルバーのハマーが上がる。
客 「…えあ、ヤメてヤメて…ヤメて…あ、あ・・・」
そのまま撃つ
銃声
撃たれ倒れる客(可能な限りのガチの弾着)
客の傍により、しばし観察する黒いキャラメリーさん。やがて客の首根っこを持ち引きずりながら、舞台上でうろうろ。時折そのにたにた顔を客席に見せる。
そして、そのまま客を引きずりながらハケていく。
暗転。
すぐさま上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
75
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「いやぁ˜もっとウケると思ったんですけどね…、あ、コーヒーありがとうございます…ちょうど喉乾いてて…いやね、いわゆるメカニズム、笑いが起こるメカニズムとして、緊張と緩和ってよく言われるじゃないですかぁ˜今まで緊張が足りなかったんじゃないか?って…だから怪談話で緊張させてから…」
男 「………」
Fu-ka 「白井教官が言ってた通り、怪談はツカミとしては長くなりますねぇ˜…やっぱり無理なんかなぁ˜…とか…」
男 「………」
暗転。
すぐさま下手にピンスポ。
座っているmitsuki
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「どうです?…やっぱり全然、笑えないです?この黒いキャラメリーさんってネタ…Fu-kaにはウケる自信があったみたいで…」
男 「………」
mitsuki 「いくらツカミで怖がらせたいって言っても、客席に黒いキャラメリーさんって、変なお客さんがいて、他のお客さんをさらっていく…ってことじゃないですか?あんまりいい設定じゃないな、って」
男 「………」
76
暗転。
すぐさま上手にピンスポ。
座っているFu-ka。
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
Fu-ka 「演出?特別演出?…いえ、別に特に演出的に何か特別なことをやったりとかは…ナイですナイです、そんな特別なことやれるような予算もないですし、ただ普通に漫才やってるだけで…」
男 「………」
暗転。
すぐさま下手にピンスポ。
座っているmitsuki
向き合っているインタビューワー風の男の背中。
mitsuki 「え設定じゃない?設定じゃないって、どう言うことですか?」
男 「………」
mitsuki 「へぇ˜本当にあったんだ…黒いキャラメリーさんの話って、実際に昔っから劇場にはそんな都市伝説みたいな話があったんだ…Fu-kaはソレをモチーフに?」
男 「………」
mitsuki 「えぇ、あの子はそういうところありますから、気になったらむちゃくちゃ調べるっていうか…そっかちゃんと調べたんだ…へぇ˜」
男 「………」
mitsuki 「そうです、いつもネタは最初にFu-kaが作ってきます
77

それに私がツッコミを合わせていく感じで作っていきます」
男 「………」
mitsuki 「え、そうでしょうねってどういう意味ですか?いかにも私、ネタを作ってない感じします?」
男 「………」
Mitsuki「狙い?ネタの狙いって…ワタシはいつも合わせているだけで…Fu-kaは特にネタの解説なんてしないですし……」
男 「………」
mitsuki 「あのぅ…」
男 「………」
mitsuki 「それで実際、どうでした?」
男 「………」
mitsuki 「あ、いえ、どういう訳か不思議なことにこのネタ、強烈にウケる日もありまして…どうしてかは判りません…ウケる日は、めちゃくちゃウケる…」
男 「………」
mitsuki 「違いですか?ウケる日とウケない日の?…」
男 「………」
mitsuki 「いえ…さっぱり…なんか理由でもあるんかな?ノリ?スピード?リズム?うーむ…」
男 「………」
mitsuki 「え、A-11?あ、そうですね、あれだけ妙に設定細かいですよね」
男 「………」
mitsuki 「いいえ、最初にネタが出来上がった時にはあの件はなかったんですよ、何度かやっていく内に?もっとリア
78
ルな設定があった方が良いなぁ˜みたいな話はあって…なんか数字とかが入るとリアリティが増すんじゃないかって」
男 「………」
mitsuki 「いえ、今回初めてです。この単独ライブでやるために、あのA‐11の件を入れたんです」
男 「………」
mitsuki 「えぇ急にFu-kaが入れたいって言うんで…」
男 「………」
mitsuki 「あれもその昔からの都市伝説の中でも話されていることなんですか??」
男 「………」
mitsuki 「あ、ないんだ、じゃあ、あそこは創作なんですね…」
男 「………」
mitsuki 「え、心当たり?…A-11に?なんか意味あるんですか?」
男 「………」
mitsuki 「いえ、私にもさっぱり………特別な意味なんてナイと思いますよぉ˜…」
男 「………」
mitsuki 「えぇ、でもあれですよね、あんまりお客さんには売らない、見えづらいし…かと言って招待するお客さんには渡せない・・・でも一番前だから空いてると目立つ…だから関係者がよく座ってるって、その日、手が空いてるスタッフさんとかが座る…ってネタの通りなんですけど…」
男 「………」
mitsuki 「そんなに気になります?」
79
男 「……」
mitsuki 「だってぇ…"思い出してください、どんな些細なことでも良いです、普段と違うなとか気になったなってことがあれば…"って、ネタの中と同じで…まるで取調べみたいなこと言ってらっしゃって…あー!」
男 「……」
mitsuki 「そうかそうか!思い出した!関係者です、関係者!私たちがまだ劇場に出してもらってた時!」
男 「……」
mitsuki 「お笑い学校の教官がよくあの辺りに座ってたんですよ、あそこ、A-11に…白井教官、じっと笑わず、睨むように私たちを見て…あれは本当やりづらかったなぁー…え…っと???」
男 「………」
mitsuki「それがネタの狙い?それがネタの狙いってどういう意味です?Fu-kaが何かやろうとしてる?」
男 「………」
mitsuki「別の意図?ネタ以外の意図?いや、そんなことは…」
男 「………」
mitsuki 「例えば…白井教官に…何かしたいこと?いや、何にもないと…」
男 「………」
mitsuki 「え、いや、確かに干されましたけど、ネタを利用して仕返し…あ、いや、そんなワケない……あの、」
男 「………」
mitsuki 「…これってもしかして本当に取調べなんじゃ…」
男 「………」
mitsuki「そう……なんですね…だから一人ずつ…密着取材なん
80
かじゃない…個別に訊かれてる
…最初からって…事実確認を最初から詳細に…そして明確に…」
男 「………」
mitsuki 「取調べなんですよね!だったら教えてください!私だけ知らないなんて、Fu-kaは、Fu-kaは、あの黒いキャラメリーさんのネタで、一体何をやろうとしてるんですか?」
明転。
真ん中に座る刑事の背中。
上手に座っているFu-ka。
下手に座っているmitsuki。
出囃子。
Fu-ka 「おぉっと出囃子です…ちょっとお待ちを…」
男 「………」
Fu-ka 「はいはい、次が最後の漫才です、この単独ライブだけは無事に終わらせさせてください。お願いします…」
引き続き、出囃子。
舞台中央にセンターマイク。
月と風の二人出てくる。
両袖から二人。漫才コンビが出てくる。月と風。
黒子のめくり『中途半端…』の演目題字。
キャラメリーさんは、もういつもの席にはいない。
mitsuki 「はい、どうもこんにちわー、『月と風』と言うコンビ
名で漫才やっとります。私がmitsuki、そして」
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Fu-ka 「Fu-kaです、よろしくお願いします」
mitsuki 「いやぁ˜我々の初めての単独ライブもこれが最後のネタなんですけれども…」
Fu-ka 「あれ?なんか空気が重たない?…」
mitsuki 「そりゃそうやろ」
Fu-ka 「なんか皆さん、悪い夢でも見てました?」
mitsuki 「アホなこと言うてんと。これが最後ですから、どうか
最後まで楽しんでくださいね」
Fu-ka 「最後まで無事に…ね」
mitsuki 「めったなこと言うたらアカン!」
Fu-ka 「いやぁ˜、中途半端な話が嫌いでね…」
mitsuki 「おうおう、」
Fu-ka 「いやぁ˜、なんか中途半端な話の途中のような気がし
て…なんかないです?」
mitsuki 「えぇ大ありですけど…」
Fu-ka 「大あり?」
mitsuki 「あれでしょ?なんや身体がすっごい大きい、真っ黒の服装の、それでいて顔見ただけでは女か男か判らん…ええ匂いのする、おそらくそれはキャラメルの匂いであろうことからついたニックネームが黒いキャラメリーさん…毎回毎回、開演前には、それ、私の席じゃないですか?ってA-11の
席番号のチケットを持ちながら、訊いて回らはるから、皆さん、覚えていると言う…けど、その人自身は覚えてないからめっちゃ方向音痴なんと違うかと言う…その黒いキャラメリーさんに席訊かれたら…それは連れ去られる合図…」
Fu-ka 「あらやだ?」
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mitsuki 「あらやだ?やのうて」
Fu-ka 「次はあなたかもよ˜無事に帰れるとイイねぇ…ウチに帰るまでが漫才ですからね」
mitsuki 「もうえぇて」
Fu-ka 「えぇことない、こういうのはね、中途半端はアカンよ、
お笑いの単独ライブですし、きっちりとオチつけよう!」
mitsuki 「オチつく!?これから?」
Fu-ka 「我々で作ったこの空気、我々で責任持ってオチつけな
いと、お笑いなんですから…」
mitsuki 「つくのね、オチ」
Fu-ka 「さぁ?…」
mitsuki 「もう、この状況で……私は、オチよりも何よりも…ちゃんとした解決を…もう名探偵でもなんでも出てきて明るくスッキリさせて欲しいわ、黒いキャラメリーさんの正体はコレだ!みたいに…」
Fu-ka 「♪ディリディリーディリディディディディディリディリディリディリディリディ…劇場に取り憑いた化物の正体が明らかに…」
mitsuki 「お!」
Fu-ka 「次回、名探偵コナン、黒いキャラメリーさんの亡霊…真実はいつも一つ!………じゃないのよ、そんな都合よく行かない…いやぁ˜ないない、それは無理」
mitsuki 「無理かぁ˜」
Fu-ka 「都合よく名探偵出てきません…あ、ちなみにコナンくんの声…聞こえてきたのは、女の人の声ですか?男の人の声ですか?」
mitsuki 「それはさっきのヤツ…話ややこしなるから…」
Fu-ka 「あ、そう?」
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mitsuki 「余裕かましてからに……あ、あーあー、あるのね、実は用意してるオチが!」
Fu-ka 「判っちゃいました?」
mitsuki 「アンタのことやから、どうせアレでしょ?夢、悪い夢でも見てしたーみたいな?そう言うパターンでしょ?」
Fu-ka 「あ、夢オチね、よくある。我々の夢の世界を皆さんに見ていただいておりました˜みたいな?」
mitsuki 「そうそう、そういう…」
Fu-ka 「うーん、ワタシがお客さんの立場だとそれじゃもう納得いかないって言うか…夢オチはもうね、ハイスクール奇面組と言う名作がありますから…」
mitsuki 「名作よな」
Fu-ka 「あれでもラストシーンは賛否両論あるらしいもん、もっと皆さんに納得していただきたいから…」
mitsuki 「そっか、夢オチ違うんや…もっと皆さんが納得するようなオチ?ほな、アレ?モンスターズインクみたいなファンタジー!ここは実は、怖がらせたら怖がらせるほど、ポイントが貯まる世界……」
Fu-ka 「あぁで…ワタシらたちポイントを集めてたんや」
mitsuki 「そう!最後には、怖がらせるより、笑わせた方が点数貯まるで˜って気づくねん!」
Fu-ka 「ほう?」
mitsuki 「それで結局、最後はこの漫才で笑って、すべてを水に流してもらおう!って言う趣向、それでしょ?」
Fu-ka 「それちょっと無理ない?水に流してもらうって都合良すぎるやん…あんなモンスターズインクみたいなめちゃめちゃえぇ話ではありません…」
mitsuki 「そうねぇ、アンタがファンタジーって言うのも…えー、
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ほな何やろ?」
Fu-ka 「まだあるでしょ?いろいろと…」
mitsuki 「色々って…あ、アレ?ここへ来て、ホラー映画の撮影中みたいな?そんな映画ありましたやん?」
Fu-ka 「撮影中にホンマにホラーの世界に巻き込まれていくタイプのヤツね?あれ、怖いよね」
mitsuki 「違うの?」
Fu-ka 「惜しいけど、違うなぁ˜…そんなホラーやるようなタイプちゃうやん、ワタシら…」
mitsuki「そう言うたら、そうやけど…でも、まとまる?この話まとまる?」
Fu-ka 「まとめましょう」
Mitsuki「まとめましょって…言われても…」
Fu-ka 「大丈夫です、なんか忘れてませんか?」
mitsuki 「忘れてる?なんやろ?」
Fu-ka 「我々芸人にとって大事なヤツ」
mitsuki 「我々芸人にとって大事なヤツ……」
Fu-ka 「そうそう」
mitsuki 「あ、え、まさか…マジで!?」
Fu-ka 「そう、マジです」
mitsuki 「マジか…水曜日?…水曜日のヤツ?…【劇場にお化けが出て、出てる漫才師が気づかんとネタやり続けてたらホンマに怖い説】…みたいな…うわ、コレ売れたんちゃうん…」
Fu-ka 「はい、お待たせしました、皆さん出てきてください、遂にバレました˜」
間。
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Fu-ka 「…ってことになったら良かったんやけどねぇ˜、残念…我々、ちゃんと干されてます、久しぶりの劇場、TVはまだまだ早い…」
mitsuki 「それ言いな、そうか干されてるかぁ˜」
Fu-ka 「…調子乗ったらアカン」
mitsuki 「アカンな………あ、突然の宇宙人、宇宙人とか!黒いキャラメリーさんが宇宙人でした˜みたいな設定」
Fu-ka 「だいぶツラくなってきましたね、宇宙人って連れ去らうの?」
mitsuki 「そうそう、ようあるやん!」
Fu-ka 「残念…そんなSFモノがやりたかったワケじゃないのよぅ」
mitsuki「ほな、もうないでしょ…結構言うたよ、トリックちゃう、夢
オチちゃう、ファンタジーちゃう、ホラーちゃう、水曜日ちゃう、SFちゃう…他になんか…あー!あー!あー!」
Fu-ka 「ようやく気づきましたか…」
mitsuki 「バレたよ、遂にバレたよ…仕込んでましたね、あなた…そうかそうか…」
Fu-ka 「そうそう」
mitsuki 「催眠術!一種の集団催眠効果ね!!」
Fu-ka 「へぇ?集団催眠効果?」
mitsuki 「そうでしょ!いやもうそれ以外にないわ。催眠。集団催眠効果によって、お客さんは本当に見てるモノと違うモノを見たように感じさせた。それが黒いキャラメリーさんの呪いの正体!それがオチ!」
Fu-ka 「何やねんソレ?催眠術って誰がそんなことできるね
86
ん!」
mitsuki 「とぼけやがって…ネタは上がってるのよ」
Fu-ka 「なんだと…!?」
mitsuki 「(


に降りる)これよ、これが動かぬ証拠!マジックマッシュルーム!」
Fu-ka 「!」
mitsuki 「知らない間に、これをお客さんに食べさせて、キメッキメに酩酊させていたのね…まさかこんな手の込んだ手段を使うとは…」
Fu-ka 「……シイタケです。それは本当に干しシイタケ、我々が干された例の干したシイタケです」
mitsuki 「言いな、それ…一緒に買いに行ったわ…マジックマッシュルームでもないか…もしかして…オチがないのがオチ?ハードル上げ続けて、結局思いつきませんでした˜とか!」
Fu-ka 「いいえ」
mitsuki 「ほな、これからもオチを考え続けます…とか?」
Fu-ka 「いいえ」
mitsuki 「あ、あれだ、オチは一人ひとり皆さんの心の中にあるんですよ˜…とか、そんなタイプのヤツ?そんな感じの終わり方?」
Fu-ka 「あるけどね、ソレ、一番無責任のヤツね…それは絶対やったらアカン!」
mitsuki 「違う?もうありとあらゆるお話のジャンルで考えたと思うけど??」
Fu-ka 「判らんかぁ…仕方ないな、ヒントを出します、これはドキュメンタリーです」
mitsuki 「え?ドキュメント?それはマジってことやん?えぇ?」
87
Fu-ka、徐に客席に降り、最前列の男を連れてくる。
(誰でも可)
mitsuki 「ちょ、どこ行くん?」
ステージ定位置へ。
mitsuki 「え?どういうこと??」
Fu-ka 「まだ判らない」
mitsuki 「え、全然…」
Fu-ka 「お笑いが好きで…怖い話が好きなアナタのために…こんなとっておきの舞台を用意しました」
mitsuki 「フラッシュモブ!…」
Fu-ka 「さぁ、踊りましょう!」
♪FAIRGRAND ATTRACTION 『Perfect』
Fu-ka、お客さんを連れ添って舞台上へ
出演者が全員登場し、ダンス
一通り、踊って…
曲が止まり…(03:17″)
mitsuki 「いやフラッシュモブ…プロポーズの時のフラッシュモブって…あれでしょ?吊り橋効果。ビックリした時の感情が、恋愛してる時の感情と似てるから、プロポーズの時にはビックリさせると成功しやすいと言う…まさかプロポーズ相手をビックリさせるためのシチュエーションづくり………」
88
Fu-ka 「ワタシと…ワタシと結婚してください!」
男 「(マジのお客さん、何かしら反応)」
mitsuki 「おぉ!」
間。
Fu-ka 「あー!でもごめん!ワタシ、結婚に夢見てなかったんだったー」
mitsuki 「いやここまで手の込んだプロポーズして、結局、結婚せーへんのかい!って、もーいーよ」
二人 「どうもありがとうございました」
止まっていたところから曲が再開。
全員で再び踊りだす。
すぐに終わりを迎える曲((03:37″)
最後のポーズが決まる。
暗転。
暗転の中、トランシーバの声が劇場内に響く。
声の主 「(ノイズ)ホシは楽屋口に潜伏中と見られる…通称、黒いキャラメリーさん。正体、詳細は不明。各自、最善の注意の元、執り行うこと。只今の
時刻はフタマルイチヨン、テンカウントで突入する…ナイン、エイト、セブン、シックス、ファイブ、フォー………」
無音の3秒
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声の主 「Go!」
暗転の中、客席内を縦横無尽に多くの捜査官が駆け抜け
ていく
その喧噪も過ぎて…
明転。
舞台中央にピンスポ。
縛られて、取り押さえられた黒いキャラメリーさん。
その後ろにあのインタビューワー風の男、刑事が見える。
刑事 「ご協力、ありがとうございました」
Fu-ka 「これが結末です…」
mitsuki「え、え…」
刑事 「いやぁ˜助かりました。我々の力だけではこうやって黒いキャラメリーさんをおびき出すことができなかったと思います」
mitsuki「おびき出す???」
刑事 「はい」
mitsuki「あなたたちは…」
刑事 「身分秘匿捜査員と言いまして…潜入捜査って言うと判りやすいですかね?」
mitsuki「潜入捜査…」
刑事 「ですのでご安心を…」
mitsuki「え、それで…」
刑事 「えぇこの犯人はあなた方のネタに倣って、こんなことを繰り返していたようです、それで…捕まえるには、劇場に潜入するのが一番早いと」
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mitsuki「ネタを倣ってって…本当に黒いキャラメリーさんを?」
刑事 「そういうことです…あなた方は漫才と漫才の間、幕間でしたから気づかれなかったかもしれませんが、我々はきっちり確認できました、現行犯逮捕です」
mitsuki「………」
刑事 「いやぁ途中であなたが"これは取調べなんじゃないか?"と言った時には慌てましたよ、この潜入捜査がバレてるんじゃないかと…」
Fu-ka 「見え見えでしたよ、こっちが慌てるくらい」
mitsuki「知ってたの?」
Fu-ka 「ごめん」
刑事 「潜入すると言っても客席で見ているだけだと思ってたんですが、まさか芸能記者をやらされるとは…」
mitsuki「被害に、被害に遭われた方は?」
刑事 「被害?」
mitsuki「捜索願まで出ているって…行方不明になった……無事なんですか?…」
刑事 「それもこの男と一緒の仕込みでした、ほら」
上手から撃たれた客も黒いキャラメリーさんと同様に縛られて出てくる。
刑事 「他の行方不明になった被害者も全員、口裏を合わせていたんでしょう、まったく人騒がせな…」
mitsuki「良かったぁ˜…でも、どうしてこんな」
刑事 「見覚えありませんか?この男…」
刑事、黒いキャラメリーさんの顔をmitsukiの方へ向け
91
る。
黒いキャラメリーさん 「うぐー」
mitsuki「あ!」
刑事 「判りますか」
mitsuki「はい、存じ上げてます。いつも私たちの漫才を見に来てくれて…滑っても滑ってもスタンディングオベーションで応援してくださっていましたから…」
Fu-ka 「やっぱり…ワタシらのファン…」
刑事 「ファンの暴走…と言うことになりますかね…詳しくは、署に戻って事情聴取…と言うことになりますが…いやはや…改めて捜査へのご協力ありがとうございました。それでは我々はこれで…」
刑事、黒いキャラメリーさんと客を連れて、出ていく。
引き止めるFu-ka
Fu-ka 「ちょっと待って」
刑事 「え?」
黒いキャラメリーさん 「うぐー」
Fu-ka 「お笑いのライブ中、お笑いのライブ中やねん」
刑事 「え?」
Fu-ka 「どうすんの、この空気」
間。
刑事 「え、あ、あぁ」
Fu-ka 「あぁ、あぁ、やのうてオチ」
92
刑事 「オチ?」
Fu-ka 「ワタシらは折角観に来てくださってるお客さんたちにスッキリと…笑って帰っていただきたいの!」
刑事 「そんなこと言われても…」
Fu-ka 「しゃないぁ˜…」
Fu-ka、黒いキャラメリーさんを立たせる。
Fu-kaと黒いキャラメリーさんの間に机
各自の椅子
Fu-ka:取調べの刑事
Mitsuki:書記の刑事
黒いキャラメリーさん:容疑者
それぞれの位置へ座る
黒子のめくり『取調べ』の演目題字。
Fu-ka 「ショートコント」
mitsuki 「え?」
Fu-ka 「それで?」
キャラメリー 「あ、え?あの、その……」
Fu-ka 「なんで、こんなことやったんだ?」
キャラメリー 「はい、そのあの……」
Fu-ka 「どうして、こんなことやったんだ?と訊いてる!」
キャラメリー 「はい、最初は脅すだけのつもりでした……」
Fu-ka 「脅す?誰を?」
キャラメリー 「白井と言う男です、構成作家で、お笑いの養成所の教官もやっている白井太……」
Fu-ka 「どうして」
キャラメリー 「推している、自分が推している漫才師、『月と風』
93
と言う漫才師が、その白井太に干されたって…」
Fu-ka 「意味が判らん、漫才師を干した?」
キャラメリー 「はい、TVにもラジオにも劇場にも出られないように裏で工作していたと…」
Fu-ka 「白井太がか?」
キャラメリー 「はい、そういうヤツだそうで…」
Fu-ka 「的を得んな…初めから順を追って話せ」
キャラメリー「はい、初めから…元はと言えば…別の事件、ユリシーズのシズカが自殺をしてしまって…その時に遺書に残されたメッセージもあって…」
Fu-ka 「(mitsukiに)おい」
mitsuki 「はい、確かにユリシーズと言う漫才コンビのツッコミ担当、シズカと言う漫才師が自殺をしています。本件同様、やはり白井太がお笑い養成所の教官を務めていました。遺書には、"これ以上、おもんないことをさせるのは止
めてください"と言うようなメッセージが残されています」
Fu-ka 「なるほど、白井と言うヤツはお笑い養成所の教官でありながら、指導している漫才師におもんないことを強要していたのか?」
mitsuki 「はい、そのようです、それを苦にユリシーズのシズカは自ら…」
Fu-ka 「なるほど、芸人にとって、おもんないことを強いられるのは相当ツラいことだったのかもしれん…」
キャラメリー「えぇ、その自殺原因を作ったとして、白井は大炎上しました。それと同時に私は気づいたんです」
Fu-ka 「気づいた?」
キャラメリー「はい、ずっと気になっていたことに…どうして自
94
分が推している『月と風』がTVにもラジオにも劇場にも
…急にどこにも出なくなったんだろうって…何かキッカケがあったんだと…」
Fu-ka 「ほう?」
キャラメリー「その疑問の答え…劇場を回って、若手の漫才師にたくさん訊いて回りました。『月と風』は、ユリシーズと同じく白井におもんないことをやるよう、強要されていたんです」
Fu-ka 「ほう?」
キャラメリー「でも、二人は…二人は、白井に逆らって…それで」
Fu-ka 「干されたのか…」
キャラメリー「はい、干されたことも…その後も白井が執拗に『月と風』の活動を妨害していたことも…それで判りました…」
Fu-ka 「んー…」
キャラメリー「許せない気持ちでした…『ユリシーズ』の時とは違って、同じようなことをされたのに『月と風』は報道もされていない…ただ人知れず消えていった…あんなにも面白かったのに…」
Fu-ka 「ん?」
キャラメリー「あんなにも面白かったのに…『月と風』…」
Fu-ka 「アンタ、イイヤツね」
mitsuki 「ちょっと」
Fu-ka 「いや、スマンスマン、それで?」
キャラメリー「それで忍びなくて…ファンですら、よく知らないままなんて…どうにかしてどうにかして白井太を陥れてやりたい…と」
Fu-ka 「うーん、良くないなぁ…」
95
キャラメリー「はい、そんなことをしても、『月と風』の二人は喜ばない、それは判ってました、でもこれは自分のためにやったんです…『月と風』のファンも同じように許していないぞ、となんとしてもそれを白井に伝えたかった…」
Fu-ka 「それで…」
キャラメリー「ところが白井が見つからなくなりました…『ユリシーズ』の一件があって、白井は大炎上したので、そのまま雲隠れしてしまったんです…」
Fu-ka 「身を隠していた?」
キャラメリー「はい、なかなか見つからない白井の存在に自分はイライラしていました…ある日、気分でも晴らそうと立ち寄った居酒屋で、見たんです」
Fu-ka 「見た?何を?」
キャラメリー「『月と風』の漫才です、小さな居酒屋で漫才をしていました。何も諦めず、健気に…」
Fu-ka 「ほう?」
キャラメリー「それは都市伝説をモチーフにした『黒いキャラメリーさん』と言うネタでした。昔っからのファンである自分も初めて見るネタでした…」
Fu-ka 「(mitsukiに)おい」
mitsuki 「はい、確かに『月と風』の漫才レパートリーの中に『黒いキャラメリーさん』というネタがありました。劇場に取り憑いた幽霊が、お客さんをさらってしまう…と言うような話だそうです…」
キャラメリー「コレだ!と思いました、そのネタを真似てやろうと…」
Fu-ka 「ネタを真似る?どうして?」
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キャラメリー「はい、白井は…腐っているとは言え、お笑い養成所の教官までやるようなヤツです、ましてや自分が指導したこともある『月と風』のネタ、このネタが話題になれば、必ず、その内容は見たり、聞いたりすることになるだろうと」
Fu-ka 「話題作り…か…」
キャラメリー「はい、それでネタの中に出てくる黒いキャラメリーさんと言う役柄を本当にやって…劇場に来るお客さんが本当に怖がっていくと、だんだん話題になっていくんじゃないかと…」
Fu-ka 「それでネタを真似た…」
キャラメリー「はい…」
Fu-ka 「(mitsukiに)おい」
mitsuki 「はい、黒いキャラメリーさんと言う役柄の特徴ですね」
Fu-ka 「(mitsukiに)うむ…」
mitsuki 「はい、黒いキャラメリーさんは、まず身体が大きい」
Fu-ka 「(mitsukiに)うむ…」
mitsuki 「はい、そして上から下まで真っ黒な服装」
Fu-ka 「(mitsukiに)うむ…」
mitsuki 「はい、顔を見ただけでは女か男かよう判らん」
Fu-ka 「(mitsukiに)うむ…ん?」
mitsuki 「はい、顔を見ただけでは女か男かよう判らん」
Fu-ka 「(黒いキャラメリーさんに)めちゃめちゃおっさんやないか!」
キャラメリー「…はい、完全には真似できなかったんです…」
Fu-ka 「まぁいい、それで?」
キャラメリー「狙い通り、だんだんと黒いキャラメリーさんは話題になっていきました…」
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Fu-ka 「なんと…しかし、お客さんを連れ去っていくというのは…」
キャラメリー「はい、頼むのは大変でした、毎回、毎回、友人に相談してさらわれる役を…」
Fu-ka 「なるほどぉ、しかし、だとしても…」
キャラメリー「…はい…」
Fu-ka 「だとしても、その黒いキャラメリーさんと言うネタが話題になっただけで、その白井には…」
キャラメリー「えぇ、これだけでは、白井を陥れることはできません」
Fu-ka 「うむ…」
キャラメリー「なので、黒いキャラメリーさんの本当のターゲットは、白井太だと言うメッセージを盛り込む必要があったんです…」
Fu-ka 「どうやって?…」
キャラメリー「…A-11…」
Fu-ka 「A-11…」
キャラメリー「席番号です、劇場では関係者がよく座る席です、『月と風』が劇場で漫才をやっていた時、白井太がよくその席に座っていました。劇場に頻繁に通っていた自分はそれを知っていましたから…」
mitsuki 「黒いキャラメリーさんがその席、間違えてませんか?って聞いて回っていたのは、席を確認するためじゃなく、毎回、自分がA-11に座っていることを伝えるためだったの…」
キャラメリー「そうです、いつも黒いキャラメリーさんはA-11に座って…白井太、お前が来るのを待っているぞ!と」
mitsuki 「そういうことだったのか…」
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Fu-ka 「このネタが話題になって…黒いキャラメリーさんがA-11に座っている…それまでいつもそこに座っていた白井だけは、それが意味するモノが判る…と」
キャラメリー「そうです、元々のネタの中にはなかったんですが…今回の単独ライブの際には、加えていただいて…こんな名誉なことはありません…例えそれが、」
Fu-ka 「………」
キャラメリー「真犯人を捕まえるための手段であったとしても…」
Fu-ka 「どうして止めなかった?もう十分ウワサになっていたんだろ?」
キャラメリー「止められませんでした…」
刑事 「やってる内に楽しくなったんだな、他人のためにやってるようなこと言って、結局は他の観客が怖がるのを見て楽しんでたんだ、そうだろ?」
キャラメリー「
いえ、違います!」
刑事 「何が違う!ただ自分の楽しみのためにこんなことを繰り返してたんだろ!」
間。
キャラメリー「…Youtubeチャンネル…」
Fu-ka 「!」
キャラメリー「『月と風』の公式Youtubeチャンネル『月と風とちゅーぶ』でネタが公開されているんです…」
キャラメリー「コメント欄……」
Mitsuki「え?(スマホを手に)」
キャラメリー「自分を見た人がねぇ˜書くんですよ」
Fu-ka 「書く?」
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キャラメリー「えぇ、コメント欄に…ハッシュタグで…」
mitsuki「#黒いキャラメリーさんを見た…」
キャラメリー「劇場には黒いキャラメリーさんが本当に出る…そんなウワサがウワサを呼んで、ネタ動画がバズり始めました」
mitsuki 「ホント…いつの間に…」
キャラメリー「それでさらにウワサって大きくなって…その内、黒いキャラメリーさんにさらわれた、と面白がって…書く人、勝手に捜索願まで出すような輩まで出始めて…そうなるとね、もう止められませんねん…」
Fu-ka「………」
キャラメリー「そりゃそうでしょう…なんていっても自分の推しの漫才師が、自分の惜しでリアルタイムにどんどん、どんどん、見られていく数が増えていくんですから…」
mitsuki 「確かにこれまで見たことない数字に…視聴回数…」
キャラメリー「えぇ、Ⅹとかインスタでショート動画を出してもらえるともっとバズると思うんですけれど、視聴回数がもっと増えて、これがもっともっと話題にさえなれば、『月と風』はもっともっといろんな場所で漫才ができるようになるんじゃないかって…」
Fu-ka 「それをワタシらの望んでなくても?…」
間。
キャラメリー「あ、いや…」
Fu-ka 「推してるなら知ってるやろ?『月と風』はなぁ…」
キャラメリー「え?」
Fu-ka 「『

と風』は、売れたくて有名になりたくて漫才師に
100
なったんとちゃうで…漫才がやりたかっただけや…」
キャラメリー「あぁ…はぁぁ」
Fu-ka 「数ちゃうねん、そもそも二人で話してるのが楽しかっただけで…自分たちが面白いって思うことを他にも面白いって思ってくれる人がいるんかな?ってくらいの……大したことができる訳じゃないけど…自分たちが面白いって思ってるもんを面白がってくれる人いたら良いな…くらいだったんよ、そういう漫才師よ、きっとね、きっと…」
キャラメリー「あぁ…」
Fu-ka 「ホンマに面白がってくれたんなら…ホンマに面白がってくれたんなら…それだけは覚えといたって…」
キャラメリー「すんません…すんません…すんません…」
mitsuki「………」
刑事 「………」
Fu-ka 「どないしょ?」
mitsuki「ん?」
Fu-ka 「理由がワタシらのためやった…Youtubeの再生回数、伸ばすためやて…」
mitsuki「うん、んで話題になって、業界関係者も無視できんくらいになって…」
Fu-ka 「また劇場で活躍できるように……」
mitsuki「刑事さん、申し訳ございませんでした」
刑事 「ん?」
mitsuki「知らなかったこととは言え、原因は私たちです…私たちがこの黒いキャラメリーさんを実在させてしまった…本当に申し訳ございませんでした…」
キャラメリー「すんません…すんません…すんません…」
101
刑事 「はい…」
Fu-ka 「まだまだやった…」
mitsuki「ホンマにまだまだです…大して面白いこともできん、腕もない」
Fu-ka「…ファンの気持ちも判らん…やで…なぁ?…」
mitsuki「…うん…」
Fu-ka「…その上、なんやねん、この空気…なんのオチもつけられへんて…ホンマにしゃないぁ˜…」
間。
刑事 「あの…」
mitsuki「はい?」
刑事 「そろそろよろしいですか、これでもう…安全だと思いますので…」
mitsuki「あ、はい…」
Fu-ka 「………」
刑事 「あの…」
mitsuki「まだなにか…」
Fu-ka 「………」
刑事 「こんなことを言うのもなんなんですが…」
mitsuki「はい?」
刑事 「オチないなら…落ちないなら…上がっていくしかないんじゃないですか?あなた方、『月と風』は…」
mitsuki「上がってく…?」
Fu-kaとmitsuki、ゆっくりと上の方を見つめ始める
やがて、Fu-ka、察したように、
102
Fu-ka 「…結局、アンタがうまいこと言うんかい」
mitsuki「ってもーいーよ」
刑事が無言のまま会釈し、黒いキャラメリーさんと撃たれた客を連れていく
残された二人
二人 「どーも、ありがとうございました」
色んな人に向けて、静かに礼をする…暗転。
間。
明転し、黒子のみが登場。
黒子のめくり『アフタートーク』の演目題字。
明るく軽い出囃子。
月と風の二人、出てくる。
Fu-ka 「いやいやいやいや、ありがとうございました」
mitsuki「ありがとうございました」
Fu-ka 「いかがでしょうか、ねぇ?」
mitsuki「はい、楽しんでいただけていれば良いんですが…なんかしっとりした終わり方で…楽しんでいただけたんでしょうかねぇ˜…」
Fu-ka 「判りません!楽しんでいただけていれば何よりです!」
mitsuki「はい」
Fu-ka 「あいよ、ほらmitsuki、(前を指して)コメント指示が出てる」
103
mitsuki「え、こんなん言うの?ホントに?」
Fu-ka 「しゃないぁ˜、ほら、刑事さんにも言われてますし…」
mitsuki「え?」
Fu-ka 「上がっていくしかない…ってさ、『月と風』は…」
mitsuki「…では…すみません、告知です…今日、ここで御覧いただいておりましたネタは、実は、恥ずかしながら、本当に、私たちの公式Youtubeチャンネル『月と風とちゅーぶ』で御覧いただけます。"月と風とちゅーぶ"で検索いただきますと、すぐに見つかると思いますので、もし、よろしかったら今一度、御覧いただけますと幸いです…それでおもしろかった…って言う時には、"いいね"とか"コメント欄にメッセージ"を書いていただけますとウレシイです˜」
Fu-ka 「本当におもしろかった時、だけね」
mitsuki「はい、お気づきの通り、劇場に来ていただいた人だけは、黒いキャラメリーさん、本当に見れた、と言う仕掛けになっておりますので、くれぐれもネタバレ、口外しないようにご協力をお願いいたします…とのことで…はぁ…言わんでもよくない?」
Fu-ka 「ホンマな…」
mitsuki 「ねぇ…」
Fu-ka 「んで、なんやっけ?その皆さんがネタバレせんように気をつけていただく…黒いキャラメリーさんの特徴?」
mitsuki 「えっとね、身体が大きいて、上から下まで真っ黒な服装で………顔を見ただけでは女か男かよう判らん」
Fu-ka 「むちゃくちゃおっさんやったわ、ねぇ˜」
mitsuki 「本当に見た人だけ、#黒いキャラメリーさんを見た とね…そうしていただけると…」
104
Fu-ka 「そうすると、世の中に…もうちょっとだけ面白いことが起こるかもね」
mitsuki「…はい………と言うことで…長らく見ていただきましたが、皆さん、本日は…え、えウソ…ゲスト?…来てる?では早速登場いただきましょう、この方です、どーぞ!」
キャンディを撒きながら、ユリシーズのユリ、登場。
mitsuki「はい、お馴染みのキャンディを撒きながらの登場…私たちと同じ門下生ってことになりますかね?ユリシーズのボケ担当、ユリさんです」
Fu-ka 「うわぁ˜ありがとう」
ユリ 「初の単独ライブ、ご成功おめでとうございます!」
Fu-ka 「いやいや成功なんて…」
ユリ 「大成功ですよ」
Fu-ka 「見えてたステージから、そこで見てくれてたの、あ、来てくれてるな、って」
ユリ 「あ、そうでしたかぁ˜どうしても来たくって…」
mitsuki 「どうでした?御覧いただいて…」
ユリ 「いやホント、楽しませていただいて…本当に本当に面白かったです…」
Fu-ka 「そう?」
ユリ 「はい!…面白くなかったら良かったのに…」
mitsuki 「え?」
ユリ 「いえ、なんでも…シズカがあんなことになっちゃって本当に悲しかったんですけれど、今回ね、同じ門下生?なんて言うとおこがましいんですけれど、シズカ
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が憧れていた…先輩の…『月と風』のお二人が頑張ってくださったので、シズカへの弔いになればいいな、と思っています」
Fu-ka 「………」
mitsuki 「そんな…ね、私たちも自分たちにできることを頑張っただけで…」
ユリ 「でしょうね」
mitsuki 「え?」
ユリ 「いえ、なんでも…」
mitsuki 「あ、え、あの…ユリさんは今後の活動?何か告知とか?とかあるそうで…」
ユリ 「はい、ありがとうございます、そうですね、残念ながら、ユリシーズとしての活動はもうできなくなったので、今後はピンのタレントとして活動していくことになりました、どうぞよろしくお願いいたします」
Fu-ka 「ピン?」
mitsuki「ま、漫才は…タレントを?」
ユリ 「そうなんです。漫才では『月と風』さんたちみたいに面白くできないですから…」
mitsuki「いやいや、私たちだってまだまだ…」
ユリ 「名前も本名に戻して…」
mitsuki「本名?」
ユリ 「そうです、ユリは本名なんですけど、苗字もちゃんと入れて…本名の白井ユリで…」
間。
mitsuki 「…白井?…」
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ユリ 「そうです」
mitsuki 「…白井ユリ?…」
ユリ 「これからは白井ユリに戻して…イチ、タレントとして活動していこうと思っておりますので、皆さん、是非、応援をよろしくお願いします……」
mitsuki 「…白井ユリ…」
ユリ 「なんて…そう思ってた矢先、こんなに成功されると困るんよね…もうちょっと面白くなかったら良かったのに…」
mitsuki 「…え?面白くなかったらって何…」
ユリ 「はぁ、だってさ、面白かったら、"どうして今まで、こんな面白い子たちが売れなかったんだぁ˜"ってなるでしょう?」
mitsuki 「えぇ、え…」
ユリ 「…そしたらさ、折角、落ち着いてきたって思ってたのに…お父さんの炎上」
mitsuki 「…お父さん…」
ユリ 「また炎上しちゃうよ、お父さんがやってきたこと…明るみに出ちゃうじゃない…また炎上しちゃうよ…」
mitsuki 「…ユリさんが白井教官の娘……」
ユリ 「そ、アナタたちの宿敵、白井太の娘だから…」
mitsuki 「敵だなんて」
ユリ 「でもね、言っとくけど、ユリシーズがあそこまで順調に売れたのも、アタシのお父さん、白井太の言いつけを素直に守っていたからよ、だからたくさんTVも出れて、あんなに順調だったのに……」
mitsuki 「…ちょ、ちょっ…」
ユリ 「それなのに…あの日以来、毎日毎日、"そもそも大し
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て面白いと思ってなかった"とか"どうせ事務所のゴリ推しで出た子たちねぇー"なんて好き放題書かれまくってる」
Fu-ka 「………」
ユリ 「なのになんでアナタたちは、ちゃんと面白いの…なんで『月と風』は面白いのよ…」
Fu-ka 「いいから、ワタシらなんて、本当にまだまだやから…」
ユリ 「自分たちの方が正しかった!なんて思わないでよ!」
Fu-ka 「え?」
ユリ 「ユリシーズはアナタたちよりずっと売れた、ずっと売れてた…お父さんが間違ってた訳じゃない1」
mitsuki「ユリ…さん…」
ユリ 「お父さんは間違っていなかった、間違ってなかったのに…散々世間にも否定されて…」
mitsuki「そんなの…」
ユリ 「アナタたちにアタシの気持ちが判る?…相方にも…見放されて…この上、アナタたちに売れられちゃ…アタシたちの家族、どうなるの…」
mitsuki「そんなの…」
ユリ 「だから…このまま売れてもらっちゃ困るのよ」
Fu-ka 「…それが動機?」
mitsuki 「動機!?」
Fu-ka 「…そう、おかしいと思わなかった?警察は
潜入捜査までしたのに、捕まった犯人はただYoutubeチャンネル視聴者数を上げていただけの、ただのいたずらでしたー、なんて…」
mitsuki 「え、でも…」
Fu-ka 「…テロ予告があったの、爆破予告」
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mitsuki 「爆破予告!」
ユリ 「ひゃひゃひゃ…」
Fu-ka 「…あなただったのね」
ユリ 「そう、これからアタシがあなたたちを殺す…全員まとめて…」
ユリ、股の間から、爆破スイッチのようなモノを出す
ユリ 「父親ゆずりで下品でしょう…」
Fu-ka 「…本気なのね…」
mituki 「そんなことしたら、アナタだって」
ユリ 「えぇ、でもこれでお父さんの名誉が守られるじゃない」
mitsuki 「だったら私たちだけで…」
ユリ 「バカね」
mitsuki 「
え?…」
ユリ 「アナタたちだけを殺したら、アタシはただの殺人鬼。そうなったら、お父さんはどう?ただの殺人鬼の父親じゃない」
mitsuki 「………」
ユリ 「アタシは違う」
mitsuki 「違う?」
ユリ 「アタシは可哀想な被害者、そう、被害者の一人になるだけ…黒いキャラメリーさんに殺された被害者の一人」
mitsuki 「そんな訳ないじゃない、あの人はもう何もできない、さっき見てたでしょう、もう捕まってる…これをあの人がやったことにできる訳ないじゃない…」
ユリ 「警察がこの状況をちゃんと発表すると思う?…犯人が捕まったと思ったら、別に真犯人が居て、劇場の全員
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が爆破され亡くなりました…そんな風に正直に言うかしら?言う訳がない、絶対に隠したがる」
mitsuki 「……」
ユリ 「甚大な被害は出たものの、どうにか犯人だけは捕まえました。そういう発表になるのよ、そういう順番に…全部あの黒いキャラメリーさんの仕業だった、ってことになるわ!」
mitsuki 「…そんな…」
ユリ 「黒いキャラメリーさんが暴れてくれたおかげで、アンタたちは終わり…アタシは父の名誉を守り、可哀想な被害者の一人として人生を終えることができる…」
Fu-ka 「黒いキャラメリーさんのウワサを…そうやって黒いキャラメリーさんのウワサを乗っ取るつもりなのね…」
ユリ 「ふふふ、折角気づいたのに…残念だったわね、今となってはもう誰も助けてはくれないわよ、判ってるでしょう、警察は
本当の黒いキャラメリーさんを連れて出て行った…」
mitsuki「そんな………」
ユリ 「このスイッチを押せば、すべて終わり…証人すらどこにもいなくなる…すべては黒いキャラメリーさんの仕業ね…アタシ、やさしいからここまでちゃんと説明してあげたのよ、そうじゃなければスグにぶっ放しても良かったんだから……ひゃひゃひゃ…ひゃひゃひゃ…」
黒子 「はい、そこまで」
黒子がユリを取り押さえる。
ユリ 「え?」
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黒子 「警察はそんなウソの発表をする必要はない、まだここにいるから…」
ユリ 「なんで…」
黒子 「なんでかな?潜入捜査が一人だと思った?」
ユリ 「だって黒いキャラメリーさんは捕まって…」
黒子 「全員で署に連れて帰ったって…彼が真犯人だったとしたら、あんなコントみたいな事情聴取を許すはずないでしょうよ」
ユリ 「最初から判ってたの…」
黒子 「そ、最初から、黒いキャラメリーさんは二人いるかもしれませんってね、伝えてくれていた人がいたからね」
黒子、Fu-kaを見る
そして、ユリに手錠を嵌める
黒子 「この役柄だったから、本当に良かったよ、見てごらん」
黒子、これまでめくられていた「めくり」を戻していく
黒子 「取調べ」
ユリ 「………」
黒子 「中途半端」
ユリ 「!」
黒子 「黒いキャラメリーさん」
黒子 「聞こえて来たのは女の人の声ですか?男の人の声ですか?」
黒子 「もう半分?まだ半分?」
黒子 「どうしてもTully‘s(どうしても足りず)」
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黒子 「どっちもカワイイ…ねぇ」
ユリ 「………」
黒子 「…mitsukiさん、なんですっけ?黒いキャラメリーさんの特徴」
mitsuki 「身体が大きいて、上から下まで真っ黒な服装で、顔を見ただけでは女か男かよう判らん」
Fu-ka 「むちゃくちゃおっさんやったわ」
黒子 「うーん…あの彼だけを見ても…カワイイとは思わないでしょう?」
Fu-ka 「カワイイよ、なんつったってワタシらの推しやもん」
黒子 「でもね、僕はこう思った、カワイイ方の黒いキャラメリーさんがもう一人いるってね…」
項垂れるユリ。
黒子が引っ張っていく。
足を止めるユリ。
ユリ 「どうして…どうして最初から…」
Fu-ka 「ワタシたちね、干されてたのよ…TVもラジオも劇場にも出られないくらい干されたのよ」
ユリ 「知ってるわよ、アタシのお父さんがやったんだもん」
Fu-ka 「なら、どうしてこんな立派な劇場で
単独ライブができるのかしら?」
上手から白井太、出てくる。
白井 「…間違っていた…」
ユリ 「………」
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白井 「本当は僕が止めなきゃいけなかった…キミたちが自分のおもしろいを貫いたように…」
Fu-ka 「………」
白井 「炎上する前からさ、おもんないおもんないって言われ続けて…判ってたよ、僕が面白くないことくらい…でも認められなくて、自分たちの世代の価値を押し付ける必要なんてなかったのに…僕は生き残りたかった…」
mitsuki「………」
白井 「生き残るためになんでもやった。TV局のプロデューサー、編成局長、コンテンツ事業部長、スポンサー広報部長…そういう人たちに気に入られるために」
Fu-ka 「………」
白井 「それには、なんでも言うことを聞くタレントを作り上げることが一番だったんだ、ただなんでもいうことを聞くヤツ…」
ユリ 「………」
白井 「僕も同じ…なんにも考えず、なんでも言うことを聞くヤツさ…僕が…僕が気づいて、止めていれば良かったのに…キミたちに断られ、結局、娘にまで同じことを…好きにやらせてやればよかったのに…」
ユリ 「………」
白井 「できなくて、それができなくて、いつの間にか、あの子の大事な相方まで奪ってしまった…気に入られたくて、ただ気に入られたくて…」
間。
Fu-ka 「アンタのお父さんは、そう言ってた」
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ユリ 「………」
Fu-ka 「だからアンタが守ろうとしている父親の名誉はもういらんねん…」
ユリ 「………」
Fu-ka 「漫才師は漫才を、作家は作品を…」
ユリ 「………」
Fu-ka 「…皆、一生懸命やっていれば良いんじゃないの?」
ユリ 「…………」
Fu-ka 「大変よ、他の人たちに笑ってもらおうなんざ考えたら、それだけ一生懸命やり切らな…他のことなんかできるかいな」
ユリ 「…そんな……」
Fu-ka「そんな当たり前のことをできんで…なんで皆、ウラでこそこそと…仕事より忙しいことしとんねん」
ユリ 「そんな…そんな…」
Fu-ka 「アンタのお父さんはな、今後、炎上が収まるようなことになっても、作家として復帰はしないって、これから自分がやってきたことを正していくって…だから、ワタシらはこうして、劇場で漫才できるようになったのよ」
ユリ 「そんな…そんなワケない!そんなワケない!そんなワケない!」
mitsuki「ユリさん!」
ユリ 「そんな…そんな…そんなワケない!そんなワケない!そんなワケない!お父さん、間違ってないって…間違ってないって………」
mitsuki「もういい…もういいって!」
ユリ 「あ、あ…あ、あ…なんで…アタシ、なんてこと…」
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mitsuki「いいから!もういいから!」
間。
Fu-ka 「どねんする?」
ユリ 「え?」
Fu-ka 「漫才師は…漫才師はそれ言われたらもう終わり、そうやろ?」
ユリ 「あ、え、…もういい…」
Fu-ka 「せや、どねんする?」
間。
ユリ 「………うん」
Fu-ka「せやて…(mitsukiに)」
mitsuki「…うん…もーいーよ」
ユリを抱きしめるようにして、mitsukiがツッコむ
ツッコまれ、再び、項垂れるユリ。
やがて黒子が無言のまま、mitsukiを離し、
自分が代わってユリを抱え上げる
Fu-ka 「待ってるで」
ユリ 「………」
Fu-ka「またいつか漫才する気やろ、待っとったる」
ユリ 「…しないで…」
Fu-ka「ん?」
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ユリ 「…しないで…」
Fu-ka「え?なんて?」
ユリ 「あんまり…あんまり期待しないでよ…白い犬は面白いの遺伝子なんだからアタシ…」
Fu-ka 「ふっ」
歩き出すユリ
後ろから支える黒子
残されたFu-kaとmitsuki
二人 「(


に向かって)どーも、ありがとうございました」
暗転。
明転し、警察署の中の様子。
インタビュワー(芸能記者)に扮していた刑事と
黒子に扮していた刑事の会話
黒子 「しかし…大変な一日でしたね…」
刑事 「ん?あぁ、いつまでその格好してんだよ」
黒子 「えぇ」
刑事 「お前が黒子で、俺は芸能記者のインタビュワー…」
黒子 「やらされましたねぇ˜」
刑事 「あぁ、やらされた…いや、やられたなぁ˜…」
黒子 「やられた?」
刑事 「あそこまで事前に準備されてるとは…我々は逮捕しただけ…」
黒子 「ですね」
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刑事 「警察にスカウトしたいくらいだよ」
黒子 「無理なんじゃないですか?彼女たち、漫才しかやる気なさそうでしたよ」
刑事 「そうだな…で、仕事サボって何見てんの?」
黒子 「サボってないスよ、彼女たちのYoutubeチャンネル」
刑事 「あー」
黒子 「自供のヒントになれば…って殆ど自供なんて済んじゃってるんですけれど…」
刑事 「ふっ、だな…」
黒子 「えぇ」
刑事 「やっぱ、サボってんじゃねぇか」
黒子 「へへ」
間。
黒子 「上がっていきますかね」
刑事 「ん?」
黒子 「彼女たちです、『月と風』、売れますかね?」
刑事 「さぁな、でも本人たちが望んでなかったとは言え、話題性は抜群だろ、バズってたって…『黒いキャラメリーさん』のネタ」
黒子 「ハッシュタグ、#黒いキャラメリーさんを見た…かぁ˜…なんか、そこまでして売れたいって感じじゃなかったですけどねぇ˜」
刑事 「そこだよ」
黒子 「ん?」
刑事 「それなのに、どうしてここまで協力してくれたんだ…、あの二人?」
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黒子 「さぁ…それは…あ、あれぇ˜」
刑事 「ん、どうした?」
黒子 「彼女たちのYoutubeチャンネル」
刑事 「ん?」
黒子 「いやね、『黒いキャラメリーさん』のネタが一番バズってるのかと思ってました」
刑事 「違うの?」
黒子 「はい、一番視聴回数が多いのがコレ!(スマホを刑事に見せる)」
刑事 「なにこれ?」
黒子 「なんてことない、二人がただ駄弁ってるだけの動画」
刑事 「これが一番?視聴回数が多いの?」
黒子 「そうなんスよ˜…なんてことない…」
刑事 「まぁ、なんでもいいじゃないか」
黒子 「そうですね」
刑事 「ただこれ…
黒子 「はい…」
刑事 「二人とも心底、楽しそうだな」
いつもの出囃子が聞こえてくる。
暗転。
いつの間にか出囃子、
クロスオーバーして曲が乗り替わっていく。
お馴染みの曲。
♪ Fatboy Slim - Because We Can
明転し、『月と風』の二人、出てくる。
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mitsuki 「はい、どうもこんにちわー、いやー頑張っていかなアカンなぁ˜言うてるんですけれど」
Fu-ka 「おぅ!」
mitsuki 「ご覧いただいております通り、女の子二人でやってます。私の方がmitsukiと申しまして…」
Fu-ka 「私がFu-kaですぅ」
mitsuki 「mitsukiとFu-kaで、『月と風』と言うコンビでやってます。大しておもしろいことができるほど腕もないんですが、精いっぱいやっていきたいと思っております。最後まで楽しんでいただけましたら何よりでございます…」
Fu-ka 「はい˜…ホンマにまだまだ全然や」
mitsuki 「そうですよ、我々、まだまだ知られてませんからね˜」
Fu-ka 「出にくいねぇ˜」
mitsuki 「出にくい?」
Fu-ka 「せやろ、出にくい」
mitsuki 「なんで?」
Fu-ka 「大体、女の子二人で漫才やってたら…大体ね、どっちがブサイクで、もーてー…誰かもーてーとか…カレシほしー!て言うてたら、すぐに知られて…すぐに出れててん」
mitsuki 「エラいこと言うなぁ˜」
Fu-ka 「…でもそれだけで出れててん…その点、ワタシらは…」
二人 「どっちもカワイイ(のポーズ)」
Fu-ka 「いや˜出にくなった、出にくなった、大体さ、どっちかだけでも身体がめっちゃ大きいとかさ、なんかパッと見ただけでも特徴あるもんやん?それやのにワタシらは…」
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二人 「どっちもカワイイ(のポーズ)」
Fu-ka 「出にくいわぁ˜、もう上がっていくしかないっていうのに…、売れる要素ないわー…だってぇ」
二人 「どっちもカワイイ(のポーズ)」
暗転。
すぐに明転すると
静かなステージ上、センターマイクだけが残っている。
(終幕)
※カーテンコール ♪undervar「ideaう」

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