GPT-5を見てがっかりした人へーーGPT-5はAGIロードマップに入ってない
OpenAIのライブ「introducing GPT-5」を見ましたでしょうか。
ついに待ちに待ったGPT-5が出てきて、私としては「おぉ...!」という感じなのですが、きっとGPT-5の性能に落胆した人もいるでしょう。
すでに見た人もいるかもしれませんが、以下の図表を見てください。

OpenAI「https://openai.com/ja-JP/index/introducing-gpt-5/」より

OpenAI「https://openai.com/ja-JP/index/introducing-gpt-5/」より
まじか。GPT-5よりGrok 4の方がARC-AGI-2だと性能高いと(Grok 4: 15.9% / GPT-5: 9.9%)
— 石川陽太 Yota Ishikawa (@ytiskw) August 8, 2025
そして年内にGrok 5がリリース予定でめちゃめちゃ良いとelonが言っている pic.twitter.com/xjNojKB6lF
御覧の通り純粋にAGIに近づいたかそうでないかを計測するベンチマークでの上昇幅は、高まりすぎた期待に応えるには小さいものでした。
しかもX社がGrok4をリリースしたせいで、GPT-5は1番ではないということになり、性能に落胆した人もいるでしょう。
しかし、この結果だけで「AIの成長は止まった、LLMは期待外れだ」というのは早計だと個人的に考えています。現在のAI開発は実は複数の分野に分岐しており、性能の向上は今より多元的な意味を持ち、なおかつGPT-5は(AGIに向けての)性能向上におけるメジャーアップデートではないと考えられるからです。
AI開発の今
AI開発における性能向上は実社会に対する応用が広がっていくにつれてより多元的になってきました。
2017~2024年夏くらいまでは、性能が高いことは単純により多くの知識を持っていて、より自然にしゃべれることで、考えることが得意であればあるほどよいという感じでした。さらに、SOTAモデル(最先端モデル)以外はポンコツ扱いされ、そのモデルのみが好んで使われました。
しかし、CoTという概念が現れてから事態は変わりました。思考力が高まり、複雑な状況に対しても柔軟に対応できる素養が生まれたことで、チャットボットを超えて実世界での応用が考えられるようになりました。例えば生物学や医療、司法判断などで使われる例も検討されました。うまくいかない例もありましたが。
この時点で一般用途と高度な推論を要する用途の二つに使い方が分かれました。具体的には以下の様に評価基準が分かれています。
一般用途
事務作業やプレゼンテーションの作成、相談、プランニングなど広く一般的に使われるであろう用途については以下の要素が重要視されます。
ミス(ハルシネーション)の少なさ
ツールの可用性
EQや自然な会話を生成する能力
計画性・自律性
記憶能力
マルチモーダル性
専門用途
研究や経営判断、分析、司法業務、エンジニアリングなど高度な推論が必要な用途では以下の要素が重要視されます。
自律性・計画性
ツールの可用性
記憶力
推論能力
高度な知識
創造性
現在ではこの二つの用途に大まかに別れ、ほとんどの場合でSOTAモデルは専門用途のみに使われるという傾向が始まっています。現にOpenAIのo3-proやGrok4 Heavyなんかを日常的に使っている人は少ないでしょう。
つまり、私たちは性能を測るうえでこの専門用途のみの性能向上を見ているから性能が上がったように思えないのです。
OpenAIのライブではハルシネーションが低減したこと、より自然な会話(へつらいの減少)、ツールの統合、コーディング能力の向上、博士レベルの知能、速度の向上などが目玉要素でした。
このことから、今回のGPT-5へのアップデートは主に一般用途に対するアップデートが中心だったように思えます。実際これからは専門的なプロンプト知識やツールやモデルに関する知識がなくとも簡単に性能を引き出せるようになるので、見た目上のインパクトに対して社会上のインパクトは予想以上に大きくなる可能性もあります。
さらに、AI開発企業の内部ではこのSOTAモデルを探求する本質的なAGIに向けての性能向上の取り組みが進んでいます。2025年の7月下旬、つい2週間前でしょうか。いきなりOpenAIとGoogleの二社の内部モデルが国際数学オリンピック(IMO)で金メダルを獲得という巨大なマイルストーンを達成しました。これは従来の検証可能な報酬による強化学習を超えた新たな性能向上のパラダイムを示しています。
おそらく性能向上のタイムラインは遅くなるどころか加速しているでしょう。
結論
AIの性能向上は一般的な用途と専門的な用途の分野に分かれており、GPT-5は主に一般的な用途に対するアプローチであったがために性能が低いように思えるだけであって、社会的なインパクトの面では大きいものがあるのではないかと個人的に推測しています。
また、GPT-5の性能が低かったから今後も低いかというとそうでもなく、実際は企業の内部の開発スピードに依存するため、IMO金メダルなどのマイルストーンを達成した今、特にGPT-5を見て今後のAI業界に落胆するのは早すぎるように思えます。
補足
各ベンチマークの内容を、画像で表示した順に番号を付けて補足しておきます。
FrontierMath:数学者を集めて作成した高度な数学ベンチマーク。大学の学部レベルから研究レベルまでの幅広いティアが集められているが、どの問題も専門家が数時間以上かけて解くようなものになっている。
Humanity’s Last Exam(HLE):AIの知識の限界を試すために作られた、自然科学や人文学、数学、多様な分野からなる高度な問題を集めたベンチマーク。マルチモーダル性能やリサーチ性能、知識レベルが試される。
ARC-AGI2:シンボリック解釈や「Aが動いて、右端に行った」などのコンテキストルールの理解、人間のような推論を必要とするAIの知能を測定するベンチマーク。人間は比較的簡単にできる。
加えて、題名の主張の明確な証拠が得られましたので、ここに示しておきます。
GPT-5 is the smartest model we've ever done, but the main thing we pushed for is real-world utility and mass accessibility/affordability.
— Sam Altman (@sama) August 7, 2025
we can release much, much smarter models, and we will, but this is something a billion+ people will benefit from.
(most of the world has…
