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鉄剤との併用に使用すべき薬

鉄剤やカルシウム製剤は、「キレート形成による腸管吸収低下」の機序による血中濃度低下に注意すべき薬剤がある。

キレート形成とは?

例えばチラーヂン®︎(レボチロキシン)を例にとる。
レボチロキシン(T4)はフェノール基やカルボキシル基などの陰性電荷を帯びた官能基を持つ。一方、鉄イオン(Fe²⁺/Fe³⁺)やカルシウムイオン(Ca²⁺)は二価・三価の陽イオンであり、これらとレボチロキシンの陰性部位がキレート結合を形成する。このキレート複合体は水に溶けにくく、腸管から吸収されにくい。
ここで「キレート(chelate)」というのは、金属イオンと分子(配位子)が“カニ🦀のはさみ”のように挟み込むように結合してできる化学構造のことを指す。キレートの語源はギリシャ語の「χηλή(chēlē)」=「カニのはさみ」である。つまり、蟹のハサミが何かを挟むように、電子的に結合してしまうことを意味する。
以下は🦀のハサミのイメージ図であるが、“M” はCa²⁺、Fe³⁺のような金属を表しており、CやOは、ある分子(たとえばアミノ酸や薬)が含む酸素(O)や窒素(N)であり、電子を持った部位(配位部位)を複数もっていることを示している。このため、分子の複数の配位部位が1つの金属イオンに同時に結合し、安定な「輪(環)」状構造(キレート環)を作る。このように、分子が“はさみ”のように金属をつかんで固定している状態がキレート結合である。

どちらが挟む立場でどちらが挟まれる立場なのかはよくわからない(どちらでも良い)。

尚、鉄剤などの併用で逆に「血中濃度が上昇」してしまって中毒になってしまうようなことは稀であり、多くの薬剤は「キレートにより低下してしまう」という方向での注意である。

鉄剤とのキレート形成により薬剤血中濃度が低下しうる5つのCommonな薬剤

鉄剤はcommon drugなので、代表的な相互作用薬はまとめて押さえておきたい。以下はUpToDateのFerric citrateのDrug informationの中に記載されている薬物相互作用に注意すべき薬剤の中から、Generalistが特に遭遇しやすい5つを抜粋したものである。説明記載もUpToDateのものである。いずれも、Lexicompで「Risk Rating D: Consider therapy modification」とされている。

①キノロン系抗菌薬
鉄剤投与の少なくとも数時間(モキシフロキサシンの場合は4時間前、その他の場合は2時間前)または数時間(モキシフロキサシンの場合は8時間後、シプロフロキサシンの場合は6時間後、レボフロキサシンの場合は2時間後)に投与すること。
経口キノロンの最大血中濃度の低下の割合は下記(データはLexicompより)
シプロフロキサシン(46% ~ 75%)
レボフロキサシン(45%)
モキシフロキサシン(41%)
CPFXだと、酷いと1/4しか投与されていないことになってしまう(※キノロンは濃度依存性の抗菌薬)。

②ビスホスホネート製剤
イバンドロン酸(商品名:ボンビバ)の経口投与後60分以内、
アレンドロン酸(商品名:フォサマック、ボナロン)/リセドロン酸(商品名:アクトネル、ベネット)の経口投与後30分以内、
は投与を避ける。

③チラーヂン(レボチロキシン)

鉄剤とレボチロキシンの経口投与は、少なくとも4時間間隔をあけて行うこと。非経口投与の鉄剤またはレボチロキシンでは、投与間隔をあける必要はない。
鉄剤の併用で臨床的にも甲状腺機能低下症が顕在的に悪化しうることは症例報告でも報告されている(PMID: 9191742)。
また、鉄剤を併用すると6ヶ月後のTSHの中央値が0.22上昇したと言う報告もある(PMID: 25040647)。

④制酸薬
制酸薬をオンデマンドで、あるいは時々しか使用しない患者の大多数では、特に対処は不要と考えられる。慢性的に継続使用する必要がある患者では、経口鉄剤と制酸剤の投与を分け、鉄剤の効果低下がないかモニタリングすることを検討する。

⑤レボドパ
両剤の投与間隔を2時間以上空ける。
硫酸鉄(325 mg〔元素鉄65 mg含有〕)を単回経口投与と併用すると、レボドパのAUCは健常者で30%、パーキンソン病患者で50%低下したという報告がある(PMID: 2291872, PMID: 2920496)。UpToDateのLexicompの薬剤相互作用検索では、「相互作用の正確な臨床的意義は不明」と解説されてはいたが、薬物動態的に考えるとレボドパを半量投与するようなことになってしまうので結構大変である。
しかし、フェロミア®︎の添付文書にはなぜかレボドパとの併用注意は載っていなかった(レボドパ®︎側の添付文書には記載されている)。

フェロミア®︎錠の添付文書より

【参考文献】
・前半の薬理学的な説明はChatGPTの回答をベースにしている
・UpToDateのFerric citrateのDrug information
・フェロミア®︎錠の添付文書(https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00054284
・Ament PW, Bertolino JG, Liszewski JL. Clinically significant drug interactions. Am Fam Physician. 2000 Mar 15;61(6):1745-54. PMID: 10750880.
・Shakir KM, Chute JP, Aprill BS, Lazarus AA. Ferrous sulfate-induced increase in requirement for thyroxine in a patient with primary hypothyroidism. South Med J. 1997 Jun;90(6):637-9. PMID: 9191742.
・Irving SA, Vadiveloo T, Leese GP. Drugs that interact with levothyroxine: an observational study from the Thyroid Epidemiology, Audit and Research Study (TEARS). Clin Endocrinol (Oxf). 2015 Jan;82(1):136-41. PMID: 25040647.
・Campbell NR, Rankine D, Goodridge AE, Hasinoff BB, Kara M. Sinemet-ferrous sulphate interaction in patients with Parkinson's disease. Br J Clin Pharmacol. 1990 Oct;30(4):599-605. PMID: 2291872.
・Campbell NR, Hasinoff B. Ferrous sulfate reduces levodopa bioavailability: chelation as a possible mechanism. Clin Pharmacol Ther. 1989 Mar;45(3):220-5. PMID: 2920496.


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