旅先で見つけた、もうひとりの私。─50代ひとり旅のすすめ
ずっとしたかったことがある。
電車を使った「ひとり旅」だ。
50代になって無性にひとり旅に惹かれるようになった。
若い頃は友人や家族と一緒に過ごす旅が当たり前だったが、今は「誰とも話さなくていい時間」が何よりのご褒美に感じる。
昨年の秋、ようやく実行することにした。
選んだのは大阪・中之島美術館。
以前から美術館巡りは好きで、美術教師をしている妹とは大きな企画展があればよく出かけている。
まずは日帰りで行ける距離で、中之島美術館の建物も建造物として興味があったので行き先はすぐに決まった。
せっかくの旅なので、少し贅沢をして近鉄特急「ひのとり」に乗った。
近鉄・名古屋駅から難波駅までの2時間の旅。
赤く輝く車体に乗り込み、広々とした座席に腰を下ろした時、非日常のスイッチが静かに入った。

車窓の景色をぼんやり眺めながら、何も考えずにいられる時間のありがたさをかみしめる。
誰にも話しかけられず、誰にも応えず、ただ「自分でいること」が許される時間。
中之島美術館では、モダンアートの展示を楽しくじっくり観られた。
作品の前で静かに立ち止まり、湧き上がる感情を誰にも説明せずに味わう。
それは、まさに『もうひとりの私』との対話のようでもあった。
旅の終わりには、大阪に住む友人と久しぶりに再会した。
お互いの近況を語り合いながらの夜ごはんは、懐かしさと安心感に包まれたあたたかい時間だった。
人と会うことのよろこびも、また旅の醍醐味である。
このひとり旅で感じたのは、孤独ではなく「自由」であるということ。
そして、ほんの一日の旅でも心にはたっぷりと栄養が注がれるということ。
50代は誰かのための時間から自分のための時間へと舵を切るタイミングでもある。
ひとり旅はその第一歩として、心にやさしく効く処方箋となるだろう。
次は何泊か泊まりでひとり旅を満喫したいものである。
そんな旅に一緒に連れていきたい本がある。
田中美穂さんの『わたしの小さな古本屋』である。
私が次にひとり旅をしたい街の第一位、倉敷にある古本屋の店主の綴ったエッセイ。
大原美術館とともに訪れたいと思っているこの古書店。
一人の女性の生き方としても「楽しんで頑張ってる」ところに励まされ、旅だけではなくひとりで何かを始めようと思った時にもそっと背中を押してくれる本でもある。
旅先に合わせた本は旅をさらに奥深いものにしてくれるアイテムのひとつかもしれない。
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