一文字エッセイ|鐘 ― 夜へほどける音
夜が、ゆっくり降りてきます。
窓の外の色がほどけ、
昼の輪郭が静かに遠ざかっていくころ、
部屋の中にも、
わずかな静けさが広がります。
時計の音や、
遠くの車の気配だけが残り、
言葉にならなかった出来事が、
遅れて心に戻ってきます。
うまくできたことより
気にかかった一言のほうが、
なぜかやわらかく浮かび上がる時間。
消そうとするほどではなく、
抱え続けるほどでもない思いが、
行き場を探すように漂います。
そんな夜に、
遠くで鐘が鳴った気がしました。
本当に聞こえたわけではないのに、
胸の奥に、小さな波紋がひろがります。
一日は
整わないまま夜へ向かい、
名前のつかない感情も
静かな光の中に置かれていきます。
夜は、
まとめるための場所ではなく、
ほどけていく
流れの中にあります。
鐘の余韻は、
何かを終わらせるためではなく、
境目をやさしくなぞるように残ります。
手の中にあった考えは
少しずつ輪郭を失い、
言葉にならないまま、
暗がりへほどけていきます。
やがて、
考えていたはずのことさえ
遠くの景色のように離れ、
ただ、呼吸のリズムだけが残ります。
灯りを落とすころ、
今日という時間が、
夜の側へ静かに移っていきます。
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🔔小さな詩
ほどけない思いを
ほどこうとせずに
鳴っているのは
終わりではなく
今日を
そっと夜へ渡す音
おやすみなさい🌙

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読んでいただき、
ありがとうございました。
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