戻ってきた友にありがとう
古くからの友人、彼女を失わずに済んで良かった、
という話を書きたいと思います。
友人の彼女、リサ(仮称)は独身で医療従事者として30年以上も働くバリキャリです。
リサには自分が購入したマンションがあり、そこに両親も同居させていました。両親はかつて豊かな生活を送っていたのですが、定年後の生活を見誤り、自宅を手放すことになったのです。
10年、20年と年月が経過し、リサの持つマンションの一室には両親の介護ベッドが置かれるようになりました。
彼女にはお兄さんが居ますが、すでに世帯をもっており、合意の上でリサが両親の介護を引き受けることになったのです。そして、両親の最期までリサはその責務を全うしました。
リサのお兄さんも、両親の病院通いや経済的な面で協力的でしたから、リサも仕事は辞めずに済み、両親の介護も介護保険を使って乗り切りました。
一方の私も育児と介護、落ち着いている期間だけパートに出るというバリシュフ(笑)していました。
ですから、お互いに「ちょっと息抜きしよ〜」と、カラオケに行っては近況を語り合ってきたのです。
互いに両親を見送った今では、節目ごとに食事をしたり、一緒に映画を観たり、カラオケをしたり、温泉旅行などにも出かける関係です。
当たり前ですが、古くからの友人であっても、それぞれの生活事情があるので、一緒に楽しい時間を過ごせるタイミングがなくなってきます。
更に実際のところ、独身であったり、既婚でも子どものいない友人とは、互いに目に見えない心の境界線があったりします。
リサの場合は、彼女に甥っ子たちの存在があって、子どもの成長を間近で見てきた経験があるせいか、私の子どもの話も淡々と聞いてくれていました。
今は甥っ子より若い後輩を育てながら仕事をし、幅広い年齢層の人たちと仕事をしている彼女。
世の中の流れにも敏感で、物分かりが良い人です。
ぶっきらぼうな物言いをするかと思いきや、いつも相手のためを思った言葉を選ぶ彼女。
私はずっと彼女に " 純粋な少女" の部分が残っていることを嬉しく思っていました。
長い前置きになりましたが…、こんな彼女が一昨年、
投資詐欺に遭いました。
「少しお金を貸してもらえないか」と言ってきたのです。
もちろん、彼女からのこのような申し出は初めてのことです。私は詳しい経緯を聞かせてもらいました。そして、私の話を受け入れてくれた彼女は以下のような行動をとってくれました。
・投資詐欺の手口に間違いないことを専門の弁護士
に確認してもらう。(無料の範囲内で済みました)
・金銭の回収についての見込みやその後の流れにつ
いて教えてもらう。(これも無料)
・警察に被害届を出す。
彼女は一昨年、所有するマンションの古くなったキッチン、その他水回りなどのリフォームをしたのです。少し見栄を張ったかもしれません。
その返済は、不可能な数字ではありませんが、彼女にとって毎月のローンを差し引かれるということが窮屈に思えてきたらしいのです。
そこで投資詐欺の画面に目がいき、でっち上げられた成功者らとのチャットのやりとりなどがいかにも本当らしく、そこに賭けてみたくなったらしいのです。
これまでに二度ほど、お兄さんからも工面してもらったようで、しかし幸い、その額はさほど大きくありません。
私は彼女との会話の中で、彼女が所有しているものを知っています。だから私は言いました。
「お兄さん家族とはこれまでも協力して仲良くやってきたのだから、その関係性を壊すようなことはもうしてはいけない。
リサが生活するのに必要なお金は援助するけど、その投資は間違いなく詐欺だと私は思うから、そうではないという証明ができるなら、もう一度言ってきて」と。
リサはお金に困っていたわけではありません。
むしろ以下のようなものをもっていることを私は知っていました。
・70歳過ぎても働けるキャリア
・自宅マンション(リフォームローンはあるものの
時価爆上がり中の物件)
・生命保険二つ (うち外貨建て一本は解約して
も為替益により損なし)
・NISA口座で運用しているもの
リサは自分がちゃんと色々と持っていることを忘れて、詐欺にあったのです。
以下のことを約束してくれたら、本当に困った時は援助することを伝えました。
(実際、彼女の方が資産は多いのだけど…笑)
1.外貨建保険を解約し、すぐにお兄さんに返却
すること。
2.その他の損失は自分の勉強に使ったと思うこと。
そして、リサは私の話を受け入れてくれて、今年もまた彼女の誕生日には一緒にご飯を食べることができたわけです。私は彼女に伝えました。
私の話を受け入れてくれてありがとう。
遠くに行ってしまわないでくれて、ありがとう。
以前、知り合いから聞いた、大学の投資サークルでの話を私は忘れられないでいました。
その大学生は借金まみれになって、大学を中退し、その後裏の世界へと消えていったらしいという話でした。
思えば、私が二十歳の頃にアルバイトをしていた先の寿司職人さんも賭け事に巻き込まれたらしく、忽然と消えてしまったという話がありました。
また、これまで私が見てきた相続トラブルは、誰かの『不安』から始まります。
あいつになんかやるもんかと一方的に自分のものにしたがる誰か、素直に「 困っているから助けてほしい」とも言わない誰か、そういった誰かがいきなり物事をこじらせはじめるのです。
そして兄弟姉妹、親戚といがみ合って、今後良い関係が築けないであろうと思われる家族を私は今も別の友人のケースにみています。
私はリサにいま一度言いました。
自分がちゃんと持っているものをよく見て、そしてお金がいくらあっても満たされなかった親のことを思い出してほしい。
私たち庶民の持つ大金なんてたかが知れてる。
たかが知れてるお金にしがみついて、支えあえる関係性を壊すのは、ばかげてるよ。
リサが受け入れてくれなかったら、私は気兼ねなく、あれこれを共に楽しめる友人を一人なくすところでした。
しかし、『不安』はみなが持つものです。人生何が起こるかわかりません。だから、不安に感じること自体がいけないとは思いません。
ただ、その不安はどこから来てるのか、
何がどうなればその不安が消えるのか、
その場しのぎでなく、考える必要はあると思うのです。
リサには私も正直に話してきました。私に子供がいても、それは私の所有物でもないし、思い通りに何でもしてくれる家来でもない。
そこにうっかり『保険』のような期待をもつことこそ、この先は特に危険な時代だね(笑)と話してきたのです。
自分のことは自分で考えておく。そのつもりで話していたことが、もしかしたらリサの不安を増長させていたかもしれない。
リサの不安に気づかなかったことに友人として申し訳ない気持ちもあります。しかしやはり私にとってリサは、代わりのいない友人であり、ちゃんといつものリサに戻ってくれた彼女に感謝しています。
