旅行記④三陸・岩手旅行記 第一編(気仙沼・釜石) 〜霧の三陸海岸を旅する〜
ご覧いただきありがとうございます。北風小僧です。今回は旅行記第四弾として、昨年春の岩手旅行についてまとめました。前編では東北までの移動と(宮城ですが)気仙沼、そして釜石観光までについて記します。どうぞ最後までお付き合いください。これまでに公開した旅行記も合わせてお読みいただけると嬉しいです。
岩手が呼んでいる
昨年(2025年)の冬にかけて、北風小僧は宮沢賢治にハマっていました(今も好きです)。当時決して水稲栽培に適してはいなかった岩手県中北部。そこで生まれ育った賢治は、近代科学を以てしても自然の厳しさを前にしては「サムサノナツハオロオロアル」くしかないことを悟っていたようです。それでも農学者としての彼の理想は、自らの犠牲を厭わず苦悩にあえぐ農民たちを助けることであり、このことは「グスコーブドリの伝記」をはじめとする多くの作品に表れています。端的に言えば、彼は西洋の自然科学を学び活用しながらも日本人的な自然観を持ち続け、ついぞ自然を敵対すべき対象としては見なかったのであり、北風小僧には和魂洋才の一つのあり方のように思われます。実際賢治は自然に敵対するどころか生涯にわたって愛し続け、だからこそ素敵な自然観に基づく素敵な童話がたくさん残っています。
北風小僧はそんな賢治の生涯や考え方に興味を持つと同時に、この尊敬すべき人物を産んだ岩手という土地そのものに憧れを覚えました。その後遠野物語を読んだことでこの憧れは一層強化され、大学が春休みになる頃には「そうだ 岩手、行こう。」となったのは自然なことでした。
行程
あくまで半分冗談(つまり半分本気)ですが、東北は関西人が日本で一番訪れにくい地域であるように思います。鉄道を乗り継いでいくにはあまりにも遠く、新幹線でも乗り継ぎが必要で高くつきます。そして空路を検討すると今度は「どうせ飛行機乗らなあかんならやっぱり北海道行こか」となるのです(?)。
北風小僧は船が好きなので、名古屋から仙台まではフェリーで移動してそこから三陸海岸を北上することにしました。行程は以下のようになります。
京都→名古屋(JR)
名古屋港→仙台(多賀城)港(太平洋フェリー)
塩釜泊
本塩釜→気仙沼(仙石線、石巻線、気仙沼線)
気仙沼散策
気仙沼→釜石(大船渡線、三陸鉄道)
釜石観光、釜石泊
釜石→盛岡(釜石線、東北本線)
盛岡観光
盛岡→花巻(東北本線)
花巻泊
花巻観光
花巻からは新潟経由(←?)で帰宅
今回は釜石滞在までをご紹介します。
まずは東北へ
3月に入ってまもない平日、まずは普通列車に乗って名古屋に向かいます(大学生は2月から春休みです)。途中飽きて名鉄に乗り換えたりしつつ無事名古屋に到着。名古屋からはあおなみ線に乗り換えて終点一駅手前の野跡で下車します(太平洋フェリーのターミナルの最寄り駅になります)。野跡駅からターミナルまでは市営バスの路線がありますが本数は少なく、道のりにして2km強と近いので歩くことにしました。大都会名古屋ですが港の風景はかなり開けており、ところどころ景色も綺麗でした。

換算100mm, ISO125, F/7.1, 1/250s
名古屋港越しの鈴鹿山脈遠望
太平洋フェリー「きそ」は定刻に名古屋港を出港しました。利用したのは「きそ」では最も等級の低いB寝台ですが、最近のフェリーらしくベッドの入り口は互い違いに配置されており十分快適です(船によっては雑魚寝の二頭和室の設定もあるようです)。ほぼ一年前のことなので記憶が定かでありませんが、ネット割引などを適用して運賃は8000円程度であったと記憶しています。大動脈の航路だけありレストランも満足のいくものでした。
太平洋を航行すること約19時間、多賀城市にある仙台港(ややこしい)に入港。ちなみにこの船は北海道の苫小牧行きで、乗客の多くは引き続き苫小牧まで利用する様子でした。ここからは電車に乗って最初の宿泊地、塩釜を目指します。
仙石線の多賀城駅に向かう道中には、みちのくを代表する歌枕、末の松山があります。百人一首にも入れられた
「契りきな かたみに袖をしぼりつつ 末の松山 波こさじとは(清原元輔)」
の、あの末の松山です。

特に絶景があるわけではなくただの松の生えた丘に過ぎないのですが、これが末の松山であることに意味があります。そのほかにも「多賀城」というだけあり城跡もあるのですが、こちらは駅から少々遠く諦めました。
多賀城からは、JR北海道と東日本管内の普通列車が乗り放題となる「北海道・東日本パス」で移動します。青春18きっぷとよく似た企画券ですが、利用可能区間が東日本以北に限定される代わりに青い森鉄道や北越急行などの第三セクターに乗れる点が異なります。北風小僧が乗車した時点では18きっぷと価格がほぼ同一ながら(11000円程度)有効期間が7日間と長い(18きっぷは5日間)のも魅力でした。そのほか、自動改札を通れる一方で連続利用に限定されるという条件もあります。現在では制度改定により18きっぷのコストパフォーマンスがやや低下したこともあり、東日本を旅行する場合北海道・東日本パスの優位性はさらに上昇した印象です。
さて、電車はあっという間に本塩釜駅に到着し、宿にチェックイン。本塩釜駅構内には鮮魚店があり、そこでお刺身も購入しました。宿の至近には有名な塩竈神社がありましたが、三脚のクイックリリースを忘れたため暗い中ではあまりろくな写真を撮れませんでした。
宿泊したのは Tabist ホテル塩釜&松島さんです。フロントのおじさんが気さくな方でした。
三陸海岸北上記
翌日からはいよいよ三陸海岸沿いに北上します。未明の塩釜を後にして、まずは仙石線で奥の細道にも登場する漁港のまち、石巻へ。ここから石巻線、前谷地で気仙沼線と乗り継いで朝8時ごろ柳津に到着しました。松島や石巻をはじめ沿線には数々の名所がありますが、本数が少なく途中下車しにくいのが辛いところです。塩竈神社と合わせてまた訪れようと思います。柳津から先は2011年の東北沖太平洋地震で特に津波の被害が甚大だったところで、復旧の際鉄道ではなくBRT(バス高速輸送システム)として再整備されました。以前線路が敷かれていたところが専用道路になっており、そこをバスが走るのです。車窓は鉄道そのもの、車内に目を戻すとバスという独特の感覚を味わえます(北海道・東日本パスはBRTでも使えます)。

三陸海岸は霧に沈んでおり、美しくもどこか哀愁が漂います。時折震災の遺構が車窓に映り、心が痛みます。約一時間走ったところでバスは歌津に到着。ここではウタツサウルスという世界最古クラスの魚竜(イルカ様の形態の海棲爬虫類。中生代に生息した)の化石が発掘されたため、古生物好きならこの地名を聞いたことがある方も多いかもしれません。化石を展示する博物館もありますが、この区間を直通する便は日に4本しかないため通りすぎるしかないのが辛いところです。
約2時間弱の乗車ののち、BRTは終点の一駅手前、南気仙沼に到着。ここで北風小僧はバスをおり、気仙沼港を目指しました(港へは南気仙沼が最寄りとなります)。

28mm, ISO250, F/8, 1/400s
あまり良い写真が残っていませんでした。
小雨の中港を見物した後は、気仙沼おさかな市場で昼食を。カジキの刺身とサメのフライをいただきました。ここには魚市場が併設されており(というより市場がメイン)、三陸ならではの海の幸が目を楽しませてくれます。
この時点で岩手方面へ向かうBRTの発車が20分後に迫っており、気仙沼駅までの約1.5kmはダッシュで駆け抜けました。気仙沼から北は大船渡線で、こちらもBRTとして復興されました。しばらく走るとバスはいよいよ岩手県に入り、約1時間の乗車ののち岩手県最南端、大船渡市の盛駅に到着。盛から先は三陸鉄道に乗車する予定でしたが、この時(記憶にある方も多いと思いますが)大船渡市周辺では大規模な森林火災が発生していました。山火事による停電の影響で三陸鉄道は運転を見合わせており、釜石までは代行バスで移動しました。
製鉄のまち釜石
さて、2日目の宿泊地釜石は、日本製鉄を擁する製鉄の町です。1857年に地元藩士が近代製鉄を開始したのがその発祥で、官営八幡製鉄所よりも40年近く前から近代製鉄が営まれていることになります。岩手県太平洋沿岸では鉄が豊富に産出することが背景にあり、北部の久慈では古代よりたたら製鉄が行われていたそうです。岩手が「鉄の県」でもあることは、名産の南部鉄器や北上川支流の「砂鉄川」からも容易に想像できるかと思います。

換算100mm, ISO125, F/6.3, 1/100s
製鉄所の煙が雲と溶け合う
したがって釜石で最初に訪れたのは、駅から約2kmの市立「鉄の歴史館」でした。入館料は500円とかなり安いにもかかわらず、展示内容は非常に充実していました。あまりの面白さゆえその後予定していた釜石大観音(観音様の頭部が展望台になっている)の訪問を断念したほどです(大観音は16:30閉館、最終入館が16:00でした)。濃霧で視界が非常に悪く眺望が望めなかったため、この選択は正しかったと思っています。

55mm, ISO640, F/5.6, 1/125s
霧が周囲の風景から色彩を奪っていく
帰りは岩手県交通バスに乗って駅に戻りました。釜石で宿泊したのはホテルマルエ(現ホテル釜石ヒルズ リバーサイド店)さんで、大浴場には温泉水が引かれており大変気持ちが良かったです。
ここまで旅行は比較的順調に進んでいたものの、この時岩手県東部には大寒波が刻一刻と近づいていました。寒波に翻弄されつつ終えた旅行の後半は次回投稿予定です。ここまでご覧いただきありがとうございました。次回もぜひお読みいただけると嬉しいです。
お願い
拙い作例ではありますが、もし写真を転載される場合はコメント欄で一言お知らせの上出典を明記いただきますようお願いします。また、写真は全て周囲の方に配慮して撮影しています。
