家族全体のワークライフを再定義する「Whole Family Care」型コワーキングの時代がやって来た:今日のノート#688(2025-10-06)
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"自分に妥協してはいけない。
あなたはあなた自身であること、それがすべて。"
(ジャニス・ジョプリン)
Remembering the legendary Janis Joplin, she passed away on this day in 1970 🌹
Posted by Far Out Magazine on Saturday, October 4, 2025
#トーキング・コワーキングVOL.40
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「コワーキングマネージャー勉強会」は、日々、コーキングスペースを運営する方が、より健全で充実したスペースの運営を継続し成長するよう、毎月一回、オンラインで開催する勉強会です。初回無料お試しあり。
テーマに沿った講義やプレゼン、また課題の共有や事後報告、さらに参加者によるダイアローグ(対話)などを交えて進行し、 相互に情報や知見、アイデアを共有します。
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まずは、無料のメンバー登録のあと、初回無料お試しで勉強会に参加ください。
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メール → ito@cahootz.jp
メッセンジャー → https://www.facebook.com/kanzan10to9
#ペンクラブにご参加ください
コワーキングプレスでは、全国各地のコワーキングスペースとその周辺の人たちや出来ごとをリポートしていただく「コワーキングプレス・ペンクラブ」のメンバーを募集しています。
あなたの町のコワーキングのこと、旅先のコワーキングのこと、そこで出会った人たちのこと、気づいたこと、考えたこと、自由に書いてください。
詳しくはこちらを。
#家族全体のワークライフを再定義する「Whole Family Care」型コワーキングの時代がやって来た
連日の「育児とコワーキング」ネタで恐縮だが、それだけこのテーマが世界中で課題になっているということでもあるので構わず続ける。今度はFactCompanyがとてもいい記事を公開してくれた。
Is ‘whole family care’ the new ‘childcare’?

アメリカ・コロラド州に誕生したHavenは、単なる託児所でも、またコワーキングスペースでもない。「家族全体のケア(Whole Family Care)」という考え方に基づいている。これは素晴らしいアイデアだ。

今日はこの記事をもう少し掘り下げて、共有したい。
曖昧になる境界線:現代の「働く親」が直面する現実
現代において、「働く」ということと「育児」、あるいは「家事」をするということの境界線は、急速に曖昧になりつつある。
がそれは、単なる働き方のトレンドではない。リモートワークやハイブリッドワークの普及によって、仕事と家庭生活が同じ空間、同じ時間軸で交錯することが日常となったということ。
以前は、家庭と職場という明確に区分された「場」があった。しかし、デジタルツールと柔軟な働き方が主流となった今、多くの親は、子どもの昼寝の時間を利用して会議に参加し、保育園の送迎の合間にメールをチェックする生活を送っている。
この新しい現実は、従来の「保育(Childcare)」サービスではカバーしきれない、より複雑で包括的なニーズを生み出している。つまり、子どもを預ける場所というだけでなく、親自身がキャリアを継続し、自己の健康やコミュニティ参加を維持するための「インフラ」が求められている。
この需要に応える形で、新たなコンセプトを掲げる施設が登場している。それは、単なる託児所でも、コワーキングスペースでもない。「家族全体のケア(Whole Family Care)」という考え方に基づいた新しい形のクラブ。その最たる例が、このHaven(ヘブン)。
Haven:単なる保育所ではない「クラブ」
Havenは、働く親たちの間で、従来の保育施設の概念を塗り替える存在として注目を集めている。なぜか。
Havenの最大の特徴は、託児所、大人(親)のコワーキングスペース、そしてジムのすべての機能を、一つの空間に統合して兼ね備えているという点にある。
親は、子どもを施設内の安全な環境でプロのケアラーに預け、その数メートル隣にある静かな専用スペースで仕事ができる。さらに、仕事の合間には、同じ建物内にあるジムで運動し、リフレッシュすることも可能だ。
これは、「育児」と「仕事」と「自己のウェルネス」を、分断されたタスクとしてではなく、連続した一つのライフスタイルとして捉え直すことを可能にしている。←ここ、大事。
日本にも託児サービスのあるコワーキングはあるし、スポーツジムに併設されたコワーキングはある。がこれはそれを合体させることで、さらに大きな価値を提供することに成功している。
新しい考え方:「家族全体のケア」
つまり、従来の「Childcare(保育)」が、文字通り「子どもをケアすること」に主眼を置いていたのに対し、Havenが掲げるのは「Whole Family Care(家族全体のケア)」という新しい考え方だ。
これは、子どもの健全な発育をサポートすると同時に、親(特に母親)が抱える「時間」「場所」「精神的な負担」というトリプルバリアを一度に解消しようとする試みだと言える。子どもが安全にケアされているという安心感は、親が仕事に集中し、高い生産性を維持するための基盤となる。
共同創業者であるAlexandria Latimer氏が言うように、この施設は「託児所/コワーキングスペース」という機能的な名称ではなく、「クラブ」と名付けられている。
クラブという呼称には、単に施設を提供するだけでなく、メンバーシップを通じた帰属意識、コミュニティの形成、そしてライフスタイルを共有する仲間とのネットワークを重視する意図が込められている。
言うまでもなく、「帰属意識」「コミュニティ」「仲間」はコワーキングを成立せしめるキーワードだ。
コストとサービスの合理的解決
育児をしながら働く親たちにとって、最大の課題の一つがコストとサービス内容の柔軟性だ。
従来の保育施設は高額であるだけでなく、多くの場合、固定のスケジュールと長時間労働を前提としたサービスモデルを採用している。一方、柔軟な働き方をする親(例えばフリーランスやハイブリッドワーカー)は、フルタイムの託児所を必要としない日もある。
Havenのクラブモデルは、時間単位のドロップインサービスや、会員制に基づいた柔軟な利用形態を提供することで、この課題に対応している。親は必要な時に、必要な時間だけ、子どもを預け、仕事に集中できる環境を手に入れることができる。
これは、費用対効果の面でも優れており、特にフリーランスやスタートアップの経営者など、不安定な収入と多忙なスケジュールを両立させなければならない層にとって、極めて実用的なソリューションだと言える。ちなみに、Havenの会員費は月650ドルから2500ドル。
案の定、この新しい形のサービスに対する需要は非常に高く、Havenは既にフランチャイズ展開を始めた。これは、この「Whole Family Care」というビジネスモデルが、局地的なニーズに留まらず、全国的な課題への解決策として認識されていることの何よりの証拠だ。
類似の事例に見る「家族ケア」コワーキングの広がり
Havenのコンセプトは、実は唯一無二ではない。世界中の働く親が同様の課題に直面する中で、「Whole Family Care」を志向する類似のコワーキングスペースが次々と誕生している。
1. MOMentum:女性のキャリア継続を支えるハブ
MOMentumは、特に母親のキャリア継続とコミュニティ形成を強く意識した施設だ。これもまた、コロラド州に拠点を持ち、コワーキングスペースと併設された「監督付きの遊び場(Supervised Playtime)」を提供している。
MOMentumが重視するのは、「仕事の場所」を提供するだけでなく、「親としての役割と職業人としての役割の統合」を支援することだ。ネットワーキングイベント、ワークショップ、メンタリングプログラムなどを開催し、産後や育児中にキャリアの断絶を感じやすい母親たちを精神的、実践的にサポートするハブとしての機能を持っている。
その名称が示す通り、「勢い(Momentum)」を失わずにキャリアを前進させたいと願う親たちにとって、ここは単なる作業場所ではなく、同じ目的を持つ仲間と出会い、相互に支え合うためのコミュニティとなっている。
2. BubbaDesk:オーストラリア発、仕事と育児の近接性
オーストラリアを拠点とするBubbaDeskもまた、働く親のための包括的なソリューションを提供する施設だ。
彼らは、コワーキングスペースに統合された託児施設(ナーサリー)を提供することで、親が子どもからごく近い場所で仕事ができる環境を実現している。
「Bubba」はオーストラリアのスラングで「赤ちゃん」を意味し、その名の通り、小さな子どもを持つ親に特化している点が特徴だ。
親が仕事をしている間に、子どもたちは資格を持ったスタッフによってケアされる。この「近接性」は、子どもが泣き出したときや、親が授乳や簡単な抱っこをしたいときに、すぐにアクセスできるという精神的な安心感をもたらす。これは、完全分離型の保育施設にはない、ハイブリッドワーク時代の親のニーズに深く寄り添ったサービス形態だと言える。
MOMentumがコミュニティとキャリア支援に重きを置く一方、BubbaDeskは「物理的な近さ」と「利便性」を追求することで、働く親のストレス軽減を目指している。
「Whole Family Care」需要増大の背景:データが示す必然性
なぜ今、このような「家族全体のケア」を提供するコワーキングモデルの需要が急速に拡大しているのか。それは、パンデミックを契機に加速した構造的な変化と、従来の社会インフラの限界が明らかになったためだ。
1. 柔軟な働き方の定着と「子育て世帯」への影響
パンデミックは、働く場所と時間の柔軟性(フレキシビリティ)が、多くの職種で可能であることを証明した。
例えば、米国の調査では、ハイブリッドまたはリモートで働く従業員の41%が、その柔軟性を失うなら転職を考えると回答している。特に親世代にとって、このワークスタイルは「福利厚生」ではなく、もはや「必要不可欠な労働条件」となっている。
しかし、リモートワークは「子育ての合間に仕事をする」ことを意味するだけで、「子育ての負担が減る」ことを意味しない。むしろ、仕事と育児の境目が曖昧になったことで、親の精神的な負担は増大したという指摘もある。
2. 伝統的な保育システムの限界と高コスト
従来のフルタイム・固定時間の保育施設は、フレキシブルな働き方をする親のニーズと合致しにくい。
また、保育費用の高騰も深刻な問題だ。Fast Companyの記事でも引用されている「National Trends Report 2023」は、働く親を取り巻く環境を分析している。このレポートによれば、アメリカの多くの州で、保育費用が住宅費や大学の授業料をも上回る家計支出となっており、特に低・中所得層にとって、もはや持続可能なシステムではない。
また、従業員1,000人以上の企業のわずか15.8%しか事業所内託児所を提供しておらず、中規模企業ではわずか7.6%しか提供していない。託児所とコワーキングを組み合わせたスペースはアメリカ国内外に存在するが、クラブ全体で数百人の会員を抱えるHavenは、完全認可の託児施設(0歳から5歳まで)としてユニークな存在だ。
こういう状況下で、必要な時に必要なだけ利用できるドロップイン型や、会員制の柔軟なサービスを提供する「Whole Family Care」コワーキングは、コスト効率の高い代替策として十全に機能するのは想像に難くない。
3. 女性の労働参加率の維持とキャリアの継続
「家族全体のケア」の需要増加の核心には、女性のキャリア継続の支援という社会的課題がある。
OECD諸国における女性の労働参加率は上昇傾向にあるが、出産や育児を機に離職やキャリアダウンを余儀なくされるケースは依然として多い。これは、家庭にとっても社会にとっても大きな人的資本の損失となる。
全米ビジネス協会などの報告書は、「親に優しい職場環境」を整備することが、優秀な人材の確保と定着に直結し、企業の生産性向上に貢献することを強く示唆している。企業が家族に優しい福利厚生に投資するごとに、離職率の低下や生産性の向上により、その3〜4倍の利益が戻ってくるという報告もある。
「Whole Family Care」型のコワーキングは、このギャップを埋める役割を果たす。親が仕事に集中できる安全な環境を提供することで、女性(および男性)が育児のフェーズにある間も、キャリアを中断することなく、専門性を維持・発展させることを可能にする。これは、単なる親へのサービスではなく、「労働市場の安定化装置」として機能していると言える。
「クラブ」としての価値:コミュニティとウェルネスの統合
「Whole Family Care」が単なる保育の代替手段を超越する理由は、Havenが自らを「クラブ」と呼ぶことにも象徴されている。
この新しいコンセプトは、以下の三つの価値を統合している。
1. 物理的な効率性(時間と場所)
子どもの預け先、自分の職場、そしてリフレッシュのためのジムやカフェといった複数の場所への移動時間をゼロにする。結果、一日のうちに使える「可処分時間」が最大化される。親は、送迎や通勤にかかる時間的・精神的なコストを削減し、それを仕事や自己ケアに振り分けることができる。
2. コミュニティの力
子育ての孤立化は、特に核家族化が進む現代社会の深刻な問題だ。HavenやMOMentumのような「クラブ」は、同じ課題を共有し、同じライフステージにある他の親たちと出会う機会を提供する。
仕事上の情報交換はもちろん、育児の悩みを共有し、共感と連帯感を得る場となる。これは、親の精神的な健康(メンタルウェルネス)を維持する上で、極めて重要な要素だ。コワーキングの本質的価値はコミュニティであることにある。
3. 親のウェルネスへの配慮
従来の保育施設の周辺には、親のためのサービスはなかった。しかし、「Whole Family Care」型コワーキングは、コワーキングスペースだけでなく、ジムやヨガスタジオといった親のためのウェルネス設備を併設する。
これは、親の身体的・精神的な健康も、家族全体の幸福と子どものケアに不可欠な要素であるという認識に基づいている。親が健康で満たされている状態こそが、最も質の高い育児を可能にするという考え方だ。まったく正しいと思う。
蛇足ながら、ウェルネス(ウェルビーング)の実現は、「コワーキング曼荼羅」でも表されている。

「Whole Family Care」型コワーキングが未来の働き方を創る
Fast Companyが指摘したように、「Whole Family Care」は、単なる「Childcare」の進化形ではない。それは、働くこと、育てること、生きることの境界線が曖昧になった現代の生活様式を反映した、新しい社会インフラだ。
Haven、MOMentum、BubbaDeskといった先駆的な事例は、柔軟な働き方が定着し、育児費用が高騰し続ける現代において、その需要をますます増大させるだろう。
「Whole Family Care」型コワーキングは育児中の親に「仕事と育児のどちらかを選べ」と迫るのではなく、「どちらも統合された形で実現できる」という選択肢を提供する。
コワーキングは単なる作業場ではない、人と人がつながることで新しい価値を生む仕組みだと常々言ってるが、家族全体のニーズを包括的に満たす「クラブ」としてのコワーキングは、今後、個人が力を発揮し、企業が優秀な人材を維持し、そして社会全体が豊かになるための、不可欠なソリューションとなり得る。
いや、もうそのフェーズに入っていると言っていい。そして日本に「Whole Family Care」型コワーキングが生まれる日も近い、そう期待している。
ということで、今日はこのへんで。
(トップ画像:Haven)
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