見出し画像

髷は他意を知る。【毎週ショートショートnote】

町娘のお春は奉公先が休みの日、女髪結おんなかみゆいのお菊さんに島田髷を結ってもらう。
いつもは自分で結うが、お菊さんのほうが上手だし、伽羅きゃらの油を使って髪を梳いてもらうといい香りで癒される。
奉公先の愚痴を聞いてくれるのも嬉しい。

その日お菊さんがお春の髪を結っていると、手伝いのお雪が走ってきた。
将軍家のお姫様がすぐに高島田を結ってほしいそうで、従者が迎えに来ているという。
お姫様は、腕前が確かなお菊さんがお気に入りだ。
でもお菊さんは、急に呼びつけたり、気に入らないと罵るお姫様が苦手だった。
「仕方ないね。お春ちゃん、すまないけどお雪に代わるよ」
お菊さんは支度をしながら、伽羅の油を小さい壺に分け、何か粉を入れる。
視線に気づくと、鏡に映るお春に微笑んだ。
「他意はござんせんよ」

数年後、お姫様が病で亡くなったと瓦版が伝えた。
お菊さんは少し悲しそうで、少しほっとしたようだった。

お菊さんの庭にトリカブトが咲いていたことをお春は知らない。

(422字、ルビ含む)

=====
#毎週ショートショートnote に参加しました。
裏お題「髷はタイを知る。」

「伽羅の油」は、いわゆる「びんつけ油」のことです。高級感を出すために「伽羅」の名をつけましたが、実際は香木の伽羅は使われていなかったそうです。
参考にしたのはこちら↓

=====
【今日のイラスト】ACイラストから。
「日本髪」で検索。
お菊さんこんな感じかな。


いいなと思ったら応援しよう!

kao ありがとうございます! 大切に使わせていただきます✨😌✨