不器用ですから【毎週ショートショートnote裏】
私の料亭は毎晩一組限定だ。
今夜は黒ずくめの服の男と、高級ブランドに身を包んだ女。
コースの終盤、私は土鍋で炊いた鯛飯をテーブルに運ぶ。
「まずは鯛飯、二杯目は出汁をかけて鯛茶漬けをどうぞ」
「わぁ美味しそう」
女は花のような微笑みを浮かべた。
私は桜色の鯛の骨を素早く取り除く。
「これはミバレタイという鯛で……」
「身バレ?!」
男は青い顔をした。
「あなた、声大きい」
女は男をいさめる。
「本来はミバナレタイです。身離れがいい、つまり骨がうまく剥がれるんです。ミバナレがなまってミバレになりました」
「ああ驚いた、身バレしたかと思ったよ」
男は心からホッとした様子だ。そんなに身バレが怖いか……
二人はコースを堪能し、ハイヤーで帰っていった。
見送る私に、接客係が声をかける。
「今の二人、ミュージシャンのダイゴロウと女優の南川景子ですよね!あれ、サインもらえなかったんですか」
私は白いままの色紙を後ろ手に抱えていた。
「なんか声かけられなくて」
(409字)
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#毎週ショートショートnote に参加しました。
裏お題「身バレ鯛茶漬け」
「ミバレタイ(ミバナレタイ)」の言い伝え
昔、身分の高い人が魚を食べる時は女中などが骨を取りましたが、ミバナレタイは他の魚より身離れがいいので「女中嬉し泣き」という別名もついていました……という言い伝えも考えましたが、文字数により割愛。
(注:この魚はいませんので検索しないでください)
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【今日の画像】みんなのフォトギャラリーから。
「鯛」で検索。
春らしく、おめでたい感じで。
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