温かな手
小人はひとりで森の栗を収穫して生計を立てていた。
ここの栗は上質で儲かる。
荒んだ暮らしの末、金以外は何も信じられなくなっていた。
ある朝、王家の姫が用心棒とともに訪れた。
王家からの注文で特上の栗を納品したが、不具合があったのか?
「栗を獲っているのはあなた?」
若葉にころがる朝露みたいな声。
姫は「とても美味しかったわ。病気のお母さまも喜んだの。ありがとう」と小人の手を取った。小人は手を引っ込めようとした。
栗のイガで傷だらけなのだ。
姫は「痛いのに頑張っているのね」と巻き毛を揺らして小人を見つめた。
明るい瞳、優しい言葉、巻き毛と温かな手。
小人の胸は鐘を打ち、顔が熱くなるのがわかった。
四十半ばにして初めてのことだった。
後日、隣国の王子と婚約した姫から、小人に届いたのは革手袋だった。
初恋はあっけなく終わったが、手袋をすると姫の手の温かさに包まれるようで、収穫作業や品質管理に力が入った。
森の栗はやがて「こびと栗」と呼ばれる逸品になった。
(415字)
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裏お題「こびと栗」
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