おとぎ話診療所【毎週ショートショートnote】
「私、失敗しないので」
そう言うとみんな笑う。
「医療ドラマのヒロインかよ」
でもそのうちみんな静かになる。
経験の少ない私が、本当に医療行為を失敗しないから。
私は研修医。いま大学病院で研修中だ。
両親が苦労して医大に進学させてくれた。
時間もお金も無駄にできないから裏でめっちゃ勉強している。
なのでミスはほとんどない。
技術を身につけ、将来は恩返しのために、儲かる美容医療に進むつもりだ。
ある昼休み、ラウンジの窓際で空を見上げる少年がいた。
車椅子で、手首にIDをつけている。入院患者だ。
少年は私を見た。
「先生、どんな病気も治る病院ってないのかな。ぼくの病気はむずかしいんだって」
IDの患者名をちらっと見る。コウキくん。確か数万人に一人の難病患者。
「もうサッカーできないって言われた」
コウキくんは目を伏せた。Jリーグのユニフォームを模したパジャマ。
「どんな病気も治る病院なんて、そんなおとぎ話みたいなところ……」
私はつぶやいた。
「私が作ったるわ!」
父ちゃん母ちゃんごめん。たぶん儲からないけどいいよね?
(444字)
=====
#毎週ショートショートnote に参加しました。
お題「おとぎ話診療所」
ちょっと字数オーバー。
しかも有名なおとぎ話がひとつも出てこないっていう。
=====
【後日談~妄想】
数十年後、この物語の主人公は小さな診療所を立ち上げた。
街中にあるので交通の便がよく、誰でも通院できる。
昔所属した医師紹介所のつてで、CTやMRIを格安でレンタルできた。
全国各地の病院と連携しており、何かあればすぐ紹介できる。
診療所ながら、入院施設も少しある。
地元のかかりつけ医として機能しながら、専門的治療が必要な場合は、すぐ専門医につなぐことができる。
コウキくんは院内のホスピスで過ごしていた。
時々ホスピスにコーヒー屋さんが出店するので、主人公はコーヒーにかこつけてコウキくんの様子を見に行っている。
=====
【今日の写真】みんなのフォトギャラリーから。
「診療所」で検索。
元診療所の建物をリノベーションした、ブルーボトルコーヒー三軒茶屋カフェだそうです。
いいなと思ったら応援しよう!
ありがとうございます!
大切に使わせていただきます✨😌✨