愛と厳しさのあいだにあるもの
美輪明宏さんが、6月20日に老衰のため91歳で亡くなられたことが、公式サイトで発表されました。
その知らせを目にして、驚きました。
というのも、その少し前から、なぜかYouTubeに美輪さんの動画がよく出てくるようになっていたからです。
何となく気になって、つい見てしまう。
そんな時間が続いていたところでした。
美輪さんのことを思い出すと、私の中にはいくつかの記憶が浮かびます。
子どもの頃、テレビで「黒蜥蜴」の舞台中継を見たことがあります。
内容の意味はよくわかりませんでした。
けれど、美輪さんの姿から目が離せませんでした。
不思議な人だなあ。
なんだか怖いなあ。
そんな感覚だけが、今でも残っています。
大人になってから「ヨイトマケの唄」を聴いた時には、胸をつかまれるような衝撃がありました。
人生の応援歌。
そう言ってしまえばそうなのかもしれません。
でも、それだけでは言い切れない、深い悲しみのようなものも感じました。
泣きながら、励まされる。
痛みごと抱きしめられる。
そんな不思議な力のある歌でした。
「オーラの泉」もよく見ていました。
美輪さんの華やかさは、見ているだけで楽しかった。
けれど、ただ優しいだけの人ではなかったように思います。
愛がある。
でも、厳しさもある。
努力しない人や、素直でない人に対しては、時にとても手厳しい。
でもその厳しさは、突き放すためのものではなく、
その人がその人として立つことを、どこかで信じているからこそのものだったように感じます。
私はどうも、愛と厳しさを兼ね備えた人に惹かれるようです。
そしてたぶん、
自分自身もそういう人でありたい、という願いがあるのだと思います。
とはいえ、まだまだ愛も厳しさも道の途中。
そんな自分を感じています。
優しいだけではない。
甘やかすだけでもない。
人間の弱さも醜さも知っていて、
それでもなお、人がよりよく生きる可能性を見ている人。
美輪さんには、そんなまなざしがあったように思います。
ネットの記事を読んでいたら、美輪さんの言葉として、こんな一節に出会いました。
広大無辺の宇宙の中で、物事はすべて、
プラスとマイナス、陰と陽、正と負、虚と実、上と下、長と短、表と裏など、
相反する二つの要素で成り立っている。
この言葉に、私は深くうなずいていました。
私が学んだシステムコーチング®で、最初に触れた考え方のひとつに、
「塞翁が馬」の逸話があります。
何がよくて、何が悪いのか。
それは、その時には誰にもわからない。
目の前で起きた出来事を、
これは良いことだ。
これは悪いことだ。
と、すぐに評価判断しない。
そんなスタンスを学びました。
その時に聞いた、
「陰極まりて陽生ず」
という言葉も、深く心に残っています。
陰が極まったところに、陽が生まれる。
そう考えると、人生に起きる出来事を、簡単に白黒で分けることはできません。
苦しかったことが、後になって大切な転機になることもある。
うまくいかなかったことが、自分を本来の場所へ戻してくれることもある。
失ったと思ったものの奥に、新しい出会いや気づきが隠れていることもある。
もちろん、そう思えるまでには時間がかかります。
渦中にいる時には、そんなふうにはとても思えないこともあります。
それでも、人生が長くなってきた今、
美輪さんの語ってこられたことに、以前よりも深く共感する自分がいます。
光だけではない。
影だけでもない。
その両方を含んで、人生は動いていく。
人もまた、やさしさだけでできているわけではなく、
弱さも、ずるさも、怖れも、願いも、愛も、いろいろなものを抱えながら生きている。
だからこそ、簡単に裁かないこと。
簡単に決めつけないこと。
それは、人と関わるうえで、とても大切なまなざしなのだと思います。
私がライフワークとして取り組んでいる
「私がつくる信頼レシピ」も、
信頼そのものについて考える時間です。
私の考えですが、
信頼もまた、愛のひとつの表現なのだと思っています。
誰かとつながること。
誰かを思いやること。
誰かを大切にしたいと願うこと。
人生の中で、信頼が必要になる場面はたくさんあります。
家族との関係。
仕事の場面。
仲間との協働。
自分自身との向き合い方。
そのどれもが、簡単ではありません。
信じたいのに信じられないこともある。
近づきたいのに、怖くなることもある。
大切にしたいのに、うまく伝えられないこともある。
それでも、そこにある根っこにはきっと、
誰かとよく生きたいという願いがあるのではないでしょうか。
美輪さんが最後に残されたという、
「こんな世の中を生き抜く武器は愛の言葉しかありません。
この世のすべての問題を解く鍵は愛です」
という言葉が、今、深く胸に響きます。
愛という言葉は、とても大きい。
だからこそ時に、きれいごとのようにも聞こえてしまうかもしれません。
でも、美輪さんの語る愛は、甘いだけのものではなかったように思います。
人間の悲しみも、愚かさも、孤独も、痛みも見つめたうえで、
それでもなお差し出されるもの。
だからこそ、その言葉には力があったのだと思います。
またひとり、
人生を照らしてくれる人が少なくなってしまいました。
けれど、その方が残してくださった言葉や姿勢は、
きっとこれからも、誰かの中で灯り続けていくのだと思います。
心からの感謝とともに、
美輪明宏さんのご冥福をお祈りいたします。
=お知らせ=
・私がつくる信頼レシピ™
人との関係を見つめ直したい方へ
❤「私がつくる信頼レシピ」基礎編開催のご案内❤
8月22日(土)9:30-12:30
