「情シス」じゃないのに全部やってる人へ——非・情シスという生き方
「情シス」って聞いたことありますか?
情報システム部門。略して情シス。会社のパソコンやネットワーク、セキュリティ、システムの導入や運用——ITに関わることを一手に担う部署です。
大企業には当たり前のようにある部署ですが、中小企業だとそうはいかない。「ひとり情シス」なんて言葉があるくらい、たった1人でIT業務を全部やっている人がたくさんいます。
でも、私はその「ひとり情シス」ですらありません。
私の肩書きは「総務」です。
情シスの仕事って何?
まず、一般的な情シスの業務を並べてみます。
ネットワークの構築・管理
パソコンのセットアップ
セキュリティ対策
社内システムの導入・運用
データのバックアップ管理
「パソコン動かないんですけど」への対応(ヘルプデスク)
アカウント管理
IT戦略の立案
けっこう幅広いですよね。
私、これ全部やってます。
でも繰り返しますが、情報システム部門なんて部署はうちの会社にありません。「IT担当」として正式に任命されたわけでもない。総務の仕事をしながら、気づいたらこうなっていました。
「ひとり情シス」と「非・情シス」の違い
ここで整理しておきたいんですが、「ひとり情シス」と私の立場はちょっと違います。
情シス部門がそもそもない。正式に任命されたわけでもない。「パソコンできそうだから」で自然発生的にそうなった。
だから私は自分のことを「非・情シス」と呼んでいます。
情シスの仕事をしている。でも情シスじゃない。
きっかけはコマンドプロンプトだった
じゃあなんでこうなったのか。
もともと私は設計の仕事をしていました。ある日、職場のPCのネットワーク設定をすることになって、各PCのIPアドレスを調べる必要があった。
そのとき使ったのが、コマンドプロンプト。あの黒い画面です。
私、昔からあの画面に憧れがあったんです。映画とかで出てくるじゃないですか、黒い画面にバーッと文字が流れるやつ。あれを使ってるだけでなんかかっこいいなって。
それで ping コマンドを使ってIPアドレスを調べていたら——
「え、すごい。パソコンめっちゃ詳しいじゃん」
いや、ping打ってるだけなんですけど。
でもこれ、ある程度パソコン触ってる人やPCゲーム遊んでる人なら当たり前のことで、自分が特別詳しいなんて意識はまったくなかったんです。
タイピングゲームの功績
さらに追い打ちをかけたのが、ブラインドタッチでした。
私、タイピングゲームが好きだったんです。ただそれだけ。楽しくて遊んでたら、いつの間にかキーボードを見ないで打てるようになってた。
それを仕事中にやってたら——
「えっ、キーボード見ないで打ってる! めっちゃパソコンできる人じゃん!」
……タイピングゲームが好きなだけなんですが。
それからショートカットキー。Ctrl+C、Ctrl+V はもちろん、Alt+Tab でウィンドウ切り替えたり、Ctrl+Z で戻したり。私はせっかちというか、効率がいいことの方が好きなタイプなので、自然とショートカットを使うようになっていたんですが、これもまた評価ポイントになってしまった。
好きでやってただけなのに、「パソコンの人」としての評価がどんどん積み上がっていく。不思議な感覚でした。
CAD専用機事件
ここで一つやらかした話をします。
設計で使っていたCADソフト。このソフト、コマンドの配置を自分好みにカスタマイズできたんです。
私は効率を求めるタイプなので、全部変えました。
「この作業の後はこれを使うことが多いから、こっちに配置しよう」
「この機能はよく使うから、一番アクセスしやすい場所に」
完璧な配置。自分にとっては最高に使いやすい環境。
……ただし、私にとっては。
他の人がそのパソコンを使おうとしたら、何がどこにあるか全くわからない。結果、そのPCは私の専用機になりました。
効率を求めすぎた結果、誰も使えないパソコンを生み出してしまったのです。
そこから「何でも屋」へ
ping、ブラインドタッチ、ショートカット。これだけで「パソコンに詳しい人」認定をいただいた私は、そこからどんどん任されるようになりました。
LANケーブルの作成
LANケーブルの配線
バックアップの設定
PCの初期設定
ネットワークのトラブル対応
気づいたら、情シスの仕事を全部やっている「非・情シス」が完成していました。
正直、最初はきつかった
ここまで読むと「楽しそうにやってるな」と思うかもしれません。
でも正直に言うと、最初はめちゃくちゃきつかったです。
だって、設計の仕事もあるんです。自分の業務を抱えながら、「LANケーブルの配線お願い」「パソコン動かなくなったから見にきて」と呼ばれる。しかも聞かれても知らない。直し方を調べるところから始めるんです。
「そんなの自分で調べてよ……」
正直、最初はそう思ったこともありました。葛藤もありました。
でも、調べて、試して、解決できたとき——あの達成感は、苦しんだ人にしかわからない快感だと思います。
勉強は嫌い。でもこれは違った
私、はっきり言って勉強はめっちゃ嫌いです。高校のテストは赤点ばっかりでした。
でも、仕事の困りごとを解決するのは「勉強」とは違うんです。
勉強って、突き詰めると自分のためにしかならない。でも仕事の問題を解決すると、人の役にも立つし、自分のためにもなる。
「ありがとう、助かった」って言われる。しかも自分のスキルも上がっている。
この両方が同時に手に入る感覚が、私にはすごく合っていたんだと思います。
そして気づいたら、あのときの葛藤や苦労が、全部今の自分に繋がっていました。
……とはいえ、ここに至るまでにはいろんな失敗もあったし、気持ちの整理がつかない時期もありました。「なんで自分ばっかり」と思った日も、正直あります。
そのあたりの話——失敗談や、あの頃の自分に今だから言えること——は、また別の記事で書きたいと思います。同じように頼られて、でもちょっとしんどいなと感じている人に届いたら嬉しいので。
頼られるのが、嬉しい
だから今は、「大変そう」とは思っていません。
「パソコンのことでちょっと聞いていい?」と声をかけてもらえること。「あなたがいてくれて助かる」と言われること。
頼ってもらえることが純粋に嬉しい。困っている人の役に立てることが楽しい。
そもそも最初のきっかけだって、Excelを聞かれてわからなかったけど、調べたらできた。その「できた」が嬉しかったから続けてきた。
好きだからやっている。面白いからやっている。それだけなんです。
同じ立場のあなたへ
もしこの記事を読んでくれている人の中に、同じような立場の人がいたら。
IT部門なんてないけど、パソコンのことは全部自分に回ってくる。情シスなんて肩書きはないけど、やってることはまさにそれ。
あなたは一人じゃないです。
そして、あなたがやっていることは、会社にとって本当に大きな価値があります。
「好きだからやってる」「面白いからやってる」——それでいいんです。むしろ、それが一番強い。
私たちは情シスじゃない。でも、情シスの仕事をしている。
非・情シス。
なかなか悪くない生き方だと思いませんか?
この記事は「昭和で止まった工場から総務(非・情シス)がDXしたい話」シリーズの記事です。
前回の記事:Excelと紙の山だった工場を変え始めた日の話
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