詩『シャボン玉』
花巻かおり
わたしは いつも薄い膜にくるまれている
それはシャボン玉みたいに透明で
人の声も分かるし 話もできる
見つめ合えるし 触れることもできる
なんの不便も感じない
ただ 何をしたって 割れた試しがない
どうジタバタしても わたしと共に生きている
緩いけれど 確固たる要塞のように わたしを孤独に生かしている
子宮に居た頃からあるのかな
宿命的にあるのかな
昨年末 祖母が亡くなった
彼女の寝姿に 薄い膜はもう見当たらなかった
必要がなくなったのか、消滅していた
こないだ 夫と河川敷を歩いた
とても冷たい風が吹いていた
わたしは 秘密を明かすみたいに
シャボン玉のことを打ち明けた
夫はくしゃみを何度かして
「割れるといいのになあ」と言った
わたしはそのくしゃみで割れたらいいのになあと思った
それから わたしたちは たぶん 同じ歩調で歩いた
ベンチには腰かけなかった
唯一の抵抗だった
(了)
2015年6月
※本作は、演劇公演『絢とひさ枝のふらり旅 スノドカフェ七間町編』上演にあたり、コラボレーション作品として創作し、朗読していただいたものです。

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